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フレックスタイム制とは?メリット・デメリットやコアタイムなどのしくみを解説

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多くの企業において、多様な働き方を実現しようとする動きが出ています。本記事では、そうした多様な働き方に結び付くフレックスタイム制のしくみや他の制度との違い、導入の目的などを解説します。どのようなメリットやデメリットがあるのかに加えて、導入時の注意点を押さえておきましょう。

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フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、始業・終業時刻や労働時間を従業員が自分の裁量で決められる勤務制度のひとつです。ただし、24時間いつでも思いどおりに働けるわけではありません。従業員は、一定の期間で働くべき総労働時間の範囲において、労働時間を決めます。

1か月の総労働時間が160時間と決められている企業を例に挙げましょう。フレックスタイム制では、従業員は1か月の労働時間の合計が160時間になれば、長時間働く日や短時間働く日があってもよく、働く時間帯も自由に設定可能です。

フレックスタイム制と時短勤務の違い

時短勤務(短時間勤務制度)は、1日の労働時間を通常より短縮して働く、育児・介護休業法に定められた制度です。時短勤務は誰でも利用できるわけではなく、子育てや介護をする人が一定の要件を満たすことで利用可能です。始業・終業時間や1日の労働時間は固定であり、自由に変えることはできません。

フレックスタイム制は総労働時間の合計が基準を満たせばよいので、例えば午前中のみ働く日を設けることもできます。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし新規タブで開く

フレックスタイム制と裁量労働制の違い

裁量労働制は、実際の労働時間ではなく労使協定や労使委員会の決議などで決めた時間を労働時間とみなす制度です。フレックスタイム制では実際の労働時間により賃金が決まりますが、裁量労働制において労働したとみなされる時間が10時間だった場合、実際の労働時間に関係なく10時間分の賃金が支払われます。

また、裁量労働制が適用対象になるのは限定された業務のみです。例として挙げられるのはシステムエンジニアやプログラマー、税理士などの業務です。

フレックスタイム制を導入する目的

近年の社会情勢の変化や価値観の多様化に伴い、従来の枠組みにとらわれない柔軟な働き方が認められるようになりました。企業は、従業員が仕事と生活を調和させ、能力を発揮することを求めています。

多様性のある働き方の実現

自分で始業・終業時間や労働時間を決めることで、従業員は柔軟かつ自由度の高い働き方ができるようになります。多くの企業がフレックスタイム制を通じて、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。

ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活が調和した状態のことです。自分で始業・終業時間を決められれば、子育てや介護、家事をしながらも無理せずに働きやすくなるはずです。それぞれの生活に合わせた多様な働き方を認めることで、企業と従業員の双方がメリットを受けられます。

通勤ラッシュの緩和

交通機関を利用する通勤において、通勤ラッシュや交通渋滞はつきものです。しかし、多くの従業員が満員電車に乗ることや交通機関の遅延などに強いストレスを感じています。

従業員の心身に大きな負担がかかれば、集中力やモチベーションの低下につながりかねません。従業員の始業・終業時間が分散すれば特定の時間帯に集中しにくくなるため、通勤ラッシュや交通渋滞の緩和が見込めます。通勤ラッシュによるモチベーションの低下も防げるようになり、従業員は心身の健康を保ちやすくなるはずです。

フレックスタイム制のしくみ

一般的なフレックスタイム制は清算期間と総労働時間、コアタイムやフレキシブルタイムで構成されます。それぞれの内容や残業代の扱いについて解説します。

清算期間と総労働時間などを決める

清算期間とは従業員の労働時間を定めた一定の期間を指し、フレックスタイム制で働くうえで必要な労務管理上の区切りです。清算期間には上限があり、法律では3か月と定められています。

清算期間を決めたら、次に総労働時間を決めましょう。総労働時間(所定労働時間)は、清算期間内で従業員が働くべき時間です。ただし、法定労働時間を超えた時間は設定できません。さらに、コアタイムやフレキシブルタイムの設定も必要です。

必ず働かなければならない「コアタイム」

コアタイムとは、従業員が必ず働かなければならない時間帯のことです。設定は任意ですが、設定する場合は労使協定で開始時刻と終了時刻を定めましょう。時間帯や設ける曜日の設定は自由であり、コアタイムに会議を行えば全員が参加できます。長すぎたり早い時刻や遅い時刻に設定すると従業員の自由がなくなるため、適切な時間設定を心がけましょう。

働く時間を選べる「フレキシブルタイム」

フレキシブルタイムは、働く時間を従業員が自由に決められる時間帯のことです。コアタイムと同様に設定は必須ではありませんが、設定する場合は労使協定で開始時刻と終了時刻を定めなければなりません。この時間帯は中抜けをしても問題なく、いつでも出退勤可能です。

