生命保険料控除を受けるには?控除額の計算方法と申請方法を解説

2023/12/20更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

生命保険料などの保険料を支払った場合、その年の所得税額を計算する際に、課税の対象となる所得から一定額を差し引くことができます。これは所得控除の一種で「生命保険料控除」といいます。

ここでは、生命保険料控除で差し引かれる金額を計算する方法と、生命保険料控除の適用を受けるにはどうすればいいのかについて解説します。

生命保険料控除とは?

所得税は、年間の所得金額に対して直接かかるわけではありません。所得税の計算にあたっては、一定の金額を課税対象となる所得から差し引く「所得控除」という仕組みがあります。所得控除は、納税者の個別事情に配慮するための仕組みです。

生命保険料控除とは、この所得控除の一種で、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、その金額に応じた金額を、課税の対象となる所得から差し引くというもの。差し引いた結果、課税所得額が少なくなるので、支払うべき所得税と住民税の額も少なくなります。

なお、生命保険料控除は、保険料を支払っていれば、自動的に適用されるというものではありません。適用を受けるには、年末調整または確定申告で手続きをする必要があります。

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生命保険料控除の計算方法

生命保険料控除で控除される金額の計算方法は、保険料の支払いが、2012年1月1日以降に結ばれた「新契約」にもとづくものなのか、2011年12月31日以前に結ばれた「旧契約」にもとづくものなのかで異なります。

なお、保険の更新や転換、特約の途中付加があった場合は、従来の保険への加入日ではなく、それを実施した時期で判断します。2011年12月31日以前に契約した生命保険を、2023年10月に更新した場合などでは、更新した月以後の保険料が「新契約」の対象になるので、「旧契約」と「新契約」が両方あることとなります。加入形態にもよりますが、特に「旧契約」の生命保険料については、保険の見直しをした結果「生命保険料控除額が下がる」というようなこともあるので、ご注意ください。

新契約(2012年1月1日以降に結んだ契約)の場合

生命保険料控除の対象となるのは、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「公人年金保険料」の3種類です。

生命保険料控除の対象となる保険の種類と内容
保険の種類 内容
一般生命保険

生存または死亡に起因して、一定の保険料が給付される保険です。死亡保険、養老保険、学資保険などが該当します。

保険金の受取人が、契約者本人、契約者の配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族のうちのどれかであることが条件となります。また、契約が5年未満の貯蓄保険や貯蓄共済、団体信用生命保険は控除対象外です。

介護医療保険

入院・通院などに伴い給付が行われる保険です。医療保険やがん保険、介護保険などが該当します。

一般生命保険と同様に、控除対象となるには、保険金の受取人や契約期間に関する条件があります。

個人年金保険

以下の条件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険を指します。

  • 年金の受取人が契約者かその配偶者
  • 被保険者と年金の受取人が同一人物
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 確定年金や有期年金の場合は、年金受取開始年齢が60歳以降であり、かつ、年金の受取期間が10年以上

控除額の計算は一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の種類ごとに行い、最後に合計します。
合計する際の、生命保険料控除全体での適用限度額には上限があり、所得税が最大12万円、住民税が最大7万円です。各種類の生命保険料の控除額は以下のとおりです。

特に住民税の控除額については「2万8,000円×一般生命保険料分、介護医療保険料分、個人年金保険料分の3種類」として8万4,000円と誤解する人がいるので注意しましょう。

年間の払込保険料と所得税の控除額
年間の払込保険料等 控除額
2万円以下 払込保険料等の全額
2万円超4万円以下 (払込保険料等÷2)+1万円
4万円超8万円以下 (払込保険料等÷4)+2万円
8万円超 一律4万円
年間の払込保険料と住民税の控除額
年間の払込保険料等 控除額
1万2,000円以下 払込保険料等の全額
1万2,000円超3万2,000円以下 (払込保険料等÷2)+6,000円
3万2,000円超5万6,000円以下 (払込保険料等÷4)+1万4,000円
5万6,000円超 一律2万8,000円

旧契約(2011年12月31日以前に結んだ契約)の場合

旧契約にもとづく保険料の支払いは、「一般生命保険料」と「個人年金保険料」の2種類が控除の対象となります。医療保険や介護保険の保険料に関しての生命保険料控除は設けられていません。

控除額の計算は一般生命保険料、個人年金保険料の種類ごとに行い、最後に合計します。合計する際の、生命保険料控除全体での適用限度額には上限があり、所得税が最大10万円、住民税が最大7万円です。各種類の生命保険料の控除額は以下のとおりです。

