【見本あり】源泉徴収票の書き方を項目別にわかりやすく解説
源泉徴収票は法定調書のひとつで、1月1日〜12月31日の1年間の従業員の収入や納税額、社会保険料控除などの各種控除額が記載された書類で、従業員を雇用している企業は毎年の作成と交付が義務付けられています。
源泉徴収票は確定申告や転職の際に必要となるため、計算ミスや記載漏れなく作成することが求められる重要な書類です。本記事では、毎年作成が必要な給与所得の源泉徴収票の書き方について、見本を示しながら項目別にわかりやすく解説します。
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【見本あり】源泉徴収票の書き方
源泉徴収票は、下図に示す「給与所得の源泉徴収票」の11項目を必要に応じて埋めることで作成可能です。なお、令和6年分については定額減税についても確認しておく必要があります。これは、円安等に伴う足元の物価高に対して、減税という形で目に見える支援を行う目的として、一定の条件を満たす場合に適用される減税措置であり、源泉徴収票を作成する際には、この減税が反映されるため注意が必要です。
ここからは各項目の書き方について解説します。
①支払いを受ける者
源泉徴収票の作成日現在の住所、役職、氏名とフリガナなどの本人情報を記載します。源泉徴収票は税務署提出用と従業員への交付用の2通が必要になりますが、税務署提出用のみ個人番号(マイナンバー)であり、従業員への交付用には不要です 。受給者番号は空欄でも問題ありません。
②種別
俸給や給与、賞与、財形給付金、財形基金給付金など、従業員に支払った金額の種別を記載します。
③支払金額
該当年の12月31日までに支払った、源泉徴収などで差し引かれる前の金額のことです。具体的には、給与や賞与、時間外・休日出勤・職能などの各種手当の合計額が該当します。
ただし、非課税扱いの通勤手当や出張時の旅費交通費などは含みません。
④給与所得控除後の金額
「支払金額」から「給与所得控除額」を差し引いた金額のことです。給与所得控除は、給与収入を得ている人に適用されます。
「給与所得控除額」の算出方法は下表のとおりです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円以下の場合 | 55万円 |
162万5,000円超180万円以下の場合 | 収入金額×40%−10万円 |
180万円超360万円以下の場合 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下の場合 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下の場合 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超の場合 | 195万円 |
上記のほかに、所得金額調整控除が適用される場合もあります。
所得金額調整控除とは、下記に該当する方が受けられる控除です。
該当する場合は、所得金額調整控除も含めた金額を記載します。
- 子ども・特別障害者等を有する方等
- 給与所得と年金所得の双方を有する方
参照:国税庁「給与所得の源泉徴収事務」
参照:国税庁「No.1411 所得金額調整控除」
⑤所得控除の額の合計額
給与所得控除以外の15種類の控除額の合計を記載します。適用される所得控除は従業員によって異なるので、注意が必要です。
基礎控除
合計所得金額が2,500万円以下なら誰でも適用される控除です。
控除額は以下のとおりです。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
参照:国税庁「No.1199 基礎控除」
社会保険料控除
適用されるのは健康保険料などの社会保険料を支払った(給与から控除されたものも含まれます)場合で、配偶者や親族の社会保険料も納税者と同一生計であるなら合算します。
控除額は、該当年に支払った社会保険料の合計額で上限はありません。
生命保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に適用されます。
控除額は最大で12万円となります。
参照:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
地震保険料控除
適用されるのは地震保険料を支払った場合です。
控除額は最大で5万円までです。
ほかに、「旧長期障害保険料」の支払いがある場合も、この項目で一定金額を控除します。
ただし、1つの契約で両方を支払っている場合は、いずれか一方を選択して控除金額を算出します。複数契約であれば合算可能ですが、その場合でも、控除限度額は所得税で5万円です。
参照:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
小規模企業共済等掛金控除
適用されるのは小規模企業共済などの掛金を支払った場合です。
小規模企業共済の掛金には次の3つがあります。
- 小規模企業共済法の規定で独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約の掛金(旧第二種共済契約の掛金は生命保険料控除の対象)
- 確定拠出年金法上の企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金(iDeCo)
- 地方公共団体実施の心身障害者扶養共済制度の掛金
控除額は該当年に支払った掛金の全額です。
寡婦控除
