請求書は英語では何という?英語の請求書の作成ポイントも解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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企業のグローバル化やEC(Electronic Commerce)市場の国際的な広がりなどを背景に、近年は外国企業との取引を積極的に展開する事業者も増えつつあります。これまでは国内取引のみだった事業者でも、今後は国外取引が発生する可能性は十分にあるでしょう。
海外の事業者との取引でも請求書を作成・発行する必要がありますが、英語での請求書作成に不安がある方もいるかもしれません。
そこで本記事では、請求書を表す英語や、英語の請求書を作成する際の基礎知識を解説します。また、請求書以外にも事業取引に関する書類を表す英語についても紹介します。
請求書を表す英語は「invoice」
請求書を表す英語は「invoice(インボイス)」です。ほかにも「bill(ビル)」や「check(チェック)」などが請求書を表しますが、それぞれ意味合いが異なります。
invoiceは、請求書の他に納品書、送り状といった意味も含む言葉です。代金の支払いを依頼する以外にも、幅広い用途で使われています。
billは、飲食店などで発行される伝票や、電気代・ガス代などの請求書を意味する英語で、主にイギリス英語圏で用いられるといわれています。
また、checkもbillと同じ意味合いを持つ言葉ですが、こちらは主にアメリカ英語圏で用いられている表現です。なお、アメリカではbillは紙幣を指す言葉として使われています。
以上を踏まえて、ビジネスにおける一般的な請求書を表す英語は、invoiceと覚えておくとよいでしょう。
英語の請求書に明記すべき項目
ここでは、日本語と同様、英語の請求書にも記載が望ましい項目を英語表記と共に紹介します。なお、ここでは適格請求書(インボイス)の作成を前提として紹介します。国外取引では消費税を納める必要がなく、海外企業に対し適格請求書を発行することはありませんので、国外取引で不要な項目には不要と記載をしています。国内企業に英語の適格請求書を発行するケースの参考にしてください。
請求書/INVOICE
タイトルは、ひとめで請求書とわかるように「Invoice」と書類の上部に記載しましょう。
日本語の請求書と同じく、他の書類と見分けがつくように強調して記載することがポイントです。
請求書の発行日/Date
請求書を発行した日付(Date)を記載します。年月日の順番に注意してください。書き方は、日本語と英語で以下のように順番が異なるため注意してください。
発行日の書き方の例
- 日本語:2024年3月1日
- アメリカ英語圏の英語:03/01/2024
- イギリス英語圏の英語:01/03/2024
請求書番号/Invoice No
自社で請求書を管理しやすくするために、請求書番号(Invoice No)を記載します。
請求書番号を振っておけば、請求先から問い合わせがあった場合も請求書番号から速やかに該当請求書を検索し、内容を確認できます。
なお、「Invoice No」は「Invoice#」と省略して記載することも可能です。フォーマットに合わせて記載方法を決めておくことをおすすめします。
宛先/Billed to
請求先である買手側の事業者名(Billed to)を記載します。間違いのないよう正確に記載しましょう。
請求者の情報/Company name, Address, Phone number, E-mail address
請求者の情報は、企業名(Company name)、住所(Address)、電話番号(Phone number)、メールアドレス(E-mail address)を記載します。
買手側が請求書について問い合わせたいことがあった際にすぐに連絡できるよう、自社名の下に住所や担当者の連絡先なども記載しておくのがおすすめです。
なお、英語で住所を書く順番は、「ビル名・階数/丁目・番地/町/市/都道府県/郵便番号/国名」です。
住所の書き方の例
- 日本語の場合:〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX 21F
- 英語の場合:Akihabara UDX 21F, 4-14-1, sotokanda, chiyoda-ku, Tokyo, 101-0021, Japan
登録番号/Registration number
請求者の情報と共に、適格請求書(インボイス)発行事業者に割り振られる登録番号を「Registration number」として記載します。
登録番号は、適格請求書発行事業者の登録を受けると通知されるものです。法人はT+13桁の法人番号を、個人事業主や人格のない社団などの場合はT+13桁の数字を記載します。国外取引の場合は不要です。
請求明細/Description
請求内容の明細(Description)として、商品・サービスごとの名称(Item name)、単価(Unit price)、数量(Qty/Hr rate)、取引年月日(dd/mm/yyyy)を記載します。
なお、軽減税率の対象品目がある場合は、その取引内容の末尾に「*」を付けて軽減税率の対象品目である旨を示します。国外取引の場合は、消費税が不課税で軽減税率などの見分けはありませんので、不要です。
金額/Sub total, Total amount
金額は、取引の対象となる商品・サービスの小計(Sub total)のほか、運賃(Freight cost)などを含む合計金額(Total amountもしくはGrand total)を記載してください。
適格請求書で必要となる税率ごとに合計した対価の額は、標準税率(10%対象)と軽減税率(8%対象)で区別し、それぞれで合計した対価の額(税抜きまたは税込み)を記載します。国外取引の場合、消費税は不要です。
記載例は以下のとおりです。
標準税率の価格の記載例
- Tax(10%)¥2,000
軽減税率の価格の記載例
- Tax(8%)¥12,000
税率ごとの消費税額/Tax
消費税(Tax)は標準税率(10%)と軽減税率(8%)で区別し、税率ごとの消費税額も記載してください。記載例は以下のとおりです。
標準税率の消費税額の記載例
- Tax(10%)¥200
軽減税率の消費税額の記載例
- Tax(8%)¥960
支払期限/Payment deadline
