年末調整でふるさと納税の控除は受けられる?流れや注意点を解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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ふるさと納税で寄附した金額は、所得税や住民税より控除されます。しかし、年末調整では控除の手続きが行えません。ふるさと納税をした場合、ワンストップ特例申請か確定申告で控除を受けられます。
ワンストップ特例申請と確定申告は手続きが異なるため、内容の違いを理解して正しく行いましょう。また、控除を受けられる上限額は所得などにより異なります。いくらまで控除が可能かも知っておくとよいでしょう。
本記事では、年末調整でふるさと納税の控除を受けられない理由や、控除額の計算方法、ふるさと納税や控除申告の方法などを解説します。また、ふるさと納税で気を付けたいポイントやよくある質問も紹介します。
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会社の年末調整でふるさと納税の控除を受けられない理由
会社の年末調整では、ふるさと納税の控除は受けられません。寄附控除の1つであるふるさと納税は、12月31日まで寄附金額が確定できず、年末調整手続きに間に合わないからです。
年末調整は通常11月から12月に手続きを行います。それに対して、ふるさと納税は1月1日から12月31日までの寄附金の総額で控除額を決定します。ふるさと納税の集計が終わるのを待ってしまうと年末調整を実施できません。そのためワンストップ特例申請、もしくは確定申告を行います。
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ふるさと納税で受けられる控除額の計算方法
ふるさと納税を行うと、所得税と住民税双方に控除が適用されます。以下に所得税の控除と住民税の控除、それぞれの算出方法を紹介します。
所得税からの控除額
所得税では、ふるさと納税で寄附をした年が控除の対象になります。
以下の計算式で算出した額が、ふるさと納税を行った年の所得税より控除されます。
(ふるさと納税の寄附額-2,000円)×所得税の税率 = 所得税からの控除
控除対象となる寄附額の上限は、総所得金額等の40%です。その額を超えると控除されません。
-
参照:総務省「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について
」
住民税からの控除額
住民税では、寄附をした翌年の納税額より控除されます。住民税の控除には基本分と特例分があり、控除額はその合算になります。
それぞれの算出方法は以下のとおりです。
(1)住民税からの控除(基本分)
(ふるさと納税の寄附額-2,000円)×10%
- ※控除対象となる寄附額の上限は、総所得金額等の30%です
(ふるさと納税の寄附額 – 2,000円)×(100% – 10% – 所得税の税率)
ただし、(2)で算出した特例分が住民税所得割額の2割超の場合は、以下(2)’の計算式を適用します。
(2)´住民税からの控除(特例分)
(住民税所得割額)×20%
基本分と特例分を算出できたら、住民税からの合計控除額を以下のように計算します。
特例分が住民税所得割額の2割以下の場合
(1)+(2)=住民税からの控除
特例分が住民税所得割額の2割超の場合
(1)+(2)’ =住民税からの控除
なお、特例分が住民税所得割額の2割超になると、「ふるさと納税の寄附額-2,000円」の全額が控除されなくなり、実質負担額は2,000円より高くなります。
-
参照:総務省「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について
」
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ふるさと納税の流れ
ふるさと納税は人により控除の上限額が異なります。以下にふるさと納税の流れを紹介します。
1.ふるさと納税額の上限額がいくらなのか調べる
まずふるさと納税における控除の上限額を確認します。控除額の上限額は各自の所得額などにより異なります。一般的にふるさと納税では寄附額から2,000円を引いて控除額が算出されます。ふるさと納税自体に上限額はありませんが、控除上限額を超えると、超えた分は純粋な寄附となり、自己負担額が増えて節税効果は少なくなります。
控除の上限額は、ふるさと納税ポータルサイトなどでシミュレーションが可能です。給与収入や配偶者控除の有無などの条件を入力すれば、ある程度の目安額がわかります。
ふるさと納税の控除額は住民税決定通知書で確認できる