配偶者と離婚後に婚姻をせず扶養する親族がいる人、もしくは配偶者と死別後に婚姻をしていない人(夫の生死が不明の一定の人を含む)で、該当年の12月31日時点でひとり親ではなく、500万円以下の合計所得金額であれば適用される控除です。
控除額は一律27万円です。
参照:国税庁「No.1170 寡婦控除」
ひとり親控除
該当年の12月31日時点で婚姻していない人(夫の生死が不明の一定の人を含む)で、以下の3つの要件を満たすひとり親に適応される控除です。
- 事実上婚姻関係と判断できる人が存在しないこと
- 生計を一にする子(合計所得金額等48万円以下、かつ他の人と生計を一にする配偶者や扶養親族を除く)がいること
- 500万円以下の合計所得金額であること
控除額は一律35万円です。
参照:国税庁「No.1171 ひとり親控除」
勤労学生控除
納税者自身が勤労学生の場合に控除されます。その年の12月31日時点で以下の3つの要件を満たすことが求められます。
- 勤労による所得(給与所得など)があること
- 合計所得金額が75万円以下かつ勤労外所得が10万円以下であること
- 特定の学校の学生、生徒であること
控除額は一律27万円です。
参照:国税庁「No.1175 勤労学生控除」
障害者控除
納税者及び生計を一にする配偶者、扶養家族が障害者と認められる場合に控除されます。扶養控除外の16歳未満の扶養親族も適用範囲です。
控除額は27万円〜75万円と区分によって異なります。
参照:国税庁「No.1160 障害者控除」
扶養控除
該当年の12月31日(納税者が出国・死亡の際は、その出国または死亡した日)時点で扶養の16歳以上の家族がいる場合に適用される控除です。以下の要件を満たす必要があります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育の委託をされた児童(里子)や市町村長から養護の委託をされた老人
- 納税者と生計を一にすること
- 48万円以下の合計所得金額であること
- 青色申告者の事業専従者として、該当年に一度も給与の支払いを受けていないこと、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと
控除額は38万円〜63万円と扶養親族の年齢、同居の有無等で変動します。
参照:国税庁「No.1180 扶養控除」
配偶者控除
合計所得金額1,000万円以下の納税者で、以下の4つの要件を満たすと適用される控除です。
- 民法上の配偶者(内縁関係は不可)であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であること
- 青色申告者の事業専従者として、該当年に一度も給与の支払いを受けていないこと、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと
控除額は13万円〜48万円と、納税者の所得金額及び配偶者の年齢によって変動します。
参照:国税庁「No.1191 配偶者控除」
配偶者特別控除
納税者の合計所得金額が1,000万円以下であり、配偶者の合計所得金額が48万超133万円以下の場合に適用される控除です。
配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額が48万円を超えたことで配偶者控除を受けられなかった人向けの控除です。そのため、配偶者の合計所得金額以外は配偶者控除と同様の要件を満たすことが求められます。
控除額は1万円~38万円と納税者と配偶者それぞれの合計所得金額によって変動します。
参照:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
⑥源泉徴収税額
「源泉徴収税額」欄には、年末調整により確定した該当年1年間の所得税額を記載します。
所得税額とは、「所得税率」を累進税率の表に基づき適用し、住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)・定額減税を適用した後に復興所得税率を掛けて算出した金額のことです。
所得税率は、課税される所得金額に応じて5%〜45%の範囲で設定されており、累進課税の特徴として「税率と控除額が所得に応じて増減」します。復興所得税率は一律2.1%です。
なお、年末調整を行っていない場合は、該当年1年間に源泉徴収した所得税の合計額を記載します。
参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」
⑦配偶者・扶養親族の有無
次では配偶者や扶養親族がいる場合に記載する項目の解説を行います。
(源泉)控除対象配偶者の有無等
「(源泉)控除対象配偶者の有無等」欄には、以下の要件に該当する場合に〇を記載します。
- 有:合計所得金額が1,000万円以下の納税者で、生計を一にする控除対象配偶者の合計所得金額が48万円以下
- 従有:合計所得金額が900万円以下の納税者で、生計を一にする源泉控除対象配偶者の合計所得金額が95万円以下
- 老人:上記の対象者が、該当年の12月31日時点で70歳以上の老人控除対象配偶者
配偶者(特別)控除の額
「配偶者(特別)控除の額」欄には、配偶者控除もしくは配偶者特別控除の金額を記載します。
控除対象扶養親族の数(配偶者を除く)
「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く)」欄には、該当年の12月31日時点で以下に当てはまる配偶者以外の控除対象扶養親族の人数を記載します。
