借入金とは?種類や仕訳の方法、活用するメリットをわかりやすく解説
監修者: 田中卓也(田中卓也税理士事務所)
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開業や会社が事業を進めていくにあたって、金融機関などから資金の借り入れを行うこともあるでしょう。借入金は借金だから、あまり行いたくないと考える経営者もいらっしゃるかもしれません。しかし、自社や自事業の返済能力を認識していれば、資金の借り入れは事業をする上で、メリットが多数あります。
ここでは借入金のメリットや種類の他、仕訳の方法、借入金の返済能力をチェックする方法などについて解説します。
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借入金とは他者から借りたお金のこと
借入金とは、借りた相手は関係なく、金融機関から借りる場合も個人から借りる場合も、取引先から融資を受ける場合も、借りたお金はすべて「借入金」として扱われます。
借入金には返済義務があります。貸手側が無利息で良いとした場合を除いて、借り入れた元本にかかる利息を支払う必要があるでしょう。借入金があると、貸借対照表の「負債の部」に、返済期間が1年以内か、1年を超えるかといった基準に基づいて、短期借入金と長期借入金に分けて記載されます。
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借入金を活用するメリット
借入金には返済義務があり、利息を支払う必要があります。ですから、「借り入れをせずに無借金経営をするのが良い」と考えてしまいがちです。しかし、それは借入金のデメリットだけを見て、メリットを見ていないことによる誤解といえるかもしれません。
借入金を正しく活用するためにも、そのメリットを確認しておきましょう。
事業資金にゆとりができ、資金繰りを気にせずに安定した経営ができる
事業を続けていると、新型コロナウイルス感染症のような思いもよらない事態や得意先の倒産など、経営に深刻な影響を及ぼす問題が発生することがあります。そうなると、予定していた売上が得られなかったり、入金がなくなったりすることもあるでしょう。
このようなケースで事業資金にゆとりがないと、取引先への支払いが滞ってしまったり、従業員への給料が払えなかったり、最悪の場合、倒産へとつながりかねません。借入金を利用することで事業資金にゆとりができれば、慌てずに対策を講じることができます。結果、安定した経営が可能となります。
将来への投資ができる
新規分野への参入や工場の増設、新商品の開発など、有望な新規事業を進めるには、まとまった資金が必要です。市場ニーズの変化や技術革新のスピードが速い現代では、まとまった資金を準備できるまで待っていては、チャンスを逃してしまう可能性があります。
このようなケースに借入金を利用すれば、まとまった資金を短期間で調達し、チャンスを逃さずに将来への投資ができるのです。
金融機関との信頼関係を構築できる
借り入れを行い、返済した実績ができることで、金融機関との間に信頼関係を構築できます。金融機関から信頼されるようになれば、いざ大きな資金調達が必要になったとき、スムーズに融資を受けられる可能性が高まります。
したがって、経営者の中にはとりたてて資金の需要がないのにも関わらず「金融機関との信頼構築のために」あるいは「将来、より大きな資金が必要になったときに」備えて、借入の申請と返済の実績を残す、という方もいらっしゃいます。創業融資は、受けたほうがよいというのも、これが大きな理由の一つでもあります。
借り入れの方法とは?
