社会保険(健康保険)の加入条件とは?適用範囲や手続き方法を解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

社会保険は、病気やケガ、失業、老後などに備える公的な保険制度です。事業所やそこで働く人は、法律によって定められた条件を満たす場合、社会保険に加入しなければなりません。また、社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険については、2022年、2024年の法改正により加入適用範囲が拡大しています。

ここでは、社会保険の加入条件や適用範囲の他、社会保険に加入するための手続きなどについて解説します。

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社会保険とは5つの保険の総称

社会保険とは、病気やケガ、失職、老齢、労働災害など、働く方のさまざまなリスクに対する公的な保険制度です。「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険を総称して、社会保険といいます。全ての法人は、原則的に国が定めた保険に必ず加入しなければなりません。

それぞれの保険の役割は、次のとおりです。

健康保険

健康保険は、病気やケガで医療機関を受診する際の自己負担額を減らすための保険です。健康保険の被保険者はいくつかの種類に分かれますが、企業で働く方が加入するのは、組合健保か協会けんぽです。

厚生年金保険

厚生年金保険は、被保険者が高齢になったときや、病気やケガが原因で障害が残ってしまったとき、死亡したときに、被保険者や遺族の生活を守るための保険です。厚生年金保険は会社などに雇用される方が加入でき、将来は国民年金に上乗せする形で給付を受けることができます。

厚生年金保険についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

厚生年金保険料の計算方法とは?給与計算で迷わないための基礎知識

介護保険

介護保険は、要介護や要支援認定を受けた場合の介護費用の負担を軽減するための保険です。健康保険の加入者のうち、40歳以上の方が加入します。

介護保険についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

介護保険料の計算方法は?加入対象者や保険料率の確認方法を解説

雇用保険

雇用保険は、失業した場合の求職者給付や、教育訓練給付などを受けられる保険です。育児休業や介護休業の際の給付金も、雇用保険から支払われます。

雇用保険についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

雇用保険とは?加入条件や手続き方法、計算方法をまとめて解説

労災保険

労災保険は、労働災害のリスクに備えるための保険です。業務上の事由や通勤による病気やケガ、障害または死亡に対して、被保険者や遺族へ必要な給付が行われます。

上に挙げた5つの保険を総称したものが、「広義の社会保険」です。一方、この5つの保険のうち、厚生年金保険、健康保険、介護保険の3つを、「狭義の社会保険」と呼ぶこともあります。また、雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼ばれます。

会社などに勤務する方が「社会保険」と言うときは、狭義の社会保険を指すことが一般的です。この記事でも、主に狭義の社会保険を対象に解説します。

労災保険についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

労災保険とは?加入条件や補償の種類、保険料の計算方法について解説

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健康保険は大きく3つに分けられる

社会保険のうち健康保険は、「被用者健康保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の大きく3種類に分けられます。それぞれの主な違いは、下記のとおりです。

健康保険の保険者の種類
保険制度 被保険者
被用者健康保険 組合管掌健康保険(組合健保) 健康保険の適用事業所で働く勤労者
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
共済組合 国家公務員、地方公務員、私学の教職員など
国民健康保険 自営業、フリーランスなど
後期高齢者医療制度 75歳以上の高齢者など

被用者健康保険

被用者健康保険とは、健康保険の適用事業所で働く会社員や公務員などが加入する健康保険です。常時700人以上の従業員がいる大企業が単独(または共同)で設立する「組合管掌健康保険(組合健保)」、自社独自の健康保険組合を持たない中小企業の従業員などを対象とした「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」の他、国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員が対象の「共済組合」があります。

国民健康保険

国民健康保険は、都道府県が各市町村と共に運営する保険です。自営業やフリーランスの他、会社を退職後に健康保険を任意継続していない方などが加入します。また、同じ事業・業務に就いている方で組織される「国民健康保険組合」があります。

