給与支払証明書とは?給与明細・源泉徴収票との違いや書き方を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/03/01更新
「給与支払証明書」は、従業員に支払った給与について記載した書類です。給与明細のように企業に作成や交付の義務はありませんが、従業員から発行を求められることがあります。では、給与支払証明書とはどのような書類で、何のために必要とされるのでしょうか。
ここでは、給与支払証明書の概要や用途に加えて、給与明細をはじめとする他の収入証明書類との違いについても解説します。
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任意期間の総支給額を第三者に対して証明する給与支払証明書
給与支払証明書は、任意期間の給与の総支給額を、第三者に対して証明する書類です。ここでポイントになるのが「任意期間」という点。例えば、給与明細の場合、月給制の労働者であれば、記載対象となる期間は1か月です。対して、給与支払証明書は対象期間を自由に設定することができます。そのため、「◯月から◯月までの支給額を記載してほしい」といった、従業員の希望に合わせた期間で作成します。
また、給与支払証明書で給与額を第三者に証明する必要があるのは、会社ではなく従業員です。つまり、給与支払証明書とは、「会社員などの給与所得者が、第三者に収入を証明するため、給与の支払者である企業などが作成・発行する書類」ということになります。
給与支払証明書の書式は法的に定められていない
企業には給与支払証明書の発行義務はなく、作成するのは従業員からの依頼を受けた場合に限られます。給与支払証明書の書式などは法律で定められていませんが、提出先によってはフォーマットが決まっていることもあります。その場合は、指定されたフォーマットに沿って記載しましょう。特に指定がない場合は、企業独自の書式でかまいません。
記載項目は、対象となる従業員の氏名・住所・雇用年月日、設定された期間における給与や賞与の支給額、雇用形態などです。支給額には、社会保険料や源泉徴収税などが控除される前の総支給額を記載します。また、会社名や所在地などの記載と共に、証明印として社印を押します。
給与支払証明書の記入例
- ※公立学校共済組合長崎支部「給与支払証明書(記入例) 」
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給与支払証明書の用途
給与支払証明書は、さまざまな場面で利用されます。給与支払証明書の主な用途は、下記のとおりです。
扶養控除の申請時
家族を社会保険の扶養に入れるには、被扶養者の収入額が一定額以下である必要があります。また、配偶者控除(配偶者特別控除)や扶養控除を受けるには、対象となる配偶者や親族の年間所得が一定額以下でなければなりません。そのため、このような扶養や控除を勤務先に申請するとき、対象となる家族の収入を証明するため、給与支払証明書が必要になることがあります。
例えば、夫が妻を社会保険の被扶養者にするため、勤務先に妻の給与支払証明書を提出するケースなどです。この場合、妻の勤務先が給与支払証明書を作成し、本人を通して夫の勤務先へ提出されます。
住宅ローンなどの申込時
住宅ローンなどを申し込む際には、審査にあたり、収入を証明するさまざまな書類が必要です。このとき、源泉徴収票などと共に、給与支払証明書の提出を求められることがあります。
1年間の収入は源泉徴収票を見ればわかりますが、例えば、転職してから数か月しかたっていないような場合、前年の源泉徴収票だけでは現在の収入状況を証明することができません。そのような場合でも、転職前の勤務先から発行された源泉徴収票と併せて現在の給与支払証明書があれば、年間を通した正しい収入状況を示すことができます。育休や産休などの理由で、前年と現在の収入状況が大きく異なるような場合も同様です。
保育園の入園申込時
保育園は、親の仕事などによって十分保育ができない子供を、家庭に代わって保育するための施設です。また、認可保育園の保育料は、世帯収入などによって変動します。そのため、自治体や施設によっては、「収入を証明する書類」として、入園申請時に給与支払証明書の提出を求められることがあります。
大口融資の申込時
住宅ローン以外の大口融資を申し込むときにも、給与支払証明書が必要になることがあります。特に、源泉徴収票や課税証明書だけでは直近の収入状況を証明しきれないような場合は、給与支払証明書の提出を併せて求められる可能性があります。
公営住宅の申込時
公営住宅の家賃は、世帯収入などをもとに算出されます。また、公営住宅法では、入居者の収入基準が設けられています。そのため、公営住宅の申込時には、源泉徴収票や課税証明書などを提出して、世帯全員の収入を申告しなければなりません。年の途中で転職した場合などは、世帯収入を正しく把握するために、給与支払証明書が別途必要になることがあります。