フレキシブルタイムが短すぎると、従業員が自由に働けなくなるため注意しましょう。コアタイムの前後数時間に設定すると、従業員が用事や業務をこなしやすくなり、効率的な働き方につなげられます。

コアタイムのない「スーパーフレックスタイム」

スーパーフレックスタイムとは、コアタイムが設定されないフレックスタイム制のことです。従業員はすべての始業・終業時間を裁量で決められるため、コアタイムが設定されている場合に比べて自由度が高くなります。時間に縛られなくなる点はメリットですが、従業員には高い自己管理能力が期待され、企業は勤怠管理を徹底しなければなりません。

残業代は総労働時間を超えた場合に支払う

通常は、法定労働時間を超えた時点で残業代が発生します。フレックスタイム制で残業代が発生するタイミングは、清算期間が終わった時点で実際の労働時間が総労働時間を超えた場合です。また、実際の労働時間が総労働時間に満たなければ次の月に不足分を働くのではなく、賃金がカットされる場合があります。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制の導入により、企業と従業員の双方がさまざまなメリットを受けられます。自由度が高くなることでもたらされる効果について、下記で紹介します。

仕事とプライベートの両立が叶う

子育てや介護などのさまざまなライフイベントが起こる中で、仕事と両立させるのは容易ではありません。始業・終業時間を自分で設定できるようになれば、ライフスタイルに合わせた勤務が可能です。

フレキシブルタイムを活用すればライフイベントが起きた時にも対応しやすくなり、仕事とプライベートを両立しやすくなります。趣味や娯楽などにも時間を割けるようになり、プライベートの充実も見込めます。平日しか対応していない行政や銀行の窓口での手続きや、通院などもスムーズに済ませられるようになります。

残業時間の軽減につながる

1日の労働時間が決められている場合、仕事量に合わせて終業時間を調整することは不可能です。繁忙期には時間内に仕事が終わらず残業が多くなり、閑散期は仕事が早く終わっても退社できません。

フレックスタイム制ならば繁忙期は長時間、閑散期は短時間で切り上げるなど時間を調整できます。残業による負担が減り、従業員は時間を有効活用できるようになります。他方、労働時間の調整をはかり時間外労働が少なくなれば、残業代を抑えることができ、企業としてもコスト削減が可能です。

仕事の効率が上がる

フレックスタイム制により、仕事量やスケジュールに合わせて労働時間の配分や始業・終業時間を決められます。業務の進捗状況と合った時間の使い方ができるようになれば、仕事の効率向上が可能です。

また、通勤ラッシュを避けることでストレスが軽減されれば前向きに仕事に取り組めるため、生産性の向上につながります。仕事のペース配分を考える力も鍛えられますし、自分で決めた終業時間までに仕事を片付けようというモチベーションも高くなるはずです。

離職率を抑えられる

子育てや介護をする従業員は、急に休みが必要になることも多い傾向にあります。フルタイムで働くことが難しければ、仕事を続けられなくなるかもしれません。フレックスタイム制の導入により、子育てや介護があっても働く日や時間帯を調整できて、仕事と両立しやすくなります。

イベントやライフスタイルの変化に柔軟に対応できれば、従業員は安心して働けます。企業への帰属意識や信頼が高くなることで、離職率の低下につなげられるかもしれません。優秀な人材の流出を防ぐことは、企業としてもプラスです。

採用時のアピールになる

ライフスタイルや価値観の多様化により、場所や時間に縛られない働き方を望む人が増えています。そのためフレックスタイム制を導入していることは、採用時の大きなアピールポイントです。時間に融通が利き、多様な働き方を認める企業は注目されやすく、イメージや評価が高まります。

労働人口の減少が進むにつれて、人材獲得競争の激化が見込まれます。仕事とプライベートを両立し、長く働ける企業は就職希望者が増えるため、優秀な人材を確保しやすくなるはずです。

フレックスタイム制のデメリット

さまざまなメリットがあるフレックスタイム制ですが、デメリットがないわけではありません。勤怠管理や社内コミュニケーション、社外への対応などの課題があります。

労働時間の管理が複雑になる

フレックスタイム制では始業・終業時間が従業員ごとに異なるため、個別の労働時間、休憩時間や時間外労働を正確に把握しにくくなります。自分の労働時間を管理できない従業員の場合は総労働時間が不足したり、かえって残業が増えたりするかもしれません。コアタイムを設定した場合、従業員が該当する時間にきちんと働いているかどうかの確認も必要です。

労働時間の管理が複雑かつ煩雑化するため従来の管理方法では限界があり、管理する担当者の業務に支障が生じかねません。業務効率化のためには運用ルールをあらかじめ細かく規定し、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムやツールの導入も検討しましょう。

