電子メール交付もOKに 労働条件通知書とは?渡すのは義務?記入例や必要な記載事項について

2021/03/31更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

従業員を雇用するときに、始業や終業の時刻や、休日は何曜日なのか、給与はいくらなのかなど、さまざまな労働条件を伝えなくてはいけません。こうした労働条件を書面にまとめたものを「労働条件通知書」といいます。

従業員を採用する時に労働条件通知書を交付するのは義務なのでしょうか。そしてこの労働条件通知書に記載しなければいけない事項はどのようなものがあるのでしょうか。

今回は、2019年4月から電子交付が可能になった労働条件通知書の交付方法や注意、ひな形をご紹介しながら、雇用契約書との違いなども含めて解説したいと思います。

POINT

  • 労働条件通知書の交付は義務!法定の労働条件を雇用者に通知する書類
  • 労働条件通知書に記載しなければいけない事項は労働基準法で定められている
  • 雇用契約書は、労働条件通知書に追記することで兼ねるケースもある

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そもそも「労働条件通知書」とはどんなものか

従業員を雇用するときに、提示するさまざまな条件を労働条件といいます。例えば始業や終業の時刻や、休日は何曜日なのかということや、給与はいくらなのかといったことです。

こうした労働条件を書面にまとめたものを「労働条件通知書」といいます。従業員を雇用する際に、どのような条件で働いてもらうのかということを明確にしておけば、採用後に聞いていた労働条件と違っていたということを防ぐことができます。

職場の雰囲気などは実際に働いてみないとわからないということもありますが、労働条件通知書を交付することで、少なくとも条件面では従業員が納得したうえで入社をすることができます。

労働条件は会社が決めて、従業員側はそれに同意するかどうかということが通常なので、会社にイニシアティブがあります。そのため、労働条件通知書の交付によって、会社が恣意的に労働条件を変更するのを防止することができるのです。

労働条件通知書の交付は義務!電子メールでの交付もOKに

それでは、労働条件通知書はいつまでに交付すべきなのでしょうか。また、交付は義務なのでしょうか。

労働条件を明示しなければならない時期は、労働基準法上は「労働契約の締結に際し」というように規定されています。つまり、採用を決めるときに明示することになります。労働条件通知書もその時に交付することになります。面接を行って、内定を出して、採用を前提に条件面談を行うという流れのなかでは、条件面談のときに交付するということになります。

詳細な内容は後述しますが、労働条件のうち、一定の事項については、紙などによる明示が義務となっています。正社員であろうと、アルバイトであろうと、労働条件通知書は必ず交付しなければならないということです。

もちろん、ただ渡せばよいというわけではありません。一つひとつの労働条件について具体的に説明して、雇用する従業員に内容をしっかりと理解してもらう必要があります。こうしたことが、のちのちの労使間の紛争防止のために重要なことです。

労働条件通知書の交付の方法は、従来は紙での交付のみ可能でした。
2019年4月からは労働条件通知書の電子交付することも認められました。電子交付とは、電子メールやSNSでのメッセージのやり取り、FAXでの交付などをいいます。さすがにFAXで、というのは時代柄なさそうですが、電子交付であれば履歴もデータで残るので便利かもしれませんね。

また、電子交付の場合は、以下の点にご注意ください。

労働条件を電子交付で明示する場合の注意点

  • 「労働者が希望した場合」に、FAX、Eメール、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービスや、LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージなどでの明示ができるようになりました。
  • 明示する労働条件の内容は、事実と異なるものにしてはいけません。
  • 労働者が希望していないにもかかわらず、電子メール等のみで明示したりすることは、労働基準関係法令の違反となり、最高で30万円以下の罰金となる場合があります。労働者が本当に電子メール等による明示を希望したかどうか、個別に、はっきりとした形で確認しましょう。
  • 電子交付で労働条件を明示する場合は、出力して書面を作成できるものに限られます。メール・SNSで明示する場合には、印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送りましょう。
  • 電子交付で明示した後は、その内容が労働者にちゃんと届いたか、本人に確認しましょう。また、なるべく出力して保存するように、労働者に伝えましょう。
参考

労働条件通知書の記載事項にはどんなものがある?

