労務の実務で生成AIをどう使う?活用場面や注意点をわかりやすく解説
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生成AIの業務活用が広がるなか、労務分野でも情報整理や文書作成の効率化に役立てる動きが見られます。
生成AIは、法改正情報の要約や社内文書の下書き、労務データの分析など、労務担当者の作業を補助する場面で活用できます。ただし、社会保険等の手続き業務の書類作成や給与計算、就業規則の解釈、個別対応などは生成AIに任せず、業務に応じて専用システムで調べたり専門家に相談したりすることが大切です。
本記事では、労務の実務で生成AIが役立つ場面や、活用時の注意点、労務管理ソフトとの使い分けを解説します。生成AIを業務に取り入れたい労務担当者の方は、導入前の整理にぜひ参考にしてください。
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生成AIが労務の実務で役立つ4つの場面
労務分野では、法改正情報の確認や社内ルールへの反映、従業員向け文書の作成、勤怠・人事データの分析など、幅広い業務が発生します。生成AIは、こうした業務に欠かせない情報整理や下書き作成、傾向の把握などの支援を得意とします。
本項目では、労務の実務で生成AIが役立つ4つの場面について、具体的なプロンプト(AIへの指示文)の例と併せて解説します。
法改正情報を収集して自社への影響を整理する
労務では、労働基準法や労働安全衛生法に加え、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法、労働保険徴収法、税法など、複数の法令を確認しながら実務を進行します。これらの法令は改正や制度変更が行われることがあるため、労務担当者は最新情報を確認し、自社への影響を整理することが望ましいです。
生成AIを活用すれば、法改正情報の要点をまとめたり、確認すべき項目を洗い出したりする作業を効率化しやすくなります。
例えば、官公庁が公表した通達やガイドラインの本文をコピーして生成AIに貼り付け、「中小企業の労務担当者が対応すべきポイントを5つにまとめてください」と指示する方法があります。汎用的な生成AIは外部URLの内容を正確に読み取れない場合があるため、URLだけを入力するよりも本文を貼り付けるほうが確実です。なお、URLの読み込みに対応した生成AIであれば、URLをそのまま入力する方法もあります。
- プロンプト例:
あなたは中小企業の労務担当者です。以下の厚生労働省の通達から、自社の就業規則に影響する変更点を5つに整理してください。(通達のURLまたは本文と、自社の就業規則のデータを貼り付ける)
出力された内容は、法改正の概要や実務上の確認事項を整理する際のたたき台として活用できます。「自社の就業規則に影響がありそうな項目」「届出や社内対応の期限」などを把握するうえでも有用です。
ただし、生成AIの出力はあくまでも下書きであり、そのまま正式な判断材料にするのは避けるべきです。対応方針を決める際は、官公庁が公表している原文を確認し、状況に応じて社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。
従業員向けの通知文書やマニュアルの下書きを作成する
労務の実務では、従業員向けの案内文やマニュアルを作成する機会が多くあります。生成AIに「制度内容」「対象者」「文体(ですます調、フォーマルにor簡潔に)」「文字数の目安」など具体的な指示を与えると、社内文書の下書きを短時間で出力してもらえます。
- プロンプト例:
育児休業(男性育児休業含む)の対象者に対する、取得の仕方に関する案内文を、対象:全従業員、文体:ですます調、文字数:400字程度で作成してください。
例えば、法改正に伴う社内制度の変更案内、育児休業取得に関する通知、年末調整の記入マニュアルなどを作成する場面で活用できます。生成AIを活用すれば、労務担当者がゼロから文章を作成する負担を減らし、出力された下書きの確認や修正に時間を充てやすくなります。
労務データを分析して傾向や課題を可視化する
賃金・勤怠など労務データの分析も、生成AIが得意とする領域です。CSVなどの形式で出力したデータを読み込ませれば、集計や比較、傾向の整理にかかる時間を短縮でき、上長や経営層向けの報告資料を作成する際の下書きとしても役立ちます。
例えば、部門別の平均残業時間を多い順に並べたり、前年と比べて人件費が増えた部署を抽出したりする用途に活用できます。目視での確認や手作業でのデータ加工にかかる負担を減らせるため、課題の把握や改善策の検討に時間を充てやすくなる点もメリットです。
- プロンプト例:
以下のCSVから部門部課別の平均残業時間を集計し、前年同月比で増加率の高い部門部課を昇降順で示してください。
ただし、賃金や勤怠のデータには、従業員の氏名、社員番号、給与額、労働時間など、個人を識別できる情報や慎重に扱うべき情報が含まれる場合があります。外部の生成AIサービスにデータを入力する場合は、事前に氏名や社員番号などを削除・置換し、個人を特定できない形に加工しておきましょう。
また、入力したデータの保存・利用範囲について、サービス提供者の利用規約や設定を確認することも大切です。個人情報を含むデータを扱う場合は、法人向けプランやAPI、社内環境で利用できるAIサービスなど、情報管理の条件を確認できるサービスを選ぶと安心です。
社内からの労務に関する定型的な質問への回答案を準備する
