介護休業とは?期間・対象となる労働者・介護休暇との違い・注意点
監修者: 勝山 未夢(社会保険労務士)
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介護休業制度が存在することは理解しているものの、具体的にどのような制度なのか、企業側はどう対処すべきなのかわからない、といった企業の担当者や経営者も少なくないでしょう。介護休業は、要件を満たす従業員なら利用できる国の制度であるため、企業側には正しい認識が求められます。
本記事では、介護休業の概要や介護休暇との違い、企業が準備すべき書類の種類、覚えておくべき注意点などについて解説します。
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介護休業とは
介護休業とは、要介護状態の家族を介護しなくてはならない労働者が利用できる休業制度です。要介護状態について、育児・介護休業法では、「負傷や疾病をはじめ、身体や精神上の障害で2週間以上の期間におよぶ常時介護が必要な状態」と定めています。
家族が要介護状態となると、労働者はこれまで通りに業務に従事できなくなる可能性があります。場合によっては該当の労働者が職場を離れることも考えられます。その後、家族の介護が不要になったときには、その労働者には再度就職活動を行う必要が出てきます。
介護休業は、このような人々をサポートするための制度です。介護休業を利用できれば、労働者は在籍している企業から離職することなく家族を介護できます。なお、介護休業は国が定めた制度であるため、企業が制度として設けていなくても労働者は利用可能です。
介護休業と介護休暇の違い
介護休業と介護休暇は、どちらも家族の介護が必要な労働者を対象とした制度です。両者には取得可能な日数や申請のタイミングなどに違いがあります。
介護休業では、介護を要する家族1名に対し通算93日までの取得が可能で、最大3回まで区切って取得できます。その一方で、介護休暇は介護の対象者1名に対し年5日までであり、1時間単位で取得可能です。
また、介護休業の場合、取得を開始したい日の2週間前までに書面で申請を行います。それに対して、介護休暇は休みたい当日に口頭での申請が可能です。
介護休業の期間
介護休業を利用できる期間は、介護を要する家族1人に対し通算93日までで、3回に区切って取得できます。たとえば、最初に30日の休日を取得し、2カ月後に再び30日、その1カ月後に33日といった利用が可能です。1回で93日連続しての休日も取得できます。
介護休業の対象者
介護休業の対象となるのは、介護が必要な家族がいる労働者で、パートやアルバイトでも取得が可能です。ただ、日々雇用の労働者は取得できません。対象となる家族には事実婚の配偶者も含まれるものの、子に関しては法律で親子関係が認められている者に限ります。
対象となる労働者
介護休業の対象となるのは、要介護状態の家族を介護しなくてはならない労働者です。正社員をはじめ、パートやアルバイト雇用の従業員も制度を利用できます。
ただ、あらかじめ期間を定めたうえで雇用されているアルバイト、パート従業員は、「休業の開始予定日を起算日として、93日を経過する日から6カ月を経過するまでに契約期間が満了し、契約更新されないことが明らかでないこと」という要件を、申請時点で満たしていなくてはなりません。
また、日々雇用の労働者も制度を利用できないため注意が必要です。日々雇用とは、1日単位で雇用契約を交わす働き方を指します。
労使協定を締結しているケースでは、「入社1年未満」「申し出日から93日以内に雇用期間が満了になる」「1週間の所定労働日数が2日以下」の労働者は制度の対象外です。
対象となる家族
介護休業の対象となる家族は、労働者の配偶者と父母、兄弟姉妹、祖父母、子、孫のほか、配偶者の両親も該当します。配偶者に関しては、正式な婚姻関係を結んでいない、いわゆる事実婚状態の夫や妻も対象です。
その一方で、子に関しては法律上での親子関係が求められるため、事実婚関係にある配偶者の連れ子などは対象になりません。ただ、血縁関係がなくても、養子縁組などで法律上の親子関係が成立しているのなら制度の対象です。
介護休業中の給与
介護休業は国が定めた制度であるものの、給与の支払いについては明確な決まりがありません。そのため、休業中の従業員へ給与を支給するかどうかは、企業によって判断が分かれます。企業に給付義務がないことから、原則無給としているケースが多く見受けられます。
介護休業の申請方法
介護休暇とは異なり、介護休業の申請は口頭ではできません。休業を開始したい日の2週間前までに、事業主に対し書面で申請を行う必要があります。
従業員がいつでも介護休業を申請できるよう、企業はあらかじめ申請書を用意しておきましょう。申請書には、本人や介護が必要な家族の氏名、介護が必要な理由、休業の開始日や復帰予定日などを記入する項目を設けます。厚生労働省の公式サイトで、介護休業申出書のひな型が公開されているため、それを参考にするのもおすすめです。
なお、介護休業の申し出を受けた場合、企業は拒否できません。国が定めている制度であるため、取得の申し出を承諾する必要があります。また、申し出を受けた企業は休業の開始予定日や終了予定日などを、従業員に対し書面などで通知しなくてはなりません。
介護休業給付金とは
介護休業給付金は、介護休業の取得者を対象とした給付金制度です。介護休業中の労働者に対し、経済的な支援を行うものです。雇用保険に加入しているなど、一定の要件を満たすことで給付されます。
介護休業給付金の支給要件
介護休業給付金制度を利用するには、申請者本人が雇用保険に加入している必要があります。そのうえで、常時介護が必要な家族がいるケースにおいて制度の利用が可能です。もうひとつの要件として、休業開始日の2年前までに、11日以上(11日に満たない月でも1か月の労働時間が80時間以上)の賃金支払基礎日数を有する月が12カ月以上あることも定められています。
なお、常時介護が必要な状態かどうかを判断するには、厚生労働省が公開している「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」を用います。
参照:厚生労働省「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」
介護休業給付金の申請タイミング
介護休業給付金の申請は、介護休業終了の翌日を起点に、2か月後の月末までに行います。企業側からも、従業員に対し制度を利用するかどうかをヒアリングし、必要に応じて申請期間などを伝えましょう。
なお、申請は原則として企業が行います。企業は必要書類を準備し、漏れなくハローワークへ提出しなくてはなりません。必要な書類は以下の通りです。
- 【受給資格確認に必要な書類】
