注文書が複数枚になる場合の書き方とは?記載項目や保存方法も解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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商品やサービスを発注する際に作成・発行する注文書は、記載項目が多くなると、複数枚になるケースがあります。注文書を発行する際は、売り手側にとってわかりやすい書類となるよう、複数枚であることを明示することが大切です。
本記事では、注文書が複数枚になる場合の書き方や記載項目について解説。電子帳簿保存法改正に伴って確認しておきたい、注文書の正確な保存方法も併せてご紹介します。
注文書を発行する目的
注文書を発行する目的は、商品やサービスを発注する際に、売り手側へ発注の意思表示を示すことにあります。
注文書は、発行しなければならないという決まりはありません。しかし、注文書を発行すると、注文内容や金額に対する認識の違いといった事業者間取引でのトラブルに発展した際の証拠として役立ちます。
なお、注文書と似た書類に「注文請書」があります。注文請書は売り手側が注文を受ける意思を伝えるために発行する書類であり、「同意書」や「確認書」などとも呼ばれます。注文請書は売り手側が買い手側へ受注した内容を伝えるために発行されるものであり、買い手側が発注したことの証明書とまではなりません。買い手側の発注を証明できるのは注文書であると覚えておきましょう。
注文書が複数枚になる場合の書き方
注文書が複数枚になる場合の書き方に決まりはありませんが、売り手側に注文内容や金額が誤って伝わらないようにする必要があります。
複数枚になる場合は、「注文書番号」「備考欄」「送付状」を活用することがポイントです。それぞれどのような役割を持つのか見ていきましょう。
注文書が複数枚であることを注文書番号で伝える
注文書が複数枚になる場合は、下記のように注文書番号を記載すると、売り手側の誤解を防ぐことにつながります。
注文書番号の記載例
- 合計金額が書かれている1枚目の注文書の注文書番号:20240401-01
- 2枚目の注文書番号:20240401-02
- 3枚目の注文書番号:20240401-03
備考欄に注文書が複数枚になる旨を記載する
注文書の備考欄にも、書類が複数枚あることがわかるように記載しましょう。その注文書が何枚目なのかに加えて、合計金額がどこに記載されているのかもすぐに判別できるとていねいです。なお、基本的に合計金額は1枚目に記載します。
備考欄の記載例
- 「注文書:1/3枚目」「注文書:2/3枚目」「注文書:3/3枚目」
- 「合計金額は注文書番号”20240401-01″に記載」
送付状にも注文書が複数枚になる旨を記載する
注文書が複数枚になる場合は、送付状にもその旨を記載しましょう。
注文書が複数枚になる場合の送付状の記載例
「注文書は3枚になります。合計金額は注文書番号「20240401-01」に記載しています。」
なお、メール添付で注文書を送付する場合は、メール本文に上記のような内容を記載します。
送付状とメール添付いずれの場合であっても、売り手側の担当者が判別しやすいように明記を忘れないようにしてください。
注文書の記載項目
ここでは、注文書を作成する際の記載項目を見ていきます。あらかじめ売り手側から見積書を受け取っている場合は、商品・サービス名や仕様、金額などを見積書に合わせて作成します。
その際、もらった見積書に記載されている見積番号などを併記すると、注文内容の間違い防止に役立つでしょう。下記に、具体的な記載項目を紹介していきます。
(1)売り手側の名称
売り手側の会社名や屋号を記載します。文字や敬称を間違えないようにしましょう。売り手側が会社の場合は会社名の後に「御中」を、個人の場合は名前の後に「様」を記載します。
(2)注文書発行日
取引がいつ行われたかわかるように、年表記から正確に発行日を記入しましょう。納期の認識違いなどが発生した際に、注文書の発行日が役に立つ可能性もあります。
(3)注文書番号
注文書番号の記載は必須ではありませんが、注文書を管理するうえでは記載してあったほうが便利です。問い合わせがあった場合も、注文書番号を照合することですぐに対応できるでしょう。
同一契約の見積書や請求書がある場合は、それらの書類番号と注文書番号が紐づいていると、より管理しやすくなります。