労務担当者には、従業員から勤怠や各種手続きに関する問い合わせが寄せられます。その都度個別に対応していると作業が中断され、通常業務に影響が出ることも少なくありません。こうした場合、よくある定型的な質問については、生成AIを活用して回答案を準備しておくと効率的です。
例えば、「有給休暇は翌年に繰り越せますか」「通勤手当の変更届はどこに提出しますか」など、従業員から寄せられやすい質問を入力すれば、回答案を作成できます。その際、就業規則や社内FAQ、各種申請ルールなどを根拠資料として参照させることで、社内ルールに沿った回答案を作成しやすくなります。
- プロンプト例:
以下の就業規則をもとに『有給休暇の繰越ルール』への回答案を作成してください。
作成した回答案を整理し、労務関係のFAQ集として社内で共有すれば、問い合わせ対応にかかる時間を短縮できます。担当者が不在の場合でも、FAQ集を参照すれば他のメンバーが回答しやすくなるため、属人化の防止にも寄与します。
さらに、就業規則やFAQをあらかじめ生成AIに読み込ませ、従業員が自ら質問して回答を得られる形にしているケースもあります。ただしこの場合は、法改正や社内規定の変更に合わせて、労務担当者などが参照元のデータを定期的に更新・メンテナンスすることが欠かせません。
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労務で生成AIに任せてはいけない業務
生成AIは、「調べる・書く・整理する」作業を補助するツールとして活用できます。一方で、労務分野には正確な手続きや個別判断が求められる業務も多く、生成AIに任せるべきではない領域があります。主な例は以下の5つです。
- 届出書類の正式な作成と提出
- 給与計算
- 就業規則の解釈や適用判断
- ハラスメントや懲戒処分への対応
- 機密情報を入力する業務
社会保険や雇用保険などの手続きでは、法定様式に沿って、必要事項を正確に記入することが求められます。生成AIの出力をそのまま使うと、記載ミスや様式のズレが生じるおそれがあるため、労務管理や社会保険手続きに対応した専用のシステムを選びましょう。
また、労働・社会保険に関する申請書類の作成や提出代行、就業規則などの帳簿書類の作成は、社会保険労務士法で社労士の業務として定められています。自社内で生成AIを補助的に使うことはできますが、外部に依頼する場合や判断に迷う手続きは、社会保険労務士に相談しましょう。
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参照:e-Gov法令検索「社会保険労務士法 第二条
」
給与計算は、生成AIではなく給与計算ソフトなどの専用システムで対応するのが基本です。基本給や各種手当の集計、社会保険料・税金の控除などは、法令や社内規定に基づいて正確に処理しなければなりません。計算結果の誤りは従業員への支給額や納税額にも影響するため、生成AIを利用する際には、人が介してかならず確認しなければなりません。
就業規則を用いて社内の労務対応をする際には、個別の事情や社内規定、過去の運用実態を踏まえた検討が求められます。生成AIの回答は参考にとどめ、個別の状況と就業規則を照らし合わせて確認しましょう。最終的な判断は、労務担当者や社会保険労務士などの専門家が行います。
ハラスメントや懲戒処分への対応では、事実確認や関係者へのヒアリング、処分の相当性、法的リスクの検討など、慎重なプロセスが求められます。生成AIの出力を参考情報として使う場合でも、判断の主体は人に置き、個別の状況に応じて対応することが大切です。
なお、従業員の氏名、マイナンバー、個人名付きの給与データなど、機密性の高い情報を外部の生成AIサービスに入力するのは避けましょう。個人情報の取り扱いに関する注意点について、詳しくは後述します。
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労務で生成AIを使う際の3つの注意点
生成AIを労務で活用する際は、出力内容の裏付け、入力情報の管理、担当者による最終確認を徹底しましょう。法令や制度に関する回答は一次情報で確認し、個人情報の入力範囲は社内ガイドラインで明確にしたうえで、AIの出力を次の工程につなげることが大切です。
AIの出力は必ず一次情報で裏付けを取る
生成AIは、実在しない情報や誤った内容をもっともらしく出力することがあります。この現象はハルシネーションと呼ばれ、法律の解釈や制度の説明でも起こり得ます。
特に、法改正に伴う社内規定の変更や、公的機関への届出に関する業務では、正確な情報を確認したうえで対応を進めることが大切です。生成AIの回答を参考にする場合でも、官公庁の公式ホームページや法令の原文など、一次情報で裏付けを取りましょう。
細かな解釈が求められる場面では、社会保険労務士に確認すると安心です。生成AIの出力をそのまま採用するのではなく、一次情報や専門家の確認を経て判断するプロセスを、社内のルールとして定着させましょう。
入力してよい情報の範囲を社内ガイドラインで定める
労務では、従業員の氏名、住所、給与、勤怠、マイナンバーなど、個人情報を扱う場面が多くあります。外部の生成AIサービスを利用する場合は、入力してもよい情報を社内ガイドラインで明確に定め、利用する担当者全員に対して周知しなければなりません。
