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雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや書き方のポイントを解説

雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや書き方のポイントを解説

雇用契約書は人を雇用する際に作成する書類ですが、「何をどこまで文書化すればよいのか」と迷う事業者や企業担当者の方は少なくありません。また、よく似た文書である「労働条件通知書」との違いに混乱してしまう方も多いでしょう。
雇用契約書を正しく作成することで、労働条件に関して従業員と認識を合わせられます。そのため、どのような法的効力があり、何を記載すべきかといった正しい知識を身に付けておきましょう。

本記事では、労働条件通知書との違いを整理しながら、雇用契約書の役割や具体的な記載事項をわかりやすく解説します。採用・雇用手続きをスムーズに進めたい事業者や担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

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雇用契約書とは雇用契約の内容を明確にし、取り交わす契約書のこと

雇用契約書は、雇用主と労働者が合意した雇用条件を明文化し、取り交わす契約書です。就業場所・担当業務・労働時間・賃金・休暇・退職など、雇用関係の根幹となる事項を1つの文書にまとめ、会社と労働者の双方が署名捺印または記名押印を行って締結します。

署名捺印とは氏名を手書きし印鑑を押すこと、記名押印とは手書き以外の方法(印字・PC入力など)で氏名や会社名を記載して印鑑を押すことを指します。いずれも、書類の「本人が内容を確認し、同意した」という証拠能力を高める効果があります。
署名捺印・記名押印のいずれの方法を選ぶ場合でも、でも雇用形態(正社員・パート・有期契約など)に応じて、明示事項や合意事項を過不足なく記載し、必要に応じて契約更新の有無や配置転換の可能性など、将来的な変更範囲もあわせて示します。

雇用契約書の作成は法律上の義務ではありません。しかし、実際に人を雇い入れる事業者の大半は作成しており、雇われる側も「雇用契約書をもらうのが普通」という意識を持つ人が多いでしょう。労使間の信頼構築をスムーズにするためにも、特段の事情がない限り雇用契約書を作成したほうがよいと言えます。

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雇用契約書と労働条件通知書の3つの違い

雇用契約書と労働条件通知書は似た部分も多いですが、「合意を記録する契約書」と「法令に基づき条件を明示する通知書」という明確な違いがあります。

それぞれの役割をより明確に把握するために、以下の3点について押さえておきましょう。

1. 法的な作成義務の有無

特に重要な違いは、雇用契約書に作成義務がない一方、労働条件通知書の作成には法的義務があるという点です。
雇用契約自体は口頭の合意だけでも成立するため、雇用契約書を作成しなくても罰則の対象にはなりません。ただし、「言った・言わない」のトラブルを防ぐ観点から、労働契約法では書面による確認を「できる限り行うもの」として推奨しています。

労働条件通知書は、労働基準法によって一定事項の通知が義務付けられています。これに違反し、書面(または電磁的方法)で通知しなかった場合は、30万円以下の罰金の対象となります。

このため、「労働条件の明示」と「合意の確認」を同時に進めるために、労働条件通知書と雇用契約書を兼用し、1つの文書として発行するケースも一般的です。

労働条件通知書について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

2. 署名捺印・記名押印の有無

雇用契約書・労働条件通知書ともに署名捺印や記名押印の法的義務はありませんが、文書の役割によって取扱いが異なります。

雇用契約書は、労働者と使用者が内容に合意したことを証明する文書であり、署名捺印・記名押印があると合意の証明力が高まるため、実務上は署名または記名、および押印を行うことが一般的です。

これに対し、労働条件通知書は雇用主が労働者に労働条件を通知するための文書であり、双方の合意を示すためのものではありません。そのため、通知書単体で作成する場合は署名捺印や記名押印は不要で、実務上もこれらを求めない運用が一般的です。

3. 記載事項に関する決まりの有無

記載事項について、労働条件通知書には法律で定められた記載ルールがありますが、雇用契約書には法的な規定はありません。労働条件通知書と雇用契約書を一本化する場合は、労働条件通知書の記載基準に従いながら、雇用契約として必要な条項を追加・調整します。
ここでは、別々に文書を作成する場合に「雇用契約書へ記載することが適当と考えられる事項」の例を挙げます(あくまで一例であり記載が義務づけられているものではありません)。