(4)買い手側の会社名・住所・連絡先など
買い手側の会社名や住所、連絡先は、省略せずに正確に記載しましょう。住所にビル名が入っている際は、ビル名も明記します。担当者につながる電話番号とメールアドレスの両方が記載してあれば、買い手側に問い合わせたい内容がある際でも、すぐに連絡できるためていねいです。
なお、注文書に押印は必須ではありませんが、会社として正式な取引であると証明するうえでも、押印はあったほうが売り手側に安心感を与えられます。
(5)発注合計金額
発注合計金額は、注文書の1枚目に税込みで記入しましょう。税込みですので、金額(小計)と消費税を合わせた金額を記載します。
見積書がある場合は、見積金額と注文金額の合計金額に齟齬がないか必ず確認してください。
(6)商品名
商品・サービス名を記載する際は、正式名称を明記します。納品時や検品時に確認しやすいよう、略称などではなく正式名称で記載することが大切です。
(7)数量
商品・サービスの数量も間違いのないように確認したうえで記載します。
次に紹介する単価が複数ある場合は、商品の数量と齟齬がないか確認しておくと確実です。
(8)単価
商品・サービスごとの単価も記載します。数量と単価に齟齬がないかは、よく確認しましょう。
(9)金額(小計)
小計として、税抜金額を記載します。税込金額のみを記載することのないよう、注意してください。
(10)消費税
金額(小計)に対する消費税額も記入します。消費税額に1円未満の端数が出た際は、切り捨てにするケースが多いといえます。見積書を発行している場合は、見積書の記載金額と齟齬がないか確認してください。また、例えば、消費税率が10%の商品等の場合は、消費税率(10%)という表記も合わせて記載するとよいといえます。
(11)備考
備考欄には、納品場所や納期、支払方法などを記入し、売り手側と認識の齟齬をなくすようにします。
なお、注文書には支払期限を記載する必要はありませんが、納期は買い手側が納品してほしい日時であるため、確実に記載しておきましょう。
発注書の書き方についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
注文書の保存方法
注文書は一定期間保存しておく必要がありますが、原本をそのまま紙で保存する方法と、電子データで保存する方法に分けられます。電子データで保存する場合は、電子取引に該当するものと、紙の注文書をスキャナ保存する場合とで、保存要件が異なるため注意が必要です。
ここでは、注文書の保存方法別に、保存の要件を確認しておきましょう。
紙で保存する方法
電子保存には、不正防止の観点などから複数の要件が定められている一方で、従来の保存方法である紙での保存には、特別な要件は定められていません。
しかし、税務署などから提出を求められた際に、すぐに探し出せるようにしておく必要があります。取引先ごとまたは年度ごとに、注文書の原本をまとめてファイリングしておくケースが一般的です。
電子データで保存する方法
注文書を電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当する場合と、紙の注文書を「スキャナ保存」する場合とで要件が異なります。
電子取引で授受した注文書は、電子帳簿保存法の改正により電子データでの保存が義務づけられています。2023年12月31日までは授受した注文書のデータを印刷して保存することも認められていましたが、2024年1月1日以降は、ほぼすべての法人や個人事業主が、電子取引によるデータを電子保存することが義務づけられています。
電子取引に該当する注文書のデータの保存方法としては、以下のようなものがあげられます。
電子取引に該当する注文書データの保存方法
- データを授受したシステム上での保存
- PDFファイルなどでの保存
- 画面のスクリーンショットによる保存
なお、上記のいずれの方法で保存するとしても、厳密な保存要件を満たさなくてはなりません。
電子取引に該当する注文書データの保存要件
- 改ざん防止措置をとること(タイムスタンプの付与、履歴が残るシステムでの保存など)
- 日付、金額、取引先で検索できるようにすること(索引簿の作成や規則的なファイル名の付与も可)
- PCのディスプレイやプリンターを備え付けること