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1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
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2.賃金台帳、出勤簿またはタイムカード(賃金の額や支払い状況を証明可能な書類)
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- 【支給申請に必要な書類】
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1.介護休業給付金支給申請書
※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載する -
2.被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
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3.住民票記載事項証明書等(介護対象家族の氏名や申請者との続柄、性別、生年月日などを確認するのに必要)
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4.出勤簿、タイムカード等(介護休業の期間や休業中の実績を確認できる書類)
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5.賃金台帳等
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参照:厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」
介護休業給付金でもらえる金額
介護休業給付金は、「賃金(日額)×休業日数×67%」で算出します。賃金(日額)は、介護休業に入る前6カ月の賃金を、180で割った金額です。
なお、介護休業中に企業から従業員へ給与を支払う場合、介護休業給付金が減額されるケースがあります。介護休業の支給対象期間中に企業の賃金支払日があり、そこで支払われた介護休業期間中の日を対象とする賃金の額と対象期間中の介護休業給付金の合計額が「賃金月額(賃金日額×30日)」の80%を超える場合、超えた額が減額されて支給されます。そのため、介護休業期間中に賃金を支給する場合は、注意が必要です。
従業員が介護休業を申請したときの注意点
従業員が介護休業を申請した際、企業は選択的措置を講じなくてはなりません。また、原則として介護休業の申請は拒否できないこと、要介護認定を受けていない家族も対象になることも覚えておく必要があります。
選択的措置を講じる必要がある
介護休業を申し出た従業員に対し、企業は選択的措置を講じなくてはならないと法律で定められています。選択的措置とは、短時間勤務やフレックスタイム制度、始業時間および終業時間の変更、介護サービス費用の助成などが該当します。これらは、労働者が働きながら家族の介護を容易にするための措置です。
短時間勤務やフレックスタイムといった制度が、就業規則に明記するなど、制度化されることが求められます。また、これらの制度は2回以上利用できなければなりません。
参照:厚生労働省「事業主が講ずべき措置(所定労働時間の短縮等)」
社会保険料の免除制度がない
企業に属して就業する場合、健康保険や雇用保険、厚生年金保険などの社会保険へ加入します。これらの社会保険料は、従業員の給与から天引きされるのが一般的ですが、介護休業時には給与を支給しないケースが多いです。
給与は支給しなくても、社会保険料の免除制度はありません。育児休業の場合、原則として社会保険料が免除されますが、介護休業では免除制度がないため、健康保険料や厚生年金保険料などの支払い義務が従業員には発生します。
つまり、介護休業中の従業員は、無給状態にもかかわらず、社会保険料や住民税を納める必要がります。従業員の経済状況によっては、一時的に会社が立て替えるなどのサポートが必要となるため、その点についても前もって話しあっておきましょう。
要介護認定を受けていなくても介護休業は取得できる
要介護認定とは、介護が必要な度合いを7段階の数値で表現したものです。要支援1~2と、要介護1~5に区分されており、数字が大きくなるほど介護の必要性が高くなります。
介護休業制度では、従業員の家族が要介護認定を受けておらずとも、介護休業取得の対象となります。要介護状態とは、負傷や疾病、身体もしくは精神上の障害によって、2週間以上の常時介護が求められる状態です。定められた判断基準に則って、要介護状態にあるかどうかが評価されるため、要介護認定の有無は関係ありません。
なお、企業は従業員から介護休業の申し出を受けたとき、要介護状態にある事実を証明できる書類の提出を要求できます。その際は、要介護状態にある事実を証明でき、なおかつ従業員が提出可能なものを求めなくてはなりません。
また、医師が発行した診断書の提出を就業規則に盛り込むことは、厚生労働省では望ましくないとしています。診断書など要介護状態にある事実を証明する書類を提出できないからといって、休業を拒否してはなりません。
企業側は拒否できない
介護休業は国で定められた制度であり、要件を満たしている従業員なら取得が可能です。性別や雇用形態などを問わず、管理職であっても利用できる制度であるため、企業側の都合などで申し出を拒否することはできません。
また、介護休業の取得を申し出た従業員に対し、企業側が不当な扱いをしてはなりません。たとえば、懲罰的なポジション移動や解雇といった行為が該当します。ほかにも、就業環境を害して業務に携われないようにする、給与や賞与を減額する、人事考課で不当な評価をする、労働契約を従業員の不利な内容に変更するなどもしてはなりません。
従業員に対しこれらの不当な行為があった場合、企業が行政指導を受けるおそれがあります。勧告を受けたにもかかわらず従わなかった場合、その旨が公開されるため、企業としてのイメージを著しく損なうことにもつながります。
介護休業の仕組みを正しく理解しよう
介護休業は、要件を満たしている従業員なら誰でも利用できる制度であり、企業側の都合などで拒否することはできません。申し出を受けたとしても、従業員に対する不当な扱いは禁止です。
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この記事の監修者勝山 未夢(社会保険労務士)
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。 立命館大学法学部国際法務特修卒業後、新卒より社会保険労務士法人にて勤務。