フリーランスとは?どうやったらなれる?必要な準備や手続きを解説

2023/08/25更新

この記事の執筆者柳原つつじ

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働き方が多様化するなか、企業や団体などの組織に属さずに「フリーランス」として働くスタイルが、広がりを見せています。

フリーランスは会社員と比べて、働き方にどんな違いがあるのでしょうか。また、フリーランスになるためにはどうすればよいのか、注意点とともに解説していきます。

POINT

  • フリーランスとは「企業や団体に所属せずに収入を得る人」のこと。
  • 保険や年金など、フリーランスだからこそ気をつけなければならないことがある。
  • 個人事業主として事業を始める際は「開業届」を税務署に提出する。

「フリーランス」とは?

フリーランスとは、企業や団体として仕事を得るのではなく、個人として仕事を得て働くことを言います。ただし、法的な根拠はなく、実績の証明も不用です。極端に言ってしまえば、誰でもいつからでも「フリーランス」と名乗ることができるのです。

また、会社に所属しながら、フリーランスとしての活動を行うこともできます。いわゆる「副業としてフリーランス活動をする」形式です。副業への法的な規制はありませんが、会社の規約に抵触しないかどうかは、把握しておいた方がよいでしょう。

フリーランスの語源と意味

今やすっかり「自由な働き方」という意味で使われるようになった「フリーランス」という言葉ですが、語源は中世ヨーロッパにまでさかのぼります。

特定の主君を持たず、自由契約で諸侯に雇われた兵のことを「自由な槍」(freelancer)と呼んだことが、その語源とされています。そこから、企業や団体に所属することなく、収入を得る人のことを「フリーランス」と呼ぶようになりました。

そんなフリーランスの意味を踏まえたうえで、働き方の特徴から解説しましょう。

フリーランスの働き方の特徴

最たる特徴は自分で営業し、仕事を探すことです。フリーランスが結ぶ仕事の契約については「単発の案件ごと」が多いでしょう。依頼を受けたら、見積りを出し、その案件に関する契約が成立してから、実務という流れが基本です。報酬の支払いパターンは取引先により異なりますので、トラブル防止のためにも契約時にきちんと確認しておきましょう。

また、フリーランスのメリットとして働く場所や時間の融通が利くことが挙げられます。なかには場所や時間が指定される仕事もありますが、その仕事を引き受けるかどうかも、自分で判断して決められるのが、フリーランスという働き方です。

デメリットとしては、能動的に仕事を得るために自分から行動しないと稼ぎを得られないため、会社員に比べると安定しないということです。仕事を得るための営業力が求められます。

フリーランスとしてより有利に働くために、個人事業主になろう

副業としてではなく、継続的な事業として、フリーランスで働くなら、開業届を出して「個人事業主」になるほうが多くのメリットを受けられます。法人との違いも含めて説明していきます。

法人登記の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

フリーランスと個人事業主の違いは?

「フリーランス」は働き方についての呼称ですが、「個人事業主」は個人で事業を営むために開業届を提出している人の税法上の呼び名です。個人事業主の定義は「法人ではない個人が独立して、仕事を反復継続していること」。フリーランスとして働いている人が税務署に開業届を出すと、税務上「個人事業主」に分類されます。

また、さまざまな融資や補助金、助成金を受ける場合にも原則的に「個人事業主であること」が条件となります。そして、屋号での銀行口座開設ができるため、社会的信用を得られやすいのもメリットの一つです。

ちなみに「自営業」も社会的な呼び名です。自ら事業を営んでいるという意味で、個人事業主は自営業の枠組みに含まれ、自ら法人を立ち上げた場合も自営業に含まれます。

フリーランスで法人成りすることもできる?

フリーランスでも法人設立は可能です。最初から法人としてスタートもできますし、個人事業主として軌道に乗ってきてから法人成りすることも可能です。

法人には株式会社や合同会社などがあり、個人事業主との最も大きな違いは、社会的信用の高さです。さらに、資金調達がしやすく、節税対策ができるのも法人の魅力です。

その一方で、法人は経営が赤字でも法人住民税均等割を負担しなければなりません。また、法人化するには、登記申請という煩雑な法的手続きが必要となります。

フリーランスに向いている人は?