保存要件は、一見すると複雑な工程に見えますが、電子帳簿保存法に対応したシステムを活用すれば、注文書や見積書、請求書などのデータの一括管理がしやすくなり、業務効率化にも役立ちます。
スキャナ保存には「重要書類」と「一般書類」の区分があり、注文書は一般書類に該当します。一般書類は重要書類と比較してスキャナ保存の要件が緩和されていますが、電子取引データの保存と比べると満たすべき要件が多いです。
そのため、スキャナ保存する場合も、電子帳簿保存法に対応した機器やシステムを導入することが望ましいでしょう。
紙の注文書をスキャナ保存する方法
- 紙面で授受した注文書をコピー機などでスキャンしてデータを電子保存する
- 一般書類のスキャナ保存の要件を満たす
一般書類のスキャナ保存の要件
- 解像度200dpi以上、赤・青・緑それぞれ256階調以上(グレースケールも可)でのスキャン
- 原則として、入力期間(最長2か月+7営業日)内の保存とタイムスタンプの付与
- 解像度や階調情報の保存
- バージョン管理(削除や訂正の履歴が残るシステムなどの利用)
- 14インチ以上のディスプレイやプリンターの備え付け
- 取引日や金額、取引先など一定の検索機能の確保
注文書の保存期間
注文書を含む国税関係帳簿書類は、一定期間の保存が法律によって義務づけられています。法人と個人とでは保存期間が異なり、さらに一定の売上規模の雑所得を得ている場合も、一定期間保存をする必要があります。
ここでは、法人と個人、それぞれの注文書の保存期間について見ていきましょう。
法人は原則7年保存
法人の場合は、注文書を含む帳簿や帳簿にかかわる取引関連の書類について、確定申告書の提出期限の翌日から7年保存することが定められています。
なお、青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じた場合や、青色申告書を提出しなかった事業年度に災害損失欠損金が生じた場合の保存期間は10年となります。
個人事業主は原則5年保存
個人事業主の場合、注文書は5年保存することが義務づけられています。
なお、赤字で所得税の確定申告を行わなかった事業年度の注文書であっても、保存義務の対象となっているため注意しましょう。
一定の売上規模の雑所得を得ている場合は5年保存
副業などで雑所得を得ている方のうち、前々年の該当業務による収入が300万円を超える場合は、注文書や請求書などの取引書類を5年保存する必要があります。
注文書を保存しなかった場合の罰則
注文書の保存期間は、税法によって定められたものです。注文書を保存しなかった場合は、ペナルティとして青色申告者の承認を取り消されることがあります。
また、注文書や発注書などが適切に保存されていないと、取引の証明ができなくなります。その結果、法人税や所得税、消費税の計算において、それらの内容が否認される可能性はゼロではありません。
上記のようなリスクを避けるためにも、規定されている保存期間はしっかりと守り、それぞれの注文書を確実に保存することが大切です。
注文書を複数枚作成するなら、専用システムがお勧め
注文書を複数枚発行する場合は、取引関係書類を効率よく作成でき、情報の一括管理が可能な専用システムの活用をお勧めします。特に、電子データで注文書を保存する場合は、保存要件を満たしたうえで一定期間保存する必要があり、作業が煩雑化する可能性があります。
しかし、注文書や見積書、請求書を作成・管理できるシステムがあれば、書類の管理業務を効率化でき、他の業務に注力できるようになるでしょう。
弥生が提供するクラウド見積・納品・請求書サービスの「Misoca」は、注文書や見積書、請求書などを簡単に作成することができ、さらに売上レポートの作成や請求・入金確認などのステータスも、1つのシステム上で管理が可能です。
また、「Misoca」で入力したデータはそのまま申告・会計ソフトで使えるため入力ミスがなくなり、会計業務がよりスムーズになります。もちろん、各種帳票を電子帳簿保存法の要件を満たす形で電子データとして保存することも可能です。
注文書を含む取引関係書類の作成や管理業務を効率化したい場合は、ぜひ「Misoca」の利用を検討してください。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
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