  • 労働条件通知書への合意確認の文言:「別添の労働条件通知書の内容に合意する」などの文面
  • 誠実義務や服務規律に関する事項:労働者は就業規則などに従い、誠実に職務を遂行する義務があることを確認する条項
  • 秘密保持義務:業務上知り得た機密情報を第三者に開示しないという義務に関する事項
  • 個人情報の取扱いに関する同意:雇用主が労働者の個人情報をどのように取得・利用するかについての同意事項
  • 競業避止義務:退職後の一定期間、競合他社での勤務や競合事業の立ち上げを制限する条項
  • 試用期間に関する合意:試用期間の有無や本採用拒否の要件などに関する事項
  • 契約に定めのない事項:契約書などに記載のない条項は、就業規則や労働基準法に従う旨の条項

「労働条件通知書の内容に双方が合意した」という事実と、就業規則ではカバーしきれない個別の「約束事」に主眼を置くことで、雇用契約の権利・義務関係が明確になります。

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労働条件通知書は雇用契約書で代用できる

労働条件通知書の見本

労働条件の明示と当事者の合意確認を一体で行う場合には、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の形式が便利です。労働条件通知書には記載すべき事項に関する法定ルールはありますが、書式の定めはないため、雇用契約書と1つの文書にまとめても問題ありません。

法令で求められる明示事項を網羅したうえで、会社および労働者の署名捺印(または記名押印)欄を設ければ、労働条件の明示(通知)と双方の合意確認を1枚の文書で完結できます。

「労働条件通知書 兼 雇用契約書」をどのように作成するかについては、次項で詳しく解説します。

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雇用契約書(労働条件通知書 兼 雇用契約書)の記載項目

雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合、労働条件通知書側の法的な記載ルールを守らなければなりません。

ここでは、明示が求められる項目を「絶対的記載事項」「相対的記載事項」に分け、記入の観点を整理します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、必ず記載すべき項目を指します。言い換えれば、雇用契約を結ぶにあたって必ず定めるべき項目でもあります。

絶対的記載事項の内容は、以下のとおりです。

分類 記載事項 端的な解説
契約期間 労働契約の期間 契約の開始日・終了日。無期雇用の場合はその旨を記載。
就業場所・業務 就業場所および従事すべき業務内容 実際に働く場所と、担当する具体的な仕事内容。
就業場所・業務の変更の範囲
(2024年(令和6年)4月改正)
将来的な変更の可能性 配置転換や異動において、どこまで変更があり得るか。
労働時間 始業・終業の時刻、休憩時間 1日の勤務開始・終了時刻と休憩時間。
労働時間 所定労働時間を超える労働の有無 残業(時間外労働)の有無。あり得る場合、協定の範囲など。
休日・休暇 休日・休暇 固定休日(例:土日祝)や年次有給休暇制度など。
交代制勤務 交代制勤務に関する事項 シフト勤務の順序や決定方法。
賃金 賃金額、計算方法、割増賃金率 基本給・手当の金額、残業代の計算方法(割増率含む)。
賃金 締切日・支払日・支払方法 給与の締日・支払日、支払方法(振込など)。
退職 退職に関する事項 定年、自己都合退職の手続き、解雇事由など。
有期契約 更新上限の有無およびその内容 契約更新できる回数や期間の上限(例:最大3回など)。
有期契約 無期転換ルール(申込機会) 通算5年を超える場合の無期転換の申込みができる時期の明示。
有期契約 無期転換後の労働条件 無期転換後の業務内容・賃金などの労働条件。

無期転換とは、有期労働契約が通算5年を超えた場合に、労働者の申込みによって無期労働契約に転換できる制度です。法改正により、2024年(令和6年)4月1日以降の労働条件通知書は「就業場所、業務の変更の範囲」の明示が義務付けられています。さらに有期雇用労働者を雇い入れる際には、「更新上限の有無およびその内容」「無期転換の申込機会」「無期転換後の労働条件」の記載が定められました。

また、パート・アルバイトなどの短時間労働者や、契約社員などの有期雇用労働者を雇用する場合は、昇給・賞与・退職手当の有無、雇用に関する相談窓口についても記載が義務付けられています。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、該当する制度がある場合は必ず記載すべき項目です。自社・自事業に該当する制度がないときは、記載も不要となります。