取引先での常駐などではなければ通勤がなく働く時間も自分次第という自由さは、高い自己管理能力が求められる、ということでもあります。

また、収入の不安定さがゆえに、将来の不安にさいなまれることもあるかもしれません。そんなときにストレスの原因を分析し、気持ちを切り替えて対処できる人はフリーランスに向いているでしょう。

フリーランスとして働くのに必要な環境づくり

フリーランスでも、契約によって取引先に請負常駐型として働く道もありますが、そうでなければ働きやすい環境づくりを自分で行う必要があります。

自宅と別に事務所を借りる方法もありますが、家賃や光熱費などの負担が大きいので、収入が安定するまでは、自宅を事務所とした方が無難でしょう。いわゆる「自宅兼事務所」です。

フリーランスとして働く前に確認しておくべきこと

会社勤めを経てフリーランスとして独立する場合もあれば、会社勤めをしながらフリーランスとしての活動を行う場合もあるでしょう。双方の場合のフリーランスとして働く前に確認しておくべきことについて解説します。

会社勤めをしていて、退職後フリーランスとして独立する場合

この場合、社会保険や年金などにおいて準備することがあります。詳しく見ていきましょう。

社会保険

国民健康保険に加入
日本では「国民皆保険」を採用しているため、原則すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。国民健康保険は、地方自治体が運営している健康保険です。ほかの公的医療保険に加入しない限り、会社を退職したら退職日の翌日から14日以内に、国民健康保険に加入しなければなりません。
健康保険の任意継続

国民健康保険以外の選択肢として、会社員時代の健康保険に引き続き加入することも、2年間に限って可能です(「健康保険の任意継続」)。退職前に健康保険の被保険者である期間が2カ月以上あれば、退職後も勤務先の健康保険に2年間にわたって継続して加入することができます。

ただし、会社員の頃よりも負担する額は増えます。会社と折半だった健康保険が、フリーランスになると全額自己負担になるからです。それでも国民健康保険より安く抑えられることがあります。

さらに、任意継続の場合は、被保険者1人分の保険料で、従来通り、扶養家族に健康保険が適用されるというメリットがあります。扶養家族がいる場合は、まずは2年間の任意継続を選ぶとよいでしょう。

業種によっては国民健康保険組合への加入も

国民健康保険組合とは、同種の事業や業務の従事者で組織されている団体のことです。医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、理容師・美容師、建設業界など、様々な業種の組合があります。

例えば、文芸、美術や著作活動などでフリーランス活動を行うのであれば、文芸美術国民健康保険文芸美術国民健康保険を検討してもよいかもしれません。国民健康保険組合に所属するメリットは、収入にかかわらず保険料が一定であることです。

自分が従事する業種について一度調べてみるとよいでしょう。

年金

フリーランスになると、健康保険だけではなく年金についても、会社員時代とは大きく異なります。将来設計にもかかわってくるので、よく検討するようにしましょう。

国民年金
会社員からフリーランスになる場合、厚生年金から脱退して、国民年金に切り替わることになります。健康保険のように任意継続のような仕組みはありません。配偶者の扶養に入る場合を除いて、必ず切り替えの手続きを行いましょう。
国民年金基金

会社員が加入する厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される年金です。そのため、フリーランスになり、国民年金にのみ加入している場合は、老後に年金として受け取る額が、厚生年金の加入者よりも、少なくなってしまいます。

そこで、フリーランスや個人事業主のための、国民年金に上乗せして加入できる公的な年金制度が「国民年金基金」です。

掛金は全額が社会保険料控除の対象となるため、確定申告で所得税と住民税が軽減されます。また、途中で口数を変更しない限り、加入時の掛金が払込期間終了まで変わらないのも国民年金基金の特徴です。