源泉徴収票で収入証明ができないとき
これまで解説してきたように、収入を証明しなければならない場面において、源泉徴収票だけでは正しい収入状況が把握できない場合、給与支払証明書によって、その内容を補うことができます。転職や産休・育休などの他にも、何らかの事情で前年から収入が大きく変化した場合は、給与支払証明書が必要とされるケースがあります。
その他の収入を証明する書類との違い
給与支払証明書の他にも、収入を証明する書類はいくつかの種類があります。また、給与支払証明書と名称が似ているものに、「給与支払報告書」という書類があります。それぞれどのような違いがあるのかを確認しておきましょう。
給与明細
給与明細とは、「勤怠情報や給与の支給額(基本給や各種手当など)、控除額(税金の額、社会保険料など)を明記したもの」です。企業は、給与の支払日までに従業員に給与明細を交付する必要があります。
給与の支払者(会社)は、給与の支払いを受ける者(従業員)に対し、支払明細書を交付しなければならないことが所得税法で定められています。また、健康保険や厚生年金保険といった社会保険料を給与から天引き(控除)した場合は、その控除額を従業員に通知することが、健康保険法などの法律によって義務付けられています。そのため、会社は給与が発生する全ての従業員に対して、給与明細を交付しなければいけません。
給与明細についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
源泉徴収票
源泉徴収票は、企業が税務署に提出する法定調書の1つで、従業員の1年間の収入を示すものです。年末調整の際、企業は源泉徴収票を作成し、従業員に交付しなければなりません。
源泉徴収票には、1~12月の1年間における給与・賞与の総支給額や源泉徴収税額、毎月の給与から天引きされている社会保険料の合計金額などが記載されます。対象期間が1~12月と決まっているので、前年の収入状況の証明にはなりますが、場合によっては現在の収入状況とずれが生じることがあります。
課税証明書・非課税証明書
課税証明書は、自治体が発行する書類で、住民税額や所得金額などが記載されています。1年間の所得を証明できる書類ですが、給与だけではなく、副業なども含めた全ての所得が記載されているため注意が必要です。また、源泉徴収票と同じく、把握できるのは前年1~12月の収入状況です。
会社などで働いていない専業主婦・主夫や自営業の方などは給与を受け取っていないため、源泉徴収票や給与明細、給与支払証明書がありません。そのような場合は、非課税証明書を取得することで証明ができます。
給与支払報告書
給与支払報告書は、住民税の計算に使用するために、企業が市区町村に提出する書類です。従業員に給与を支払っている事業主は、1~12月の1年間に支払った給与などを記載した給与支払報告書を、従業員の居住する市区町村に提出しなければなりません。各市区町村は、提出された給与支払報告書の内容をもとに、住民税額の計算を行います。
給与支払報告書の記載項目は、源泉徴収票とほとんど同じです。ただし、給与支払報告書は従業員本人に交付するものではないため、収入の証明書類として使用することはできません。
給与支払報告書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
他の収入証明書類で、給与支払証明書の代用とできるケースもある
提出先によっては、給与明細や源泉徴収票、課税証明書があれば、給与支払証明書が不要なケースもあります。例えば、源泉徴収票と直近数か月分の給与明細があれば、前年と現在の収入状況をどちらも把握することが可能です。
ですが、従業員から給与支払証明書の発行を依頼された場合、「提出先から指定されている」など、他の書類では代用できない理由があるのかもしれません。会社に発行義務はないとはいえ、従業員から依頼があったときには、できるだけ対応する方が望ましいでしょう。
給与支払証明書を発行するには、正しい給与計算・管理が不可欠
給与支払証明書は、会社から給与を受け取っている従業員が、自分の収入を証明するために使用する書類です。給与支払証明書の発行は会社の義務ではありませんが、従業員から依頼があった際は、できる限り対応したいものです。ただし、源泉徴収票などとは異なり、給与支払証明書の対象期間は提出先によって異なります。そのため、月々の給与を正しく計算・管理していなければ、給与支払証明書の作成に手間がかかってしまいます。給与の計算や管理をミスなく効率的に行うには、「弥生給与」や「やよいの給与計算」といった給与計算ソフトの利用がおすすめです。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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