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スキャナ保存すれば紙保存は不要?電子帳簿保存法での扱いを解説

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紙で受領した国税関係取引書類や自身で作成して紙で提供する国税関係取引書類の写しは、電子帳簿保存法においてスキャナ保存が認められています。スキャナ保存がされていれば、原則的に紙の書類(原本)は廃棄してもかまいません。

一方で、スキャナ保存した場合には紙の書類を保存してはいけないのか、電子保存と紙保存が混在してもよいのか、判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、スキャナ保存した書類の原本の扱いについて解説します。電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件、スキャナ保存と紙保存それぞれのメリット・デメリット、スキャナ保存を導入する際に必要なことにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

スキャナ保存したら紙保存をしてはいけない?

「スキャナ保存」とは、紙で受け取った取引書類や自身で作成した取引書類の写しをスキャンして電子的に保存することです。スキャナ保存は電子帳簿保存法における保存区分の1つで、スキャナ保存に対応するか否かは、任意のため事業者の判断にゆだねられています。電子帳簿保存法では、スキャナ保存以外に「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)」「電子取引のデータ保存」の3つに区分されています。

スキャナ保存の対象書類は、取引先から紙で送られてきた請求書や納品書、自身が作成した見積書の控え、領収書の控え、請求書の控えなど、国税関係書類(但し、決算関係書類を除く)に該当する書類のうち、紙で授受された書類です。

スキャナ保存された取引書類は、原則的に紙の書類(原本)を廃棄しても問題ありませんが、スキャナ保存後に紙の原本も保存したい場合はどうしたらいいのでしょうか。ここでは、スキャナ保存と紙保存に関する基本的なルールをご紹介します。

スキャナ保存の原本を紙で保存しても問題ない

スキャナ保存を導入しても、紙保存が禁止されるわけではありません。電子帳簿保存法では、スキャナ保存した書類の原本を廃棄しても問題ないとされていますが、強制ではなく任意の対応となります。そのため、スキャナ保存後に、紙の原本をファイルにとじるなどして管理・保存していても問題はありません。

スキャナ保存と紙保存の混在も不可能ではない

スキャナ保存は任意規定であることから、導入するかどうかは事業者の判断にゆだねられます。さらに、書類によってスキャナ保存と紙保存に区別していても、ルール上は差し支えありません。ただし、電子帳簿保存法の「電子取引のデータ保存」への対応も踏まえて、スキャナ保存と紙保存を混在させるかどうか検討する必要があります。

電子取引の電子データとは、電子メールなど、インターネットを介してやりとりした取引書類の保存ルールのことです。クラウドサービス上で授受した証憑や、ECサイトからダウンロードした領収書なども該当します。電子取引のデータ保存は義務規定のため、電子取引で授受した取引書類は、必ず要件に従って、データのまま保存しなければなりません。電子取引の取引書類は、要件に従ってデータ保存せずに、印刷して紙で保存するといった対応は禁止です。

多くの事業者は、インターネットを介した書類のやりとりが発生するでしょう。電子取引は、データ保存が必須です。そのため、電子取引があるのであれば、電子取引以外の取引書類は、紙保存するといった運用ではなく、あらゆる取引書類を電子データでの保存に統一して一元管理をした方が効率的に管理できると考えられます。

また、税務職員の求めに応じて書類を提示する際にも、すべての書類が電子化されている方が該当する書類を探しやすくなります。

電子帳簿保存法の概要

スキャナ保存の要件が定められている電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の電子データ保存を認める法律です。従来、紙での保存が義務付けられていた書類のうち、電子帳簿保存法で定められた書類であれば、要件を満たす方法で電子データ保存が可能となります。

なお、電子帳簿保存法には、「スキャナ保存」「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)」「電子取引のデータ保存」の3つの分類があります。任意のものと義務のものがあり、任意のものに関しては必ずしも対応しなければならないわけではありません。まずは、電子帳簿保存法における帳簿書類の区分を理解することが大切です。