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、75歳(一定の障害がある方は65歳)以上の方が加入する医療保険制度です。75歳になると、それまで加入していた健康保険から、後期高齢者医療制度に移行することになります。

ただし、一定の障害がある65歳以上74歳以下の方については、後期高齢者医療制度への移行は任意です。

社会保険の加入対象者と適用範囲の拡大

企業において社会保険の加入対象となるのは、常時雇用されている従業員です。正社員の他、代表取締役をはじめとする役員も対象です。また、パートやアルバイト、派遣社員も、条件に応じて加入対象となります。

なお、パート・アルバイト、派遣社員については、法改正(2022年10月および2024年10月)により、段階的に社会保険の加入義務化の範囲が広がっています。

パート・アルバイトの社会保険加入条件

2022年9月までは、パート・アルバイトは、下記の要件を満たす場合に社会保険への加入が必要でした。

社会保険の適法範囲(2022年9月まで)

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 雇用期間が継続して1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が8万8,000円以上であること
  • 学生でないこと
  • 被保険者(短時間労働者を除く、既に社会保険に加入している従業員)の総数が常時500名を超える事業所であること

ですが、現在の日本は少子高齢化が進んで労働力人口が減少しつつあり、この傾向は今後も続くと予想されています。そのような中、社会保険制度を持続的に運営するため、段階的な法改正(2022年10月および2024年10月)により、社会保険の加入義務化の適用範囲が広がっています。

2022年10月以降の適用範囲の変更点

2022年10月の法改正により、上に挙げた社会保険の加入条件のうち、「事業所の被保険者の人数」と、「雇用期間」が変更されました。具体的には、「被保険者の総数が常時500名を超える」という要件が「被保険者の総数が常時100名を超える」となり、「雇用期間が1年以上見込まれること」が「雇用期間が2か月を超えて見込まれること」へと適用範囲が拡大されています。

2024年10月以降の適用範囲の変更点

2024年10月以降は、社会保険の適用範囲がさらに拡大されます。2022年10月に変更された「被保険者の総数が常時100名を超える」が、「被保険者の総数が常時50名を超える」となります。

社会保険の適用範囲
対象 平成28年10月~令和4年9月末日 令和4年10月~(現行) 令和6年10月~(改正)
特定適用事業所 被保険者の総数か常時500人超 被保険者の総数か常時100人超 被保険者の総数か常時50人超
短時聞労働者 1週の所定労働時間か20時間以上 変更なし 変更なし
月額88,000円以上 変更なし 変更なし
継続して1年以上使用される見込み 継続して2カ月を超えて使用される見込み 変更なし
学生でないこと 変更なし 変更なし

社会保険の適用事業所

社会保険は事業所(会社)単位で適用され、保険の適用を受ける事業所を「適用事業所」といいます。なお、適用事業所には、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類があります。

強制適用事業所

強制適用事業所とは、事業主や労働者の意思にかかわらず、必ず社会保険に加入しなければならない事業所です。強制適用事業所に該当するのは、「国・地方公共団体または法人の事業所」と「5人以上の従業員を常時雇用している個人の事業所(農林水産業、サービス業などの非適用業種を除く)」です。

株式会社や合同会社などの法人は、従業員の人数を問わず強制適用事業所となります。たとえ社長1人だけの会社であっても、社会保険に加入しなければなりません。

任意適用事業所

強制適用事業所にあてはまらない事業所でも、従業員の半数以上の同意のうえ、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ、社会保険の適用事業所になることができます。これを、任意適用事業所といいます。

社会保険加入手続きは適用事業所ごとに異なる

事業所が社会保険の適用を受けるには、加入手続きが必要です。ただし、適用事業所のタイプごとに手続きに必要な書類や方法が異なります。

ここでは、強制適用事業所と任意適用事業所の社会保険加入手続きについてご説明します。

強制適用事業所の社会保険加入手続き

強制適用事業所の社会保険加入手続きは、日本年金機構で行います。例えば、「法人を設立した」「個人事業所で従業員数が5人以上になった」など、強制適用事業所の要件に該当した場合は、その事実が発生してから5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所や事務センターに「新規適用届」を提出しなければなりません。