労働条件通知書には必ず記載しなければならない事項があります。
これらの項目として労働基準法に記載されているのは以下の項目です。前述の通り紙や電子交付によって明示をする必要があります。

紙や電子交付によって明示をする必要があるもの

  • 1.
    労働契約の期間
  • 2.
    労働契約の期間が有期の場合は、有期労働契約の更新の基準
  • 3.
    就業場所および従事する業務
  • 4.
    始業時刻と終業時刻・残業の有無、休憩・休日・休暇、就業時転換(24時間稼働の工場などでのシフト交代のこと)
  • 5.
    賃金の計算方法や支払い方法、賃金の締め日と支払日
  • 6.
    退職となる事由や手続き、解雇に該当する事由

これ以外の労働条件として明示すべき事項として、労働基準法上は以下の項目が挙げられています。

口頭のみの明示でもいいもの

  • 6.
    昇給に関する事項
  • 7.
    退職手当に関する事項
  • 8.
    賞与など臨時に支払われる賃金や最低賃金額に関する事項
  • 9.
    労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 10.
    安全及び衛生に関する事項
  • 11.
    職業訓練に関する事項
  • 12.
    災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 13.
    表彰及び制裁に関する事項
  • 14.
    休職に関する事項

これらの事項については明示する必要はありますが、紙や電子交付による明示までは求められていません。つまり明示の方法は口頭でもよいということになっています。

1)~5)は雇用するにあたって必ず定めるべき基本的な事項なのに対して、6)~14)については、会社によっては制度化されていない項目もあるでしょうから、労働条件通知書の形での交付までは求められていません。とはいっても、もし定めがあるならば労働条件通知書に盛り込んでおいたほうが、雇い入れる従業員に対しては親切です。

上記にかかわらず、パートタイム労働者については、6)昇給の有無、7)退職手当の有無、8)賞与の有無の3点も労働条件通知書の形で交付する必要があります。

ここでのパートタイム労働者とは、正社員などフルタイムの従業員よりも一週間の所定労働時間が短い従業員を指します。例えば、学生のアルバイトや、扶養の範囲内で働いている人など全員が該当してきます。パートタイム労働者について、実際にどこまで賞与や退職金の制度を整備するかということは経営判断ですが、少なくとも労働条件通知書上には、制度の有無を含めて明示しなければならないということです。

いつまで働いてくれるかわからないからといって、労働条件通知書の交付を適当に扱うことがないようにしましょう。

厚生労働省が発表した労働条件通知書のひな形の記入例を解説!

厚生労働省のホームページには、労働条件通知書の雛形が公開されています。今回は、それをベースに記載する上でのポイントを解説します。

書式ダウンロード(PDF)

①契約期間

正社員などは、「期間の定めなし」となります。有期契約労働者については、契約期間を明示したうえで、更新の有無や、更新の基準を明示します。

②就業の場所

働く場所を明示します。多店舗の場合などで、勤務先が複数になる場合には、可能性のある場所を列挙します。

③従事すべき業務の内容

どのような業務を行うのかを明示します(経理業務、営業業務など)。

④始業、終業の時刻、休憩時間、就業時転換、所定労働時間外労働の有無に関する事項

始業時刻と終業時刻を記載します。シフト制などで決まっていない場合は、基本的な時間を記載したうえで、「詳細な時間は毎週〇曜日までに作成するシフト表による」などというルールを記載しても問題ありません。就業時転換については、24時間稼働の店舗や工場などのシフトパターンを記載します。

休憩については、労働条件通知書に記載する始業・終業の時刻から判断します。労働基準法では、6時間超8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与える必要があります。この時間は最低限なので、この時間を超えて休憩を与えることは問題ありません。

また、記載した始業時刻と終業時刻(所定労働時間)を超えて働くこと(所定労働時間外労働)の可能性があれば、その旨も明記します。

⑤休日

曜日で表示するか、「月あたり〇日で、具体的な日は毎月末日までに翌月分を決定する」などでもよいでしょう。最低でも毎月何日間の休みがあるのかということを従業員が把握できるような記載をしましょう。

⑥休暇

休暇とは年次有給休暇や、会社が定めた特別休暇(誕生日休暇や慶弔休暇など)です。年次有給休暇については、フルタイムの場合、雇ってから6ヵ月継続勤務した場合は、最低10日を付与する必要があります。

週の労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満のパートタイマーについては、労働基準法で「比例付与」という方法での付与が定められています。比例付与は所定労働時間が変動すると、付与日数も変わってしまうので、労働条件通知書上には、「労働基準法に定める比例付与による」などの記載でもよいでしょう。

⑦賃金

賃金に関する事項を記載します。月給・日給・時給などの形態に応じて記載します。基本給のほかに手当があれば、その手当の入社時点での金額も記載します。最初の給与明細に乗せる金額になりますので、正確に記載しましょう。