金融機関からお金を借り入れる方法は、「証書貸付」「手形貸付」「手形割引」「当座借越」の4種類に分けられます。それぞれ、どのような方法なのか、詳しく見ていきましょう。
証書貸付
単に借入金というと、一般的に証書貸付のことです。証書貸付は、借手が貸手と金銭消費貸借契約(金消契約)を結び、「金銭消費貸借契約書」を差し入れたうえで借り入れを行うものです。
金銭消費貸借契約書には、借入額や利率、返済期日、返済方法など、貸付の条件が記載され、借手は契約書の内容に沿って返済することになります。担保として、不動産などが設定されることもあります。
手形貸付
手形貸付は、金融機関に約束手形を振り出し、手形に記載された金額の融資を受ける方法です。担保なしで、比較的短期間の資金融資を希望する場合に利用されることが多いです。
返済が滞ると「手形不渡り」となり、会社の信用が大きく損なわれます。また、6か月以内に2回の不渡りを起こすと、法律上銀行取引停止処分となります。
手形割引
手形割引は、他社が振り出した期日到来前の手形を、金融機関や手形割引を行っている機関に買い取ってもらう形で融資を受ける方法です。他社が振り出した手形を持っているものの、その期日到来前にお金が必要な際に利用されます。
手元に入る金額は、手形の額面金額から割引料が差し引かれた額です。手形を現金化することで早期に資金を調達できるのはメリットですが、一方で、手形が不渡りになった場合に買い戻しの義務が発生することはデメリットといえます。買い戻しが必要になると、その買戻し資金が必要になるため、資金繰りに窮する可能性があることはおさえておいたほうがいいでしょう。
当座借越
当座借越は、前もって決めた融資限度額までなら、自由に融資を受けたり、返済したりできる方法です。銀行が提供するカードローンも、この当座借越の一種になります。
借手からすると使い勝手は非常にいいのですが、当座借越を利用するためには会社の実績が良好であるなど、審査基準としては厳しめです。「残高を超える小切手を振り出してしまった」という場合には、「小切手の不渡り」の予防策にはなりますが、金利は日割りで計算されるため、当座借越の状態を放置しておくことは避けるべきしょう。
借入金は借入期間の長さで分類できる

借入金は借入期間の長さによって、貸借対照表上で「短期借入金」と「長期借入金」に分類されます。それぞれどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
短期借入金
短期借入金とは、1年以内に返済期日が到来する借入金を指します。貸借対照表上では、「流動負債」の扱いになります。主に運転資金などに利用され、手形貸付や当座借越などで調達するのが一般的です。
長期借入金
長期借入金とは、借入期間が1年以上にわたる借入金です。貸借対照表上では、「固定負債」の扱いになります。主に固定資産の購入や長期の運転資金などに利用され、証書貸付や制度融資で調達するのが一般的です。
借入金の勘定科目はどのように仕訳する?
借入金の勘定科目である短期借入金と長期借入金は、どのように仕訳をすれば良いのでしょうか。ここでは、「借入金を受け取る」「利息を支払う」「借入金を返済する」「決算時」それぞれにおいて、具体的な仕訳例をご紹介します。
借入金を受け取ったとき
銀行から1,000万円の融資を受け、普通預金口座に入金された場合は、下記のように仕訳します。1年以内に返済期日が来る分を短期借入金、それ以外の分を長期借入金として計上します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 10,000,000円 | 短期借入金 | 2,000,000円 |
長期借入金 | 8,000,000円 |
利息を支払ったとき
借入後3か月は利息のみの支払いとされている中で、利息1万円を支払った場合、下記のように「支払利息」で計上します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
支払利息 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
借入金を返済したとき
元本100万円と利息1万円を普通預金から返済した場合は、下記のように仕訳します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
短期借入金 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,010,000円 |
支払利息 | 10,000円 |
決算時
長期借入金のうち、来年返済する分を「短期借入金」に振り替えた際には、下記のように仕訳します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 2,000,000円 | 短期借入金 | 2,010,000円 |
なお、期中においては短期借入金と長期借入金の合計残高が借入返済計画表の数値と合っているか確認することは重要です。また、決算時においては金融機関ごとに借入金においても残高証明書を取得し、定期的に残高の把握につとめることが大切です。
借り入れはどのようにして受ければいい?