相対的記載事項の内容は、以下のとおりです。

分類 記載事項 端的な解説
退職手当 適用範囲、決定・計算・支払方法・時期 退職金制度の対象者、金額の算定方法、支払方法・支払時期など。
臨時の賃金・賞与 臨時に支払われる賃金の内容 賞与(ボーナス)や精勤手当など、基本給以外の臨時的な賃金の種類、計算方法、支払時期。
費用負担 労働者に負担させる費用 社員食堂での食事代、作業用品代、制服代など、従業員に負担させる費用に関するルール。
最低賃金 事業場内最低賃金 会社独自で定める最低賃金がある場合、その金額(※地域別・特定最低賃金とは別)。
安全・衛生 安全衛生に関する事項 健康診断、安全教育、衛生管理など、安全衛生に関する社内ルール。
職業訓練 職業訓練に関する事項 会社が実施する研修、OJT、教育訓練制度など。
補償 災害補償、業務外傷病扶助に関する事項 労災事故の補償内容、業務外の病気や怪我に対する会社の補助制度・見舞金など。
表彰・制裁 表彰および制裁に関する事項 表彰制度の基準、懲戒処分の種類・理由・手続き。
休職 休職に関する事項 病気ややむを得ない事由による休職制度の有無、休職期間・手続きなど。

これらの制度を導入している場合は、労働者との認識の相違や後のトラブルを防ぐためにも、抜け漏れがないよう確実に記載しましょう。制度の内容を明確に示すことで、運用の透明性が高まり、労働者に安心感を与えることができます。

就業規則の重要事項

労働条件通知書 兼 雇用契約書には、社内ルールである就業規則の重要事項を記載することも推奨します。

例えば、人事異動や転勤に関する規定、従業員の過失による損害に対する制裁規定、会社の都合で休業が発生した場合の扱いといった項目が挙げられます。これらの規則を雇用契約書(労働条件通知書 兼 雇用契約書)に明示しておくことで、従業員の安心や働きやすさにつながる効果が期待できます。

就業規則について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

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雇用契約書を作成した方がよいケース

雇用契約書の作成は必須ではありませんが、特に作成を推奨するケースがあります。具体的には、労働条件通知書だけでは労働者が誤解してしまうような、複雑な労働条件がある場合です。

具体的な事例は、以下のとおりです。

  • 給与体系が複雑(年俸制やインセンティブ契約など)
  • 労働時間や休日が変則的(裁量労働制・フレックスタイム制・シフト制など)
  • 就業規則と連動した合意事項がある(機密保持・競業避止・副業可否など)
  • 在職中の転勤や人事異動の可能性がある
  • 試用期間を設けている等

これらを雇用契約書で明示することで、労働者との認識のズレを防ぎ、相互の信頼構築につながります。

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「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の書き方でのポイントと記入例

文書を作成する際は、重要なポイントを押さえ、正確に記載することが大切です。

ここでは主要項目ごとに、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」を作成する際の注意点やポイントを解説します。自社の就業規則や賃金規程に沿って、必要に応じて調整しながら参考にしてください。

労働契約の期間

労働契約期間については、まず、期間の定めがあるかどうかを明確に記載することが重要です。

有期契約の場合は、契約の開始日・終了日を日付で記載し、さらに更新の有無、更新上限回数、更新の判断基準(例:業務量、勤務成績、会社の経営状況など)をできるだけ具体的に明示しましょう。

更新の可能性がある場合は、判断基準や上限回数に加えて、更新時に見直す条件も記載しておくと、その後の雇用契約の更新における手続き等がスムーズになります。

また、無期転換の対象となる雇用形態(有期契約)については、通算契約期間の考え方や、無期転換の申込み手順を補足欄に記載しておくと、労働者の理解が深まり、事務手続きの負担軽減にもつながります。

就業場所、業務内容

現時点の就業場所と担当業務については、具体的に記載しましょう。そのうえで、将来的に変更があり得る範囲をあわせて明示します。

転勤や配置転換の対象エリア、在宅勤務やサテライトオフィスの取扱い、出向の可能性など、想定される選択肢をあらかじめ文章化しておくことで、将来的な配置変更の範囲を明確に示すことができます。

