法人登記・商業登記をオンライン(電子)申請する方法は?
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社を設立するときに必要な商業登記・法人登記は、オンライン(電子)での申請が可能です。オンラインで法人登記を行うと、法務局の窓口へ出向いて書面でやりとりする手続きが不要で、費用を抑えることにもつながります。
法人登記とは、会社の概要を法務局に登録し、公的に法人と認めてもらうための制度です。これから起業する方にとって、法人登記は避けては通れない手続きのため、申請方法や手順を知っておくことにより、起業時の時間を有効活用できるようになるでしょう。
ここでは、商業登記・法人登記をオンラインで申請する方法や手順、オンライン申請の注意点について解説します。
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法人登記のオンライン申請には2つの方法がある
法人登記(会社設立登記)のオンライン申請方法では、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」またはデジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」を利用します。それぞれの申請方法は以下のとおりです。
登記・供託オンライン申請システム
登記・供託オンライン申請システムでは、オンラインで商業登記・法人登記申請の他、登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書の交付請求などができます。
登記・供託オンライン申請システムを利用するには、原則として、登記・供託オンライン申請システムのWebサイト「ソフトウェアのダウンロード」から「申請用総合ソフト」のダウンロードが必要です。登記・供託オンライン申請システムには、専用ソフトをダウンロードせずにWebブラウザで利用できる「かんたん証明書請求」というサービスもありますが、こちらでは法人登記の申請は対象外のため申請用総合ソフトを利用する必要があります。
登記・供託オンライン申請システムを使用するには、事前に申請者情報登録が必要ですので、詳しくは法務局のWebサイト「オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)」でご確認ください。
なお、登記・供託オンライン申請システムを利用できるのは、月曜日から金曜日の8時30分から21時までです。土日や休日、年末年始の12月29日から1月3日は利用できません。登記所の受付時間は8時30分から17時15分までとなっているため、登記・供託オンライン申請システムを利用しても、17時15分より後に申請した場合は翌業務日の受付となります。
法人設立ワンストップサービス
法人設立ワンストップサービスは、デジタル庁が運営するサービスで、異なる機関に提出しなくてはいけない、会社設立に必要な行政手続きをオンラインでまとめて申請することができます。例えば、法務局への法人登記だけでなく、提出先が異なる税務署や自治体、年金事務所、労働基準監督署への申請もワンストップで行えます。利用には、代表者のマイナンバーカードや、ICカードリーダー/ライターまたはNFC対応のスマートフォン、マイナポータルアプリが必要です。
2021年より法人登記の申請ができるようになり、現在では以下のような行政手続きが可能です。
法人設立ワンストップサービスでできる行政手続きの一部
- 定款認証(株式会社のみ)
- 法人登記申請
- 法人設立届出
- 給与支払事務所等の開設等届出
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
- 電子申告・納税等開始(変更等)届出(税理士代理提出・法人開始用)
- 法人設立・設置届(都道府県)
- 法人設立・設置届(市町村)
- 健康保険、厚生年金保険新規適用届
法人設立ワンストップサービスでは、質問に「はい」「いいえ」「わからない」の3択で答える「法人設立関連手続かんたん問診・申請」があり、回答していくことで、会社設立に必要な手続きがわかる仕組みになっています。また、申請内容が異なる書類でも、共通する項目は、一度入力すれば全ての書類に反映されるため、手間を省けるというメリットもあります。
なお、法人設立ワンストップサービスは、メンテナンスによる停止時間を除き、24時間365日利用可能です。役員などが5人以内の法人は、定款など全ての添付書類を申請書と併せてオンライン送信し、登録免許税が電子納付されて補正(修正)がなければ、原則として24時間以内に登記が完了します。
オンライン申請するにはまずソフトや機器を準備しておく
法人登記をオンラインで申請する際の必要な準備と流れは以下のとおりです。
オンライン申請の流れ
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STEP1.申請書の作成やソフトの準備
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STEP2.申請データの送信
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STEP3.受付確認や補正(訂正)
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STEP4.登録免許税の納付
STEP1.では、登記・供託オンライン申請システム、法人設立ワンストップサービスのどちらを利用するか決めて、必要なソフトや機器を準備します。登記・供託オンライン申請システム、または法人設立ワンストップサービスの画面の案内に沿って必要事項を入力し、設立登記申請書に電子署名を付与します。
