法定調書とは?主な種類や作成・提出の方法、注意点などを解説
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法定調書には多くの種類があり、代表的なものに源泉徴収票や支払調書などがあげられます。特に、年末調整の際には複数の法定調書を作成することも多いため、法定調書とは何か、どのように作成するかを正しく知っておく必要があるでしょう。
本記事では、事業者が作成することの多い代表的な法定調書の種類とそれぞれの内容、税務署への提出方法の他、法定調書を作成するときの注意点についても解説します。
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法定調書とは税務署へ提出が義務付けられている書類の総称
法定調書とは、所得税法、相続税法、租税特別措置法、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律により、税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。内容によって根拠となる法令が異なり、2024年5月現在、63種類の法定調書があります。
法定調書を作成・提出する目的は、何らかの支払いがあった際に税務署がお金の流れを把握し、適正な課税が行われているかを確認することです。法定調書を作成するのは、他者に対して支払いをした事業者になります。
法定調書の作成が必要な支払いには、給与や報酬、退職金などがありますが、すべての支払いに対して法定調書の作成が義務付けられているわけではありません。また、法定調書の種類によって、法定調書を作成し、税務署へ提出する義務を負う者が異なります。
主な法定調書の種類と提出義務者
数多くの種類がある法定調書の中でも、代表的なものが以下の6種類です。
主な6種類の法定調書
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
これら6種類は、業種を問わず、事業者が作成することの多い法定調書です。それぞれどのような書類なのかを見ていきましょう。
給与所得の源泉徴収票
「給与所得の源泉徴収票」とは、給与や賞与の支払いをした事業者が作成する法定調書です。正社員、契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、従業員に給与を支払った場合は、給与所得の源泉徴収票を作成する必要があります。一般的に「源泉徴収票」というと、この給与所得の源泉徴収票を指すことが多いでしょう。
給与所得の源泉徴収票

-
※国税庁「F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)
」
給与所得の源泉徴収票には、1年間に支払った給与の総額や源泉徴収税額、所得控除に関する情報などが記載されます。年末調整の際には、事業者は必ず給与所得の源泉徴収票を作成し、本人に交付しなければなりません。なお、税務署への提出が必要なものについては、以下のように範囲が定められています。
受給者の区分 | 提出範囲 | |
---|---|---|
年末調整をしたもの | 法人の役員 ※現に役員をしていなくても、その年中に役員であった方を含む |
その年中の給与などの支払金額が150万円を超えるもの |
弁護士、司法書士、税理士など | その年中の給与などの支払金額が250万円を超えるもの | |
上記以外 | その年中の給与などの支払金額が500万円を超えるもの | |
年末調整をしなかったもの | 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中に退職した方や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた方 | その年中の給与などの支払金額が250万円を超えるもの ※ただし、法人の役員の場合には50万円を超えるもの |
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方 | その年中の主たる給与などの金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの | |
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(給与所得の源泉徴収税額表の月額表または日額表の乙欄または丙欄の適用者) | その年中の給与などの支払金額が50万円を超えるもの |
退職所得の源泉徴収票
「退職所得の源泉徴収票」とは、退職金をはじめとする退職所得に該当する支払いをした場合に作成する法定調書です。社会保険制度に基づく退職一時金や、企業年金制度に基づく一時金で退職所得と見なされるものも含みます。
退職金などを支払った事業者は、すべての受給者に対して、退職後1か月以内に退職所得の源泉徴収票を交付する必要があります。なお、税務署への提出が必要なのは、その年中に支払いが確定した法人の役員への退職手当のみです。
ただし、死亡により退職した場合は、相続税法の規定により「退職手当金等受給者別支払調書」という別の支払調書を提出するため、退職所得の源泉徴収票は不要です。また、「退職手当金等受給者別支払調書」は退職手当金等の支給額が100万円以下の場合、提出は不要です。
退職所得の源泉徴収票

