年末調整はアルバイトにも必要?対象になる条件や必要書類などを解説
2023/11/15更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

従業員を雇用して給与を支払っている企業は、年に1度、必ず年末調整を行わなければなりません。では、従業員がアルバイトやパートの場合は、年末調整は必要なのでしょうか。特に、年収103万円以下など扶養の範囲内で働いている従業員への対応を知りたい担当者もいるかもしれません。
アルバイトやパートの年末調整は、必要なケースと不要なケースがあります。ここでは、年末調整の対象になるアルバイトの条件や、年末調整に必要な書類の他、アルバイトの年末調整をしなかった場合はどうなるのかについても解説します。
年末調整は所得税の過不足を調整する手続き
年末調整は、給与所得者の所得税の過不足を調整するために、勤務先である会社などが年末に行う手続きです。給与所得者とは、仕事の対価として勤務先から給与収入を得ている人のことで、正社員の他、アルバイトやパート従業員も含まれます。
会社員などの給与所得者の所得税は、月々の給与や賞与から源泉徴収(天引き)され、本人に代わって勤務先の会社などが納めることになっています。ただし、源泉徴収された所得税は概算であって、正しい納税額ではありません。
そこで企業は、1年間の給与が確定した時点で正しい所得税額を計算して源泉所得税との差額を求め、納めすぎていれば従業員に還付し、不足していれば追加徴収します。この一連の手続きを年末調整といいます。
アルバイトも年末調整の対象になる
従業員は正社員でもアルバイトでも、条件にあてはまれば年末調整の対象となります。まず、年末調整の対象者となる前提としては、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していることがあります。そのうえで、年末時点で会社などに在籍していることが条件です。
アルバイトでも所得税がかかるのは、給与収入が103万円を超える場合です。これは、基礎控除(48万円)と給与所得控除(最低55万円)を足した金額が103万円であり、103万円までなら所得が0ということになるからです。アルバイトで年収が103万円を超える人は源泉徴収が発生するため、年末調整の対象になります。また、年収が103万円以下でも、月収が8万8,000円以上の場合は源泉徴収が必要です。
なお、学生アルバイトの場合は、勤労学生控除(27万円)を適用すれば、年収130万円まで所得税がかかりません。ただし、給与収入が103万円を超えると扶養控除の対象から外れるため、扶養者(親など)の納める所得税額が増えます。
年収や源泉徴収の有無にかかわらず、年末に在籍しているアルバイト従業員が、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出済みである場合は、基本的に年末調整が必要だと考えておきましょう。
アルバイトで年末調整の対象にならない従業員
アルバイトの中には、年末調整の対象にならない従業員もいます。まず給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していなければ年末調整の対象となりませんが、他社で申告書を提出している人も対象外となります。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、同時に複数の勤務先に提出することはできません。そのため、アルバイトでダブルワークをしている人が、既に他の勤務先で提出している場合などは、自社での年末調整は不要です。
その他に、その年の給与総額が2,000万円を超える人、年末時点で会社などに在籍していない人、災害減免法による所得税の徴収猶予や還付を受けた人も対象外です。
働き方などで異なるアルバイトの年末調整
一口にアルバイトといっても、働き方は人それぞれです。ここからは、アルバイトのパターン別に、年末調整が必要かどうかを確認していきましょう。
アルバイトを掛け持ちしている場合
アルバイトを掛け持ちしている人の場合、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は複数の勤務先に提出することができません。そのため、2か所以上から給与を受け取っている場合は、メインの勤務先に申告書を提出し、そこで年末調整を行うことになります。
アルバイトを掛け持ちしている従業員に対しては、どこをメインの職場とするかを確認する必要があります。もし他社をメインとする場合は、源泉徴収票を発行し、自社分の収入については従業員が自分で確定申告をすることになります。なお、短期アルバイトでも、年末時点で在籍していて、その年の他社からの源泉徴収票の提出があれば、自社でまとめて年末調整を行うことができます。
年末時点では在籍していない場合
年末時点で在籍していないアルバイトに関しては、自社での年末調整はできません。年の途中で退職した場合は源泉徴収票を発行し、退職をした人に交付しましょう。源泉徴収票を受け取った従業員が自分で確定申告をするか、年末時点で別の職場で働いていれば、そこで年末調整が受けられます。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない場合
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していないアルバイトは、年末調整を受けることができません。年末調整を行うには、従業員が対象年の最初の給与支払いを受ける前日までに、申告書を提出している必要があります。所得税が源泉徴収されているのに年末調整を受けないと、従業員の税負担が大きくなる可能性があります。忘れずに申告書を提出してもらうようにしましょう。
株取引などの副収入がある場合
株取引や配当、個人事業による副収入がある場合は、所得税の課税対象ですが、年末調整には影響しません。アルバイトとは別にこのような利益があるときは、アルバイト代のみ年末調整を行い、他の所得については自分で確定申告を行ってもらう必要があります。
アルバイトの年末調整に必要な書類
年末調整を行うには、アルバイトの場合もさまざまな書類が必要です。所得税の計算では、要件を満たした場合に所得金額から一定の金額を差し引くことができる「所得控除」という制度がありますが、その適用にあたっては本人からの申告が必要です。そのため、年末調整では、所得控除の申告に関する提出書類があります。
アルバイトの年末調整に必要な書類は、主に下記の4種類です。
申告書 | 受けられる控除 | 提出する人 |
---|---|---|
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除、 障害者控除、 寡婦控除、ひとり親控除、 勤労学生控除 |
年末調整を受ける全ての人 |
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除 | 年末調整において、基礎控除、配偶者(特別)控除、および所得金額調整控除を受ける人 |
給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(給与から控除されていないもの)、 小規模企業共済等掛金控除(給与から控除されていないもの) |
左記の控除を受ける人 |
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅借入金等特別控除、特定増改築等住宅借入金等特別控除 | 左記の控除を受ける人 |
アルバイトの年末調整をしないとどうなる?
アルバイトの年末調整を行わないと、従業員が納める税金が多くなってしまう可能性があります。年末調整は、1年間の給与支払額や各種所得控除から、正しい所得税額を算出し調整する手続きです。もし年末調整をしないと控除が適用されず、所得税を納めすぎていたとしても還付(払い戻し)が受けられません。さらに、住民税の額は前年の所得額によって決まるため、所得控除が受けられないと、翌年の住民税額が高くなることも考えられます。
年末調整は給与支払者である企業の義務であり、対象になる人がアルバイトでも必ず行わなければなりません。企業が適切に年末調整を行わなかった場合、思わぬ時期に従業員から追加で徴収をしなければならない可能性も出てきます。対象になるケースとならないケースをよく確認し、正しく年末調整を行うことが大切です。
アルバイトも対象となる人は年末調整が必要
アルバイトの場合も、会社などに給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していて、年末時点で在籍している人は、年末調整の対象となります。漏れがないように一人ひとりの状況をしっかり確認しておきましょう。
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この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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