納品書に「吉日」は表記しない!正しい使い方や使用する際の注意点を解説
監修者:市川 裕子(ビジネスマナー監修)
2024/09/26更新
「吉日(きちじつ)」とは、縁起のよい日や喜ばしい出来事があった日を示す言葉です。開業祝いや親睦会の招待状などの文書に用いられますが、一般的なビジネス文書には表記してもよいのでしょうか。本記事では、納品書・請求書・見積書などのビジネス文書における、吉日の記載について解説します。日付の記載方法を確認したい方はぜひ参考にしてください。
納品書の日付に「吉日」は表記しない
結論から言うと納品書の日付に「吉日」は表記しません。吉日はあくまで祝い事の文書に使用する言葉であり、一般的なビジネス文書には不適切です。納品書の日付には、納品と請求や見積もりを結びつける役割があり、「いつ納品されたか」が一目でわかるようにするため、「◯年◯月◯日」と明確な日付を記載し、「吉日」というあいまいな表現は使わないようにしましょう。
請求書・見積書の場合も表記しない
納品書と同様、請求書・見積書などのビジネス文書でも「吉日」の表記は不適切です。
請求書の日付は取引先の債務が確定した日であり、代金の回収を適切に進めるためにも具体的な日付を明記します。
見積書の日付は、いつ見積書を発行したかを示すもので、有効期限を設定する場合は特に重要になり、「○年○月○日」と直接的な日付を記載するほか、「発行日より○日間」「発行日から○か月」などと記載する場合もあります。有効期限を設定する際は注意しましょう。
このように、請求書・見積書いずれの日付も重要な役割を持っています。請求日や見積日があいまいではトラブルに繋がる可能性があるため、「吉日」の表記は用いないよう注意しましょう。
「吉日」の正しい使い方
納品書・請求書・見積書には使いませんが、以下のような文書では「吉日」という表現を用いることがあります。
- 開業、創立祝い
- 親睦会や創立記念日、祝賀パーティーの招待状
- 新商品や新装開店の案内状
- キャンペーン、イベントのお知らせ
- 地鎮祭、上棟式のお知らせ
- 結婚式、披露宴の招待状
- 出産、還暦などのおめでたい日を祝う案内状
祝い事や喜ばしいことに関わる文書では、縁起を担ぐために「吉日」の表記を用いる場合があります。また、日付がビジネス上の取引に直接影響しない文書、例えば顧客に自社の情報を届けるダイレクトメールやキャンペーンの案内で用いられることもあります。作成日と実際に相手のもとに届いた日のズレが発生してしまう場合、縁起を担ぐよりも、書かれた日付をあいまいに保つもことが手続き上便利であるためです。
そのほか、親睦会やパーティーの開催日を相手が勘違いしないよう、文書の作成日をあえて具体的に記載せずに吉日とする使い方もあります。
「吉日」を使用する際の注意点
「吉日」を使用する際の注意点を紹介します。特に気をつけるべきポイントは、以下の2つです。
- 文書の末尾に右寄せする
- 実際の日付と吉日を重複させない
文書の末尾に右寄せする
通常のビジネス文書では右上に表記するのが一般的ですが、吉日を含めた日付は末尾の右側に記載します。祝い事に関する文書を作成する際は、締めくくりの言葉や自身の所属・氏名などとともに、末尾に日付を記載しましょう。その際、右寄せで記載するのもポイントです。
実際の日付と吉日を重複させない
文書を送付する日付と吉日の表記は重複させてはなりません。例えば、2026年7月15日に文書を送付する場合は、以下のように記載します。
- NG例:2026年7月15日吉日
- OK例:2026年7月吉日
- OK例:令和8年7月吉日
納品書を作成する際の注意点
納品書を作成する際は、以下の点に注意します。
- 日付は商品やサービスの納品日を記載する
- 納品と同時に発行する
- 日付の認識を先方とすり合わせておく
- 日付は算用数字で記載する