担当業務については、単に職種名を記載するだけでなく、主たる業務と関連業務を記載したうえで、さらに業務変更の根拠となる規程(例:就業規則など)の参照先も併記すると、労働者にとって業務内容の範囲がより理解しやすくなります。

始業、終業時刻と休憩時間

毎日の始業・終業時刻と休憩時間が固定されており、全員が同じ時間帯に働く一般的な労働時間制の場合は始業・終業の時刻と休憩時間を数値で示し、所定労働時間を明確にしましょう。

フレックスタイム制を適用する場合は清算期間やコアタイム、所定労働時間の算定方法を続けて記載します。シフト勤務の場合、勤務表の作成単位や通知期限、標準的な時間帯の考え方を補足することも大切です。

所定外労働の有無や手続き、休日の振替や代休の扱いなど、労働時間の管理運用に直結する要素は同じ段落の末尾で触れるとわかりやすくなります。

休日、休暇

休日、休暇は週の所定休日の考え方を明示し、固定か交替制かを記載しましょう。年次有給休暇については付与日、付与日数、取得単位、時季指定の手順を簡潔に続け、計画的付与を採用する場合は対象期間と取得方法をあわせて記載します。

産前産後休業、育児・介護休業、慶弔などの特別休暇は名称の列挙に留めず、適用要件と申請の流れを示し、詳細は就業規則などの該当条項へ誘導すると運用しやすくなります。

基本賃金

基本賃金は、基本給と各種手当の名称、算定単位や支給条件、支給日を続けて記載し、賃金形態を明らかにします。

割増賃金は時間外、休日、深夜の区分ごとに賃率を明示し、対象となる時間の定義も書き添えます。賞与制度がある場合は支給時期と算定基準の概要を記しましょう。

控除項目についても、社会保険料や税金のほか、社内控除の有無に触れておくと、労働者側も計算結果を理解しやすくなります。

退職・解雇に関する規定

退職や解雇については、定年制度の有無と定年年齢、自己都合退職の申出方法と最短の申出時期を明示し、あわせて会社都合による雇用終了の取扱いに触れましょう。解雇は労働基準法に基づく手続きで行うこと、その概要および代表的な解雇事由を示すことで、労働者の理解を促進できます。

また、有期契約で更新を前提としない場合、その可能性と判断の考え方を同じ段落に記載することで、将来的な雇止めの際の説明が容易になります。

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雇用契約書を交付するタイミング

雇用契約書単体については、法令上、交付時期の定めはありませんが、実務上は内定日または内定後の入社手続き時に取り交わすケースが一般的です。内定通知書に雇用契約書と同等の内容を記載し、後日正式な様式で交付する場合もあります。

労働条件通知書 兼 雇用契約書の場合、労働条件の通知期限である「労働契約(雇用契約)の締結時」に交付しなければいけません。実務上は、内定通知から入社日までの間に取り交わすことが推奨されます。

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雇用契約書の交付方法

雇用契約書の交付は紙でも電子でも可能です。いずれの方法でも、雇用主と労働者の双方が内容を確認でき、後から同一の文書を再提示できる状態にしておくことが大切です。

通常の雇用契約書と、労働条件通知書 兼 雇用契約書の場合で、具体的な交付方法を押さえておきましょう。

通常の雇用契約書の場合

雇用契約書を紙で交付する場合、原本を二部作成し、労働者・使用者がそれぞれ一部ずつ保管します。雇用契約書が複数ページにわたる場合、綴じたうえで通し番号を付け、契印(綴じ目や袋とじ部分にまたがるように押す印)で文書の一体性を示します。
誤記が判明した場合、二重線を引いて訂正箇所を残し、訂正印を押すか、差替え版(改訂版)を作成し、脚注に改定理由を記載する方法が一般的です。
電子交付は労働者が希望した場合に可能で、PDFなどに電子署名を付与し、送付・開封・同意の各時点が記録できるしくみを整えることで、交付・管理が行えます。

