デジタルインボイスとは?概要や導入のメリット・デメリットを解説
2024/01/25更新
「デジタルインボイスと電子インボイスの違いは?」「デジタルインボイスを導入することで何が変わる?」などの疑問をもっている事業者の方もいるのではないでしょうか。インボイス制度ではデジタルインボイスの導入によって大幅な業務効率化が期待されています。ここでは、デジタルインボイスと電子インボイスの違いや、デジタルインボイスにかかわるPeppolについて、導入のメリット・デメリットなどを解説します。
デジタルインボイスとは?
デジタルインボイスとは、電子化された適格請求書(インボイス)である電子インボイスを標準化したものです。標準化により、異なるシステム間でのやり取りが可能になるため、請求から支払い、入金消込といった経理会計業務の多くがデジタル上で完結します。
本章ではデジタルインボイスについて、以下のポイントを解説します。
- デジタルインボイス導入の目的
- デジタルインボイスと電子インボイスの違い
デジタルインボイスを利用することで業務効率化が期待できます。インボイス制度によって増加する経理業務の負担に対応するために、しっかり理解しておきましょう。
デジタルインボイス導入の目的
デジタルインボイスはインボイス制度開始に伴い採用されました。事業者のバックオフィス業務は、いまだ紙媒体でのアナログな業務が中心で、効率化や生産性向上の妨げとなっていると言われています。 デジタルインボイスの導入は、事業者のバックオフィス業務プロセスをデジタル化して、取引全体を効率化させることが目的です。
デジタルインボイスでは適格請求書(インボイス)の電子化だけでなく、標準化によって異なるシステム間でのスムーズなやり取りも可能になります。業務全体のデジタル化により、請求から支払い、入金消込といった経理会計業務の自動化が可能になるため、インボイス制度の業務負担軽減に大きく貢献すると期待されています。
- 参考:デジタルインボイス推進協議会「デジタルインボイスとは」
デジタルインボイスと電子インボイスの違い
「デジタルインボイス」と「電子インボイス」は同じ意味で使われがちですが、一般的に定義が異なるとされています。
電子インボイスとは、名前のとおり、電子化された適格請求書(インボイス)です。インボイス制度では電子帳簿保存法の要件を満たしていれば、PDF形式のような電子データでの適格請求書(インボイス)の保存が認められています。しかし電子インボイスには決まった形式が定められておらず、異なるシステム間のやり取りは困難です。
一方、デジタルインボイスとは、適格請求書(インボイス)を電子化した上で、後述するPeppol(ペポル)と呼ばれる規格に準拠して標準化したインボイスを指します。標準化されることで異なるシステム間でもスムーズにやり取りが可能になり、業務全体の効率化につながります。つまり電子インボイスの枠組みの中に、デジタルインボイスが内包されているイメージです。
電子インボイスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
デジタルインボイスはPeppolに準拠して標準化されている
デジタルインボイスはPeppol(ペポル)に準拠して標準化された適格請求書(インボイス)を指します。Peppolとは、ネットワーク上でデジタル文書をやり取りするための文書仕様と運用ルール、ネットワークのグローバルな標準仕様です。つまりPeppolは「言語通訳者」のような役割を果たし、異なるシステム間での通信をスムーズに行えるようにします。
Peppolに準拠して標準化されたデジタルインボイスを利用すれば、請求から支払い、その後のプロセスである入金消込といった会計・税務業務の自動化が可能となります。見積もりや受発注に関しては業界特有の慣行があることから、デジタル庁はPeppolによって、まずは経理業務の自動化を目指しています。インボイス制度による経理業務の負担増加も、デジタルインボイスによって軽減できます。インボイス制度にかかわる業務効率化を考えている事業者の方は、Peppolによって標準化されたデジタルインボイスの導入を検討してみましょう。
Peppolについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
デジタルインボイスを導入するメリット
企業がデジタルインボイスを導入するメリットは、以下の6つです。
- 経理業務を自動化できる
- 専用のシステムを導入する必要がない
- 人為的ミスを防止できる
- 海外との取引がスムーズになる
- 日本の業務慣行にも対応している
- 資金回収期間の短縮が期待できる
それぞれのメリットを理解して、デジタルインボイスを導入する参考にしてみてください。
経理業務を自動化できる
デジタルインボイスを導入すると、経理業務の自動化が可能となります。Peppolの標準化によって、適格請求書(インボイス)の入力・計算業務を自動的に処理できる形に成形できるためです。標準化されていない電子インボイスでは経理業務の自動化は困難ですが、デジタルインボイスでは経理業務を自動化し、業務コストや人員コストを削減できるようになります。
インボイス制度に対応したシステムについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
専用のシステムを導入する必要がない
デジタルインボイスのやり取りは、企業間で異なるバックオフィスソフトを利用していても問題なく行えます。デジタルインボイスはPeppolのシステムを介して標準化されており、互換性を保てるためです。従来のデジタル文書をやり取りするには、企業間で同じ会計システムを利用する必要がありました。しかしPeppolのシステムを利用すれば互換性の問題を解消できるため、多くの企業で効率的な取引が可能になります。
人為的ミスを防止できる