住民税決定通知書とは、毎年5月から6月に自治体から郵送される書類で、住民税の税額が記載されています。ふるさと納税の控除額は、住民税決定通知書の摘要欄で確認できます。摘要欄の寄附金税額控除額が、「ふるさと納税の寄附額-2,000円」になっていれば、問題なく控除が行われた証拠です。
住民税決定通知書は再発行できません。届いたら寄附金税額控除額が正しいか確認しましょう。なお、ワンストップ特例申請では控除が住民税にのみ適用され、所得税の還付は行われません。
また、令和6年度分以降の個人住民税特別徴収税額通知(納税義務者用)から、従業員への電子データによる税額の通知が可能になりました。そのため、電子化対応企業の従業員が受け取る個人住民税特別徴収税額通知書も電子化されます。
2.返礼品を選んで寄附をする
自身の控除の上限額を把握したら、ふるさと納税のポータルサイトなどを利用し、返礼品を選んで寄附を行います。返礼品は自治体の特産品などが多いですが、中にはガイドツアーや自治体ならではの体験など、ユニークな返礼品もあります。
寄附の後はおよそ数週間から数か月で書類や返礼品が届きます。具体的な時期は各自治体や返礼品により異なるため、寄附をする際に確認しましょう。また、自治体から送られてくる書類は、ワンストップ特例申請や確定申告で使用します。
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3.ワンストップ特例申請か確定申告でふるさと納税の控除を受ける
控除の申告はワンストップ特例申請、あるいは確定申告で行えます。以下にそれぞれの特徴について、詳しく解説します。
ワンストップ特例申請をする
ワンストップ特例申請とは、確定申告なしで寄附金控除が受けられる制度です。確定申告が不要の方で、ふるさと納税を行う自治体の数が5つ以内の場合に利用できます。2,000万円超の給与収入を得ている場合などには確定申告をしなければなりません。6自治体以上へふるさと納税している場合でも同様です。
ワンストップ特例申請を利用する流れは、以下のとおりです。
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1.「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を用意し記入する
-
2.申請書以外に提出する書類を準備する
-
3.期限内に寄附をした自治体へ必要書類を提出する
寄附金税額控除に係る申告特例申請書は、総務省ホームページよりダウンロード可能です。
申請書のすべての項目に記入が終われば、その他の書類を準備しましょう。申請書以外に提出する書類は、以下のとおりです。
- マイナンバーカードの表と裏のコピー
- 通知カード+運転免許証やパスポートなど身分証明書のコピー(マイナンバーカードがない場合)
- マイナンバーが記載された住民票+運転免許証やパスポートなど身分証明証書のコピー(マイナンバーカード・通知カードがない場合)
書類が準備できたら、寄附をした自治体にすべての書類を郵送します。書類は、寄附をした自治体ごとにふるさと納税を行った翌年の1月10日必着です。また、一部の自治体では、マイナンバーカードを使用したオンライン申請が可能です。オンライン申請が可能かどうかは、各自治体に確認してください。
確定申告を行う
会社員は確定申告なしで控除が受けられるワンストップ特例申請制度を利用できます。しかし以下の条件に該当する人は、会社員でも確定申告を行います。
- 1月1日〜12月31日の間で、ふるさと納税の寄附先が6自治体以上になった人
- ワンストップ特例申請の申請書を提出できなかった自治体がある人
- 年間給与収入が2,000万円を超えている、給与所得や退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えている、など確定申告をしなければいけない条件を満たしている人
会社員が確定申告をするときの流れは、以下のとおりです。
-
1.必要書類を用意する
-
2.確定申告書を作成する
-
3.確定申告書と添付書類を提出する
確定申告書は税務署のホームページからダウンロードできます。毎年更新されるため申告する年度にあった書式を準備しましょう。
会社員が確定申告をするときに準備するふるさと納税の関連書類は、以下のとおりです。
- 対象期間の寄附金受領証明書
- 対象期間の源泉徴収票
- 還付金受取用口座番号
- マイナンバーカード(マイナンバーカードがない場合、通知カード+運転免許証やパスポートなど身分証明書のコピーで代用が可能)
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会社員のふるさと納税で気を付けたいポイント
ふるさと納税は節税できるうえに、返礼品がもらえるため多くの人が利用しています。しかし、意外と知らない注意点もいくつかあります。以下に覚えておくべき4つの注意点について、詳しく解説します。
