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決算賞与とは?支給するメリット・デメリットや注意点などを解説

2024/02/19更新

この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

会社の業績によって臨時で支給されるボーナスのことを、決算賞与といいます。決算賞与は、一般的な夏と冬のボーナス(通常賞与)とは別に支給されるもので、支給の有無や支給額は企業によって異なります。そのため、経営者の中には、「従業員に決算賞与を支給するべきだろうか」「決算賞与と通常賞与には、どのような違いがあるのだろうか」などの疑問を持つ方も多いかもしれません。

ここでは、決算賞与の言葉の意味や通常の賞与との違い、決算賞与を支給するメリット・デメリット、決算賞与を支給する際の注意点などについて解説します。

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決算賞与とは業績に応じて支給される賞与のこと

決算賞与とは、会社の業績に応じて支給される賞与(ボーナス)のことです。業績が好調で利益が出た事業年度において、その利益を従業員に還元するために、一般的な夏と冬のボーナスとは別に支給され、企業によっては「臨時賞与」「特別賞与」「年度末賞与」などと呼ぶこともあります。

年次決算をふまえて支給の有無や支給額が決まるのが、決算賞与です。そのため、業績によっては決算賞与が支給されない年もあります。また、決算賞与を支給するかどうかは就業規則の定めにもよりますが、基本的には企業の任意なので、利益が出たからといって、必ず決算賞与を支給しなければいけないわけでもありません。決算賞与を支給するかどうかの判断や支給額などは、会社の状況や経営陣の考え方によって変わります。

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決算賞与と通常の賞与との違い

決算賞与と通常賞与の主な違いは「支給時期」と「支給額」です。

決算賞与は決算をふまえて支給される賞与なので、支給時期は必ず決算期前後です。特に、決算賞与を当期の損金(経費)として計上するためには、支給額を対象になるすべての従業員に対して決算日までに個別に通知したうえで、かつ決算日の翌日から1か月以内に支給することが条件となります。一方で、通常賞与の支給時期は、会社が定めた規定によって異なりますが、民間企業の場合は夏と冬の2回支給されることが一般的です。

また、決算賞与と通常賞与では、支給額の決め方にも違いがあります。決算賞与の支給額を左右するのは、決算時点での会社の業績です。それに対して通常賞与の支給額は、各企業の就業規則や賃金規程に定められた方法で算出し、一般的には個人の業務実績や人事評価、基本給などによって金額が決まります。

決算賞与の支給日と時期

当期の損金に算入できるよう、決算賞与の支給は、決算日の翌日から1か月以内に行います。

そもそも決算賞与は、当期の決算処理が終わって利益が確定してから支給の有無や支給額が決まるため、支給日が決算日の後、つまり翌期になることも珍しくありません。

しかし、決算賞与の支給額を対象になるすべての従業員に対して決算日までに個別に通知したうえで、事業年度終了の日(決算日)の翌日から1か月以内に支払った場合は、税法上、当期の損金に算入することが認められています。

例えば、3月末決算の企業なら4月30日まで、9月末決算なら10月31日までが、決算賞与の支給時期になります。決算賞与の支給日が決算日の翌日から1か月を超えた場合は、当期の損金に算入できず、翌期の損金となってしまうため注意しましょう。

決算賞与の対象者と金額の決め方

決算賞与の対象者は、基本的に、決算日時点で在籍している従業員です。支給対象者の範囲は、企業が任意で決めることができますが、トラブルを避けるために社内規程などで定めておくことが一般的です。正社員が支給対象となるケースが多いものの、企業によっては、パートやアルバイト従業員などを含めることもあります。また、就業規則などに規定がなければ、業績に特に貢献した従業員など、一部の人だけに支給しても問題はありません。

なお、役員に対して決算賞与を支給した場合、その金額は損金不算入となります。役員の決算賞与に当たるものが、「業績連動給与」という会社の利益に応じて支払われる役員報酬ですが、業績連動給与を損金計上するには、下記の3つの条件を満たす必要があります。