このとき、添付書類として、法人は法人(商業)登記簿謄本(原本)、個人事業所は「事業主の世帯全員の住民票(原本・個人番号の記載がないもの)」が必要です。

任意適用事業所の社会保険加入手続き

社会保険の任意適用申請の手続きも、日本年金機構で行います。従業員の半数以上の同意後速やかに、日本年金機構に「健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書」と「任意適用同意書」「事業主世帯全員の住民票原本(個人番号の記載がないもの)」「公租公課の領収書(コピー可)」を提出します。

なお、任意適用事業所の場合は、健康保険と厚生年金保険のどちらか一方だけ申請することも可能です。

従業員の社会保険に関する手続きは企業が行う

従業員の社会保険に関する手続きは、勤務先である企業(事業所)が行います。必要な手続きは、「従業員が入社または退職したとき」「従業員が社会保険の加入条件を満たさなくなったとき」「従業員が家族を被扶養者にするとき」など、ケースによって異なります。

被保険者の資格取得手続き

社会保険の加入条件を満たす従業員がいる場合は、入社などその事実が発生してから5日以内に、「被保険者資格取得届」を年金事務所や事務センターに提出します。届出には、従業員の基礎年金番号またはマイナンバーが必要です。

なお、会社が組合管掌健康保険(組合けんぽ)に加入している場合は、別途、健康保険組合での手続きを行います。

被保険者の資格喪失手続き

従業員が退職などによって被保険者の資格を失ったときには、速やかに「被保険者資格喪失届」を年金事務所または事務センターに提出します。また、健康保険が協会けんぽの場合は、併せて健康保険被保険者証を返却します。

社会保険の加入条件を満たさなくなった場合の手続き

パートやアルバイト従業員の労働時間が減少するなどして社会保険の加入条件を満たさなくなった場合は、「被保険者の資格喪失手続き」と同様の手続きを行います。

資格喪失手続きを行う前には、加入条件を満たさなくなったことを従業員本人が認識しているか、そのうえで加入継続の意思があるかを、必ず確認しましょう。本人への確認をせず勝手に手続きをしてしまうと、従業員とのトラブルを招く可能性があります。

従業員が家族を被扶養者にする場合の手続き

従業員が配偶者や親族を社会保険の扶養に入れる(被扶養者にする)場合は、「健康保険 被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」を提出してもらったうえで、年金事務所または事務センターに届け出ます。このとき、被扶養者の戸籍謄(抄)本または住民票や収入要件確認のための書類などが必要です。

なお、家族を社会保険の被扶養者にできるのは、その家族の1年間の収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)かつ被保険者の収入の2分の1未満などの要件が定められています。

社会保険に加入しなかった場合の罰則

強制適用事業所であるにもかかわらず社会保険未加入の状態が続くと、日本年金機構から、加入状況に関する案内文書が届きます。その案内を無視した場合は、日本年金機構からの加入指導が行われます。それでも社会保険に加入しなければ、最終的には強制加入手続きが行われます。従業員を意図的に社会保険に加入させないなど、悪質と判断されると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。

なお、強制加入となった場合は、過去2年前に遡及加入し、未納分の社会保険料を納入しなければなりません。また、社会保険の加入義務があるのに未加入の事業所は、ハローワークでの求人も行えなくなってしまいます。

社会保険料の加入条件を把握して適切に手続きをしよう

社会保険の加入条件は法令で定められているため、従業員の雇用状況を把握したうえで適切な手続きが必要です。従業員の社会保険料は、給与や賞与から控除(天引き)して会社が納めます。また、給与や賞与からは社会保険料の他にも所得税などを控除しますが、控除額の計算方法や料率はそれぞれ異なります。このような煩雑な作業を効率化するには、「弥生給与」や「やよいの給与計算」のような給与計算ソフトの利用がおすすめです。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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