寄附金額がすべて控除されるわけではない
ふるさと納税には2,000円の負担金や、所得税および住民税の控除額上限があり、寄附金額が全額税金から差し引かれることはありません。特に、控除額の上限はその人の所得に応じて異なります。控除の上限額を超えると通常の寄附とみなされ、2,000円の自己負担額を超えてしまいます。そのため、各税の控除額の上限がどの程度になるか、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
寄附金金額以上の価値の返礼品はない
ふるさと納税の制度が開始されたばかりのときには、寄附金額に見合わない高額な返礼品を提供する自治体がありました。そのようなサービスはむしろ税収を圧迫することにつながります。そのため、現在は返礼品に以下のような制限が課されています。
- 返礼品は地場産品で調達費は寄附額の3割以下であること
- 調達費用と送料・仲介サイトへの仲介手数料を合計した費用の総額は5割以下
規制ができたことにより、返礼品は一定金額内の商品・サービスのみとなっています。
控除が行われるのは翌年になる
ふるさと納税は1月1日から12月31日に行った寄附金額を合計するため、寄附を行った年には控除できません。会社員が住民税を納めるのは翌年6月からです。それまでの間は単に寄附した金額分を自己負担している状態になります。控除までは時間がかかるため、多額の寄附を行うときには注意しましょう。
住宅ローン控除のほうが優先される
ふるさと納税は住宅ローン控除と併用できます。しかし、ふるさと納税による控除が多いと、住宅ローン控除が全額適用できない場合があります。
通常、住宅ローン控除は所得税より控除されますが、控除しきれない分は、住民税からも控除できます。ところが、住民税から控除できる金額には上限が設けられています。ふるさと納税の控除によって住民税の控除額が上限に達していると、住宅ローン控除の残りの額が引ききれません。
ふるさと納税で所得税や住民税が減るとしても、住宅ローン控除が引ききれないと節税効果が薄まります。ふるさと納税の上限額をシミュレーションするときには、住宅ローン控除を考慮しましょう。
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ふるさと納税に関するよくある質問
ふるさと納税は多くの人が利用している分、他の控除との併用や年末調整での還付が可能かなどの疑問も多く挙げられます。ここからはよくある質問とその回答を紹介します。
ふるさと納税を行うと会社に迷惑がかかる?
ふるさと納税を行っても会社に影響はありません。そもそも、年末調整ではふるさと納税における控除を受けられません。控除の手続きには、ワンストップ特例申請か確定申告を利用します。ワンストップ特例申請は寄附をした自治体が手続きを行い、確定申告では自分で書類を作成して税務署に申告します。
どちらの方法を選んでも会社の年末調整業務にふるさと納税は関係ないと言えます。また、ふるさと納税は自分や自治体が控除の手続きを行うものです。そのため、会社への申告も不要です。
ふるさと納税をすると年末調整で還付金が受けられる?
ふるさと納税を行っても、年末調整の還付金は受けられません。年末調整で還付金が受けられるのは配偶者控除やひとり親控除、住宅ローン控除などです。また、ふるさと納税で還付金が受け取れるのは確定申告をしたときに限られます。確定申告では所得税の控除も適用され、所得税はその年に控除が行われるからです。その一方で、ワンストップ特例申請を利用した場合は、控除が適用されるのは住民税のみです。
還付金は、確定申告期間終了後1か月から2か月程度で入金されます。詳しい入金の時期や還付金額は、確定申告後に送付される国税還付金振込通知書にて確認が可能です。
ふるさと納税と医療費控除は併用できる?
ふるさと納税と医療費控除は併用できます。ふるさと納税はワンストップ特例申請を使えば確定申告は不要です。ただし、医療費控除は年末調整できないため、確定申告を行います。すでにワンストップ特例申請の申請書を自治体に送っていたとしても、その後に確定申告でふるさと納税を申告すれば控除は可能です。
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年末調整ではふるさと納税の控除が受けられない
ふるさと納税は年末調整で控除を申告できないため、ワンストップ特例申請か確定申告を行います。申告方法によって控除が適用される税金の種類や、適用できる自治体の数、申告の流れなどに違いがあります。また、ふるさと納税は各自の所得額などに応じて控除の上限額が違うため、上限額を把握したうえで利用することが大切です。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。