デジタルインボイスを導入することで、人為的ミスを防止できるメリットがあります。デジタルインボイスでは、経理業務をシステム上で実施できるようになるためです。
従来の請求書にかかわる業務では、経理担当者が税率別に金額を計算し、仕入税額控除の対象かどうか判断して、入力業務を行う必要がありました。これら一連の作業は人が行うとケアレスミスが発生しやすい一方、デジタルインボイスではシステム上で業務が完結するため、人為的ミスの削減が期待されています。
海外との取引がスムーズになる
デジタルインボイスは国内の企業だけでなく、海外企業との取引もスムーズに行えるようになります。デジタルインボイスの標準化を行うPeppolは、もともとヨーロッパを中心に世界40カ国以上で利用されている標準仕様です。そのため海外企業とのやり取りで請求書が必要になった場合でも、デジタルインボイスによって言語や通貨、税制の違いによる問題もクリアできます。海外企業とのやり取りが多い企業にとって、デジタルインボイスは強力なツールになるでしょう。
日本の業務慣行にも対応している
デジタルインボイスはグローバルスタンダードであるPeppolに準拠していますが、日本の経理業務の慣行にも対応しています。日本ではインボイス制度開始に伴い、Peppolをベースとした日本版Peppolである「JP PINT」がデジタル庁によって採用されました。
JP PINTは日本の経理業務の慣行に合わせたシステムとなっていて、日本企業の多くが行っている月極請求書(合算請求書)にも対応しています。複数の納品取引をひとつの請求書にまとめる月極請求書は、海外ではあまり一般的ではありません。しかし、デジタル庁は日本での普及を促進するために、JP PINTを月極請求書にも対応できるように設計しました。そのため、現在月極請求書を作成している企業でも、問題なくJP PINTを導入して、デジタルインボイスを活用できます。
資金回収期間の短縮が期待できる
請求書には、資金回収まで時間がかかってしまう問題があります。こうした資金繰りの問題に対しても、デジタルインボイスの導入によって解決が期待されています。デジタルインボイスは今後、金融機関との連携によって利便性が向上される予定です。
売り手が発行したデジタルインボイスの情報は金融機関への共有が可能となり、金融機関はリアルタイムでの与信判断や融資を実行できるようになります。これまで1〜3ヶ月程度かかっていた資金回収も、デジタルインボイスの導入によって短縮でき、次のビジネスへの投資をしやすくなるでしょう。
デジタルインボイスを導入するデメリット
デジタルインボイスの導入には多数のメリットがありますが、以下の3つのデメリットも存在します。
- 社内ルールの構築や社員教育にコスト・時間がかかる
- システム導入のコストがかかる
- 取引先によっては使用できない
メリットだけでなくデメリットも理解した上で、デジタルインボイスの導入を検討しましょう。
社内ルールの構築や社員教育にコスト・時間がかかる
デジタルインボイスの導入にあたって、社内ルールの構築や社員教育が必要です。具体的には新しい請求書処理フローに関連する社内ルールやマニュアルの策定、デジタルインボイスに対応したバックオフィスソフトの利用方法などの教育が必要です。コストや時間がかかる点を考慮して、デジタルインボイスを導入するようにしましょう。
システム導入のコストがかかる
会計ソフトの導入にコストがかかる点も考慮しましょう。デジタルインボイスを利用するためには、Peppolに対応したバックオフィスソフトの利用が必要です。ソフトの導入には基本料金やオプション料金がかかり、新しいシステムの運用に関連する人件費や研修費などのコストもかかります。導入にかかるコストを洗い出して、デジタルインボイスのメリットと比較して導入を検討してみてください。ソフトの導入にはIT導入補助金という、業務効率化やDXなどのITツールの導入を支援する補助金制度を利用できる場合があります。制度の利用も含めて、デジタルインボイスの導入を検討してみましょう。
こちらのサイトでIT導入補助金について解説しています。
取引先によっては使用できない
デジタルインボイスは、Peppolに対応したバックオフィスソフトどうしでなければ、使用できません。そのため取引先がデジタルインボイスを導入している必要があります。自社でデジタルインボイスを導入する前に、取引先がデジタルインボイスを導入している、または導入予定があるか確認するとよいでしょう。
デジタルインボイスについてよくある質問
デジタルインボイスは義務化される?
デジタルインボイス義務化の予定は、2023年(令和5年)12月時点で発表されていません。そのため企業の任意で導入を検討できます。デジタルインボイスの導入がなくても、PDF形式のような電子インボイスのやり取りは可能です。
デジタルインボイスはいつから使用が開始される?
インボイス制度が開始された2023年(令和5年)10月1日から使用できるようになりました。デジタルインボイスの開始時期に関しては事業者が自由に決められます。
デジタルインボイス対応のシステムを導入して業務効率化を目指そう
デジタルインボイスの導入によって、インボイス制度にかかわる経理業務の負担は大幅に改善されると期待されています。導入によって適格請求書(インボイス)の入力や計算業務が自動化でき、業務効率化によるコスト削減が可能です。
デジタルインボイスの導入には、Peppolに対応したバックオフィスソフトの導入が必要です。弥生株式会社ではデジタルインボイスに対応したスマート証憑管理によって、請求書や領収書などの証憑をデジタルデータでクラウド一元管理できます。インボイス制度による経理業務の負担の軽減に大きく貢献できるシステムですので、ぜひ利用をご検討ください。
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