ただ注意点として、一度加入すると会社員になり、厚生年金に入るなどしない限り、途中で任意の脱退はできません。下記のiDeCoや付加年金と合わせて検討するようにしましょう。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)

個人型確定拠出年金のiDeCoとは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金のことです。積立金額がすべて所得控除の対象で、所得税や住民税が節税できるほか、運用で得た定期預金利息や投資信託運用益は非課税となります。

受け取る際も、「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象となるなど、iDeCoは税制面で大きなメリットがあります。ただし、あくまでも老後のための資金形成なので、原則60歳まで引き出すことができません。

また、iDeCoは掛金を運用する金融商品を自分で選べる半面、投資なので元本割れのリスクがあることも、頭に入れておいてください。

付加年金

国民年金だけでは不安な人に向けて、付加年金という年金制度もあります。月々の定額保険料に付加年金として月額400円をプラスして納めることで、将来に受け取る年金の額を増やすことができます。

付加年金は、保険料全額が所得控除の対象となり、2年で納付した保険料のもとが取れます。実質的に68歳以降に受け取れる増額分は、すべてプラス分となり、後は長生きする分だけ得をすることになります。

ただし、国民年金基金に入っている人は加入できません。また、給付は定額で、物価や賃金の上昇とは連動していない点にも注意してください。

クレジットカードやローン

フリーランスは、収入の不安定さから、クレジットカードの審査が通りにくくなることがあります。退職する前の会社員のうちにつくっておくことをお勧めします。

また、住宅ローンなど高額なローンも組みにくくなる可能性があります。突発的に会社を辞めてしまうことなく、計画的に独立するようにしましょう。

会社勤めをしていて、副業でフリーランスとして活動する場合の注意点

会社勤めをしながら、フリーランスとしての活動する場合は、必ず就業規則を確認しましょう。副業への法的な規制はありませんが、就業規則で副業禁止が謳われている場合は、副業が発覚したときに、会社員としての不利益をこうむる可能性があります。会社に事前に相談をして、許可をもらっておくことが理想です。

また、会社員であっても、開業届を出すことはできます。ただし、会社を辞めた際に失業保険を受給できないので注意しましょう。なお、開業届を出さなくとも確定申告はしなければなりません。毎年、忘れないようにしましょう。

副業の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

扶養に入っている場合

扶養に入っている場合は、開業届を出すことで、扶養者の社会保険や控除など扶養を外れてしまう可能性があります。あくまでも扶養に入り続けることが前提であれば、家族で話し合うことはもちろんのこと、税理士などの専門家に相談してみましょう。

フリーランスになってからすべきこと

フリーランスになってから準備することもあります。いざというときに慌てることのないよう、ポイントを押さえておきましょう。

事業用口座の作成

フリーランスは、会社員のように決まった時期に、入金があるわけではありません。そのため、支出だけではなく入金も管理する必要があります。プライベートの口座とは別に、事業用の口座を必ず開設しましょう。個人用と事業用のお金をしっかりと区分して管理することが必要です。

会計ソフトなど、確定申告の準備

独立した場合であろうと副業であろうと、フリーランスは基本的に確定申告を行う必要があります。提出期間は原則、毎年2月16日~3月15日までの1カ月間です。

どうしてもギリギリの作業になりがちですが、経費・売上については、日々少しずつ入力した方が経営状態を把握できますし、確定申告時の手間も省けます。また、「開業費」の計上は大きな節税になります。取りこぼしのないように、最初のうちに処理しておきましょう。

収入が途絶えた場合の備え

基本的に個人事業主のフリーランスには失業保険がありません。将来に備えて貯蓄することは必須ですが、それ以外にもリスクヘッジの方法を考えておく必要があります。

中小機構が運営する共済制度「小規模企業共済」は、個人事業主などの小規模事業者が、事業を辞めたときに備えて、生活資金を積み立てておく共済制度のことです。フリーランスのための退職金制度として活用できますので、検討する価値はあるでしょう。

また、病気やケガに備えた「就業不能保険」や「がん保険」、そして、事業でトラブルが起きたときのための「損害賠償保険」も加入しておくと、いざというときに安心です。

ただ、その一方で、事業資金を手元に置いておくことも重要です。売上が確保できて、余剰資金ができてきたら、検討するとよいでしょう。

フリーランスはどうやって仕事を得るの?

