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インボイス制度に対応したシステムとは?導入・改修のポイントを解説

監修者:辻・本郷 税理士法人/辻・本郷 ITコンサルティング

2023/12/26更新

2023年10月1日から導入されたインボイス制度では、請求書の様式やシステムにさまざまな変更が必要です。会計システムや請求書発行システムなども、インボイス制度に合わせた対応が求められます。では、インボイス制度に対応するには、どのようなシステムを導入すれば良いのでしょうか。

本記事では、インボイス制度に必要なシステムや、システムを変更・導入する際のポイントなどについて解説します。

インボイス制度の対応にはシステムの導入が必須

インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、請求書などの交付や保存に関わる制度です。インボイス制度が始まると、課税事業者が仕入税額控除を受けるための重要な要件として、適格請求書(インボイス)の交付と保存が求められます。

適格請求書とは、登録番号や適用税率、適用税率ごとの消費税額といった、定められた項目が記載された請求書のことで、従来の区分記載請求書等とは様式が異なります。また、売手側・買手側共に、適格請求書は一定の保存が必要です。保存期間は、適格請求書を交付した日(または受け取った日)が属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間となります。適格請求書が電子データによって発行されている場合は、電子帳簿保存法に定められた電子取引の保存要件も満たさなければなりません。

このようなインボイス制度によるさまざまな要件に対応するには、会計システムや請求書発行システムといった各種システムの整備が不可欠です。手書きやExcelなどで作成した適格請求書でも、制度上問題はありませんが、書き間違いや記載漏れといったミスだけでなく、不正のリスクも懸念されます。

さらに、必要事項に不備があると仕入税額控除の要件を満たさないため、正しい適格請求書で再交付しなくてはなりません。ですから、これまで手書きやExcelで請求書等を作成していた場合、管理が難しくなってしまう可能性があります。

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インボイス制度導入の目的は、正確な消費税額と税率を把握するため

インボイス制度の大きな目的は、取引における正確な消費税額と消費税率を把握することです。その背景には、先述した軽減税率が影響しています。軽減税率の導入によって、仕入や販売に8%と10%の消費税率が混在するケースが発生するようになりました。もし、仕入れた商品の消費税率が8%なのに10%で計上すれば、差の2%分は不当な利益となってしまいます。
インボイス制度は、このような不当利益や計算ミスを防ぐため、記載義務を満たした請求書によって消費税を計算し納付しようという制度です。

仕入税額控除とは本来納めるべき税額を求める仕組み

仕入税額控除とは、課税事業者が納めるべき消費税を計算する際に、売上にかかる消費税額から仕入にかかった消費税額を差し引くことです。課税事業者は売上にかかる消費税額を申告・納付しますが、その事業者も商品などを仕入れる際には消費税を支払っています。

1,100円(商品代金1,000円+消費税100円)で仕入れた品物を、2,200円(商品代金2,000円+消費税200円)で販売した例で考えると、この場合は、商品を購入した消費者と、商品を仕入れた事業者が、二重に消費税を払っている状態になるのです。
このような二重課税、三重課税を防ぐために、課税売上にかかる消費税額から課税仕入にかかった消費税額を差し引いて、本来納めるべき税額を求める仕組みを仕入税額控除といいます。

インボイス制度導入後は、売手側が発行した適格請求書がないと、買手側は仕入税額控除ができません。ただし、仕入税額控除については経過措置が設けられており、2023年10月1日から3年間は仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から3年間は同様に50%の控除が可能です。適格請求書は、適格請求書発行事業者として登録を受けた課税事業者しか発行することができないため、仕入先(売手側)からインボイスを受けられない場合は、経過措置期間中の対応も必要になります。

なお、買手側が消費税申告で簡易課税制度を選択している場合は、適格請求書がなくても仕入税額控除が可能です。その場合も、受領した請求書等は「国税関係書類」として、所得税や法人税法等によって一定期間の保存が義務付けられています。

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適格請求書の要件を満たすには、以前の区分記載請求書等に3項目を加える

消費税法では、仕入税額控除の要件として、帳簿や仕入先が発行した請求書などの保存を義務付けています。2019年10月1日に軽減税率が導入されたことに伴い、消費税に8%と10%の複数税率が存在するため、軽減税率の対象品目を区分して記載する「区分記載請求書等」が求められていました。

インボイス制度導入までは、どの事業者も区分記載請求書等によって仕入税額控除を行っていましたが、2023年10月1日からは適格請求書の記載ルールが導入され、以前の区分記載請求書等では仕入税額控除を受けることができません。区分記載請求書等と適格請求書には、記載項目に下記のような違いがあります。

区分記載請求書等と適格請求書の記載項目の比較
区分記載請求書等 適格請求書
  • 請求書発行者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である場合にはその旨)
  • 対価の額
  • 請求書受領者の氏名または名称
  • 税率ごとに合計した対価の額(税込)
  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である場合にはその旨)
  • 交付先の相手方(売上先)の氏名または名称
  • 登録番号
  • 税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率
  • 税率ごとに区分して合計した消費税額等
  • 赤字は区分記載請求書等には記載が必要ない項目です。

適格請求書に記載項目が必要な項目のうち、以前の区分記載請求書等から追加されるのは、「登録番号」「税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率」「消費税額等」の3つです。つまり、従来の区分記載請求書等にこの3項目を加えれば、適格請求書の要件を満たすということになります。なお、登録番号は、適格請求書発行事業者として登録を受けると税務署から通知されます。

