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税務会計とは?財務会計・管理会計・企業会計との違いや注意点を解説

企業が事業を運営するうえで欠かせない会計のことを「企業会計」と呼びます。企業会計は、その目的によって分けられ、種類は「税務会計」「財務会計」「管理会計」の3つです。このうち税務会計とは、企業が税金を計算し、正しく申告するために行う会計のことを指します。企業は、事業年度ごとに法人税等の申告を行う義務があるため、正確な税務会計の実施が不可欠です。また、税務会計と財務会計、管理会計は、基準として設定されているルールが異なるため、それぞれの違いを正しく理解しておかなければなりません。
本記事では、税務会計と財務会計・管理会計・企業会計との違いの他、税務会計の業務内容、税務会計を行ううえでの注意点についても解説します。

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税務会計とは主に税金計算を目的とした会計のこと

税務会計とは、企業が納める税金を計算するために行う会計処理のことです。法人は、事業活動で得た所得を基に納めるべき税額を計算し、国や地方自治体に申告・納付しなければなりません。申告が必要な基本的な法人の税金は、法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、消費税の5つで、このうち代表的なものが法人税です。例えば、法人税の計算をする際には、益金から損金を差し引いた課税所得を基に、納めるべき税金の額を求めます。この税金の計算と申告のために用いられるのが、税務会計です。
税務会計では、課税の公平性が重視されます。課税所得を算出する際の益金や損金の範囲は、法人税法新規タブで開くをはじめとする税法で規定されており、実際に発生した収益や費用とは一致しないこともあります。これは、企業の個別の状況によって、課税される税金の条件が変わらないようにするためです。つまり、税法のルールに則って税金を計算し、法人税などの申告書を作成・提出するために行うのが、税務会計になります。

会計とは財政状態などを利害関係者に報告すること

会計とは、企業や公的機関が、事業の収支などのお金の流れを記録し、その結果明らかになった財政状態などを利害関係者に報告することです。ここでいう利害関係者とは、主に企業内部の経営者や管理職・従業員の他、株主、金融機関、取引先、官公庁、地域住民など、その組織と利害関係が生じるあらゆる人や組織を指します。
会計にはいくつかの種類があり、「誰に、何のために報告するか」によってルールや形式が異なります。例えば、前述した税務会計の目的は、税金を正しく申告して納めることです。税務会計によって算出した課税所得は、企業の利益とは必ずしも一致しません。このような税法上の課税所得と会計上の利益のずれを調整する会計処理を「税効果会計」といいます。
上場企業などには税効果会計の適用が義務付けられており、会計上の収益・費用から利益を算出した後に、税法上の益金・損金とのずれを調整して税額計算を行う必要があります。その一方で、非上場の中小企業などは、原則として税効果会計の適用義務はありません。そのため、中小企業では税法上と会計上のずれを生じさせないために、あらかじめ税務会計のルールに則り会計処理を行っているケースも少なくありません。

税務会計と財務会計との違い

財務会計は、「社外の利害関係者向けの会計」を指します。税務会計の目的が税金の計算と申告であるのに対して、財務会計の目的は、決算日時点における企業の財政状態と経営成績を、外部の利害関係者に開示・報告することです。ここでいう利害関係者とは、主に株主や金融機関、取引先、投資家、債権者、税務署などが該当します。
財務会計で開示する企業の財政状態とは、企業が保有する資産や負債など、財産の状況のことです。また、経営成績とは、その会計期間(事業年度)でどのくらいの利益が出たかを指します。報告にあたっては、定められた会計基準に基づいて会計を行い、貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成して外部に開示することが必要です。開示された情報を基に、株主なら株式の保有や売却を検討したり、金融機関が融資の可否を判断したりします。
規模や業種を問わず、すべての企業は、財務会計によって会計期間ごとの損益をまとめ、決算書を作成しなければなりません。この一連の作業が決算です。ただし、前述したように、税効果会計が義務付けられていない中小企業においては、税務会計のルールに則り財務会計を行うケースもあります。