「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の場合

労働条件通知書 兼 雇用契約書は、冒頭の明示欄で労働条件を提示し、末尾の合意欄で当事者双方の署名・捺印(または記名押印)を取得する構成とします。

紙で交付する場合、通知面と合意面が同一セットであることを通し番号や脚注、契印などで明らかにし、交付した版がそのまま再現できる形で保管します。

電子交付は、従業員が希望した場合に限って認められます。画面上での可読性・保存性・同意記録性が確保された形式を用い、内容に追加や変更が生じた際には、新しい版を提示・保存できるようにしましょう。文書は版数と改定日を明示し、履歴が連続的に確認できる状態にしておくことが重要です。

なお、従業員の希望がないにもかかわらず電子交付を行った場合、労働基準法および同施行規則に基づき、罰則の対象となる可能性があります。

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雇用契約書(労働条件通知書 兼 雇用契約書)を作成する際の注意点

一度交わした雇用契約書は、採用・配置・給与計算の際に参照される可能性があります。後から「解釈の齟齬」が生じないよう、だれが読んでも同じ意図が伝わる書き方に整えることが大切です。
現場で迷いがちな論点を「どの順番で・どの粒度で書けば伝わるか」という視点で解説します。雇用契約書を作成するときの注意点としてお役立てください。

雇用形態による内容をそれぞれ明示する

正社員・パート・アルバイト・有期雇用・無期雇用など、雇用形態ごとに適用される制度を明示しましょう。文書の冒頭で該当する雇用形態を明記し、本文ではその区分に特有の運用やルールを記載します。

特に、所定労働時間や所定休日の扱い、賃金形態(時給・月給)や手当の適用範囲、昇給や賞与の対象、退職金制度の有無や算定の考え方などは、雇用形態によって異なることが多い項目です。それぞれの区分に応じて、内容がわかりやすく伝わるよう明記しましょう。

また、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねて作成する場合、有期雇用労働者やパートタイマーなどの短時間労働者は、正社員よりも記載すべき事項が増える傾向があります。これは、有期雇用には更新上限や無期転換に関する事項の記載が、短時間・有期雇用労働者には昇給・賞与・退職手当の有無や相談窓口の記載が、それぞれ法令によって追加的に義務付けられているためです。雇用形態別に必要な記載事項を確認し作成しましょう。

人事異動、転勤、職種変更の有無を明示する

人事異動・転勤・職種変更の可能性がある場合、その変更の範囲を具体的に記載します。地理的な範囲(例:同一事業所内、同一都道府県、全国、海外など)、対象となる職種や職務の幅、変更を判断する基準や決定権限、通知の時期や方法を、できるだけ明確に示しましょう。

勤務地限定や職種限定で採用する場合、その限定の内容に加え、限定が見直される場面や手順もあわせて記載します。また、転勤に伴い住居移転や通勤区間の変更が想定される場合には、旅費・引越費用・住宅支援などの取扱いを示しておくことで、労働者の安心につながります。
さらに、テレワークやサテライトオフィスを併用する働き方の場合、在宅勤務日数の上限、出社が必要となる場合の扱い、出社拠点の指定方法などを明記しておきましょう。

労働時間制を明示する

労働時間については、適用される所定労働時間、始業・終業時刻、休憩時間、所定休日のルールを明記します。特に労働時間制度には、一般的な労働時間制以外にも、複数の制度があります。変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制の他、実労働時間にかかわらず一定時間働いたとみなす、みなし労働時間制や、あらかじめ一定時間分の残業代を基本給に含めて支払う、固定残業制(みなし残業制)など、自社がどの制度を導入しているのかを明確に示しておくと、労働者にとっても運用が理解しやすくなります。

変形労働時間制を採用する場合、単位期間(1か月・1年など)と労働時間の編成方法を記載し、勤務表を作成・通知する時期も明らかにします。また、みなし労働時間制を適用する場合、制度の名称と対象となる業務を特定し、みなし労働時間数を記載するようにしてください。

試用期間を明示する

試用期間の有無を最初に示し、ありの場合は開始日と終了日を具体的な日付で記載します。期間中の取扱い(賃金や各種手当、年次有給休暇の付与、社会保険の加入時期など)を通常時と区別する場合、その差も続けて書き添えましょう。

本採用の判定日は入社後のどの時点かを明確にし、判定の基準と判断主体(例:所属長と人事)を記載します。評価の観点は、勤務成績、勤怠、職務適応、服務規律などの語を用いて明示し、詳細は就業規則や人事評価制度の該当条・章を参照先として示すとよいでしょう。