顧客や取引先への対応が難しくなる

自社がフレックスタイムを導入する一方で、顧客や取引先の労働時間が固定の場合は、相手が連絡を取りにくくなります。電話に出ない、返信が遅れることが続けば仕事に支障が生じて企業へのイメージや信頼は低下します。

打ち合わせや会議の時間をあらかじめ決めている場合は対応できますが、重要なのは緊急時の対応です。迅速な対応が不可欠なトラブル発生時に対応できる従業員がいなければ、被害は拡大します。顧客や取引先から、契約や提携を打ち切られてしまうかもしれません。このような事態を防ぐために従業員間の情報共有を徹底し、担当の従業員以外も対応できる体制を整えましょう。

社員同士の交流が希薄になる

フレックスタイム制により懸念されるのが、社内コミュニケーションの希薄化です。始業・終業のタイミングがそれぞれ異なるため、従業員同士で顔を合わせる機会が減少します。業務連絡をメールや電話だけで済ませると誤解や行き違いが生じ、ミスにつながりかねません。

正確に情報の伝達や共有が行われるように、チャットツールやWEB会議システムのようなツールを導入しましょう。コミュニケーションツールの活用によって手軽に連絡を取り合えるため、ミスの防止や人間関係構築の補完が可能です。

自己管理ができないと生産性が落ちる

フレックスタイム制で業務効率化を図れるかどうかは、従業員の自己管理能力によって決まります。決まった時間に出退社しなくてよいため、自己管理能力が低い場合はペース配分の設定やメリハリをつけることができず、時間固定の労働に比べて生産性が落ちる可能性があります。

企業側は、勤怠管理を徹底して総労働時間が不足していないか、きちんと業務をこなしているかどうかの確認が必要です。さらに従業員の成果を把握し、評価することで従業員のモチベーション維持につなげられるかもしれません。

フレックスタイム制の導入方法

フレックスタイム制を導入するには、2つの要件を満たさなければなりません。

  • 就業規則の規定
  • 労使協定の締結

就業規則を定める

フレックスタイム制を導入するには、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる旨を就業規則に明記しなければなりません。コアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合は、時間帯の記載も必要です。作成または変更した就業規則は、管轄の労働基準監督署に届け出ましょう。

労使協定を結ぶ

労使協定では、以下の基本的枠組みを決める必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイム(任意)
  • フレキシブルタイム(任意)

清算期間の起算日は、毎月何日からなのかを記載しましょう。清算期間が1か月を超える場合、管轄の労働基準監督署への届け出が必要です。

参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き新規タブで開く

フレックスタイム制を導入する際の注意点

フレックスタイム制のスムーズな運用を図るには、導入時に十分な検討と確認が必要です。従業員への通達や就業命令の可否など、注意すべきポイントを紹介します。

従業員に説明を行う必要がある

フレックスタイム制に対して、正しい知識や情報を持つ従業員ばかりとは限りません。自由で働きやすいといったイメージを持つ一方で、残業代が出ないという誤解をされる可能性もあります。

導入時には、制度の詳細についての周知を徹底しましょう。単に制度の概要を伝えるのではなく、労働時間の決め方や時間外労働・休日出勤の扱いなど、従業員が実際の働き方をシミュレーションできるような説明が必要です。疑問を解消し、制度について正しく理解してもらうことで、スムーズな運用が可能です。

フレックスタイム制に見合う仕事であるか確認する

フレックスタイム制は、すべての職種に一律に導入すべきものではありません。顧客や取引先と頻繁に連絡を取る営業部門に導入すれば、業務に支障が生じる可能性があります。また、リアルタイムでの情報共有や連携が求められる職種では、業務を進めにくくなります。

外部との連絡をあまり必要とせず、個人で業務をこなせる職種で導入すれば、大きな問題は起こらないはずです。制度の内容やメリット・デメリットを正しく理解したうえで、メリットを活かせる部署に導入しましょう。

コアタイム外の就業命令は出せない

企業が従業員に始業・終業時間を指定することは、フレックスタイム制の趣旨に反します。そのため、コアタイム外に定例会議や取引先との打ち合わせがあっても、就業命令を出すことはできません。繁忙期においても、企業が希望する時間帯に就業命令は出せない点に注意が必要です。

ただし従業員の同意があればコアタイム外でも働けるため、命令ではなく依頼をしておきましょう。コアタイム外の従業員の就業が頻繁に必要になる場合は、就業規則や労使協定にその旨を記載することを推奨します。

フレックスタイム制は給与ソフトを導入して適切に管理しよう

フレックスタイム制では仕事とプライベートの両立や効率向上が見込める一方で、勤怠管理や給与計算が複雑化します。制度のしくみやメリット・デメリットを理解し、経理上の問題を解決するためにシステムを導入しましょう。

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  • 本記事は2024年5月時点の情報をもとに執筆しています。

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この記事の監修者下川めぐみ(社会保険労務士)

社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。

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