見積書のわかりやすい値引きの書き方|主な理由や記載時の注意点も解説
監修者: 高崎文秀(税理士)
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取引方法の多様化やインボイス制度への対応など、経理や請求関連の業務が複雑化していることもあり、どのように値引きを記載すればよいのか悩んでいる方も少なくありません。
本記事では、見積書における値引きのわかりやすい記載方法や、よくある値引き理由ごとの記載例、実務で注意したいポイントを整理して解説します。見積書を作成する際の基本的なルールや複数の値引きが発生する場合の書き方、記載時のチェックポイントなど、現場で役立つ情報を紹介します。
見積書のわかりやすい値引きの書き方
見積書で値引きを記載する際は、品目欄に値引きの理由や内容を明記し、その金額には「▲」や「-(マイナス)」を付けることが基本です。
例えば、数量に応じて適用する「ボリュームディスカウント」や、期間限定の「キャンペーン値引き」、企業努力による「出精値引き」など、値引きの種類を明記すると、後から帳簿を見た際に取引内容を確認しやすくなります。以下のような記載例を参考にすると、実務でのイメージがわきやすいでしょう。
日付 | 品目 | 単価 | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|---|
6/1 | 商品A | 100 | 1,000 | 100,000 |
6/1 | 数量値引き(ボリュームディスカウント) | ▲10,000 | 1 | ▲10,000 |
6/1 | キャンペーン値引き(▲2円/1本当たり) | ▲2 | 1,000 | ▲2,000 |
6/1 | 出精値引き | ▲5,000 | 1 | ▲5,000 |
このように、値引きを行う理由と金額をそれぞれ品目欄に記載し、取引先に内容が明確に伝わるよう工夫することが重要です。また、備考欄を活用して、特別な事情や値引きに至った背景を補足することで、社内外の確認や後日の照会もスムーズになります。
値引きを記載する場所と内容
値引きを記載する際は、対象となる商品やサービスの項目直下の行を活用して記載する方法が一般的です。具体的には、商品Aの明細の下に「納期調整のため値引き」や「大量購入による割引」といった理由を品目欄に明記し、対応する金額欄に値引き額を「▲」や「-」を付けて入力します。
このような記載方法により、どの品目に対して値引きが行われたのかがひとめで判断でき、後で確認した際にも当時の取引の経緯を正確に把握することが可能です。取引先との認識のズレや金額の計算ミスを防ぐためにも、値引き理由を省略せず品目欄にしっかりと記載し、金額表記も一般的な記号を用いることが求められます。
値引きの金額の書き方
値引き額の表記方法としては、金額の前に「▲」や「-」などの記号を付けて表すのが一般的です。例えば、500円の値引きであれば「▲500円」や「-500円」と記載することで、元の金額から500円減額されていることが明確に伝わります。
見積書などでの表記については、相手との特別な取り決めがない限り、業界共通で広く使われている記号を使用することが推奨されています。独自の表現を使用すると誤解を招く可能性があるため、初めて取引する相手や表記方法に関する取り決めを行っていない取引先などに対しては、一般的な記号を使うことを心がけましょう。
値引きが複数あるときの書き方
1つの見積書で「相殺」や「割引」といった複数の値引きが必要な場合には、わかりやすい順序で記載することが重要です。例えば、金額が大きい順または適用した時間の順序で記載することで、相手にとって「どの値引きがどのタイミングで適用されたのか」がわかりやすくなります。
この方法により見積書の透明性が確保できるため、自社・自事業と取引先との認識違いを防ぐことが可能です。見積書には「相殺▲30,000円」「割引▲10,000円」などのように記載し、合計金額がどのように導き出されたかをひとめで確認できるようにしておきましょう。
見積書に記載する値引き理由の種類
見積書を作成する際には、取引先との認識違いを防ぐためにも、値引きの理由を明確に記載することが重要です。ここでは、値引きについてどのような理由を記載するべきか、詳しく解説します。
相殺
相殺とは、以前の取引において発生した返金分や値引き分を、次回以降の請求額から差し引いて調整する方法を指します。例えば、納品した商品に不備があり返金対応が発生した場合、次回の請求時にその金額を控除して処理するといったケースが当てはまります。
こうした相殺を見積書や請求書に反映させる際には、その金額がどの取引に基づいているかを明確に記載する必要があります。具体的には、「○月度売掛金の相殺」や「返品分の相殺処理」など、由来がひとめでわかる表現を品名欄に記入すると、社内外の確認作業が円滑に進みます。
なお、相殺金額の書き方としては、マイナスであることが視覚的に伝わるように「-10,000円」または「▲10,000円」といった形式を用いるのが一般的です。このように記載しておくことで、金額の内訳が明確になり、誤解やトラブルの予防にもつながります。
大量購入による割引
まとめ買いによる値引きは、一定数量以上の注文を条件にして単価を引き下げるしくみとして多くのビジネスシーンで活用されています。こうした価格調整は、顧客が一度に大量の商品を発注した場合に適用されるもので、「売上割戻」や「リベート」「ボリュームディスカウント」といった呼び方でも知られています。主に、大口の取引を継続的に促すための営業施策の一環として位置付けられていることを押さえておきましょう。
このような割引内容を見積書や請求書に反映する際の処理方法としては、消費税を加算する前の金額から割引分を差し引くのが一般的です。また、記載の際には、対象商品欄の下に「大量発注による割引」や「リベート適用」といった具体的な文言を添えましょう。これらに加えて、金額欄に「▲10,000円」または「-10,000円」といった形式で金額を記載することで、適用対象と値引き額が明確になります。
