育児休業給付金(育休手当)の計算方法は?支給期間や必要書類なども解説
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育児休業給付金は、雇用保険に加入する従業員が育児休業中に受け取れる給付金です。育児休業給付金のしくみや申請方法を正しく理解しておくことは、経済的に安心して子育てするために欠かせません。
本記事では、育児休業給付金の計算方法、支給額、支給期間、受給要件について解説します。また、新設される出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金の紹介や、育児休業給付金に関するよくある質問にもお答えしますので、ぜひ参考にしてください。
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育児休業給付金(育休手当)の計算方法と支給額
育児休業給付金の計算方法や支給額、支給日の目安など、実務面で特に気になるポイントについて解説します。
育児休業給付金の計算方法は日数によって異なる
育児休業給付金の計算方法は、育児休業開始から180日目までと181日以降で異なり、以下のとおり算出します。
-
- 育児休業開始から180日目まで……休業開始時賃金日額×休業期間日数×67%
- 育児休業開始から181日目以降……休業開始時賃金日額×休業期間日数×50%
なお、出生時育児休業給付(産後パパ育休)も育児休業給付と同様に67%の給付率ですが、制度の取り扱いが異なります。また、2025年4月より「出生後休業支援給付金」が創設され、一定条件を満たす場合に最大28日間、休業開始時賃金日額×日数(上限28日)×13%の支給が受けられます。
- ※休業開始時賃金日額=原則として休業開始前直近6か月の総支給額を180で割った額(総支給額には交通費や残業手当など各種手当を含む、賞与や保険料は除く)
- ※出生時育児休業給付金が支給された日数は、180日に通算されます。
参照:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
育児休業給付金は支給額の上限と下限が定められている
育児休業給付金には、賃金日額および30日を1単位とした場合の上限額と下限額が定められています。
休業開始時賃金日額
- 上限額…15,690円
- 下限額…2,869円
なお、上限額は、毎年8月1日に変更される場合があります(令和6年8月1日時点情報)。
支給日数30日
支給率67%
- 上限額…315,369円
- 下限額…57,666円
支給率50%
- 上限額…235,350円
- 下限額…43,035円
- ※2025年(令和7年)7月31日までの額
なお、2024年(令和6年)7月31日までの額は、以下のとおりです。
休業開始時賃金日額
- 上限額…15,430円
- 下限額…2,746円
支給日数30日
支給率67%
- 上限額…310,143円
- 下限額…55,194円
支給率50%
- 上限額…231,450円
- 下限額…41,190円
支給上限額および下限額は平均給与額の増減を基に毎年見直され、8月1日より変更される場合がありますので確認しましょう。なお、下限額については、育児休業中に支払われた給料の額により下限額を下回る場合があります。より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
参照:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
育児休業給付金の1か月の支給額の目安
支給額を計算するためには、原則として直近6か月分の給料を合計した数字を180で割り、1日当たりの給料(賃金日額)の算出が必要です。
参考例として、6か月間の毎月の給料が一律30万円だった場合、30日間(1支給単位)でもらえる支給額を計算してみましょう。なお、ここでの給料には残業代・通勤手当・住宅手当などは含まれますが、賞与や退職金、各種祝金などは含まれません。具体的な計算式は以下のとおりです。
賃金日額の計算式:30万円(育休前の賃金)×6か月÷180日
賃金日額:10,000円
育休開始から180日以内 | 育休開始から181日以降 | |
---|---|---|
支給額の計算式 | 10,000円×30日×67% | 10,000円×30日×50% |
支給月額 | 201,000円 | 150,000円 |
参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
育児休業給付金の支給日は原則2か月に1回
育児休業給付金の支給は2か月に1回です。従業員が育児休業給付金の支給を受けるためには、2か月に1度、事業主からハローワークへ支給申請する必要があります。
支給日は支給決定通知が届いてから一定の期間を要します(管轄や混雑状況により異なります)。出産手当金の支給期間は出産日の翌日から8週間(56日)までとされており、この期間は育児休業給付金の対象外となります。そのため、女性の場合、育児休業給付金の支給開始は産後8週以降、申請のタイミングによってはさらに遅れる場合があります。
- ※出産手当金(産休手当金)=出産日以前42日から出産日の翌日以降56日までに支給される手当金
育児休業給付金の初回申請期限は、休業開始日から起算して4か月後の末日です。手続きはこの初回申請のみではないため、事業主は申請漏れがないよう注意しましょう。
参照:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
そもそも育児休業給付金(育休手当)とは?