年間の払込保険料と所得税の控除額
年間の払込保険料等 控除額
2万5,000円以下 払込保険料等の全額
2万5,000円超5万円以下 (払込保険料等÷2)+1万2,500円
5万円超10万円以下 (払込保険料等÷4)+2万5,000円
10万円超 一律5万円
年間の払込保険料と住民税の控除額
年間の払込保険料等 控除額
1万5,000円以下 払込保険料等の全額
1万5,000円超4万円以下 (払込保険料等÷2)+7,500円
4万円超7万円以下 (払込保険料等÷4)+1万7,500円
7万円超 一律3万5,000円

新契約・旧契約の両方に加入している場合

新契約と旧契約の両方の保険料を支払っている場合、控除額の計算に注意が必要です。新契約と旧契約では各種保険の控除額の上限が異なりますが、両制度の適用を合わせて受ける場合、最終的な上限額は新契約の一律4万円となります。旧契約の保険料の控除額の上限は5万円ですので、支払っている保険料によっては旧契約のみの適用としたほうが有利な場合があります。一例を見てみましょう。

両制度の保険料を支払っている場合の控除額の例

年間の払込保険料が、新契約の一般生命保険料4万円、旧契約の一般生命保険料10万円の場合

  • 新契約だけの適用を受ける場合の控除額:3万円(4万円×1/2+10,000円) ※上限4万円
  • 旧契約だけの適用を受ける場合の控除額:5万円(10万円×1/4+25,000円) ※上限5万円
  • 両制度の適用を受ける場合の控除額:4万円(3万円+5万円=8万円) ※上限4万円

この場合は、両制度の適用を受ける場合の控除額は4万円ですが、旧契約のみの適用であれば5万円の控除が受けられます。控除額が一番大きい金額となる条件を選ぶことができるので、支払っている保険料が新契約と旧契約のどちらなのかを確認しましょう。

なお、新契約では「介護医療保険」も対象です。生命保険、介護医療保険、個人年金保険の3種類それぞれで控除額を計算します。新契約と旧契約の両方があっても控除額は最高12万円になります。

参考

生命保険料控除を受けるには?

生命保険料控除の適用を受けるには、会社員などの給与所得者は年末調整または確定申告で手続きをする必要があります。年末調整がない方は、確定申告で申告手続きを行います。手続方法を確認しておきましょう。

年末調整で申告する

給与所得者で年末調整を受けている場合は、年末調整の際に生命保険料控除の申告を行います。手続きに必要なのは、勤務先から配られる「給与所得者の保険料控除申告書」と、保険会社から届く生命保険料控除証明書です。生命保険料控除証明書を見ながら、「給与所得者の保険料控除申告書」の生命保険料控除の欄に、加入している保険の種類や内容、払い込んだ保険料の額、控除額などを記入し、生命保険料控除証明書と一緒に勤務先に提出します。

給与所得者の保険料控除申告書

なお、生命保険料控除証明書は、デジタルデータ(XMLファイル)で受け取ることも可能です。勤務先の年末調整が電子化されている場合は、デジタルデータをそのまま提出できます。電子化されていない場合は、国税庁のWebサイトでQRコード付控除証明書等作成システムを使ってPDFファイルに変換し、それを印刷して提出します。XMLファイルをそのまま印刷して使うことはできない点に、注意してください。

このように、控除証明書等データは保険会社によっては、ホームページなどからダウンロードすることもできるようになっているほか、将来的には、マイナポータル連携を利用して一括取得する方法が定着するよう毎年システムが改修されています。勤務先から「年末調整のデジタル化」をすすめられることも予想されますので、徐々に慣れていきましょう。

  • QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

確定申告で申告する

給与所得者で年末調整を受けている人以外の人や年末調整で生命保険料控除の申告をしていなかったり、申告忘れや申告漏れがあった人は、確定申告で生命保険料控除の手続きを行います。確定申告に必要となる書類は申告内容によって異なりますが、給与所得者が生命保険料控除の適用を受けるために申告する場合は、およそ以下のとおりです。

確定申告に必要となる書類

  • 本人確認書類
  • 確定申告書 第一表・第二表
  • 生命保険料控除証明書
  • 源泉徴収票

源泉徴収票と生命保険料控除証明書を見ながら、確定申告書 第一表・第二表に年間の所得や生命保険料控除の額、納めるべき税金の額などを記載し、生命保険料控除証明書と共に税務署に提出します。e-Taxで申告する場合は、生命保険料控除証明書の提出は省略できます。

