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電子帳簿保存法でのPDFの取り扱い方法とは?保存のポイントも解説

監修者:小林祐士(税理士法人フォース)

2024/10/07更新

請求書や見積書など、業務でPDFファイルとしてメールで送ったり、受け取ったりしたことのある事業者も多いのではないでしょうか。これらの書類は電子帳簿保存法の電子取引のデータ保存に該当し、2024年1月からは電子データのまま保存することが完全義務化されています。

本記事では、電子帳簿保存法におけるPDFファイルとPDFファイル以外の電子データの取り扱い、保存方法の要件・ポイントを解説します。

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電子帳簿保存法におけるPDFファイルの取り扱い

PDFファイルで作成・保存された書類のうち、国税関係帳簿や国税関係書類に該当するものは、電子帳簿保存法の対象です。

そもそも電子帳簿保存法は、国税関係帳簿および国税関係書類を電子データとして保存する際のルールを定めた法律です。PDFファイルも電子データの一種となるため、該当書類は電子帳簿保存法が適用されます。

国税関係帳簿および国税関係書類に該当しないPDFデータは、電子帳簿保存法の対象外です。例えば、PDFの会社案内などは電子帳簿保存法の適用を受けません。

電子帳簿保存法の対象となる国税関係帳簿や国税関係書類の例としては、下記のような書類があげられます。

国税関係帳簿・国税関係書類の主な例

  • 国税関係帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳
  • 国税関係書類:貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類と、請求書や見積書、領収書などの取引関係書類

上記の例に該当する書類をPDFファイルで作成したり、受け取ったりしたときは、電子帳簿保存法の対象です。要件を満たす保存が必要です。特に、請求書や領収書などの取引関係書類をPDFファイルでやりとりした場合は電子取引に該当します。電子帳簿保存法の「電子取引のデータ保存」に則った対応が義務付けられています。

電子帳簿保存法の対象となるPDFファイル以外の電子データ

電子帳簿保存法の対象書類は、あくまでも書類の種類によって定められているため、PDFファイル以外の電子データでも、該当する書類はすべて電子帳簿保存法の対象です。

例えば、下記のようなファイル形式の電子データも、電子帳簿保存法の対象に含まれます。

電子帳簿保存法の対象となる主なPDFファイル以外の電子データ

  • JPEGファイル
  • TIFFファイル
  • PNGファイル
  • Excelファイル

電子帳簿保存法の対象書類には画像ファイルも含まれます。例えば、紙の領収書をスマートフォンのカメラで撮影してJPEGファイルで保存した場合、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件に従って保存が必要です。

なお、さまざまな形式の電子データが電子帳簿保存法の適用を受けますが、ExcelやWordといった改変が容易なファイル形式を、保存版の書類としたり、取引相手とやりとりする書類で利用したりするのは避けた方が無難でしょう。

例えば、Excelで作成した請求書をPDF化せずにそのまま取引先に送付し、自社でも控えを保存したとします。1か月後に、「同じ宛先の請求書を作るからコピーして上書きしよう」と考えた担当者が誤って元ファイルを編集してしまった場合、前月分のデータが損なわれてしまいます。これでは、安全に書類のデータを保存できているとはいえません。

電子取引のデータ保存の要件では、データの改ざんを防止する措置も含まれます。保存するための控えや取引先に送る書類などは、簡単に改変できないファイル形式で保存するのがおすすめです。

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電子帳簿保存法に則ってPDFファイルを保存する方法

電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類を3つの区分に分けて、区分ごとに保存要件を定めています。

電子帳簿保存法の3つの区分

  • 【義務】電子取引のデータ保存:電子データでやりとりされた取引関係書類のデータ保存
  • 【任意】国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存):最初から最後まで一貫してパソコンなどで電子的に作成された帳簿書類のデータ保存
  • 【任意】スキャナ保存:紙で受け取った取引関係書類のスキャンデータの保存

PDFファイルを電子帳簿保存法に則って保存する際には、最初にどの区分に該当するかを確認しましょう。対象となる書類と保存方法は、下記のとおりです。

【義務】電子取引のデータ保存

電子取引のデータ保存とは、電子データでやりとりした取引関係書類をデータのまま要件に従って保存することです。2024年1月以後の電子取引は、電子取引のデータ保存の要件に則ってデータで保存することが完全義務化されています。

電子取引のデータ保存に該当するPDFファイルの主な例としては、下記のようなものがあげられます。

電子取引のデータ保存に該当するPDFファイルの主な例

  • 取引先からメール添付されたPDFファイルの請求書や領収書
  • 自社が取引先に送信したPDFファイルの請求書や領収書などの控え
  • ECサイトのマイページなどからダウンロードしたPDFの領収書
  • クラウドサービス上からダウンロードしたPDFの注文書や請求書

なお、取引先からExcelやWordで交付されたファイルについては、自社でPDFファイルに変換して保存しても問題ありません。電子帳簿保存法ではやりとりしたデータの訂正・削除を防止する措置などが必要ですが、PDFファイルへの変換では書類の取引内容が変更される可能性が低いため、保存方法の1つとして認められています。

電子取引でやりとりをした取引書類のPDFファイルを保存する際は、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たすことが必要です。

電子取引のデータ保存の要件

真実性の確保 以下のいずれかの措置を行うこと ①タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う ②取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付す ③訂正や削除を確認できるシステム、または訂正や削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行う ④訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定め、それに沿った運用を行う 可視性の確保 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること 検索機能を確保すること ①取引年月日その他日付、取引金額、取引先について検索できること ②日付または金額の範囲指定により検索できること ③2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