育児休業給付金(育休手当)は、雇用保険の被保険者である従業員が育児を目的に休職する際、一定の要件を満たすと支給されます。
育児休業中の従業員に対する給与支給の法的義務は存在しません。そのため、多くの企業では育児休業中は無給の状態となります。この期間に経済的な支援を提供するための社会保障制度が育児休業給付金です。なお、出生育児休業をした場合には、育児休業給付金ではなく、2022年10月に新設された「出生時育児休業給付金」という別の給付金が支給されます。
育休や産休については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
育児休業給付金の支給期間
育児休業給付金がいつまで支給されるかは大切な情報です。以下では、育児休業給付金の原則的な支給期間と、その期間が延長となる条件および方法を解説します。
育児休業給付金の支給期間は原則1年
育児休業給付金の支給期間は原則1年間です。ただし、母親と父親で支給開始の時期が異なります。
-
- 母親……産後休業期間終了後の翌日から原則子が1歳になる誕生日の前々日まで
- 父親……出産予定日もしくは出産日のどちらか早い日から1歳になる誕生日の前々日まで
父母どちらも育休中に実際に休業していた日が対象となるため、早くに職場復帰した場合、その分の育児休業給付金は支給されません。なお、支給期間が誕生日の前日ではなく前々日までなのは、民法上、誕生日の前日が満年齢到達日(1歳になる日)と定義されているためです。つまり、育児休業給付金が支給されるのは、民法上で子が0歳児とみなされる最終日(誕生日の前々日)までになります。
参照:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」
育児休業給付金の支給期間延長の条件
育児休業給付金の支給期間は原則1年ですが、以下の要件のいずれかを満たせば、最長で子が2歳になる誕生日の前々日まで延長が認められます。
- 延長の要件
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- 保育所などに保育の利用の申し込みをしているが、待機児童などにより保育が実施されないとき
- 養育を予定していた配偶者の死亡
- 養育を予定していた配偶者の疾病、負傷など
- 養育を予定していた配偶者との別居
- 養育を予定していた配偶者の産前産後
- 必要書類
- 延長理由により、以下の書類が必要となります。
-
- 保育所などの入所保留の通知書など、市町村が発行する、保育が実施されない事実を証明する書類
- 世帯全員の住民票の写しおよび母子健康手帳
- 養育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書など
詳細書類については以下をご参照ください。
参照:厚生労働省・岐阜労働局・ハローワーク「育児休業給付金の延長申請について」
また、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「育休手当支給期間の延長について」
パパ・ママ育休プラス制度を利用すると支給期間は延長される
パパ・ママ育休プラス制度は、育休取得率の低い父親の育休取得を促進する目的で2010年に制定されました。夫婦ともに育休を取得し、以下の要件に該当する場合、後に育休を取得した配偶者は育休期間を1歳2か月まで延長できます。
- 受給要件
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- 夫婦2人ともが育休を取得すること
- 配偶者(ママ)が子の1歳の誕生日までに育休を取得していること
- 本人(パパ)の育休開始予定日が子の1歳の誕生日以前であること
- 本人(パパ)の休業開始日が、配偶者(ママ)の開始日以降であること
なお、1歳2か月まで育休を延長するのは、ママの場合でも可能です。その場合は上記とは逆に、配偶者(パパ)が先に育休を取得し、その後に本人(ママ)が育休を取る形になります。
ただし、取得可能な育休期間はあくまで1年間(母親の場合産後休業を含む)であり、1年2か月に延長されるのではありません。「1歳になる前日まで」という休業可能期間の要件が「1歳2か月まで」に延長されます。また、パパ・ママ育休プラスの支給額は、通常の育休と同様、育休開始日から180日目までは67%で、181日目以降は50%です。
育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金を受給するためには、雇用保険への加入状況など、一定の条件を満たす必要があります。また、一度支給が認められても、支給期間中の収入が一定額を超えると受給できなくなる場合があるため注意しましょう。なお、休業中に労働を行う場合でも、賃金月額の80%未満であれば支給額の一部が調整され、80%以上となると支給停止となる可能性があります。短時間勤務などを検討する際は、ハローワークや事業主に確認し、育休給付金への影響を把握しておくことが重要です。