ひな形やテンプレートはそのまま使用しない

ひな形やテンプレートを使う場合、あくまで叩き台として活用し、そのまま使わないようにしましょう。

ひな形は一般的な内容に基づいて作成されているため、自社の制度や雇用形態に合わせて、各項目や用語の修正が求められます。特に一般的な労働時間制の正社員向けに作成されているひな形が多いため、フレックスタイム制や契約社員、パートタイム労働者に対しては適切な内容に調整しなければなりません。利用時は自社の状況に合わせて修正しましょう。

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労働条件通知書 兼 雇用契約書の無料エクセルテンプレート

弥生では、厚生労働省モデルに準拠した労働条件通知書 兼 雇用契約書の無料エクセル版を用意しています。社会保険労務士が監修し、労働条件通知書 兼 雇用契約書を簡単に作成できるよう主要な記載項目をまとめています。項目名や文言も編集できるため、自社・自事業に合わせて柔軟に調整が可能です。

下記ページからダウンロードできるので、ぜひ雇用時の書類業務にお役立てください。

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雇用契約書に関するよくある質問

雇用契約書に関する疑問や不安を事前に解消すれば、作成業務もスムーズになります。よくある質問とその回答をまとめたので、ぜひ実務にお役立てください。

雇用契約書はいつ発行しますか?

通常、内定日または内定後の入社手続きの段階で、雇用契約書、または労働条件通知書 兼 雇用契約書を取り交わします。そのため、これらの書類は内定通知後の手続きに間に合うように発行することが重要です。まず内定通知書で概要を示し、その後に明細を確定したうえで、合意欄への署名捺印(記名押印)や電子署名まで完了させる流れが一般的です。

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雇用契約書がないとどうなりますか?

雇用契約書の作成自体に法的義務はないため、作成しなくても罰則はなく、雇用契約自体は口頭でも成立します。ただし、労働条件通知書の交付は法律で義務付けられています。

その一方で、雇用契約書を作成しておくと、会社と従業員の双方が雇用契約の内容に合意した事実を明確に示せるというメリットがあります。

そのため、実務では雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた書式を用いるケースが一般的です。

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パート従業員の雇用契約書も作成するべきですか?

労働条件通知書の作成は義務ですが、雇用契約書自体に作成義務はありません。
そのため、パート・アルバイト・シフト勤務の従業員に対しても、労働条件通知書と雇用契約書を兼ねた様式を作成しておくと安心です。特に有期雇用契約については、2024年(令和6年)4月1日の法改正により記載すべき事項が増えたため、兼用様式にまとめておくことで管理面でもメリットがあります。

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雇用契約書の作成は法律で義務付けられていますか?

いいえ、義務ではありません。雇用契約自体は口頭での合意でも成立します。ただし、口約束だけではトラブルのリスクがあるため、多くの会社が書面で取り交わしています。一方、労働条件通知書は労働基準法第15条により交付が義務付けられており、両書類は「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として一本化することも可能です。労働条件通知書についてはこちらでも詳しく解説しています。

雇用契約書に記載すべき事項は何ですか?

労働契約の期間や就業場所、業務内容などを含む絶対的記載事項と、最低賃金額や安全、衛生に関する事項などを含む相対的記載事項があります。絶対的記載事項は法令で明示が義務づ付けられている事項で、相対的記載事項は該当する制度を会社が設けている場合に記載する事項です。詳しくはこちらをご確認ください。

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雇用契約ごとの給与計算を効率化するなら給与計算ソフトを活用しよう

雇用契約書の整備は、賃金や手当の定義、勤務区分の運用と直結します。文書の整合が取れていれば、給与計算の設定も迷いにくく、昇給・更新・配置転換の際にも対応がスムーズです。

運用を継続的に最適化するには、雇用区分や手当のマスタ管理がしやすく、法令改正へタイムリーに対応できるクラウド型給与計算ソフトの活用が近道です。

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  • ※ご契約のプランによって利用できる機能が異なります。
    ※本記事は2025年12月9日時点の情報を基に制作しています。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務

中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
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税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人古田土人事労務

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