前述しましたが、フリーランス自力で仕事を獲得しなければなりません。仕事を得る方法をいくつか紹介します。

前職等での知り合い、顧客から開業後も継続的に仕事を受ける

企業や団体に所属していた人が独立してフリーランスになる場合、前職での仕事をそのまま外注として続けたり、すでに持っている人脈やスキルを活かせるので、安心して仕事に取り組むことができるでしょう。

ただし、2つ注意点があります。まずは、元の勤務先とトラブルにならないようにすることです。できれば、独立する前に勤務先と事前に話し合いをして、承諾をもらっておくことは必要です。

もう1つの注意点が、独立するにあたって前職での人間関係をあてにしすぎないことです。会社員時代のツテは、あくまでもプラスアルファとしてとらえて、新規で取引先を獲得することに注力しましょう。

フリーランス向けエージェントサイトに登録する

仕事を獲得するのにフリーランス向けのエージェントサイトに登録するのも一つの選択肢です。自分の営業だけではなかなかアプローチしにくい会社ともつながれる可能性があります。

クラウドソーシングを利用する

取引先の規模を問わないのであれば、クラウドソーシングを利用して、広く営業をかけることもできます。気軽につながれるのがメリットで、長期的に付き合える取引先に出会えるかもしれません。

ただ、単価は総じて安い傾向にあるので、事業をスタートさせるきっかけとして活用することをお勧めします。

直接営業を行う

電話やメールをしたうえでアポをとり、直接営業を行うのもフリーランスが仕事を獲得するうえで有効です。個人ですべての責任を負うことになり、顧客の信頼度なども自分で見極めなければならないリスクはありますが、エージェントやクラウドソーシングのようにマージンや手数料の負担がありません。

必要なのは、資格ではなく前向きな姿勢と工夫

フリーランスとして仕事をするうえで大事なのは、「フリーランスとして稼ぐぞ!」という気持ちと、自分で仕事を取りに行く姿勢です。逆にいえば、それさえあれば特別な資格は必要ありません。

しかし、フリーランスの立場で定期的な収入を継続的に得るには、それだけでは不十分です。売上を確保する環境を整備して、仕事の工夫を繰り返すことが大切です。

「すべて自分でできる」ということは「すべて自分でやらなければならない」ということにほかなりません。自分次第ですべてが決まるのが、フリーランスの大変なところであり、また醍醐味でもあります。

思い立って独立したら、まずは法的な手続きを行い「個人事業者(主)」になること。そして、安定した事業の継続と発展に向けて、一歩一歩、確実に歩みを進めていきましょう。

photo:Getty Images

よくある質問

フリーランスと個人事業主の違いは?

「フリーランス」は働き方についての呼称ですが、「個人事業主」は個人で事業を営むために開業届を提出している人の税法上の呼び名です。

フリーランスとして働く前に確認することは?

社会保険や年金などについて確認する必要があります。国民健康保険に加入したり、前の勤務先の健康保険に継続して加入したりなどの選択肢を検討しましょう。年金についても同様に検討が必要です。詳しくはこちら

フリーランスが仕事を得る方法は?

フリーランス向けエージェントサイトやクラウドソーシングを利用できます。前職での仕事をそのまま外注として続ける方法もあるでしょう。フリーランスが仕事を得る方法について詳しくはこちら

この記事の執筆者柳原つつじ

出版社勤務を経て、フリーエディター、コラムニスト。歴史、伝記・評伝、経営、書評、ITなどを得意ジャンルとして、別名義で著作多数。ここでは、脱サラフリーランスならではの視点で、お役立ち情報をお届けしたいと思います。

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