経理業務は自動化できる?課題や方法、注意点などを解説
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経理は、企業が事業を運営するうえで欠かせない重要な業務です。その一方で、経理業務は煩雑な作業が多く、手間や時間がかかります。また、経理業務は企業のお金に直接かかわるため、小さなミスが信用問題に発展してしまう可能性もあります。経理業務を効率化し、人的ミスを軽減するために、自動化を検討している企業は多いのではないでしょうか。特に、人材に限りのある中小企業にとって、経理業務の自動化は早急に取り組むべき課題の1つといえます。
本記事では、経理業務の課題や経理業務を自動化する方法のほか、自動化する際の注意点についても解説します。
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経理業務の自動化は、人的ミスの削減や作業効率化に役立つ
経理は「経営管理」の略ともされ、企業の経済活動におけるお金と取引の流れを記録・管理する役割を担います。具体的には、伝票や請求書の作成、入出金の各種帳簿への記帳、固定資産台帳の管理、経営にかかわる資料の作成など、企業のお金に関すること全般が経理業務に該当します。企業の規模や組織体制によっても異なりますが、主な経理業務は以下のとおりです。
主な経理業務
業務の種類 | 内容 |
---|---|
日々の売上や仕入、その他経費などの会計ソフトへの記帳 | 日々の取引を仕訳帳や買掛帳、売掛帳といった帳簿に記帳する |
小口現金の管理 | 少額かつ現金の経費精算、営業担当者の交通費精算などを行う。社内に置いてある現金の残高を合わせるといった仕事も生じる |
保険料や税金の支払 | 社会保険料や住民税、源泉所得税、法人税など各種保険料や税金の支払を行う |
従業員の給料の支払 | 従業員の給与や賞与、退職金などの支払手続きを行う |
企業の資産の購入や売却に関する会計処理 | 企業が資産を購入したり売却したりした際に会計処理を行う |
決算 | 企業の収支をまとめて決算書を作成する |
経営者や利害関係者、投資家への会計報告 | 経営者や株主などに対して、決算に基づいて会計報告を行う |
このように、経理業務は複雑で多岐にわたるため、慎重に取り組む必要がありますが、手作業のみで行うのは負担が大きく、人為的なミスも発生しやすくなります。特に、近年ではインボイス制度開始や改正電子帳簿保存法などの影響もあり、経理部門の負担はさらに増加しています。また、経理の専門知識がある人材を確保しようとしても、人手不足や人件費の高騰などにより、思うように採用できないケースも少なくありません。
経理業務は社外とかかわるものも多く、小さなミスが信用問題に発展する可能性もあるでしょう。経理部門の負担を軽減し、ミスを防止するために、経理業務の自動化・効率化の必要性が高まっています。ただし、経理業務には自動化に適したものと、そうでないものがあるため、自社の経理業務のうち、どの部分を自動化するのかを明確にし、適した方法を選ぶことが大切です。
経理業務の課題
経理は企業にとって重要な業務である一方で、課題も多いのが現状です。特に、中小企業でよく見られる経理業務の課題について詳しく見ていきましょう。
経理業務の属人化
経理業務の課題の1つに、業務の属人化があります。
経理業務は、「業務フローがマニュアル化されていない」「簿記関連の知識と経験がなければミスが起こりやすい」などの理由から、属人化しやすい傾向があります。さらに、売上に直接結び付かない間接部門である経理は、配置する人員を最小限としている企業も少なくありません。そのため、知識や経験のある一部の従業員に業務が集中し、属人化してしまうこともあります。
経理業務の属人化が進むと、外部から進捗や問題点の把握が困難になり、改善点も見えにくくなります。また、経理担当者の退職や異動があった場合、後任者にうまく引き継ぎができず、業務が滞ってしまう可能性もあるでしょう。
紙の帳票の運用や管理
紙の帳票の運用や管理も、経理業務の課題の1つです。
