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税金の計算方法とは? 年収103万円超えの税負担や手取りを増やすための対策も解説

監修者:中川 美佐子(税理士)

2024/03/01更新

給与計算の担当者は、従業員から税負担や税金の計算方法について尋ねられることがあります。疑問を解消できるように、正しい知識を身につけましょう。ここでは、給与から天引きされる税金の種類や計算方法、年収の壁や手取りを増やすための対策について解説します。

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給与から引かれる税金の種類

給与からは、源泉所得税と住民税が天引きされます。それぞれの税の概要と、計算方法について解説します。

1. 源泉所得税

所得税は個人の所得に応じて課せられる税金です。その年の1月1日から12月31日までに、各個人が得た所得の合計に課せられます。

所得とは、年間の総収入金額から所得控除を引いた金額です。現行の所得税率は5%から45%の7段階です。2037年(令和19年)までは、所得税額の2.1%分の復興特別所得税(東日本大震災からの復興のために創設された税金)が所得税に上乗せされます。

所得税の計算方法

給与所得者の場合、源泉所得税の算出は以下の手順で行います。

  • 給与所得の算出:給与所得=給与収入-給与所得控除-非課税の手当
  • 課税所得の算出:課税所得=給与所得-所得控除
  • 所得税額の算出:所得税額=課税所得×税率-控除額

給与所得とは、勤務先から支払われる給与や賞与などの所得です。給与所得控除の金額は、給与収入に応じて変わります。給与収入が162万5,000円までは、一律55万円です。非課税となる手当は、通勤手当や宿直・日直手当、出張手当などです。

所得控除とは、納税者の個人的な事情を考慮した15種類の控除を指します。例として挙げられるのは、基礎控除や配偶者控除、医療費控除や寄附金控除、雑損控除などがあります。ほとんどの所得控除は年末調整の際に申請すれば控除されますが、中には個人で確定申告が必要なものもあります。医療控除と寄附控除、雑損控除は年末調整の対象ではありませんので、自分で確定申告をする必要があります。
参考:国税庁「No.1400 給与所得新規タブで開く
参考:国税庁「No.1410 給与所得控除新規タブで開く

2. 住民税

地方税のひとつである住民税は、道府県民税と市町村民税の総称です。住民税には、個人が負担する個人住民税と法人が負担する法人住民税があります。

住民税の計算方法

住民税には、所得割と均等割があります。所得割は所得に応じて決められるものであり、均等割は一定収入以上ならば一律定額で決められるものです。住民税の計算は、以下の手順で行いましょう。

  • 総所得金額の算出:総所得金額=合計所得金額-損失の繰越控除
  • 課税所得の算出:課税所得=総所得金額-所得控除額の合計
  • 所得割額の算出(税額控除前):所得割額=課税所得額×税率(10%)
  • 所得割額の算出(税額控除後):所得割額=所得割額(税額控除前)-税額控除額
  • 住民税額の算出:所得割額(税額控除後)+均等割額

合計所得金額は、その年の1月1日から12月31日までの収入から必要経費などを引いた金額です。所得割の税率は10%(区市町村民税・特別区民税6%、道府県民税・都民税4%)です。均等割の税額は、2014年から2023年までは5,000円(区市町村民税・特別区民税3,500円、道府県民税・都民税1,500円)になります。

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税金の計算に大きく影響する“年収の壁”とは

年収によって、負担する税金や保険料は大きく変わります。担当者は所得税や年収の壁について理解することが大切です。

所得税は年収103万円超えから課税対象に

前述の計算方法からわかるように、所得から控除額が差し引かれた金額に課税されます。そのため、控除額の方が所得よりも大きい場合には所得税がかかりません。

所得税がかかるボーダーラインは、基礎控除額の48万円に給与所得控除55万円を足した103万円です。年収103万円までは所得税がかかりませんが、それを超えると課税対象になります。配偶者や親に扶養されている場合、年間103万円以上の収入を得ると配偶者控除や扶養控除を受けられません。収入が増えると、所得税がかかるだけでなく、配偶者や親の所得税、住民税の負担が増加します。
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率新規タブで開く

年収103万円以外にも税負担に影響する壁がある

税負担のボーダーラインは、年収103万円だけではありません。年収106万円、130万円、150万円の壁が及ぼす影響について理解する必要があります。

年収106万円の場合

年収106万円の壁は、社会保険(健康保険、厚生年金保険など)にかかわる壁です。配偶者の扶養範囲内で働く場合は、保険料を払わずに社会保険に加入できます。しかし年収が106万円を超え、かつ以下の要件をすべて満たす場合には社会保険に加入しなければなりません。毎月の給与から、社会保険料が天引きされるようになります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金が月額88,000円以上(基本給及び諸手当を指し、交通費や残業代・賞与は含まない)
  • 雇用の見込みが2か月以上ある
  • 学生ではない
  • 事業所の従業員数が101人以上である(2024年10月からは51人以上の事業所も対象)

上記の条件のうち、ひとつでも当てはまらなければ社会保険の加入対象から外れます。
参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内新規タブで開く

年収130万円の場合

前述のとおり年収106万円を超えても、5つの要件に当てはまらなければ配偶者や親の扶養範囲内で働けます。しかし年収が130万円を超える場合には、5つの要件に当てはまらなくとも社会保険に加入しなければなりません。その年に掛け持ちで働いている場合は1か所の勤務先からの給与ではなく、すべての勤務先の合計で判断されます。年収が130万円を超えた場合は配偶者や親の勤務先の社会保険の扶養から外されるため、自分の勤務先の厚生年金に加入しましょう。

