電子帳簿保存法でスキャナ保存する際に事務処理規程は不要?
監修者:小林祐士(税理士法人フォース)
2024/09/26更新
電子帳簿保存法においてスキャナ保存では、データが改ざんできないように真実性の確保が求められます。事務処理規程とは、事業者が電子帳簿の適切な保存と管理を行うための手順や基準など、改ざん防止に関するルールを定めた書類を指します。
では、スキャナ保存を行う場合、必ず事務処理規程を作成し、備え付けておかなければならないのでしょうか。また、事務処理規程の簡単な作成方法や、事務処理規程を作成しない場合のスキャナ保存要件の対応方法についても知っておきたいところです。
ここでは、スキャナ保存を行う際の事務処理規程について、わかりやすく解説します。電子帳簿保存法に基づいてスキャナ保存を行う場合の事務処理規程の扱いがよくわからない初心者向けに、シンプルに紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
スキャナ保存の際に事務処理規程は不要?
2024年時点の電子帳簿保存法では、スキャナ保存で、事務処理規程は不要です。これは、2021年度の電子帳簿保存法改正によって、2022年1月1日以降に作成した書類のスキャナ保存に関しては、事務処理規程の整備の要件が廃止されたためです。
ただし、例外があります。下記に当てはまる場合は、事務処理規程を備え付ける必要があります。
スキャナ保存の際に事務処理規程を備え付ける必要がある場合
2021年12月31日以前にやりとりをした取引書類をスキャナ保存し、電子データとした場合
スキャナ保存の要件についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
電子帳簿保存法の事務処理規程とは、社内規程のこと
そもそも、電子帳簿保存法における事務処理規程とは、電子取引のデータ保存やスキャナ保存のために事業者が定める社内規程です。
事務処理規程は、電子取引のデータ保存では「真実性の確保」の手段の1つとして設けられています。
一方で、スキャナ保存では、入力期間の制限のために事務処理規程を定めておく必要があります。
具体的には、スキャナ保存では、下記のいずれかの入力期間内に入力が必要です。
- 書類の作成または受領から概ね7営業日以内
- 各企業が定めている業務処理サイクルの期間(最長2か月)を経過した後、概ね7営業日以内
そのうち、最長2か月と概ね7営業日以内の入力を行うためには、書類の作成または受領からスキャナ保存までの事務処理規程を定めておく必要があるのです。
スキャナ保存の事務処理規程の作成方法
スキャナ保存の事務処理規程を作成する際は、「スキャナによる電子化保存規程」と「国税関係書類に係る電子計算機処理に関する事務の手続を明らかにした書類」を作成する必要があります。ここでは、国税庁の「スキャナによる電子化保存規程」のテンプレートを基に、作成方法について解説します。
(1)目的
電子化保存規程を作成する際には、目的を記載する必要があります。国税庁のテンプレートには下記のように記載されていますので、参考にしてください。
電子化保存規程の目的の例
第1条 この規程は、○○における紙による国税関係書類について、××社製●●システム(以下「本システム」という。)を活用して、スキャナによる電子化を安全かつ合理的に図るための事項を定め、適正に利用・保存することを目的とする。
(2)定義
電子化保存規程における用語について定義することも、欠かせない項目です。「電子化文書とは、紙文書を電子化した文書をいう」といったように、明確に定義しておく必要があります。
(3)運用体制
電子化保存規程の運用体制については、管理責任者と作業担当者を置くことや、それぞれの役割について明記します。管理責任者がスキャナ保存を外部業者に委託する場合についても記載する必要があります。
(4)利用者の責務
スキャナ保存を利用する従業員が守るべき責務についても、電子化保存規程で具体的に定義しましょう。「自身のIDやパスワードを管理し、これを他人に利用させない」や「与えられたアクセス権限を越えた操作を行わない」といった文言を盛り込みます。
(5)対象書類・入力時期
電子化保存規程では、どの書類をスキャナ保存の対象とするのかを明記しなければなりません。また、書類を入手した際には、いつまでにスキャナ保存の処理をするのかも定めておきましょう。スキャナ保存では、入手した書類を読み取ってスキャナ保存するまでの動作を「入力」といいますが、「速やか(おおむね7営業日以内)に入力」といったように記載します。
(6)機能要件
電子化保存規程では、対象となるデータの保存形式についても明確に定義しなければなりません。国税庁のテンプレートでは、下記のようになっています。このほか、真実性を確保するための機能や機密性を確保するための機能についても定めておきたいところです。
スキャナ保存の文書作成および管理機能の取り決めの例
-
一 データフォーマット 電子化文書のデータフォーマットは、BMP、TIFF、PDF又はJPEGとする。
-
二 階調性の確保 画像の階調性を損なうような画像補正は行わない。
-
三 画像品質の確保 電子化文書の画像は、第○条で定めるところにより確認できること。
-
四 両面スキャン 電子化文書の作成に当たっては、原則として、両面をスキャンする。
ただし、裏面に記載のないものなどについては、この限りではない。
(7)機器の管理と運用