税務会計と管理会計との違い

管理会計とは、自社の現状を把握するために実施する「社内向けの会計」のことです。管理会計の主な目的は、経営者などが意志決定に役立てるために、企業内部に情報を提供することです。経営者や管理者は、管理会計の情報を基に経営分析や意志決定、事業の改善施策などを行います。税務会計や財務会計とは異なり、管理会計には法律による規定や決まった会計基準はなく、実施するか否かも各企業の任意です。また、管理会計の情報を外部に公表したり提出したりすることもありません。管理会計を行う際、経営状況を管理するために必要な情報については、企業ごとに独自のルールによって運用されています。例として、経営戦略や長期的な経営計画策定のための抽象的な情報、各部門の予算・目標といった具体的な情報などがあります。

税務会計と企業会計との違い

企業会計とは、主に営利企業における会計のことです。企業会計は、報告する目的や対象によって、税務会計、財務会計、管理会計の3つに分けられるため、税務会計は企業会計の一部となります。3つの会計それぞれの違いは以下のとおりです。

会計の種類ごとの違い

企業会計
税務会計 財務会計 管理会計
目的 税金の計算と申告 財務状況や経営状況を利害関係者に報告 経営管理に役立つ情報の提供
基準 税法 企業会計基準 企業ごとに異なる
対象期間 事業年度(基本的には会計期間と同じ) 会計期間(基本的には事業年度と同じ) 任意(年・月・週など)
開示先 税務署(国)や地方自治体 利害関係者(株主や債権者、投資家など) 自社の経営者・管理者
作成書類 法人税などの申告書 決算書(貸借対照表や損益計算書など) 任意(資料やレポートなど)
義務 必須 必須
(中小企業などは税務会計のルールに則り財務会計を行うことも可能)
任意

法人における税務会計

企業にとって税務会計は、法人税などの申告・納付のために必ず行わなければならないものです。会社法により、すべての企業は事業年度ごとに決算を行い、決算書を作成することが義務付けられています。決算書とは、企業の経営成績や財政状態を明らかにするために作成される書類のことです。正式には「財務諸表」や「計算書類」と呼ばれます。作成した決算書は、会社法で定められた機関による承認を受ける必要があり、株式会社の場合は原則として株主総会で開示されます。その後、法人は確定した決算に基づいて納めるべき法人税等の計算を行い、税務署などに申告が必要です。

決算書の作成にあたっては、当期の収益や費用をまとめ、企業の利益を算出します。このときに用いるのが財務会計です。その一方で、決算の後、税務申告を行うには、税務会計による処理が必要になります。財務会計と税務会計では、収益や費用の範囲、認識方法が異なるケースがあります。例えば、ある設備について、A社は頻繁に使うので耐用年数を3年、B社ではそれほど使わないので耐用年数を6年と考えたとしましょう。耐用年数は企業の実態に基づくため財務会計上は問題ありませんが、税金の計算をするときに企業がそれぞれ違った耐用年数を設定していると、課税の公平性が崩れてしまいます。そのため、税務会計では、減価償却資産の耐用年数が決められています。
前述したように、税効果会計が義務付けられていない中小企業は、税務会計のルールに則り財務会計を行い、決算書を作成することも可能です。ただし、税務会計によって導きだした所得は、企業の利益を正しく反映しているとは限りません。自社の実態を把握し、決算書で正確な財務情報を開示するためには、税務会計だけではなく財務会計も実施することが望ましいといえます。
なお、税務会計と財務会計をそれぞれ行う場合でも、別々に帳簿を作成するケースはほとんどありません。一般的には、財務会計のルールで作成した帳簿を基に、税法上の規定に合わせて調整を行い、法人税などの計算をするという流れになります。

税務会計の主な業務内容

ここでは、税務会計の主な業務内容について、具体的に解説していきます。財務会計に基づいて日々の取引を記録した帳簿を基に税金の計算を行い、税務会計のルールに当てはめて財務会計の数字を調整して税務申告書を作成するというのが基本的な流れになります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 帳簿付けを行う