  • 年末調整と確定申告の違いについてこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

年末調整の保険料控除申告書の書き方

年末調整で手続きをする場合は、生命保険料控除証明書の準備が必要です。手元に生命保険料控除証明書を用意し、その内容を「給与所得者の保険料控除申告書」の生命保険料控除欄に転記していきます。

生命保険料控除申告書の記入項目

  • (1)
    控除証明書に記載された保険会社名です。
  • (2)
    終身、定期、医療、がんといった保険の種類です。
  • (3)
    終身、10年といった保険期間です。
  • (4)
    契約者の名前です。
  • (5)
    保険証券などに記載されている、保険金の受取人です。
  • (6)
    (5)との間柄です。
  • (7)
    新契約か旧契約かを表すものです。控除証明書の適用制度欄の「新契約」「旧契約」の記載に沿って、どちらかに◯をつけます。
  • (8)
    控除証明書から支払額を転記します。1月1日~12月31日に支払った保険料の合計になります。
  • (9)
    (8)のうち新契約の合計額を書きます。
  • (10)
    (8)のうち旧契約の合計額を書きます。
  • (11)
    (9)の金額を計算式Iに当てはめて計算し、結果を書きます(1円未満の端数は切り上げ)。
  • (12)
    (10)の金額を計算式IIに当てはめて計算し、結果を書きます(1円未満の端数は切り上げ)。
  • (13)
    (11)と(12)の合計額を書きます。4万円を超える場合は4万円と書きます。
  • (14)
    (12)と(13)のいずれか大きいほうの金額を書きます。
  • (15)
    一般の生命保険料欄と同じように書きます(新旧の区別はなし)。
  • (16)
    一般の生命保険料欄と同じように書きます。
  • (17)
    (14)(15)(16)の合計額を書きます。12万円を超える場合は、12万円になります。

確定申告書 第一表・第二表の書き方

確定申告で生命保険料控除を受ける場合は、確定申告書 第一表・第二表への記入が必要になります。手元に源泉徴収票と生命保険料控除証明書を用意し、これらを見ながら確定申告書 第一表・第二表を書いていきましょう。生命保険料控除に関する部分の書き方は、次のとおりです。

確定申告書 第二表

第二表

生命保険料控除証明書を見ながら、第二表の生命保険料控除の欄に種類別・新旧契約別に、各保険料について、1月1日~12月31日に支払った保険料の額を記載します。控除額ではなく、実際の支払額を記載する点に注意してください。

確定申告書 第一表

第一表

「所得から差し引かれる金額」の(15)生命保険料控除の欄に、生命保険料控除の合計額を記載します。 確定申告書類は、本人確認書類の写しと生命保険料控除証明書と一緒に、管轄の税務署に提出します。e-Taxで提出する場合は、生命保険料控除証明書の提出は不要です。

家族の保険料も支払っている人の場合

家族の分まで保険料を支払っている人は、その保険料を支払ったことを明らかにした場合は、家族のために支払った分も生命保険料控除の対象となります。ただし、以下の2点に注意が必要です。

家族の範囲に条件がある

一般生命保険料と介護医療保険料については、保険金の受取人が、「契約者本人か契約者の配偶者」「6親等以内の血族」「3親等以内の姻族」のうちのどれかであることが条件です。個人年金保険料は、年金の受取人が契約者かその配偶者であり、かつ被保険者と年金の受取人が同一人物であることが条件になります。

控除の上限額は増えない

控除の上限額は変化しないため、本人分の保険料の支払額がすでに控除額の上限に達している場合は、家族の保険料を支払っている場合でも、それ以上の控除は受けられません。

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生命保険料控除は、勤務先で年末調整を受ける人は年末調整で申告することで、受けない人は確定申告を行うことで、適用を受けられます。

年末調整を受けない人は、申告書に他の収入や所得、控除などに関する事項もすべて記載したうえで、確定申告を行わなくてはいけません。個人事業主が、帳簿付けから確定申告書類の作成までスムースに行える「やよいの青色申告 オンライン」や「やよいの白色申告 オンライン」を使うのがおすすめです。生命保険料控除の申告も画面にこたえていくだけで容易です。ぜひ、導入をご検討ください。

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この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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