みなし残業として、固定の残業代を支給する場合は、その金額のほかに、何時間分の残業代にあたるのかということも必ず明示しておきましょう。

割増賃金率については、労働基準法では、以下のとおりになっています。

イ)1日8時間(そのほかに1週間で40時間(基本的に日曜日起算))を超えた場合は25%(ただし下記のロ)の休日勤務の場合は、休日勤務が優先されます。)
ロ)週1回は確保すべき休日(法定休日)に勤務した場合は35%
ハ)22時から翌朝5時の間に勤務した場合は25%

このほか支払方法(銀行振込なのか現金手渡しなのかなど)や賃金の締日や支払日(例えば、月末締め、翌月25日支払い)の記載も必要です。また、社会保険料や税金など、控除するものも記載しておきましょう。

このほかに、労働条件通知書に必ず記載しなければいけないわけではありませんが、昇給の有無や時期、賞与の有無や支払い時期、退職金の有無なども記載しておくと従業員にとってモヤモヤ感がなくなります。

雇う側としては気が引けるかもしれませんが、賞与がない場合は、あえて「賞与無し」ということを労働条件通知書で明示するのもいいでしょう。書いておくことで、従業員もその心積もりでいられますので、かえって親切かもしれません。

⑧退職に関する事項

定年退職の年齢や、定年後の継続雇用制度の有無、自己都合による退職の際に何日前に連絡が必要かなどといったことを記載します。また、解雇に該当する事由なども記載しましょう。ただし、解雇についてはここに書いたからといって、そのまま認められるとは限りません。単純に、期待していたほどのスキルがなかったなどの理由での解雇は認められていませんので、注意しましょう。

最後に、労働条件通知書自体は、「通知」の名のとおり、会社から従業員に対して通知するものです。しかし、このように一方的な内容な通知では従業員がよく見ていなかったなどということも考えられます。

そのため、末尾に「以上の労働条件について相違のないことについて同意します」などの文言とともに、署名+押印を受領しておくのがよいでしょう。メールやSNSでのなどの電子交付であれば、内容を確認した旨の返信を受け取っておくことで、従業員が内容を承諾したという証になります。

労働条件通知書を交付しないと「30万円以下の罰金」という罰則がある!

労働条件通知書の交付は義務であり、もし交付を行わない場合には、「30万円以下の罰金」という罰則が定められています。

ただし、労働条件通知書の交付がなくても雇用契約自体は成立します。せっかく採用が決まったのに、労働条件通知書の交付がないからといって雇用契約が無効になってしまっては、採用された従業員にとって不利益すぎるからです。

また、労働条件通知書で明示された労働条件や、口頭で伝えられた労働条件が実際と異なれば、従業員から雇用契約の即時解除が認められています。また、遠方から入社した従業員が即時解除後14日以内に帰郷する場合は、その旅費を会社が負担しなければならないと労働基準法に定められています。

実際に会社に対して罰則が適用されるかはさておき、労働基準法でも交付義務がありますし、労働条件通知書を交付して、そのとおりの処遇を行うことは従業員にとって納得して働きやすい職場を作るためにも重要なことです。必ず労働条件通知書を交付するようにしましょう。

間違いやすい「雇用契約書」「労働契約書」との違いは?兼ねることはできるのか

労働条件通知書と似たような書類に、雇用契約書(または労働契約書)といったことが挙げられます。労働条件通知書は、労働基準法によって交付が義務付けられている文書であるのに対して、雇用契約書は定められた労働条件のほかに、労使双方が順守すべき事項などをお互いに確認するための書類という位置づけです。

ただし、実際には、この2点を兼ねる形で書類を作成することもあります。労働条件通知書は法定の事項を通知するための書類ですが、労働条件として列挙されている事項以外を記載したからといって、無効になることはありません。

例えば、「副業をする場合は必ず会社に事前承認を受けること」「会社内のデータは社外に持ち出さないこと」「SNSで仕事に関する書き込みは行わないこと」など、会社によって事前に伝えたい就業のルールがあります。そんな時に、労働条件通知書兼雇用契約書ということで、労働条件通知書の記載事項のほかに、欄を設けて遵守事項を列挙するという形式をとることもあります。

この場合は、契約書というからには双方合意が必要なので、必ず従業員の署名・押印ももらう必要があります。

その他の注意点 契約社員、パート・アルバイトの場合は?

契約社員やパート、アルバイトについては、いくつかの特例があります。まず、労働条件通知書での明示事項については、パートタイム労働者について、前述のとおり昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無も文書による明示事項となっています。

また、契約期間について期間の定めがある有期契約社員については、有期労働契約の契約期間が通算5年を超える場合には、従業員から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換しなければなりません。

これ自体は労働条件通知書と直接関係があるわけではありませんが、有期契約社員を雇用する場合には、将来的な無期雇用への転換も見越して採用を行う必要があります。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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