こうした表記により、割引の理由がひとめで把握でき、後日の確認や社内審査もスムーズに進められます。
クレーム対応
クレーム対応としての値引きは、商品やサービスに不備や不具合があった際に行われることがほとんどです。取引先との信頼関係を損なわないよう、見積書や請求書へ記載する際には慎重に対応しましょう。
クレーム対応としての値引きを行う際には、品目欄に直接「クレーム」と明記せず、「値引き」「納期調整のため値引き」など、内容が特定されすぎない表現を用いるのが一般的です。
値引き理由の記載が必要な場合でも、詳細を備考欄に記入するなどして、相手に配慮しながらトラブルの再発防止に努めます。こうした対応を徹底することで、双方が納得しやすく、取引先への配慮も伝わる適切な帳票が作成できます。
納期調整
納期調整による値引きの多くは、本来予定していた納期に間に合わず、やむを得ず引き渡し時期が遅れた際に発生します。
値引き額については、遅延の程度や契約内容によって取引先と都度協議して決める必要があります。後々のトラブル発生を防止するため、見積書には「納期調整のため値引き」などと理由を明記し、後日確認したときにも事情や経緯がわかるようにしておきましょう。
出精値引き
出精値引きは、取引先との信頼関係や長期的なパートナーシップを意識した売手側の努力を示す特別な割引です。一般的には、「出精値引き」という独立した項目を設けて明記し、値引き額の前に「-」や「▲」などの記号を付けて表示します。
この値引きは単なる価格交渉とは異なり、「これ以上の値下げは困難」という売手側の限界点や誠意を伝える意味合いを含んでいる場合もあります。また、出精値引きは商品やサービスの品質を下げず、あくまで自社・自事業の経営努力の結果として提供する値引きです。頻繁に使うと、利益率の低下や相手方からの不信感を招く恐れがある点に注意しましょう。
見積書に値引きを記載するときの注意点
見積書に値引きを記載する際は、単に金額を下げるだけではなく、いくつかの重要なポイントを押さえておくことが求められます。取引先との信頼関係や将来的な契約にも影響を与えるため、記載方法や表現に慎重を期す必要があることに留意しましょう。ここでは、値引きを見積書に反映させる際の注意点について解説します。
過剰な値引きではないか確認する
取引先から値引きを要望された際には、その金額が過剰な水準になっていないか慎重に確認する必要があります。過度な値引きが行われた場合、不正競争防止法違反や、中小受託取引適正化法(旧下請法)違反に該当するリスクがあるためです。
こうしたリスクを避けるためにも、価格設定や値引きの根拠を明確にし、取引先とていねいな対話を重ねることが重要です。仮に交渉の過程で妥当な水準を大きく超える値下げ要求があった場合は、そのまま受け入れるのではなく、双方が納得できる合意点を探りましょう。このようなやり取りを繰り返すことで、長期的な信頼関係の維持にもつながります。
値引き前の金額も記載する
見積書を作成する際には、値引きを行う場合でも「値引き前の金額」を明記しておくことが重要です。なぜなら、値引き前の金額と値引き額の両方を記載しておくことで、どの程度割引が適用されたかがひとめで把握でき、発注者と受注者の双方にとって取引内容の透明度がさらに高まるからです。
値引き前後の金額を併記することは法的な義務ではありませんが、ビジネス上のトラブルを回避し、説明責任を果たすうえで有効な手法です。
値引きの理由を明記する
見積書を作成する際は、自社・自事業と取引先との間で認識がズレるリスクを大幅に減らすためにも、値引きが行われた理由を具体的に明記しておくことが大切です。また、値引きの理由が書面上で明確になっていれば、取引の経緯や背景を後からでも確認しやすくなるというメリットもあります。
例えば、「大量発注による特別値引き」や「納期変更による値引き」を行った場合は、このような経緯がわかる表現を備考欄に記載するとよいでしょう。このような処理を行うことで、双方がどのような事情で価格調整があったのかを理解しやすくなります。
ミスがないか確認を徹底する
見積書で値引きを行った際は、ミスがないかを確認することが欠かせません。値引き額の記載間違いやマイナス記号(▲や-)の付け忘れなど、よくある誤りがそのまま提出されると、誤解やトラブルの原因となってしまいます。
また、金額の入力漏れや記載内容の抜け漏れも発生しやすいため、複数の担当者でダブルチェックする体制を整えると安心です。表計算ソフトの自動計算機能を活用していても、最終的には目視で確認し、細かい部分まで見落としがないか注意を払うことが重要です。
このように、作成後の確認作業を徹底することで、より信頼性の高い見積書を取引先に提出できます。
見積書の作成・値引きの記載もツールで簡単に
見積書を作成する際には、値引きの記載方法や金額の計算ミスに注意しながら、相手にとってわかりやすい内容を心がけることが大切です。こうした業務も、クラウド請求書作成ソフト「Misoca」を活用すれば、テンプレートに沿って金額や値引き前の価格を入力し、値引き額の前に「-」を付けるだけで自動的に計算できるため、大幅な効率化が図れます。
さらに、作成した見積書をワンクリックで請求書や納品書に変換できる機能を活用すれば、事務処理の負担軽減に役立ちます。見積書などの書類を作成する際のミスを防ぎたい方にとって、「Misoca」の導入は有力な選択肢となるはずです。
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この記事の監修者高崎文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。