原則として育休中の就労は「復帰」とみなされます。ただし、出生時育児休業などを利用し、労使協定を締結したうえで労働を行う場合や、入社式や式典への参加など臨時的な活動の場合は復職とはみなされないことがあります。ハローワークや事業主に育休給付金への影響を確認しておくことをおすすめします。
支給期間前の受給要件
育児休業給付金の支給期間前の受給要件は以下のとおりです。
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- 雇用保険の被保険者であること
- 育児休業の開始前2年間に、賃金や報酬の支払対象となる労働日数が11日以上ある完全月が、12か月以上あること。ない場合は、労働時間数が80時間以上の完全月が、12か月以上あること
正社員の他、アルバイトやパート勤務であっても育児休業の取得要件を満たし、雇用保険に加入していれば、支給要件を満たしていれば育児休業給付金を受給できます。また、有期雇用で働いている場合は、以上の支給要件に加え次の要件を満たしていれば受給できます。
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- 子どもが1歳6か月(延長を受ける場合は2歳)までに、労働契約が終了することが明らかでないこと
このように、非正規雇用や有期雇用でも育児休業給付金を受給できる可能性があるため、雇用保険の加入状況や契約内容をしっかり確認しておきましょう。
支給期間中の受給要件
労使協定を締結するなどすれば、育休中もまったく仕事ができないわけではありません。ただし、賃金が育休前の80%以上になると支給されなくなるので注意が必要です。また、80%未満であっても、13%を超えると支給額が減額されます。支給期間中の受給要件は以下のとおりです。
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- 1支給単位の勤務日数が10日以下であること、または勤務時間数が80時間以下であること
勤務日数や勤務時間が規定を超えてしまった場合、その対象期間は支給されません。ただし、翌月の支給対象期間以降に規定を満たせば支給が再開されます。
なお、休業期間が28日間より短い場合、その日数に比例して認められる勤務日数・勤務時間も短くなります。例えば、14日間のみ休業する場合、育児休業給付金をもらいながら働けるのは最大5日間(もしくは最大40時間)までです。
育休期間中に支払われる賃金とは?
前段で述べた「育休期間中に支払われる賃金」とは、原則として支払日が育児休業給付金の支給単位期間中に該当する給与・手当などの賃金総額を指します。
ただし、育児休業給付金の初回申請時における最初の支給単位期間は例外です。この期間中に支払われた賃金について、育休期間外を対象とする給与・手当などが一部でも含まれている場合、「育休期間中に支払われる賃金」には該当しません。なお、未払いなどで育休期間外に支給されるものについても同様の取り扱いとなります。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金の申請方法は以下の流れで行います。
-
1.会社から従業員に対して育児休業制度の周知と意向確認を行い、申請者が会社の人事部や総務部などの担当部署へ育児休業給付金取得の旨を申し出る
-
2.会社側が管轄のハローワークへ必要書類を提出する
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3.ハローワークから受給確定通知と育児休業給付金支給申請書(次回分)が届く
育児休業給付金の申請は通常、勤務先の担当者が処理します。ただし、申請書には事業主の証明欄があり、必要書類の中には勤務先が発行しなければならないものも含まれます。そのため、本人が申請する場合でも、勤務先から一定の協力を得る必要があります。
育児休業給付金申請に必要な書類
必要書類は申請者側、企業側それぞれに用意する書類があります。
- 申請者側
-
- 母子健康手帳、出産予定日証明書などの写し(育児の事実、出生日を確認できるもの)
- 企業側
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- 育児休業給付受給資格確認票
- (初回)育児休業給付金支給申請書
- 被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金台帳、名簿、出勤簿、タイムカードなど(賃金の額と支払状況を証明できるもの)