会計の基本は日々の取引の記録です。会計帳簿にはさまざまな種類がありますが、そのうち「仕訳帳」と「総勘定元帳」は、会社法で「会計帳簿」として作成が義務付けられています。仕訳帳は、取引内容を「借方」と「貸方」に区分し、適切な勘定科目へ仕訳した会計帳簿です。日々の取引を発生順に記載し、お金の流れを把握する目的で作成されます。また、総勘定元帳は、仕訳帳から転記して、すべての取引を勘定科目ごとに分類した帳簿です。決算の際は総勘定元帳を基に損益計算書や貸借対照表を作成するため、帳簿の中でも特に重要だといえます。
月末や期末にまとめて記帳をしようとすると、作業量が膨大になるうえ、ミスも起こりやすくなります。領収書や請求書、仕入伝票などを確認しながら、日ごろから取引をしっかり記帳することが大切です。法人の決算と確定申告を行うには、当期の記帳をすべて完了させる必要があります。日々の取引入力をすべて行い、未確定のものがない状態にしましょう。記帳が完了したら、決算日時点の帳簿上の残高と、実際の残高が一致しているかを確認します。

2. 税金の計算を行う

帳簿の内容を基に決算書を作成し、法人税をはじめとする税金の計算を行います。税金の計算にあたっては、益金から損金を差し引いて課税所得を求める必要があります。益金と損金は税法上の考え方であり、財務会計における収益や費用と金額が一致しないこともあるため注意しましょう。実際には、収益から費用を引いた利益に、法人税法の規定に基づく税務調整を行ったものが、課税される所得となります。法人税の税額は、課税所得に法人税率を掛け、そこから税額控除を差し引いて算出します。なお、税金の計算は非常に複雑なため、法人の税務申告は税理士に依頼することが一般的です。

3. 税務申告書の作成を行う

決算書を基に税務申告に必要な申告書を作成し、法人税、法人住民税、法人事業税、消費税の申告を行います。作成する書類は、申告する税金の種類によって異なります。例えば、法人税の場合は、法人税申告書の他、勘定科目内訳明細書や法人事業概況説明書などの作成が必要です。
各種税金の申告と納付の期限は、申告期限や課税期間について特別な届出などを行っていなければ、事業年度終了日の翌日から2か月以内とされています。なお、税金の種類によって申告先が異なるため注意しましょう。

税務会計における注意点

税務会計を行う際には、主に2つの注意点があります。適切な会計処理のためにも、以下の点に注意しましょう。

税制改正をチェックする

税に関する法令は、毎年のように改正が行われています。税務会計の改正内容を見落とすと、税金の計算や申告に誤りが生じます。常に正確な情報を把握するために、国税庁や税理士会のWebページ、専門誌などを定期的にチェックするといいでしょう。

税務会計で経営状態を判断しない

税務会計の情報は、あくまで税法に則った会計処理の結果です。課税の公平性は維持されていても、企業の実態を的確に表しているとは限りません。特に、中小企業の場合は税務会計のルールに基づいて決算書を作成しているケースが多々あります。しかし、税務会計によって作成された決算書には、財務会計なら計上される収益や費用が反映されていない可能性があります。そのため、税務会計だけでは財政状態と経営成績を正しく判断することはできません。自社の経営状況を判断する際には、税務会計だけでなく、財務会計の情報や経営分析などを含め総合的に考慮することが大切です。(ただし、実際には中小企業の会計についてはそれほど複雑な論点がないため、税務会計と財務会計の際はそれほど多くないため、税務会計の数字で経営判断をしても差し支えないケースも多いといえます。)

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税務会計とは、税金の正しい計算と申告のために行う会計処理です。また、企業が行う会計には、税務会計の他にも、外部の利害関係者に企業の財政状態などを報告する財務会計や経営状況を社内で管理するための管理会計があります。いずれにしても、会計業務の基本は日々の取引の記録です。会計業務を適正かつ効率的に進めるには、会計ソフトの利用をおすすめします。「弥生会計 Next」なら、財務会計による帳簿をスムーズに作成でき、貸借対照表や損益計算書といった決算書も自動で作成されます。便利な会計ソフトを活用して、会計業務の効率化を目指しましょう。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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