スキャナ保存【任意】

スキャナ保存は、相手先から受領した取引関係書類に加え、自社が紙で作成・発行した取引関係書類またはその控えをスキャナで電子化し、一定の保存要件の下に保存することです。

スキャナ保存への対応は任意のため、スキャナ保存を実施するかどうかは事業者の判断にゆだねられています。スキャナ保存をせずに紙の書類を紙のまま保存することも問題ありません。

スキャナ保存制度について詳しくは以下の記事を参照ください

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)【任意】

会計ソフト等を使用し、最初から一貫して電子的に作成された国税関係帳簿書類は、電子的に保存することが認められています。ただし、国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)の対応は任意のため、対象書類を印刷に紙で保存しても問題はありません。

電子取引のデータ保存【義務】

2024年1月1日以降、電子取引でやりとりを行った請求書や領収書などの取引書類は、要件に従って電子データのまま保存することが完全義務化されています。取引先からメール添付でPDFの取引書類を受け取ったり、Webサイトからダウンロードしたりした取引書類は、電子取引のデータ保存の要件に従って保存する必要があります。なお、電子取引のデータ保存の要件に従って保存していれば、対象書類を紙に印刷して別途保存してもかまいません。

スキャナ保存の要件

スキャナ保存をする際は、定められた要件を満たした状態で保存する必要があります。

スキャナ保存の要件は、資金や物の流れに直結する「重要書類」とそれ以外の「一般書類」に分けられています。重要書類とは、契約書や納品書、請求書、領収書などのこと、一般書類とは、見積書、注文書、検収書などのことです。

なお、スキャナ保存を開始した日よりも前に作成・受領した重要書類は「過去分重要書類」として、さらに要件が異なります。過去分重要書類は、あらかじめその種類などを記載した適用届出書を税務署長に提出することでスキャナ保存ができます。

スキャナ保存の要件は、下記のとおりです。

スキャナ保存の要件

要件 概要 重要書類 一般書類 過去分
重要書類
入力期間の制限 下記のうちどちらかの入力期間内に入力すること
(1)早期入力方式:書類を作成または受領してから、速やか(概ね7営業日以内)にスキャナ保存する。
(2)業務処理サイクル方式:それぞれの企業で採用している業務処理サイクルの期間(最長2か⽉以内)を経過した後、速やか(概ね7営業日以内)にスキャナ保存する。企業において書類を作成または受領してからスキャナ保存するまでの各事務の処理規程を定めている場合のみ採用できる。
必要
一定水準以上の解像度 解像度200dpi以上で読み取ること 必要 必要 必要
カラー画像による読み取り 赤・緑・青それぞれ256階調(24ビットカラー)で読み取ること 必要 カラー画像ではなくグレースケールでの保存可 必要
タイムスタンプの付与 入力期間内に総務大臣が認定する業務にかかるタイムスタンプを、入力単位ごとのスキャナデータに付すこと 必要(※1) 必要(※2) 必要(※2)
バージョン管理 スキャナデータについて訂正・削除の事実やその内容を確認することができるシステム等、または訂正・削除を行うことができないシステム等を使用すること 必要 必要 必要
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 スキャン文書とそのデータに関連する帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと 必要 必要
見読可能装置 14インチ(映像面の最大径が35cm)以上のカラーディスプレイおよびカラープリンタ並びに操作説明書を備え付けること 必要 カラー画像ではなくグレースケールでの保存可 必要
整然・明瞭出力 スキャナデータについて、速やかに出力することができるようにすること
(※3)
必要 必要 必要
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け スキャナ保存するシステム等のシステム概要書、システム仕様書、操作説明書、スキャナ保存する手順や担当部署などを明らかにした書類を備え付けること 必要 必要 必要
検索機能の確保 スキャナデータについて、要件を満たして検索ができるようにすること
(※4)
必要 必要 必要
その他 ・当該電磁的記録の保存に併せて、当該電磁的記録の作成および保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限る)の備付けが必要
・所轄税務署長等宛てに適用届出書の提出が必要
必要(※5)
  • ※1入力事項を規則第2条第6項第1号イまたはロに掲げる方法により当該国税関係書類にかかる記録事項を入力したことを確認することができる場合には、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができる。
  • ※2当該国税関係書類にかかる記録事項を入力したことを確認することができる場合には、タイムスタンプの付与に代えることができる。
  • ※3速やかな出力とは、「(1)整然とした形式(2)書類と同程度に明瞭(3)拡大または縮小して出力することができる(4)4ポイントの大きさの文字を認識できる」こと。
  • ※4検索機能を確保する要件は、「(1)取引年⽉日その他の日付、取引金額および取引先での検索(2)日付または金額にかかる記録項目について範囲を指定しての検索(3)2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索」できること。なお、税務職員による質問検査権に基づくスキャナデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、(2)および(3)の要件は不要。
  • 5 2024年1月1日前に保存する国税関係書類については、上記表の要件のほか「解像度及び階調情報の保存」、「大きさ情報の保存」及び「入力者等情報の確認」が必要。