-
※国税庁「F1-2 退職所得の源泉徴収票(同合計表)
」
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」とは、原稿料や講演料、弁護士報酬、税理士報酬など、源泉徴収の対象となる報酬・料金などの支払いをした場合に作成する法定調書です。報酬が発生した方への、1年間の報酬などの総額や源泉徴収税額などが記載されます。基本的には、同じ相手に年間5万円超の報酬を支払った場合に作成・提出が必要となりますが、報酬の種類によって金額が異なるものもあります。
なお、従業員を雇用していない個人事業主は、「源泉徴収義務者」に該当しないため、報酬などから源泉徴収することはなく、支払調書の作成も不要です。また、支払調書を作成して税務署に提出したとしても、報酬の支払先への提出は義務付けられていません。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

不動産の使用料等の支払調書
「不動産の使用料等の支払調書」とは、不動産などの賃借料を支払った場合に作成する法定調書です。具体的には、以下の支払いをする法人、または不動産業者である個人は、「不動産の使用料等の支払調書」を作成・提出する必要があります。
不動産の使用料等の支払調書作成・提出が必要な支払い
- 不動産
- 不動産の上に存する権利
- 総トン数20トン以上の船舶、航空機の借受けの対価
- 不動産の上に存する権利の設定の対価
なお、不動産業者である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる場合は、提出義務がありません。
不動産の使用料などの支払調書の提出が必要になるのは、同じ相手に対する1年間の支払金額の合計が15万円を超える場合です。ただし、法人に対して支払う不動産の使用料などについては、賃借料を除く権利金、更新料などが対象となります。法人に家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は不要です。
不動産の使用料等の支払調書

-
※国税庁「F1-4 不動産の使用料等の支払調書(同合計表)
」
不動産等の譲受けの対価の支払調書
「不動産等の譲受けの対価の支払調書」とは、不動産などを譲り受けた(買い取った)場合に作成する法定調書です。不動産等を譲り受け、同一の者に対して年間の支払合額が100万円を超える場合に提出しなければなりません。「譲り受け」には、不動産の売買・交換・競売・現物出資・公売などの取引も含まれます。不動産・不動産上の権利などについて、売買で対価を支払った場合や貸付けのあっせん手数料を支払った場合に「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出します。
ただし、不動産業者である個人で、主に建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる場合は、提出義務はありません。
なお、譲り受けにあたってあっせん手数料を支払った場合、「あっせんをした者」欄に記載することで、次に紹介する「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出を省略することができます。
不動産等の譲受けの対価の支払調書

不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」とは、不動産などの売買や貸付けのあっせん手数料を支払った場合に作成する書類です。以下の支払いをする売買または貸付けのあっせん手数料の支払いをした法人と不動産業者である個人は、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」を作成・提出する必要があります。
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書の作成・提出が必要な支払い
- 不動産
- 不動産の上に存する権利
- 総トン数20トン以上の船舶、航空機の借受けの対価
- 不動産の上に存する権利の設定の対価
「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の作成・提出の範囲は、同じ相手への支払金額の合計が年間15万円を超える場合です。ただし、不動産業者である個人のうち、主に建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる場合は提出義務がありません。
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

主な法定調書を税務署へ提出する方法
前述した6種類の法定調書は、該当の支払いが確定した年の翌年1月31日までに、管轄の税務署へ提出します。このとき、法定調書に「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(法定調書合計表)を添付する必要があります。法定調書合計表とは、法定調書類の表紙のような役割を担う書類で、6種類の支払調書のそれぞれの合計表を記入し、該当する支払いがない場合は(摘要)」欄に「該当なし」と記載の上、提出します。
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

