法人決算は自分でできるの?必要な知識を税理士が解説
2021/12/13更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

「個人事業主の所得税申告は何とかなるけど、法人の法人税申告は難しいから税理士に頼んだ方がいいよ」ということはよく聞く話です。とはいえ、スモールビジネスで税理士に頼むほどの資金的余裕がないというのも現実にあることです。
今回は、法人決算を自分だけでできるのか、そのためにはどのような知識と方法があればできるのかを見ていきましょう。
POINT
- 間違いに気づくためにも、最低限の簿記の知識は必要
- 申告書は数字の飛び先を覚えてしまえば何とかなる
- 不安があるときは税務署や関連団体を利用する
最低限の簿記の知識は必要
まず、法人税の計算をするためには、その会社の決算書が必要になります。規模が小さいからといって、帳簿をつけなくて済むということはありません。オーナー社長だけの一人会社だとしても、”法人”は社長とは別の「法律で”人”とされている存在」ですから、しっかり帳簿をつけて、法人のお金と社長のお金は区別しなければならないのです。
この帳簿づけはそもそも法人税法以前に会社法で義務づけられているもので、帳簿は10年間保存しておく必要があります。これは法人税法の原則7年間よりも長いのですね。
さて、難しそうに感じる帳簿づけも会計ソフトを利用すれば簡単にできます。しかし、取引を入力して集計された結果に問題ないかどうかを判断するには、やはり最低限の簿記の知識が必要になります。
例えばよく見かける間違いが、ガソリン代を入力する際に「車両運搬具」という項目を選んで登録しているケース。集計結果は貸借対照表に「車両運搬具」として表示されますが、これは経費になっていなくて、ひたすらクルマを買っているという意味になっています。
しかし、簿記の知識がなく、その数字を見ても気づかないまま見過ごしてしまっていることが多いですね。少なくとも、経営者として数字を見るうえでも役に立ちますので、簿記3級くらいの感覚は持っておいて損はないでしょう。
数字の飛び先を押さえること
個人事業主の所得税の確定申告の場合、青色申告決算書や収支内訳書は事業に必要な部分を記載して事業所得(儲け)を計算しています。つまり、確定申告書に記載する数字は青色申告決算書などの数字そのものになりますね。
ところが、法人税の申告の場合は、別表という何枚もの書類を数字が飛び交います。というのも、法人の決算書は税務上での○×は関係なく、法人の行った取引がすべて記帳されているためです。
法人税の対象になる所得(儲け)は決算書の税引き後利益をスタートとして、税務上で認められない費用をプラスしたり、計算に入れなくてよい収益をマイナスしたりして税務上の利益を計算します。この計算のために、さまざまな別表を使うのです。
最低限必要な書類を挙げると、税引き後利益を別表四「所得の金額に関する明細書」に記載するところからスタートし、別表五(一)「利益積立金及び資本等の額の計算に関する明細書」、別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」で税引き後利益からのプラスマイナスを計算、そこで計算された所得金額を基に、別表一(一)「各事業年度の所得に係る申告書」で法人税と地方法人税の税額を計算する流れになります。
様式だけをみると何をどこに書いたらよいか迷ってしまいますが、税務の上であれこれと悩むことのない小規模な法人であれば、書き入れる箇所はそんなに多くありませんのでご安心ください。ここに書いた数字はどこに飛ぶ、ということを押さえておけば大丈夫です。
ちなみに別表にどのくらいの種類があるかは以下をご覧ください。
- 参考
- 国税庁:法人税申告書一覧
※その他の主な別表
- 参考
- 国税庁:別表二 同族会社等の判定に関する明細書
- 参考
- 国税庁:別表六 所得税額の控除に関する明細書
税務署や関連団体を活用する
別表に書き入れる箇所が少ないからと言って、やはり作成したものが合っているかどうかは心配になりますよね。そういうときは、まず税務署に相談してみましょう。申告書作成のもとになる決算書を用意していけば、別表の書き方などを教えてくれますよ。
また、税務署に直接相談するのは気が引ける……というような場合は、各種団体を利用してみるのも良いでしょう。税務署管轄ごとにある法人会や、市町村単位である商工会議所・商工会などでは、定例的に税理士会に依頼して税務相談会などを開催しています。もちろん会員になることが前提ではありますが、税務だけでなく資金調達や労務なども相談できて、会員同士の交流でビジネスにつながることも期待できるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。しかし、現実問題として法人税の申告書作成は所得税の申告書より難しいです。実際には、法人税申告に関して税理士さんを頼って申告している割合は、9割近いと言われています。
初心者がひとりで行うよりは、信頼のおける税理士さんに法人決算を依頼してしまったほうがいいかもしれませんね。
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Photo:Getty Images
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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)
「宮原裕一税理士事務所」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
