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お教室の確定申告

執筆者:宮原 裕一(税理士)

2021/03/31更新

学習塾や書道教室、そろばん教室、英会話教室、ピアノ教室、ダンススクール、料理教室など、さまざまな「お教室」が盛んになり、お教室を開業される方が増えているようです。人に教えるという業種で、確定申告にあたって特別に気を付けるところがあるのでしょうか。
今回は、お教室の確定申告について解説していきます。

POINT

  • 授業料の受け取り方で経理方法が違ってくることに注意
  • 自宅を教室としても使用する場合は「家事按分」が必要
  • 給与支払事務所に該当するときは外部講師などの源泉徴収に注意

収入の計上方法に注意!

教室の収入は、毎月一定額の料金を受け取る「月謝制」が一般的で、その月分の支払いを受けたときに収入にあげれば大丈夫です。ただし、年末にまだ受け取れていない月謝があるときは「売掛金」として収入にあげる必要があります。

仕訳例

月謝5,000円を現金で受け取った
現   金   5,000 / 売   上  5,000
年末にまだ受け取れていない月謝が10,000円あった
売 掛 金 10,000 / 売   上  10,000
年明けに昨年の月謝10,000円を受け取った
現   金 10,000 / 売 掛 金  10,000

フランチャイズなどの場合、本部が授業料を回収して、ロイヤリティを差し引いて一括入金することもあります。その場合は、入金額が収入ではなく、ロイヤリティを差し引く前の総額が収入になりますのでご注意ください。

仕訳例

500,000円の授業料からロイヤリティ100,000円を差し引いた400,000円が入金された
普通預金  400,000 / 売   上 500,000
支払手数料 100,000

教室によっては、一定のカリキュラムに従ってその全額を前払いで受け取る場合もあります。この場合は一旦「前受金」などとしておき、月ごとなどで期間配分して収入に上げていく経理をします。ただし、中途解約しても授業料の返還請求権のない場合など、受取時に全額を収入にあげるケースもありますので、処理については税務署等へご確認ください。

仕訳例

授業料半年分150,000円が振り込まれた
普通預金  150,000 / 前 受 金  150,000
今月分相当の授業料は25,000円
前受金     25,000 / 売   上  25,000

また、従量制で何回でもレッスンが受けられるような教室では、割引料金になるチケットを販売することもあります。この場合は、原則としてチケットを販売したときに全額を収入にあげます。

ただし、例外としてあらかじめ税務署に申出て確認を受けることにより、販売時は前受金としておき、チケット利用のつど収入にあげる方法も認められます。このときはチケットの有効期限満了など一定のタイミングで収入にあげる必要がありますから、しっかりとチケット利用の管理を行う手間が必要です。

仕訳例

11回分チケットを30,000円で販売した
現   金 30,000 / 売   上 30,000
チケット1回分が使用された
(経理処理なし)

また、教材等を販売している場合には、年末に棚卸をする必要があります。具体的には仕入れた商品や制作した教材について、仕入れ値や制作単価がいくらのものがいくつあるかを数えて金額を出す作業です。前年末の在庫金額を今年の仕入に加え、今年末の在庫金額を今年の仕入から除く処理を行います。

仕訳例

前年末の教材の在庫80,000円、今年末の教材の在庫70,000円
期首商品棚卸高 80,000 / 商     品 80,000
商     品 70,000 / 期末商品棚卸高 70,000

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自宅を教室として使用している場合の経費計上

自宅とは別に教室を借りて営業している場合は、教室に関して支払った家賃や光熱費などは全額が経費となりますが、自宅を教室として使用している場合には「家事按分」と言って、支払う経費を事業のために使っている部分と生活のために使っている部分とに按分して経費にする必要があります。

具体的には、電気代などは全体の部屋数に対して、教室として使う部分の割合で分けてみるとか、電話代などは教室の運営上で必要な通話の頻度で分けてみるとか、第三者から見て納得できる根拠で按分すれば大丈夫です。

もちろん、自宅兼用であっても、教室のためだけに使用する長机やホワイトボード、楽器などの備品はその全額が経費の対象となることは言うまでもありません。ただし、一組が10万円以上するものについては減価償却を検討する必要があります。

次に自宅そのものについてですが、特定の部屋を教室専用で使っているのであれば全体の面積に対しての教室部分の面積の割合でよいでしょう。また、リビングなど生活でも使っているような場合には面積に加えて、教室として使用する時間の割合を加味するとよいでしょう。なお、自宅そのもので対象となる経費としてはつぎのようなものがあります。

借家の場合

借家の場合には、家賃や礼金・更新料、火災保険などが家事按分の対象となります。ただし、敷金は単なる預け金ですから経費にはなりませんのでご注意ください。

持ち家の場合

持ち家の場合には、建物の減価償却費や固定資産税、火災保険、住宅ローン返済の利息部分などが家事按分の対象となります。住宅ローン返済の元本部分は経費にはなりませんので、返済時には返済予定表などで元本と利息とをしっかり分けるようにしましょう。

外部講師を迎えるときの注意点

教室の生徒が多くなってくると、自分やスタッフでは手が足りなくなり、外部から非常勤で講師を迎えることもあるでしょう。

個人事業主が事業専従者やスタッフに給与を支払う「給与支払事務所」に該当する場合には、外部講師等への報酬で一定のものからは報酬の支払時に源泉徴収をする義務があり、その報酬を支払った月の翌月10日までに源泉所得税を税務署に納めなければなりません。

具体的には報酬・料金等の源泉徴収で第1号「技芸、スポーツ、知識等の教授・指導料」に該当するものとして、次のようなものが掲げられています。

  • 生け花、茶の湯、舞踊、囲碁、将棋等の遊芸師匠に対し実技指導の対価として支払う謝金等
  • 編物、ペン習字、着付、料理、ダンス、カラオケ、民謡、語学、短歌、俳句等の教授・指導料
  • 各種資格取得講座の講師謝金等

仕訳例

講師料50,000円から源泉所得税10.21%の5,105円を差し引いた44,895円を支払った
支払報酬 50,000 / 普通預金  44,895
/ 預 り 金   5,105
翌月に源泉所得税5,105を納めた
預 り 金  5,105 / 現   金   5,105

なお、事業専従者やスタッフ給与など給与所得の源泉所得税については、届出により1月と7月に半年分をまとめて納めることができる「源泉所得税の納期の特例」という制度がありますが、上記の報酬・料金等の源泉所得税については特例の対象外で毎月納付となりますのでご注意ください。

まとめ

いかがでしょうか。お教室の場合は、どのように授業料を受け取るかで収入の経理方法が違ってきます。前払いやチケット販売などの方法は、お金を先にもらえるので資金繰りがラクになりますが、前受金であるということを忘れてお金を使いすぎてしまうと、後になってから大変な思いをすることもありますので、しっかりと帳簿づけをして状況を把握できるようにしておきましょう。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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