- 再発行する場合も日付は変えない
続いて、それぞれのポイントについて解説します。
日付は商品やサービスの納品日を記載する
納品書には、商品やサービスを納品する日を記載します。商品を配送して納品する場合は、商品の到着日を記載するのが一般的です。
商品の出荷日を記載する企業もありますが、いずれにしても混乱を招かないように、商品の到着日か出荷日のどちらを記載するか統一しておく必要があります。
納品と同時に発行する
納品書は通常、商品を出荷するのと同時に発行します。商品に納品書を同封することも多くあります。納品書は信書に該当しますが、納品書を入れた封筒に封をしなければ商品に同封しても問題ありません。商品の到着に合わせて、郵送などで届くようにすることも可能です。
商品と納品書が同時に届けば、先方は納品書を見ながら届いた商品の内容や数量に間違いがないかを確認できます。なお、請求書が締めや月末などにまとめて発行する場合もあるのに対し、納品書は納品する都度発行します。
日付の認識を先方とすり合わせておく
先述の通り、納品書の日付は到着日にすることが一般的ですが、海外に船便で配送するなど、到着日がはっきりしない場合もあります。その場合は、商品の出荷日を記載しましょう。ただし、先方と認識が異なっていては問題です。トラブルを回避するためには、取引先に連絡してお互いの認識をすり合わせておくことが肝心です。
日付は算用数字を用いる
日付は、算用数字で記載するのが基本です。ビジネス文書に限らず、横書きの文書では基本的に算用数字が用いられます。例えば、2026年7月15日の場合は以下のように記載しましょう。
- NG例:二千二十六年七月十五日
- OK例:2026年7月15日
漢数字の表記は、特に横書きでは一目で理解しにくいデメリットがあります。漢数字は基本的に縦書きの場合に使用するため、横書きにすることが一般的な納品書では、漢数字はほとんど用いられません。
パソコンで納品書を作成する場合は、数字は全角と半角のどちらを使うことも可能です。ただし、同じ文書の中で全角と半角が混在していると読みにくいため、どちらかに統一するのがマナーです。
再発行する場合も日付は変えない
「取引先が納品書を紛失してしまった」「記載内容に誤りがあることに気づいた」などの理由で、文書の再発行が必要な場合、日付を変えてはなりません。納品書に記載する日付は納品日であり、文書を再発行するとしても納品日が変わるわけではないためです。取引を証明する重要な書類であるため、日付を変えずに透明性を確保しましょう。
なお、再発行したことがわかるように再発行した文書である旨を赤文字で記載したり、スタンプを押したりしておくと、取引先との間で誤解が生じずに済みます。ただし、このような対応をする場合は先方に確認しておくことをおすすめします。
納品書には「吉日」は使わず正確な日付を記載しましょう
開業祝いや親睦会の招待状など、お祝いや喜ばしい内容の文書で「吉日」の表記が使われる場合はありますが、納品書や請求書などのビジネス文書には適していません。ビジネス文書では、日付の重要性が高く、情報の信頼性や透明性を確保するため「吉日」は使わず、正確な日付を記載しましょう。納品書の場合は、商品やサービスの納品日を算用数字で記載します。
ビジネス文書は、取引先とのやり取りや契約内容をわかりやすく正確に伝えることが重要です。どのような目的で送る文書なのかをよく理解して、適切な表記を選ぶように心がけましょう。
この記事の監修者市川 裕子(ビジネスマナー監修)
マナーアドバイザー上級、秘書検定1級、ビジネス実務マナー、硬筆書写検定3級、毛筆書写検定2級、収納アドバイザー1級、など。 出版社や人材サービス会社での業務を経験。秘書業務経験よりビジネスマナーとコミュニケーションの重要性に着目し、資格・スキルを活かし、ビジネスマナーをはじめとする各種マナー研修や収納アドバイザー講師として活動。