機器の管理や運用についても、電子化保存規程で定める必要があります。具体的には、記録媒体の二重化やバックアップのほか、入力時の解像度・階調、出力するプリンターの仕様などです。
(8)スキャニングの手順等
スキャニングの手順等を定めることは、電子化保存規程の大きなポイントです。書類を受け取った後の整理や分類方法のほか、どこに保管するのかを明確に記載しておく必要があります。スキャニングの実作業時の各責任者の役割や作業の流れについても具体的に記載しましょう。
(9)原本の廃棄と電子化文書の消去等
書類の原本の保存期間やスキャナ保存したデータの消去についてもルールを厳格に定めておく必要があります。電子化保存規程においては、「作業担当者は、スキャニング処理を終えた原本について、管理責任者のチェックが完了するまでの間、一時保管する」「管理責任者は、保存期間が満了した電子化文書の一覧を基に該当するデータの消去を行い、消去結果を記録する」といったように、わかりやすく記載してください。
スキャナ保存の事務処理規程を作成する際のポイント
スキャナ保存の事務処理規程を作成する場合は、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、スキャナ保存の事務処理規程を作成する際のポイントについて解説します。
国税庁のテンプレートを利用して作成する
事務処理規程は、前述の国税庁が公表しているテンプレートを利用して作成することができます。
ただし、国税庁のテンプレートをベースとして自社の運用に合うよう、適宜カスタマイズする必要があります。また、運用後も定期的に見直すようにしてください。
自社のスキャナ保存で対象となる書類を明確にしておく
事務処理規程では、対象となる書類を明確に定義することが重要なポイントとなります。スキャナ保存の対象書類には、現時点での請求書や納品書などの授受以外にも、今後対象となる書類が増える可能性も含めて記載しておくことをおすすめします。
対象となる書類は、これまでの取引情報から推察して定義します。守らなければならないルールを定める以上、抜けや漏れがないように注意してください。
事務処理規程作成をせずにスキャナ保存をするなら対応できるシステムでスムースな電子帳簿保存対応しよう
スキャナ保存の事務処理規程の作成は、ルール化による効率的な運用が可能になったり、システム導入に関するコストがかからなかったりするメリットがあります。
しかし、事務処理規程作成には想像以上に手間がかかったり、責任者の負担が大きくなったりするので注意が必要です。その点で、スキャナ保存の対応をスムースに行うためには、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入がおすすめといえます。
弥生では、電子帳簿保存法とスキャナ保存の要件に対応できるクラウドソフトを複数ご用意しています。
「弥生会計 オンライン」や「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」で利用できる「スマート証憑管理」は、スキャナ保存にも対応しています。
弥生のソフトは、電子帳簿保存法の電子取引や適格請求書等保存方式(インボイス制度)にも対応しているため、さまざまな法改正にまとめて対応可能です。経理業務の効率化とペーパーレス化に、ぜひお役立てください。
無料お役立ち資料【電子帳簿保存法をわかりやすくまるっと理解】をダウンロードする
弥生のクラウドアプリなら、電帳法に無料で対応
弥生のクラウドアプリは、電子取引の証憑や帳簿、書類の電子保存に無料で対応します。
クラウド見積・納品・請求書サービス「Misoca」で発行した請求書や取引先から受領した証憑は、「スマート証憑管理」と連携することで、電子帳簿保存法の要件を満たす形で電子保存・管理することができます。
またクラウド会計ソフトの「弥生会計 オンライン」「やよいの青色申告 オンライン」に関しては、作成した決算書や帳簿を製品内で電子保存することが可能です。
- ※その他の帳簿に対応
今ならお得な各種キャンペーンを実施中!まずはお試しください。
請求業務を効率化するMisoca
Misocaは、見積書 ・納品書・請求書・領収書・検収書の作成が可能です。取引先・品目・税率などをテンプレートの入力フォームに記入・選択するだけで、かんたんにキレイな帳票が作成できます。
さらに固定取引の請求書を自動作成する自動作成予約の機能や、Misocaで作成した請求データを弥生の会計ソフトで自動取込・自動仕訳を行う連携機能など、請求業務を効率化する機能が盛り沢山です。
月10枚までの請求書作成ならずっと無料で、月15枚以上の請求書作成なら初年度無料になるキャンペーンを実施中!
日々の仕訳、決算業務をスムースにする「弥生のクラウド会計ソフト」
弥生のクラウド会計ソフトは、銀行口座・クレジットカードの明細、レシートのスキャンデータを自動取込・自動仕訳するから、日々の取引入力業務がラクにできます。
また決算書類の作成も流れに沿って入力するだけ!経理初心者の方でも、”かんたん”に会計業務を行うことができます。
法人の方は、初年度無料ですべての機能が使える「弥生会計 オンライン」、個人事業主の方は、初年度無料ですべての機能が使える「やよいの青色申告 オンライン」をご検討ください。
- ※優良な電子帳簿保存には、対応していません。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。