真実性の確保は、上記の表上段の①~④のいずれかを満たせば認められます。

弥生製品をお使いであれば、「スマート証憑管理」を利用すると③の措置に該当するので、真実性の確保が満たすことが可能です。

一方、「可視性の確保」は、原則としてすべて満たす必要があります。

ただし、検索機能の要件のうち②③については、税務職員からデータのダウンロードを求められた際に対応できるようにしておけば、満たす必要はありません。日付、金額、取引先の3つの情報でPDFファイルを検索できるようにしておくのがおすすめです。

また、法人なら2事業年度前、個人なら前々年の売上が5,000万円以下、または電子取引データを印刷して、取引年月日や取引先ごとに整理した状態で提示・提出できる事業者など、一部の事業者は上記と同様にデータのダウンロードの求めに応じることができる場合は検索機能の要件のすべてが不要です。

電子取引のデータ保存の要件についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

【任意】国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)は、自社のパソコンなどを使い、最初から最後まで一貫して電子的に作成した国税関係帳簿や国税関係書類について、電子データで保存する際の要件を定めた区分です。

対応は任意であるため、紙で保存しても問題ありませんが、データで保存する場合は国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の要件を満たさなければなりません。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の対象になる帳簿書類の例としては、下記の2つのパターンがあげられます。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の対象になる帳簿書類の例

  • 会計ソフトなどで作成した、仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿や、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類
  • 自社のパソコンなどを使って、最初から最後まで一貫して電子的に作成してから印刷し、取引先に紙で提出した取引関係書類(データのまま提出した場合は電子取引に該当)

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)を行う場合は、下記の要件を満たすことが必要です。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の要件
保存要件概要 国税関係帳簿 国税関係書類
優良
帳簿
その他
帳簿
真実性の確保 記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること 必要 不要 不要
通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること 必要 不要 不要
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること 必要 不要 不要
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること 必要 必要 必要
可視性の確保 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと 必要 必要 必要
検索要件 取引年月日、取引金額、取引先により検索できること 必要 不要 不要※3
日付又は金額の範囲指定により検索できること 必要※1 不要 不要※3
二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること 必要※1 不要 不要
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること 不要 必要※2 必要※3
  • ※1: 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります。
  • ※2: 優良帳簿の要件を全て満たしているときは不要となります。
  • ※3: 取引年月日その他の日付により検索ができる機能及びその範囲を指定して条件を設定することができる機能を確保している場合には、「ダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと」の要件は不要となります。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)では、国税関係帳簿に関する保存要件を「優良」と「その他」に分けています。

仕訳帳や総勘定元帳を「優良」の要件を満たす形で保存している個人事業主の青色申告事業者は、65万円の青色申告特別控除を利用するための要件の1つを満たすことが可能です。なお、「優良」な電子帳簿の要件を満たさなくても、確定申告書の提出期限までにe-Taxを活用して申告する場合でも、青色申告特別控除65万円控除の要件の1つを満たせます。

【任意】スキャナ保存

スキャナ保存とは、紙で受け取った請求書や領収書をスキャンして、PDFファイルなどの電子データとして保存する場合の電子帳簿保存法の区分です。スキャナ保存への対応も、任意です。

電子取引のデータと併せて、紙の取引関係書類もスキャナ保存でデータ化して一元管理すれば、管理コストの抑制やミスの軽減につながるでしょう。

なお、自社が紙で取引先に交付した請求書や領収書の控えも、スキャナ保存が可能です。フォーマットを印刷してから手書きで情報を書き加えた取引関係書類の控えなども、スキャナ保存の要件を満たせば、スキャンした電子データのみの保存が認められます。

ただし、Excelで作成した請求書を印刷して社判を押し、スキャンしてPDFデータとして取引先にメール添付で送信した場合は、取引先に送付したのはデータであるため電子取引のデータ保存に該当します。

さらに、この書類をFAXで送った場合や郵送した場合は、一貫して電子的に作成した書類とみなされるため、国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の対象です。区分によって保存要件が異なるため、正しく判定できるようにしなければなりません。

スキャナ保存の区分では、「重要書類」と「一般書類」の分類に応じて下記のように要件が異なります。

スキャナ保存の要件

重要書類のPDFファイルにタイムスタンプを付与する際は、最長2か月とおおよそ7営業日以内の入力期間内に、タイムスタンプも付与しなければなりません。ただし、データの訂正・削除履歴が残るシステムや訂正・削除ができないシステムを利用する場合、タイムスタンプは不要です。

スキャナ保存の検索機能の確保についても、電子取引のデータ保存と同様に、税務職員からのダウンロードの求めに応じられるようにしてあれば、一部の要件への対応が不要になります。スキャナ保存については、検索要件のすべてが不要となる制度はありません。

国税関係帳簿書類のPDFファイルの保存は、専用システムの導入がおすすめ

電子帳簿保存法では、取引関係書類をPDFファイルなどの電子データでやりとりした際のデータ保存が義務化されています。電子取引のデータ保存の要件を守ってPDFファイルで取引書類を保存しながら、書類の管理を徹底するためには、システムの導入がおすすめです。

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さらに、弥生製品をご利用の方であれば、「スマート証憑管理」を利用することが可能です。「スマート証憑管理」では、受け取った請求書などの取引関係書類のデータを、電子取引のデータ保存の要件を満たしながら簡単に保存できます。スキャナ保存にも対応しているため、紙で受け取った書類のデータ化を希望している場合にもおすすめです。

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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)

東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
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