最近では、さまざまな分野でペーパーレス化が進んでいますが、帳票類を紙で作成・運用している企業は、依然として多く存在します。経理業務で取り扱う書類は、種類や量が非常に多く、すべての帳票を紙で管理するのは非効率です。例えば、日々の取引を記録する帳簿を紙で作成するには、簿記の専門知識が求められ、手間と時間がかかるうえ、ミスや漏れのリスクも高くなります。さらに、紙の書類は、保管のためのスペースやコストも必要です。このような紙の帳票運用は、経理業務の効率化を妨げる要因の1つといえるでしょう。
手作業によるミス
経理業務の課題として、手作業によるミスもあげられます。
企業によっては、帳簿作成などの経理業務にExcelを活用しているケースもあるでしょう。しかし、Excelでの作業は基本的に手入力なので、情報量が増えるほど入力の負担が増し、ミスも起こりやすくなります。そのため、ヒューマンエラーを防止するには、作業者以外の第三者によるチェック体制の強化などの工夫が必要になります。
また、決算をはじめ、経理業務には期日が決まっているものも多く、短期間で膨大かつ煩雑な作業を行う必要があることも、ミスの要因の1つです。手作業によって起こるミスと、ミスのチェックのためにかかる手間は、経理業務の大きな課題といえます。
自動化できる経理業務
経理業務のうち自動化しやすいものは、業務フローやプロセスがある程度明確になっている定型業務です。具体的な例としては、請求書や領収書といった定型文書の作成、仕訳入力、伝票入力、経費精算、入金消込などがあげられます。
その一方で、資金繰りなどパターン化が難しい業務や、財務状況に関する提案など、人の判断が必要な業務は自動化には適していません。なお、柔軟な判断やイレギュラーな対応が求められる作業を自動化すると、大量の修正が発生し、かえって業務効率を低下させてしまうこともあります。
経理業務を自動化するメリット
経理業務を自動化すると、人的ミスやコストの削減、作業時間の短縮などさまざまなメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
人的ミスを削減できる
経理業務を自動化するメリットは、人的ミスを削減できることです。
経理業務を自動化すると手作業が少なくなるため、入力や計算、仕訳におけるミスといったヒューマンエラーを減らすことができます。人の手による作業は、どうしても漏れやミスが生じることがあります。また、手作業で紙の帳簿を作成し、数字が合わない場合には過去にさかのぼってミスした箇所を探さなくてはなりません。そのうえ、確認や修正にも時間がかかります。
経理業務は企業のお金にかかわるため、ミスの内容によっては、少しの不注意が重大なトラブルにつながることもあります。人的ミスの削減ができる点は、経理業務を自動化する大きなメリットといえるでしょう。
コストの削減ができる
経理業務の自動化は、コストの削減にも役立ちます。
例えば、請求業務を自動化し、納品書や請求書などを電子発行すれば、用紙代、印刷代、郵送費などのコストをカットできます。また、経理業務の自動化によって紙の書類がデータで管理できるようになると、書類を保管するためのスペースやコストも不要です。
作業時間を短縮できる
経理業務の自動化には、作業時間を短縮できるメリットもあります。
経理業務を自動化すると、取引データの入力や転記、集計、計算などを人の手で行う必要がなくなり、作業時間が大幅に短縮されます。そのため、月末や決算期などの繁忙期でも、経理担当者にかかる負担を軽減できるでしょう。また、作業時間が短くなることで、残業代などの人件費削減も期待できます。
主業務に注力できる
主業務に注力できることも、経理業務を自動化するメリットの1つです。
経理業務の自動化により、経理担当者の負担が軽減されると、時間的・精神的な余裕が生まれます。細かい計算と入力などに追われることがなくなり、経営分析など、生産や利益に直結する業務に集中しやすくなるでしょう。
伝票作成や記帳といった日常業務も重要ですが、「経営にかかわること」が経理の本来の役割といえます。健全な企業経営を行うには、お金の流れを可視化して管理し、適切な経営判断を行っていくことが必要です。経理業務を自動化することで、帳簿や決算書などもスピーディーに作成でき、事業目標の達成、経営課題の改善を考えるうえで重要な情報提供が可能になります。
経理業務を自動化する方法
経理業務を自動化するには、主に「Excelのマクロ機能を活用する」「RPAを導入する」「経理向けのシステムを導入する」といった3つの方法があります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