スキャナ保存のメリット・デメリット

スキャナ保存を導入することで、事業者にはどのような変化があるのでしょうか。ここでは、スキャナ保存のメリット・デメリットをご紹介します。

スキャナ保存のメリット

スキャナ保存を実践することによって、書類の物理的な保存スペースが不要になり、省スペース化が実現します。紙の書類をファイリングする作業を省けるといった点もメリットでしょう。

また、スキャナ保存は業務効率の向上にも寄与します。例えば、従業員が紙の領収書をスマートフォンで読み取って経理担当者に送付した後、経理担当者は電子データのまま保存が可能です。書類をスムースに受け渡しできるうえ、電子データで管理することで、経理担当者の業務効率も上がります。クラウドサービスを活用して証憑の電子データの管理をすれば、出社の必要もなくなるため、テレワークの促進や多様な働き方を実現しやすくなります。

さらに、スキャナ保存は任意規定(=取り組みたい事業者が任意で行うもの)のため、いつでも始められるといった点もメリットの1つです。スキャナ保存を導入する際、特別な手続きや届出などは原則必要ありません。自社にとって都合のいいタイミングで導入できます。

スキャナ保存のデメリット

スキャナ保存をするには、要件を満たした状態で書類を読み取り、保存できるしくみを構築しなければなりません。外部システムの導入や、自社システムの構築などの方法が考えられますが、どちらにしても一定のコストがかかる点がデメリットといえます。

また、スキャナ保存の運用では、情報漏洩や書類の改ざんなどを防ぐための対策も不可欠です。電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件に従って保存することが定められています。スキャナ保存を導入する際は、対応しているシステムの導入がおすすめです。

紙保存のメリット・デメリット

紙で授受した帳簿書類を紙のまま保存する方法にも、メリット・デメリットの両面があります。紙保存のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

紙保存のメリット

これまで帳簿書類をすべて紙で授受していた事業者の場合は、従来どおりの手順でさまざまな処理を継続できることは、紙保存のメリットといえます。しかし、自身が紙で書類を送付していても、取引相手からPDFの書類をメール添付などで受領することもあるでしょう。2024年1月1日以降、電子取引のデータ保存が完全義務化されたことから、電子取引に該当する方法で書類を授受した場合は、必ず電子保存しなければなりません。紙保存が前提とは考えず、電子保存にも対応できるようにする必要があります。

また、取引相手によっては紙でのやりとりが必須の場合もあります。取引先の中には紙での運用を継続する事業者が含まれていることも想定されるためです。紙保存を継続すれば、こうしたケースにも問題なく対応できます。

紙保存のデメリット

事業者が扱う帳簿書類のすべてまたは一部を紙で保存するには、手間と時間を要します。保管には1枚1枚ファイリングが必要であり、保管スペースに保管するだけでなく、決められた期間、厳重に保存しなければなりません。担当者に高い作業負荷がかかりやすい点は、紙保存のデメリットといえます。