商品・サービスの代金の支払期限(Payment deadline)を記載します。支払期限は「Due date」と記載し、日付は発行日と同じ順序で記入してください。
振込先情報/Remittance information
銀行振込の場合は、振込先情報(Remittance information)欄を設けて、口座番号(Bank account number)、口座名義人(Bank account name)などを記載します。
英語の請求書の末尾に記載する英文
請求書を英語で作成する場合は、末尾には“Thank you very much for your business. We’re looking forward to serving you again.”と記載することをおすすめします。
これは、日本語で「ご利用ありがとうございました。また次回のご利用をお待ちしております」という意味の文章です。ぜひ付け加えてみてください。
英語の請求書を作成する際のポイント
英語の請求書を作成する際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、3つのポイントに分けてご紹介します。
押印・サインは必要ない
海外法人や海外在住の個人事業主との取引でやりとりする英語の請求書では、押印やサインは基本的に不要です。
日本国内での事業者間取引でやりとりされる日本語の請求書には、押印やサインが求められるケースも少なくありませんが、海外法人や海外在住の個人事業主の場合は、事前に要望があったら対応する形で問題ないでしょう。
テンプレートを用意しておく
英語の請求書を作成する際は、テンプレートを用意しておきましょう。海外の事業者との取引が発生し、英語の請求書の作成が必要となるたびに一から作成するのでは、手間も時間もかかるうえ、記載ミスのリスクも高くなってしまいます。
そのため、あらかじめ英語版の請求書のテンプレートを用意して、取引先情報や取引明細、支払期日などの必要な部分のみを記載すれば作成できるようにしておくことをおすすめします。
なお、取引が継続的に発生する場合は、顧客情報もテンプレート化が可能です。顧客ごとにテンプレートを用意しておくと、より効率的に英語の請求書を作成・発行できるようになります。
海外の法人・個人事業主との取引では消費税を納める必要はない
適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)では、買手側の課税事業者は仕入税額控除の適用を受けるために、売手側から適格請求書を受領し適切に保存しなくてはなりません。
しかし、このインボイス制度は日本国内の制度です。前述のとおり、買手側が国内企業で、なおかつ英語での対応が求められる場合は適格請求書を英語で作成するケースがありますが、国外取引については、消費税を納める必要はありません。適格請求書には通常、「軽減税率の対象品目である旨」「税率ごとに合計した対価の額」「税率ごとの消費税額」「登録番号」などの記載が必要ですが、海外法人などとの取引では課税事業者でもこれらの項目の記載は不要です。
請求書以外の書類を表す英語
ビジネスでは、請求書のほかにもさまざまな取引書類を授受します。主に使用する書類を表す英語を覚えておくと、海外の取引先とやりとりを行う場合に役立つでしょう。
ここでは、請求書以外の5種類の書類を表す英語をご紹介します。
請求明細書/billing statement
請求明細書は、商品・サービスの代金の支払いとその内訳の両方が記載されている書類で、英語では「billing statement」といいます。
一般的に、請求書には提供した商品やサービスの明細を記載していませんが、請求明細書には明細も記載します。
領収書/receipt
領収書は、金銭のやりとりを伴う取引の実在性を証明する書類で、英語では「receipt」といいます。普段、日本語でも「レシート」はよく使われますが、領収書とレシートは違うものと認識している方も多いかもしれません。しかし、英語では同じものとして扱われています。
商品やサービスを提供した売手側は、その対価として金銭を受け取ったことを領収書で証明し、商品やサービスを提供された買手側は、金銭を支払ったことの証拠として領収書を受け取ります。
見積書/estimate, quotation
見積書は購入や契約の前段階で発行する書類です。買手側が購入・契約を検討している商品・サービスについて、実際に購入・契約した場合にかかる費用が示されています。見積書は、英語では一般的に「estimate」や「quotation」といいます。
estimateとは概算の見積もりのことで、金額が変動する可能性がある場合に用いる言葉です。quotationは、確定した見積もりを指します。状況に応じて使い分けてください。
納品書/a statement of delivery, delivery slip
納品書とは、売手側が買手側に対して商品やサービスを納品した際に発行する書類です。一般的に、いつ、何を、いくつ、いくら分、どこへ納品したのかを記載します。
納品書は、英語で「a statement of delivery」や「delivery slip」といいます。
注文書/purchase order, order sheet
注文書とは、買手側が商品・サービスの発注を行う際に売手側に発行する書類で、注文を行ったという意思表示と注文内容を証明するものです。注文書には、商品名やサービス名、数量、金額、納品希望日(納期)、支払条件などを記載します。
注文書を表す英語は、「purchase order」や「order sheet」です。なお、「purchase order」は「PO」と略すことが可能です。これは、英語圏でのビジネスでも一般的に使われているため、覚えておくとよいでしょう。
テンプレートを用意し、英語の請求書の作成を効率化しよう
現在は国内の事業者としか取引をしていない場合でも、今後は海外との取引が発生し、英語での請求書の作成・発行が必要となるケースが増えるかもしれません。英語で請求書を正確かつスムーズに作成できるよう、記載項目や注意点を押さえておくことが大切です。
また、請求書は日本語版と共に英語版のテンプレートも用意しておくことをおすすめします。本記事を参考に、英語版の請求書テンプレートを用意して、英語の請求書作成を効率化してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
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