業績連動給与を損金計上するための条件

  • 報酬の算出方法が所定の指標を基礎とした客観的なものである
  • 有価証券報告書に記載・開示している
  • 通常の同族会社以外である

業績連動給与を利用するには、所定の指標を基に報酬額を算定し、有価証券報告書に記載する必要があるため、有価証券報告書を作成していない非上場の会社は適用できません。決算賞与の金額の決め方も、企業によって異なります。余った利益を一律で配分するケースや、勤続年数や部署または個人の業績によって決めるケースなどさまざまです。

決算賞与のメリット

決算賞与は、従業員にとっては臨時収入なので、支給されればうれしいものです。さらに、企業にとっても、決算賞与を支給することで下記の3つのメリットがあります。

要件を満たせば損金算入できる

決算賞与は、所定の要件を満たせば、当期の損金として計上することが可能です。決算賞与を当期の損金とするためには、下記の3つの要件をすべて満たす必要があります。

決算賞与を当期の損金にするための要件

  • 1.
    決算日までに、決算賞与の支給対象となるすべての従業員に対して、支給額を個別に通知している
  • 2.
    通知したすべての従業員に、決算日の翌日から1か月以内に、通知した金額どおりの決算賞与を支給している
  • 3.
    決算賞与の支給額について、当期において損金として経理処理をしている

決算賞与を当期の損金にできれば、そのぶん課税所得が減るため、節税対策につながります。なお、「実際の支給額が事前に通知した金額とは違う」「事前に告知した従業員全員に決算賞与を支給しなかった」「決算日の翌日から1か月を超えて決算賞与を支給した」など、上記の要件を1つでも満たさなかった場合は、決算賞与を当期の損金とすることはできないため注意しましょう。

税金対策になる

決算賞与は、節税対策という点で企業にとって大きなメリットがあります。法人税が課せられる課税所得は、売上収入や売却収入などの益金から売上原価や販売費、損失費用などの損金を差し引いて求めます。前述した損金算入の要件を満たし、決算賞与の支給額を当期の損金に含めることができれば、そのぶん課税所得が減少し、法人税等の納税額を少なくすることが可能です。

業績が好調で多くの利益が出ると、それに伴って法人税等の納税額も大きくなります。そのような場合に、利益の一部を決算賞与として従業員に還元すれば、課税所得を減らして税負担を軽減できます。

従業員のモチベーション向上につながる

決算賞与は、従業員のモチベーションアップにつながるというメリットもあります。これまで解説したように、決算賞与は会社の業績に応じて支給される臨時ボーナスです。従業員からすれば、自分たちのがんばりによって業績が向上し、それが決算賞与という目に見える形で還元されるということです。

「利益をきちんと従業員に還元する」という会社の姿勢を示すことで、「もっとがんばろう」という気持ちにもなるでしょう。従業員のモチベーションが上がることで目標達成への意欲も高まり、離職率の低下や生産性の向上なども期待できます。

決算賞与のデメリット

メリットがある一方で、決算賞与には下記のようなデメリットもあります。決算賞与を支給する際には、メリットだけではなく、デメリットについてもきちんと把握しておきましょう。

会社のキャッシュが減る

決算賞与を支給すると、そのぶん会社のキャッシュが減るというデメリットがあります。さらに、決算賞与にも、通常の給与や賞与と同様に、事業者負担の社会保険料が発生する点にも注意が必要です。「節税対策になるから」と、無計画に多額の決算賞与を支払ってしまうと、資金繰りの悪化を招きかねません。

決算賞与を支給するときには、企業内部の資金の減少を念頭に置き、無理のない金額を設定することが大切です。特に、決算日から2か月後には、法人税や法人住民税、法人事業税、消費税の申告・納付期限があります。「決算賞与を支給したために納税のためのキャッシュが足りない」などということがないようにしましょう。