-
※国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
」
法定調書の提出方法は、以下の4つから選択できます。
法定調書の提出方法
- 書面(税務署窓口または郵送)
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)
- 光ディスク(CD・DVDなど)
- 認定クラウド
なお、法定調書の種類ごとに、前々年に発行した法定調書が100枚以上ある場合は、e-Taxまたは光ディスクなどによる電子申告が義務付けられています。
法定調書の作成や受取をしたら保管は必要?
税金にかかわる書類の中には、保管が義務付けられているものも少なくありませんが、法定調書においては作成した側、受け取った側、双方に保管義務はありません。ただし、法定調書の基となる書類の保管は必要です。ここからは、代表的な法定調書について、作成した側と受け取った側それぞれの保管の必要性を解説します。
給与所得の源泉徴収票
「給与所得の源泉徴収票」の控えの保管期間について、給与を支払う事業者(会社)側と受け取った(従業員)側に法令による定めはありません。ただし、会社側には、年末調整の計算根拠とする書類は7年間の保管が義務付けられています。また、源泉徴収票を作成する際に用いる源泉徴収簿は、7年間の保管が必要です。
「給与所得の源泉徴収票」を受け取った従業員も、数年間は保管しておいた方がいいでしょう。医療費控除や住宅ローン控除の初年度の申請などのために確定申告をする場合、源泉徴収票が必要になることがあります。その他にも、家を借りたりローンを組んだりする際に、管理会社や金融機関などから源泉徴収票の提出を求められる可能性があります。
退職所得の源泉徴収票
「退職所得の源泉徴収票」の控えの保管期間についても、「給与所得の源泉徴収票」と同様に、給与を支払う事業者(会社)側と受け取った(退職者)側ともに法令による定めはありません。ただし、退職者についても、年末調整の計算根拠となる書類は7年間の保管が義務付けられています。
退職者側は、一般的に、退職金などを受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出します。その場合は基本的に退職所得の源泉徴収票を使うことはありませんが、一定期間保管しておいた方が安心です。
なお、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していなかった場合は、「退職所得の源泉徴収票」の記載内容を基に確定申告を行います。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の控えの保管期間についても、前述した源泉徴収票と同じく、控えの保管期間は法令に定められていませんが、作成した事業者(会社)側は年末調整の計算根拠とする書類は7年間の保管が必要です。
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、報酬などの支払者から税務署に提出する書類であって、報酬を支払った相手への交付義務はありません。しかし、慣習的に、報酬などの支払先に支払調書の控えを交付する会社もあります。
フリーランスの方などが「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を受け取った場合は、内容を確認し、もし帳簿に記録した売上や源泉徴収税額と一致しない場合は、必要に応じて発行元への問い合わせを行いましょう。なお、確定申告にあたって、支払調書の添付や保管の義務はありません。
法定調書作成時の注意点
法定調書を作成する際には、いくつかの注意点があります。支払調書をスムーズに作成できるように、以下の注意点を確認しておきましょう。
書類によってマイナンバーを記載する必要がある
金銭の支払いが関係する法定調書は、支払いを受けた人のマイナンバーと支払った企業の法人番号(支払元も個人事業主の場合、支払元のマイナンバー)を記載して、税務署に提出します。ただし、支払いを受けた人に交付する法定調書には、マイナンバーを記載してはいけません。
例えば、税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票」には、従業員のマイナンバーと支払った企業の法人番号を記載しますが、従業員に交付する「給与所得の源泉徴収票」には、従業員のマイナンバーは記載しません。支払調書を支払先へ交付する場合も同様です。
法定調書は12月までのすべての支払いが確定してから作成する
法定調書には、その年の1月から12月までの1年間に支払いが確定したものを記載します。法定調書の作成時点では未払いであっても、その年の間に支払予定があるものについては記載が必要です。ただし、12月分翌1月支払いの給与や、12月の取引で翌1月に支払いをする報酬などは、その年の法定調書には含みません。
支払金額は消費税込みの金額を記載する
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」に記載する支払金額は、原則として消費税込みの金額となります。これは、報酬などに消費税額が含まれている場合、基本的には税込金額に対して源泉徴収となるためです。
ただし、請求書などによって消費税の額が明確に区分されている場合は、消費税を含まない報酬などの金額のみを源泉徴収の対象とすることが可能です。その場合、支払調書の支払金額を税抜金額としたうえで、摘要欄に消費税額を記載します。
法定調書の作成は給与計算ソフトが便利
会社が給与や報酬などを支払った場合は、「給与所得の源泉徴収票」や「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」といった法定調書の作成が必要です。また、法定調書の多くは、支払いが確定した翌年の1月31日までに、税務署へ提出しなければなりません。法定調書は種類が多く、確認項目も多岐にわたるため、作成や管理には大変な手間がかかります。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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