会社や個人事業主が借り入れを行う場合、借入先をどこにするのか選ぶ必要があります。借入先としてはメガバンクや地方銀行など、さまざまな選択肢があります。また、借り入れの方法も、融資やビジネスローンから選択可能です。
しかし、借入先によっては企業規模などの条件で融資を行ってくれなかったり、ビジネスローンは借りるのは簡単でも利息が高かったりします。
ここでは、借入先別に、融資やビジネスローンの特徴について見ていきましょう。
メガバンク・地方銀行・信用金庫からの融資
メガバンクが融資を行うのは主に大企業や中堅企業が中心で、中小企業や個人事業主への融資には応じてくれない場合もあります。金融機関から融資を受ける場合、中小企業であれば地方銀行や信用金庫、信用組合が中心です。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、国が株式の100%を保有している政府系の金融機関です。民間企業と比較して金利は低めで、資金繰りが悪化した中小企業を対象としたセーフティネット貸付が充実しています。
例えば、昨今であれば新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に、売上の減少など業況悪化をきたしている方について、新型コロナウイルス感染症特別貸付という無担保での融資形態があるなどさまざまな貸付形態があるので、ホームページなどで情報収集するのもいいでしょう。
- 参考
- 日本政策金融公庫
地方自治体からの融資
都道府県や市町村なども、中小企業を支援する融資制度を提供しています。金利が低く、融資期間が比較的長いものが多いのが特徴です。
例えば、東京都渋谷区に事業所がある会社の場合には東京都産業労働局で行っている制度融資と、渋谷区産業観光課が窓口になっている制度融資があるなど、都道府県と市区町村の両方のホームページで情報収集してみることも重要です。
銀行からのビジネスローン
融資とは異なりますが、銀行のビジネスローンを利用して借入金を作る方法もあります。融資ではないため金利は高めになりますが、借り入れまでの期間が短く、用意する書類が少なくて済む、店舗に足を運ぶ必要がない、担保がいらないといった特徴があります。
信販会社や消費者金融からのビジネスローン
銀行のビジネスローンだけでなく、借入先として信販会社や消費者金融のビジネスローンを選ぶ場合もあるでしょう。信販会社や消費者金融のビジネスローンの特徴は銀行のビジネスローンとほぼ同じですが、最短で即日借り入れが可能なものもあります。また、銀行のビジネスローンに比べれば、金利はやや高めです。
借入金の返済能力をチェックする指標とは?
借入金は、資本金とは違って期限内に返済する義務があり、利息の支払いもしなければならないので、借り過ぎには注意が必要です。借入金に対してどれぐらい返済能力があるかをチェックするには、次の2つの指標が役立ちます。
借入金依存度
借入金依存度は、具体的に自社の総資産のうち借入金が占める割合は何%かを示す指標です。次の計算式で求めることができます。
- 借入金依存度の計算式
-
借入金依存度(%)=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷総資産×100
経済産業省の調査によると、借入金依存度は、全業種合計の中央値がコロナ禍前の2019年時点で60%程度、2021年時点で70%程度です。
ただし、業界によってもばらつきがあります。例えば、宿泊業の中央値は2019年時点で約80%、2021年時点で約100%。生活関連サービス業の中央値は、2019年時点で70%、2021年時点で80%強となっています。
借入金月商倍率
借入金月商倍率は、借入金が月の売上の何倍に相当するかを示した指標で、下記の式で計算できます。
- 借入金月商倍率の計算式
-
借入金月商倍率=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷(年間売上高÷12)
2016年の「中小企業白書」によると、借入金月商倍率の平均値は製造業の中小企業で4.81(2014年度時点)、非製造業の中小企業で4.52(2014年度時点)となっています。
会計ソフトを活用して、賢く借入金を管理しよう
借入金は「返済義務がある」「利息を支払う」といったデメリットはありますが、「事業資金にゆとりができ安定した経営ができる」「適切なタイミングで将来への投資ができる」といったメリットもあります。適切に利用することで、事業の発展に大いに役立つものなので、自社の規模に合わせた額を見極めたうえで、上手に利用することが大切です。
借入金は貸借対照表上に、「短期借入金」と「長期借入金」に分けて記載する必要があります。この作業は大変ですが、会計業務に必要な機能をカバーした会計ソフト「弥生会計」を使えば、手間をかけずに貸借対照表の作成が可能です。

さらに、「弥生会計」のプロフェッショナル/ネットワークには、資金繰り表を作成する機能があります。この機能を使えば、経常収入(売掛金の回収、受取手形の回収など)から経常支出(買掛金の支払い、支払手形の決済、人件費は諸経費の支出)などを差し引いた結果が毎月ごとに算定されます。この差額を経常収支差額といいますが、この経常収支差額の中で、毎月、あるいは毎期ごとの借り入れの返済が収まっていれば、資金ショートすることなく、借入の返済に余裕がある状態といえます。
経常収支差額<借入返済額となっていると、資金が減少している状態です。反対に、経常収支差額>借入返済額となっていれば、借入を返済して、なおかつ、資金に余裕がある状態といえます。経常収支差額という数値に注目して、借入管理を行うことは経営上、たいへん有用です。ぜひ活用してみてください。
photo:PIXTA
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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)
税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。