また、紙保存は、データ検索に比べて検索性が低いこともデメリットの1つです。電子データであれば、検索機能を活用することで、目的の書類をすばやく見つけられます。一方、ファイリングされた紙の書類から目当てのものを探すには、ルール化して保管していたとしても、発行年月日や取引先名などを目視で一点ずつ確認しなければなりません。

さらに、物理的な保管場所を確保する必要があることも、紙保存のデメリットとしてあげられます。国税関係帳簿書類には保存期間が定められていることから、保管スペースの確保は避けられません。紙の場合、劣化や盗難・災害による消失といったリスクも抱えているため、安全に保管できる場所や、管理体制が必要です。

スキャナ保存の導入に必要なこと

スキャナ保存を導入する場合、どのような準備が必要なのでしょうか。ここでは、スキャナ保存を導入する際に、必要な準備についてご紹介します。

スキャン用の機器を用意する

スキャナ保存を導入する際は、所定の要件を満たす機器を用意しなければなりません。機器の要件は、重要書類と一般書類で異なり、重要書類はカラー画像で保存できることが要件の1つですが、一般書類はグレースケールでの保存が可能です。スキャナ保存に対応する機器を用意する際は、カラー画像で保存できるよう、重要書類のスキャナ保存の要件を満たすかどうかを確認することをおすすめします。

重要書類を読み取る際のスキャナの条件は、下記のとおりです。

重要書類のスキャナ保存の要件を満たす機器の条件

  • 解像度200dpi以上で読み取れること
  • 赤・緑・青それぞれ256階調(24ビットカラー)で読み取れること

一般的なスキャナであれば、上記の条件を満たしているケースがほとんどです。ただし、解像度を下げる設定をしている場合があるため、設定を確認しましょう。

また、スマートフォンやデジタルカメラを使用して書類を読み取る際は、約387万画素が必要とされています。こちらも、一般的な機種であればおおよそ問題はないと考えられます。

データ保存のシステムを導入する

スキャナ保存では、読み取った後のデータを保存するためのシステムも必要です。スキャン文書を保存するシステムは、タイムスタンプや改ざん防止の機能を備えたシステムであることが条件となります。データ保存のシステム導入の方法としては、自社開発または市販ソフトの導入といった方法が考えられます。

データ保存のシステムを導入する場合は、クラウドサービスがおすすめです。電子帳簿保存法は、今後も改正される可能性が十分に考えられますが、システムを自社開発した場合、法令の改正に随時対応しなければなりません。また、導入時のシステム構築に膨大な時間がかかることや、初期費用も高額になる可能性が高くなります。

クラウドサービスであれば、サービス提供元が法令の改正などに対応するため、システムの更新は必要なく、自社開発に比べて費用も抑えられるでしょう。

従業員への周知と教育

スキャナ保存の導入に伴い、既存のワークフローを変更することが必要になると想定されます。ワークフローの変更点を伝えるだけではなく、電子帳簿保存法に関する基本的な知識をはじめ、スキャナ保存を導入する理由なども併せて周知することが大切です。

新たなワークフローやセキュリティ対策について、理解を深めるための場を設けることをおすすめします。説明会を行うなど、電子帳簿保存法を遵守した運用を実現するための環境を整えましょう。

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スキャナ保存と紙保存の混在は問題ありませんが、書類ごとに紙保存なのかスキャナ保存なのかを正確に把握しなければならず、混乱を招くことも考えられます。電子取引はデータでの保存が義務付けられていることから、紙の書類はスキャナ保存を行い、電子データ管理に統一することで、業務効率の向上や省スペース化、ペーパーレス化などにつながります。スキャナ保存を行う際は、スキャナ保存の要件を満たさなければなりません。電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応したシステムを選定しましょう。

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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)

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