Excelのマクロ機能を活用する
Excelのマクロ機能を活用して経理業務を自動化することが可能です。
例えば、請求書や領収書といった毎月発行する書類は、マクロ機能を使えば手軽に作成できます。また、すでにExcelを導入済みの企業であれば、追加のコストもかかりません。
ただし、Excelはあくまで表計算ソフトであり、経理業務に必要な帳簿や伝票のフォーマットがあらかじめ用意されているわけではありません。フォーマットを一から作成するのは手間がかかるうえ、マクロの作成や実行には専門知識が求められます。そのため、Excelで自動化のしくみを作っても、結果的に業務が属人化することもあるでしょう。
RPAを導入する
RPA(Robotic Process Automation)を導入することも、経理業務を自動化する方法の1つです。
RPAとは、ソフトウェアロボットを使って、パソコンで行われる定型的な作業を自動化する技術のことを指します。事前に処理手順を設定すれば、人の手で行うのと同様にシステムやアプリケーションを操作し、定型業務の実行が可能です。特に、転記作業や資料作成などの自動化に効果的で、手作業によるミスを減らし、業務スピードと正確性の向上につながります。
なお、RPAに向いているのは、設定されたルールに従って繰り返し行う作業です。何らかの判断が求められたり、毎回手順が変わったりするような作業には適していません。そのため、法改正や業務変更の影響を受けやすく、経理業務のルールが変わるたびにメンテナンスが必要になるでしょう。
経理向けのシステムを導入する
経理業務の自動化には、経理向けのシステムの導入も効果的です。
経理向けのシステムには、会計ソフトをはじめ、経費精算システム、請求書受領・発行システム、債権・債務管理システムなど、さまざまな種類があります。経理の専門知識がなくても簡単に操作できるものも多く、システムの設定を変更したりアップデートしたりすることで、法改正にもスムーズに対応可能です。システムを導入するには初期費用や運用コストが発生しますが、業務効率化による効果を考えると、結果的にコスト削減につながる可能性が高いでしょう。
経理業務を自動化する際の注意点
経理業務の自動化を進める際には、押さえておきたいいくつかの注意点があります。経理業務の自動化にあたっては、以下の注意点をあらかじめ確認しておきましょう。
業務フローの見直しが必要になる
経理業務を自動化する際の注意点は、業務フローの見直しが必要になることです。
経理業務を自動化する際には、自社の経理業務の内容や流れを改めて見直さなければなりません。業務フローを可視化し、どの部分を自動化するか、人の手による作業が必要な部分はどこか、といったことを洗い出しましょう。また、経理業務を自動化しても、関連する業務や前後の業務フローが従来どおりだった場合、かえって手間が増えてしまうこともあります。
自社に適した自動化の方法を検討する必要がある
自社に適した自動化の方法を検討する必要があることも、注意点としてあげられます。
経理向けのシステムを導入する際は、「経理担当者の手間を減らしたい」「ミスを軽減したい」「経費精算を効率化したい」など、自社の目的を明確にしたうえで、その目的を達成できる機能を持つシステムを選ぶことが大切です。
また、経理向けのシステムを導入するときは、会計システムなど他のシステムとの連携がしやすいものを選ぶことをおすすめします。例えば、経費精算システムを会計システムと連携させると、経費精算だけではなく仕訳の入力も自動化できます。それぞれのシステムの機能を連携させることで、企業全体の業務効率化につながるでしょう。
顧問税理士や会計事務所とのシステム連携を考慮する
経理業務の自動化のために会計ソフトを導入する場合は、顧問税理士や会計事務所が利用しているソフトウェアとシステム連携が可能かどうかを事前に確認しておきましょう。
顧問税理士の使っている会計ソフトと連携できるソフトウェアを導入すれば、データのやりとりがスムーズになります。決算のたびにメールや郵送でデータを送る手間や、来社してもらう負担も軽減されます。さらに、クラウド型の会計ソフトなら、顧問税理士とクラウド上でデータを共有も可能です。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