どちらも設立登記申請書の作成はできますが、法人登記の際には添付書類として、電子署名が付与された定款や発起人の同意書、役員の承諾書なども必要です。
設立登記申請書と添付する書類一式を準備し、電子署名を付与したら、登記・供託オンライン申請システムか法人設立ワンストップサービスのいずれかの方法で、STEP2.の申請書類のデータを送信します。
STEP3.では、送信したシステム上で処理状況や手続き完了の通知を確認します。データ送信後、法人登記の申請書類に間違いがあれば、補正(修正)の連絡がきて再提出となりますので、手続きが完了したかどうかは確認してみてください。
手続きが完了したら、STEP4.として、登録免許税を収入印紙か電子納付で納めます。電子納付の場合は、システムから納付手続きができるので、申請日から原則3日以内に納付しましょう。収入印紙で納付する場合は、納付用紙をプリントアウトして、窓口へ提出または郵送します。
さらに詳しい申請方法は、法務省のWebサイト「商業・法人登記のオンライン申請について」も併せて参考にしてみてください。

- ※法人登記に必要な書類や申請方法については以下の記事を併せてご覧ください
費用を抑えたい場合はオンライン申請を利用する
オンライン申請なら、登記申請時に必要な登録免許税も電子納付が可能で、インターネットバンキングで納付できるだけでなく、電子定款なら紙の定款に必要な収入印紙代4万円がかからず、設立費用を削減することができます。
1人会社であれば、公的個人認証サービス電子証明書を取得すれば、申請書情報および全ての添付書面情報に必要な電子署名を付与でき、添付書類も含めてオンライン申請が可能です。また、書面申請の場合は、平日8時30分から17時15分までの受付時間内に、法務局の窓口に直接出向かなければなりませんが、オンライン申請なら出向く時間や交通費などを省け、設立準備に注力しやすくなります。
これから1人で会社を設立する方は、設立手続きも事業の準備も自分で行わなくてはなりませんので、費用を抑えて、有効に時間を使うなら、オンライン申請を活用することを検討してみてください。
オンライン申請の注意点
法人登記のオンライン申請では、法務局の窓口での申請とは異なる注意点があります。申請の際には次の点に注意して進めてみてください。
株式会社の定款が認証されないと登記の申請は却下される
株式会社を設立する場合、法人登記の前に、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。2021年2月からは、オンライン申請なら定款認証と法人登記を同時に申請することができるようになりましたが、同時申請を行う場合は、申請当日に公証役場とテレビ電話による面談を行わなければなりません。面談は、事前に申請先の公証役場と日程調整のうえ、予約が必要です。
オンライン申請した当日中に定款が認証されないと、法人登記申請が却下されてしまうので予約を忘れないように注意しましょう。
システム障害で使えない場合がある
オンライン申請には、システム障害のリスクがあります。もしシステム障害が発生し、復旧が遅れた場合は、会社設立日として希望する日に登記申請ができないかもしれません。また、システムのメンテナンスやサーバーや通信環境の障害などにより、一時的に利用できなくなることもありますので、余裕を持って手続きを進めておきましょう。
会社設立手続きを手軽に行う方法
会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、自分でかんたんに書類作成ができる「弥生のかんたん会社設立」と、起業に強い専門家に会社設立手続きを依頼できる「弥生の設立お任せサービス」です。
「弥生のかんたん会社設立」は、画面の案内に沿って必要事項を入力するだけで、定款をはじめとする会社設立時に必要な書類を自動生成できる無料のクラウドサービスです。書類の作成には本サービスを利用し、申請のみを登記・供託オンライン申請システムや法人設立ワンストップサービスで行うのも1つの方法です。
なお、一定の基準を満たすと「特定創業支援等事業※」と認められ、会社設立登記時に登録免許税が減免となる特例措置を受けることができますが、「弥生のかんたん会社設立」でも減免での支払いに対応しています。
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※特定創業支援等事業の詳細はこちら
をご覧ください。
また、「弥生の設立お任せサービス」は、弥生の提携先である起業に強い専門家に、会社設立手続きを丸ごと代行してもらえるサービスです。専門家を探す手間を省ける他、電子定款や設立登記書類の作成、公証役場への定款認証などの各種手続きを依頼でき、確実かつスピーディな会社設立が可能です。会社設立後、専門家とご相談のうえ会計事務所との税務顧問契約を結ぶと、割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など行政機関への支払いは別途必要です。
オンライン申請で法人登記をスムースに行おう
法人登記のオンライン申請なら、法務局の窓口に足を運ぶ必要がなくなり、会社の設立準備で忙しい中、手続きにかかる時間や費用を削減できるのはメリットといえます。
一方で、法人登記のオンライン申請には専用のソフトやシステムを使って書面を作成するだけでなく、電子署名の付与を行うことも必要です。慣れない作業に戸惑って時間がかかったり、失敗して補正(修正)をしたりすることもあるかもしれません。余計な時間をかけないためにも、法人登記のオンライン申請を行う際には、必要な準備や操作方法を確認しておくだけでなく、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」などのサービスを併用して、書面作成を手軽にすることも検討してみてください。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。