しかし、勤務条件によっては厚生年金に加入できない場合があります。パートやアルバイトの場合、少なくとも1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の3/4以上でなければ加入できません。その場合は国民年金に加入し、国民年金保険料を払います。ご自身で社会保険に加入したくない場合には、年収が130万円を超えないようにする必要があります。その場合は、勤務先に相談して勤務日数や時間を調整するのも、ひとつの方法です。

年収150万円の場合

所得者本人もしくは配偶者が一定の要件を満たせば、配偶者控除か配偶者特別控除を受けられます。配偶者の年収が103万円以下ならば配偶者控除、103万円を超えると配偶者特別控除の対象です。年収150万円の壁とは、配偶者特別控除を満額で受けられるかのボーダーラインです。年収が150万円を超えると、控除額が段階的に減っていきます。配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下の場合、納税者の合計所得金額に応じて控除額が変わります。

  • 控除を受ける納税者の合計所得金額が900万円以下:控除額38万円
  • 合計所得金額が900万円超950万円以下:控除額26万円
  • 合計所得金額が950万円超1,000万円以下:控除額13万円

ただし配偶者の年収が150万円以下でも、所得者本人の合計所得金額が1,000万円(給与所得のみの場合は年収が1,220万円)を超える場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除は受けられません。

手取りを増やす6つの対策

税額控除によって、課税所得を減らして手取りを増やせます。担当者は活用できる6つの控除や制度の知識を得て、従業員へのアドバイスに役立てましょう。

1. 社会保険料控除

社会保険料控除は、自身や生計を一にする家族が負担すべき社会保険料を支払った場合に適用されます。その年に支払った金額や給与・公的年金から引かれたすべての金額が控除対象です。本人の社会保険料だけでなく、20歳以上の子どもの国民年金保険料は、生計を一にするとみなされれば控除を受けられます。

社会保険料は勤務先の年末調整で控除されます。ただし所得者本人が副業などで複数の収入を得ている場合は、確定申告が必要です。

2. 生命保険・地震保険控除

支払った生命保険料や地震保険料について、控除を受けられます。生命保険料控除の対象となるのは、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料です。以下のとおり、新制度と旧制度では控除できる限度額が異なります。

  • (契約日が2012年1月1日以降)新制度:所得税120,000円、住民税70,000円
  • (契約日が2011年12月31日以前)旧制度:所得税100,000円、住民税70,000円

地震保険料控除は、支払った保険料の金額に応じて所得税と住民税が控除されます。所得税の控除額は、その年に支払った地震保険料が5万円超ならば一律50,000円、50,000円までなら支払った金額です。住民税の控除額は、その年に支払った地震保険料が50,000円超ならば一律25,000円、50,000円までならば支払った保険料の1/2です。

3. 医療費控除

1年間(その年の1月1日から12月31日まで)に払った自分や家族の医療費が実質10万円を超えた場合は、医療費控除を受けられます。控除の対象になるのは、診療費や治療費、妊娠・出産にかかった費用や介護費用などです。治療費だけでなく、通院にかかった交通費も含まれます。

さらに特例として特定の医薬品の費用を控除できる「セルフメディケーション税制」がありますが、医療費控除との併用はできません。前述のとおり、医療費控除は年末調整の対象ではありませんので、ご自身で確定申告をすることで、税額を清算することができます。

4. ふるさと納税

ふるさと納税は寄附金控除を活用した制度です。住んでいる自治体ではなく自分が選んだ自治体に寄付できる制度であり、もともとは過疎地と都市部の税収格差是正や、税制を通したふるさとへの貢献を目的として作られました。寄附金控除を受けられるうえに自治体からの返礼品を受け取れるため、多くの人が利用しています。

一般的な自治体への寄附において、所得税や住民税から控除されるのは寄附金額の一部です。しかしふるさと納税では、上限額はあるものの自己負担額の2,000円を引いた寄附金全額が控除対象です。上限額は年収や家族構成によって異なり、上限額を超えた分は控除の対象になりません。返礼品を選ぶ際には、上限額に注意するとよいでしょう。

5. iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分が決めた金額を毎月積み立て、自分が選んだ商品で運用する私的年金制度です。iDeCoは国が後押ししており、以下の税制優遇が用意されています。

  • 掛金が全額社会保険料控除の対象になる
  • 運用益や利息が非課税対象になる
  • 年金としての受け取りは公的年金等控除、一時金としての受け取りは退職所得控除の対象になる

掛金が全額所得控除されるので課税所得が減り、その年の所得税と翌年の住民税が軽減されます。ただし個人払込の場合、所得控除を受けるには年末調整や確定申告で手続きが必要です。

また、一般的に金融商品(投資信託や預金など)の運用益は課税されますが、iDeCoは運用益は非課税です。他の金融商品へ切り替える際も、税金は引かれません。iDeCoで受け取りを開始できるのは原則60歳以降であり、年金か一時金、もしくは併用という受け取り方法があります。これらすべては、所得控除の対象です。

6. 住宅ローン控除

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合や増改築をする場合に受けられる控除です。年末時点における住宅ローンの残高のうち0.7%が所得税から控除されます。控除期間は最長13年間(既存住宅の増改築は最大10年)です。

住宅ローン控除額が所得税額を上回る場合は、一定の要件を満たせば翌年の住民税から税金が控除されます。住宅ローン控除を受けるには、借入金の返済期間や床面積など複数の条件を満たさなければなりません。控除を受ける場合、初年度は確定申告が必要です。2年目以降は年末調整時に勤務先に書類を提出することで、控除の手続きが可能です。

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この記事の監修者中川 美佐子(税理士)

税務署の法人税の税務調査・申告内容の監査に29年勤務後、令和3年「たまらん坂税理士法人」の社員税理士(役員)に就任。法人の暗号資産取引を含め、法人業務を総括している。

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