支給できなかった場合、従業員のモチベーションが下がる

決算賞与は従業員のモチベーションアップにつながりますが、裏を返せば、決算賞与がない年は従業員のモチベーションを下げてしまうデメリットにもなります。

一度決算賞与を受け取ると、「毎年もらえる」と考える従業員もいるかもしれません。業績が思わしくなく、決算賞与の支給がなかった場合、従業員のモチベーション低下や不満を招いてしまう可能性があります。このような状況を避けるためには、決算賞与の支給基準を定め、あらかじめ従業員に周知しておくと良いでしょう。

企業が決算賞与する際の注意点

決算賞与の支給にあたっては、上述したメリット・デメリットの他にも、知っておきたいいくつかの注意点があります。

特に、決算賞与を当期の損金として計上したい場合は、下記の3点に注意しましょう。

企業が決算賞与を支給する際の注意点 支給通知は書面で行う 決算日の翌日から1か月以内に支給する 支給は現金振り込みにする

支給通知は書面で行う

決算賞与を当期の損金とするには、決算日までに支給額を通知することが要件の1つになります。この際の支給通知は、書面で行うことが大切です。

税法上は、決算賞与の支給通知の方法が明確に定められているわけではありません。そのため、「口頭やメールでの通知でも問題ないのでは?」と考える方もいるでしょう。

しかし、口頭やメールでの通知では、「対象の従業員にきちんと通知が届いているか」「いつ通知したか」「通知したとおりの支給額が支払われているか」などを客観的に証明することは、容易ではありません。そのため、支給通知を行う際には、書面で決算賞与通知書を作成し、従業員からサインや確認印を受けたうえで、控えを保管しておくのがおすすめです。もしメールで通知をする場合は、各従業員に受領した旨の返信を求めるなど、通知が届いていることを確認しておくことが大切です。

決算日の翌日から1か月以内に支給する

前述したように、決算賞与を当期の損金とするには、決算日の翌日から1か月以内に支給することが前提となる点に注意が必要です。

支給日が決算日翌日から1か月を超えてしまうと、当期の損金には計上できず、翌期の費用として扱われることになってしまいます。当期の損金に計上できなければ、当然のことながら、当期の節税対策にはなりません。「決算賞与を損金算入して当期の課税所得を減らしたい」と考えている場合は、必ず決算日の翌日から1か月以内に支給しましょう。

なお、決算賞与にかかる社会保険料については、損金算入できるタイミングが変わってくるため注意が必要です。事業者負担分の社会保険料の損金算入時期は、その保険料の計算の対象となった月の末日が属する事業年度です。そのため、決算日を過ぎてから支給した決算賞与の社会保険料は、当期ではなく翌期の損金として計上することになります。もし、社会保険料も当期の損金として計上したい場合は、決算日までに決算賞与を支給する必要があります。

支給は銀行振り込みにする

決算賞与の支給方法は、支給日が明確にわかる銀行振り込みにしましょう。前述したように、決算賞与が当期の損金として認められるためには、「対象者に対して支給額を個別に通知している」「決算日の翌日から1か月以内に支給すること」「通知どおりの金額が支給されていること」が条件になります。

銀行振り込みなら、支給日や支給額が記録として残るため、損金算入の要件を満たしているという客観的な証拠になります。もし、現金で手渡しをする場合は、必ず全員から領収書を受け取るようにしてください。

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決算賞与のメリット・デメリットや損金計上の条件を知っておこう

決算賞与は、会社の業績に応じて支給される賞与です。決算賞与を支給するかどうかは企業の任意であり、業績の状況や企業の方針などによって、支給の有無や金額は変わります。決算賞与を支給すると、節税対策や従業員のモチベーション向上などのメリットがありますが、一方で、会社のキャッシュが減るなどのデメリットもあることを知っておくことが大切です。

また、決算賞与を当期の損金として計上するには、事前通知や支給時期などの満たすべき要件があります。決算賞与に関する税法上のルールについて不明点がある場合は、事前に税理士に相談すると良いでしょう。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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