1回目の申請の際にはこれらの書類がすべて必要です。2回目以降は育児休業給付金支給申請書と賃金台帳、出勤簿など申請書の記載内容を確認できる書類のみの提出となります。
参照:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
産後パパ育休と育児休業の分割取得について
2022年10月から、1歳未満の子を持つ夫婦ともに、育休を2回に分けて取得できるようになりました。産後パパ育休(出生時育児休業)においても2回の分割が認められており、父親は最大で4回に分けて育休を取得することが可能です。この変更に伴い、給付金も2回まで分割して受給できるようになりました。
産後パパ育休と通常の育休では制度が異なるため、育児給付金の回数制限に抵触することなく、父親はそれぞれの育休に対して給付金を受け取れます。また、少子化対策の一環として、子育て支援は今後さらに拡充される予定です。2025年4月1日以降、新たに以下のような給付金が開始されました。
出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金とは、子の出生または出産予定日直後の一定期間内(父親は子の出生日または出産予定日から8週間後まで、母親は16週間後までの期間内)に両親がともに14日以上の育休を取得し、一定の要件を満たすことで支給される給付金です。この育休期間には、産後パパ育休も含まれます。
支給期間は最大28日間、支給金額は育休取得前の賃金の13%です。従来の育児休業給付金(賃金の67%)に加算されるため、合計すると賃金の80%に該当します。育休中は健康保険や厚生年金の保険料が免除されるので、手取り換算すると育休取得前の賃金とほぼ同額(約10割)の支給を受けることが可能です。
ただし、従来の育児休業給付金と同じく給付額には上限があり、上限額は毎年変わるため、正確な支給額は事前に確認する必要があります。2025年(令和7年)7月31日までの賃金日額の上限は15,690円です。
参照:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
育児時短就業給付金
育児時短就業給付金とは、2歳未満の子を育児するために時短勤務(1週間当たりの所定労働時間を短縮して働く)をした場合、一定要件を満たすことで受け取れる給付金です。時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます。ただし、この給付金によって時短前の賃金を超えてしまう場合、支給額は減額調整されます。
例えば、子どもが1歳になるまでは育児休業を取得し、その後2歳になるまでは育児時短就業給付金を受けながら時短勤務を行うことも可能です。これにより、育児と仕事の両立がしやすくなります。
参照:こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
育児休業給付金でよくある質問
育児休業給付金も課税される?
育児休業給付金は非課税です。したがって、所得税や復興特別所得税、住民税の対象にはなりません。また、翌年度の住民税算定額にも反映されません。
育児休業給付金から社会保険料は引かれる?
育休中の健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、労使ともに免除されますが、免除を受けるためには所定の手続きが必要です。また、給与所得もないため、雇用保険料も発生しません。
育休中に退職したら育児休業給付の返金が必要?
育休期間中に退職した場合、その支給単位期間以降は育児休業給付金を受給できません。
育児休業給付はいつごろ入金になる?
育児休業給付金は通常、支給決定日から一定の期間で口座に入金されます。もし通知書が届かない場合は、ハローワークに問い合わせましょう。
育児休業給付金の計算方法や制度の周知をはかりましょう
育児休業給付金は、育休中の収入源として大切な制度です。政府は産後パパ育休制度や育休の延長などを通じて、夫婦が仕事と子育てを両立させるための支援を積極的に行っています。2025年4月1日以降は、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金も開始されています。
企業としては、単に制度内容を理解するだけでなく、義務化されている従業員への制度周知をしっかりと実施し、従業員が適切に利用できるようにすることが大切です。まずは担当者が詳細な計算方法や申請手続きなどをしっかりと理解し、従業員が適切に申請できるようサポート体制を整えましょう。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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