例えば、「個人名やマイナンバーは入力しない」「個人を特定できないように加工した統計データは入力できる」など、情報の内容や匿名性に応じてルールを分ける方法があります。併せて、利用するAIサービスのデータ保存先、入力データの学習利用の有無、アクセス権限の管理方法も確認しておくと安心です。
なお、個人情報保護委員会は2023年6月に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。企業が労務業務で生成AIサービスを利用する場合、従業員の個人情報を含む内容を入力する際は、利用目的の範囲内であるかを確認しなくてはなりません。また、本人の同意なく個人データを入力し、そのデータがAIの学習やサービス改善などに利用される場合は、個人情報保護法に抵触する可能性があります。
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参照:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
」P.2
業務で利用する場合は、入力データを学習に使わないことが契約や仕様で明示されているAPIや法人向けプラン、社内環境で利用できるサービスを選びましょう。入力前に個人を特定できる情報を削除・置換するなど、秘匿化や匿名化の運用も併せて検討することが大切です。
最終確認は人間が行う
生成AIの出力は、常にたたき台として扱いましょう。生成AIの回答は、事実と異なる内容や、自社の就業規則や実態に合わない内容が含まれることもあるため、担当者が内容の正確性や表現の妥当性を確認したうえで活用することが大切です。従業員への案内や社内文書に反映する前に確認・承認のプロセスを設けておくと、法令や社内ルールに沿った情報共有を行いやすくなります。
確認・承認のプロセスでは、誰が内容を確認し、どの段階で承認するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。担当者ごとの判断に偏らないよう、法令や社内ルールに沿って確認できる体制を整えておきましょう。
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生成AIは労務の「アシスタント」として活用しクラウドシステムと組み合わせよう
生成AIは、法改正情報の要約や社内文書の下書き、労務データの分析など、情報整理や文章作成の補助に活用できます。ただし、正確な処理や個別判断が求められる場面では、専用ソフトやクラウドシステム、専門家による確認と組み合わせて活用しましょう。
労務業務を効率化するには、まずクラウドシステムを整え、そのうえで生成AIを補助的に組み合わせることが大切です。役割を分けて活用することで、正確性を保ちながら業務効率化を進められます。
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※本記事は2026年6月5日時点の情報を基に制作しています。
※ご契約のプランによって利用できる機能が異なります。
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よくあるご質問
生成AIに労務相談をしても大丈夫ですか?
一般的な内容の確認であれば、生成AIに相談できます。就業規則の考え方や手続きの概要を整理する際は、参考情報として活用しましょう。
一方で、退職勧奨、懲戒処分、ハラスメント対応など個別の事案は、最新の法令、自社の就業規則、当事者へのヒアリング内容などを踏まえて判断する領域です。生成AIには、学習データが最新とは限らないことや、誤った情報をもっともらしく出力するハルシネーションの課題があります。そのため、生成AIはあくまでも「情報の整理役」として使い、個別の判断が求められる場面では社会保険労務士や弁護士に相談しましょう。
業務で使うなら、「弥生のいつでも労務相談AI」のように、公的機関の一次情報や専門家監修の情報をもとに回答する労務特化型AIサービスを選ぶと安心です。人事・労務に関する疑問を相談しやすく、汎用的な生成AIよりも実務に取り入れやすい点が特徴です。
生成AIを使えば労務管理ソフトは不要ですか?
生成AIを導入しても労務管理ソフトは必要です。給与計算や勤怠管理など、正確な処理が求められる業務には、専用ソフトで対応します。
給与計算では、基本給や各種手当の集計、社会保険料や税金の控除などを正確に処理することが求められます。社会保険手続きでも、定められた様式やルールに沿った正確な処理が欠かせません。
生成AIは「調べる・書く・整理する」といった情報処理に活用できますが、給与計算や社会保険手続きのような、法令や社内規定に沿った厳密な処理を専門とするツールではありません。給与計算ソフトや労務管理ソフトを活用し、担当者が内容を確認しながら進めましょう。
中小企業が労務のAI活用を始めるには何から取り組めばよいですか?
中小企業が労務でAI活用を始める場合は、まず給与計算ソフト、勤怠管理システム、労務管理ソフトなど、業務の土台となるクラウドシステムを整えることから始めましょう。
給与計算や勤怠集計、届出処理などをシステムで管理できる状態にしておくと、その後のAI活用を進めやすくなります。そのうえで、法改正情報の収集、社内文書の下書き作成、FAQ案の整理など、情報整理や文章作成の補助業務から生成AIを取り入れる方法が適しています。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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