- 特定:特定扶養親族の人数
- 老人:老人扶養親族の人数
- その他:特定扶養親族または老人扶養親族以外の人数
ただし「従たる給与についての扶養控除等申告書」を従業員が提出している場合は「従人」の欄に人数を記載します。
16歳未満扶養親族の数
「16歳未満扶養親族の数」欄には、16歳未満の扶養親族がいる場合にその人数を記載します。
障害者の数(本人を除く)
「障害者の数(本人を除く)」欄には、該当年の12月31日時点で配偶者や扶養親族に障害者がいる場合に人数を、その中で特別障害者に該当する場合は「特別」に、それ以外は「その他」にそれぞれ人数を記載します。
非住居者である親族の数
「非住居者である親族の数」欄には、以下の要件に該当する場合に人数を記載します。
- 配偶者控除または配偶者特別控除の対象となる配偶者で非居住者
- 扶養控除の対象となる扶養親族で非居住者
- 16歳未満の扶養親族で国内に住所を有しない者
⑧社会保険料・生命保険・住宅ローン
社会保険料や生命・地震保険料、住宅ローンを納税者が支払っている場合に記載します。
社会保険料等の金額
「社会保険料等の金額」欄には、給与を支払う際に控除した社会保険料、「給与所得者の保険料控除申告書」に基づき控除した社会保険料・小規模企業共済掛金等の合計額を記載し、小規模企業共済等掛金等の金額を内書きします。
生命保険料の控除額・地震保険料の控除額
「生命保険料の控除額」と「地震保険料の控除額」欄には、従業員から申告された「給与所得者の保険料控除申告書」に基づき、それぞれの金額を記載します。
住宅借入金等控除の額
「住宅借入金等控除の額」欄には、従業員から申告された「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」に基づき住宅借入金等特別控除額を記載します。
生命保険料の金額の内訳
「生命保険料の金額の内訳」欄には該当年1年間で支払った新・旧生命保険料、介護保険料、新・旧個人年金保険料の金額をそれぞれ記載します。
また、社会保険料控除の適用を受けた国民年金保険料がある場合は「国民年金保険料等の金額」欄に、地震保険料控除額の中に長期損害保険に係る控除額が含まれている場合は「旧長期損害保険料の金額」欄にそれぞれ支払った金額の記載が必要です。
住宅借入金等特別控除の額の内訳
「住宅借入金等特別控除の額の内訳」欄は、大きく分けて5項目あり、該当する場合は以下のように対応します。
- 「住宅借入金等特別控除適用数」欄:年末調整時に住宅借入金等特別控除の適用がある場合に控除適用数を記載
- 「住宅借入金等特別控除可能額」欄:年末調整可能な控除額を住宅借入金等特別控除額が超える場合は、該当金額を記載
- 「居住開始年月日(1回目、2回目)」欄:居住開始年月日を和暦で記載
- 「住宅借入金等特別控除区分(1回目、2回目)」欄:年末調整時に住宅借入金等特別控除の適用がある場合に控除の区分を記載
- 「住宅借入金等年末残高(1回目、2回目)」欄:住宅の取得ごとに住宅借入金等の年末残高を記載
⑨控除対象者氏名など
控除対象の配偶者がいる場合、以下の4項目で該当する部分は対応が必要です。
- 「(源泉・特別)控除対象配偶者 」欄:控除対象配偶者の氏名、フリガナ、受給者交付用には個人番号(マイナンバー)の記載は不要、非居住者の場合は区分に〇を記載
- 「配偶者の合計所得」欄:配偶者特別控除の適用を受けた場合に、配偶者の合計所得金額を記載
- 「基礎控除の額」欄:基礎控除額が48万円以外の場合は控除額を記載
- 「所得金額調整控除額」欄:所得金額調整控除の適用がある場合は控除額を記載
控除対象の扶養親族がいる場合は、「控除対象扶養親族」欄に控除対象者の氏名、フリガナ、受給者交付用には個人番号(マイナンバー)の記載は不要、非居住者の場合は区分に〇を記載します。
また、16歳未満の扶養親族がいる場合は、「16歳未満の扶養親族」欄に控除対象者の氏名、フリガナを記載し、国内に住所を有しない場合は区分に〇の記載が必要です。
⑩未成年の各種、中途就・退職
「未成年」から「勤労学生」までの各欄と「中途就・退職」欄には、該当する事項がある場合には〇を付けます。
なお、「中途就・退職」欄に〇を付けた場合は、年月日の記載が必要です。
⑪支払者
「支払者」欄には事業者の住所、所在地、氏名、電話番号、受給者交付用には個人番号(マイナンバー)の記載は不要または法人番号をそれぞれ記載します。
源泉徴収票作成時の注意点
源泉徴収票には記載すべき項目が多くあり、提出までの期限も限られているため、作成時には以下の2つに注意しましょう。
- 法改正の影響
- 計算ミスや記載漏れ
ここからは注意点をそれぞれ解説します。
法改正の影響に注意する
法改正により控除額や税率が変わることがあり、把握していないと誤った源泉徴収票を発行する可能性があるので注意が必要です。
年末調整の時期に国税庁が「年末調整のしかた」を公表するので、間違いが起こらないように必ず確認しましょう。
参照:国税庁「令和6年分 年末調整のしかた」
計算ミスや記載漏れに注意する
計算ミスや記載漏れが生じると修正に大変な手間がかかります。
さらに、計算ミスにより給与の不払いが発生した場合、後日扶養等の是正で追加徴収(納付)をすることとなる可能性もあるので、計算ミスや記載漏れの対策を講じることが大切です。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
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