適格請求書の例

登録番号の記載 軽減税率の対象品目である旨の記載 軽減税率ごとの合計した金額の記載

インボイス制度で対応すべきシステム変更のポイント

インボイス制度に対応するには、売手側、買手側のどちらの立場であっても、現在利用しているシステムの見直しが必要になる可能性があります。例えば、会計システムがインボイス制度に対応していなければ、法定事項が記載された帳簿を保存することができません。販売管理システムなども、適格請求書の交付と保存ができるかどうかをチェックしたほうがいいでしょう。
続いては、インボイス制度の導入によって対応が必要なシステムと、変更のポイントについて解説します。

会計システムには適格請求書とそうではない請求書の区分管理機能が求められる

免税事業者など、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入は、原則として仕入税額控除が適用されません。そのため、インボイス導入後の会計システムには、適格請求書とそうではない請求書を区分して管理できる機能が求められます。
なお、経過措置として、適格請求書発行事業者以外からの仕入でも、2023年10月1日から3年間は仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から3年間は同様に50%を仕入税額として控除できます。ただし、この経過措置の適用を受けるためには、次の要件を満たさなくてはなりません。

仕入税額控除に関する経過措置の適用要件

  • 区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、例えば「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入であることが記載された帳簿の保存
  • 区分記載請求書等と同様の項目が記載されている、相手先から発行された請求書の保存

請求書発行システムは記載事項に対応しているかがカギ

適格請求書は、従来の区分記載請求書等よりも記載しなければならない項目が多くなります。そのため、請求書発行システムは、適格請求書の記載事項に対応しているかどうかを確認する必要があるでしょう。
また、適格請求書では消費税の端数処理のルールが統一され、商品ごとではなく税率ごとの合計額に対して端数処理を行うことになります。請求書発行システムには、このような適格請求書のルールに則った機能が必須です。発行した適格請求書は7年間の保存義務があるため、データの保存に関する機能もチェックが欠かせません。

販売管理・受発注システムは課税事業者かそうでないかの識別機能が必要

販売管理・受発注システムには、取引先ごとに課税事業者か免税事業者(適格請求書発行事業者ではない事業者)かを識別できる機能が必要です。課税・免税の識別ができないと、仕入税額控除に使う書類を分類するのに多大な手間がかかってしまいます。
また、販売管理・受発注システムの中には、請求書発行機能を持つものもあります。その場合は、前述した請求書発行システムと同様のポイントにも注意しましょう。

POSレジ・POSシステムは軽減税率に対応できているか

小売業、飲食店業などの不特定多数に対して販売等を行う取引においては、適格請求書に代えて、レシートや領収書を適格簡易請求書にすることが可能です。ただし、この場合も、登録番号や税率ごとに区分した適用税率などの項目を記載する必要があります。
商品ごとの税率も把握しなければならないため、軽減税率に対応したPOSレジ・POSシステムの導入が求められます。

EDIシステムで授受した取引情報は保存が必要

EDIとは「電子データ交換」という意味で、企業間の取引情報を電子データでやりとりするシステムのことです。取引においてEDIシステムを利用している場合は、適格請求書も電子データでやりとりをすることになるでしょう。
EDIシステムによって授受した請求などに関する取引情報は、電子取引にあたり、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法において電子保存が義務化されています(2023年12月末までの宥恕期間があります)。電子帳簿保存法に対応した、電子帳簿保存システムの導入を検討するのがおすすめです。

請求書受領システムを業務の効率化につなげられるか

取引で受け取った適格請求書は、7年間の保存義務があります。また、適格請求書発行事業者以外からの適格請求書ではない請求書であっても、原則7年間の保存が必要です。
請求書受領システムによって受け取った請求書を自動でデータ化できれば、書類管理や会計業務の効率化につながります。

インボイス制度と同様に、改正電子帳簿保存法にも対応する必要がある

適格請求書や適格簡易請求書は、電磁的記録(電子データ)での提供も可能とされています。なお、2022年1月に電子帳簿保存法の改正が施行され、電子取引における電子データ保存が義務化されました。これにより、電子メールやクラウドサービス、EDIシステムなどを利用して受け取った適格請求書は、一定の要件を満たし、電子データのままで保存しなければなりません。電子取引のデータ保存については、2024年1月1日から完全義務化されているため、いずれにしてもシステムの見直しを早急に行う必要があります。
改正電子帳簿保存法では、請求書などの国税関係書類をスキャナ保存する場合の要件が大幅に緩和されました。インボイス制度と併せて、内容をよく理解することが大切です。

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よくあるご質問

インボイス制度とは?

インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、請求書などの交付や保存に関わる制度です。課税事業者が仕入税額控除を受けるための重要な要件として、適格請求書(インボイス)の交付と保存が求められます。詳しくはこちらをご確認ください。

インボイス制度に対応するために必要なことは?

インボイス制度に対応するためには、会計システムや請求書発行システムなどの各種システムの整備が不可欠です。手書きやExcelで作成したインボイスでも制度上問題はありませんが、書き間違いや記載漏れといったミスや管理上の課題があるだけでなく、不正のリスクも懸念されます。詳しくはこちらをご確認ください。

インボイス制度の対応におけるシステム変更のポイントは?

会計システムでは適格請求書(インボイス)とそうではない請求書の区分管理機能が求められます。その他にも請求書発行システムは記載事項に対応しているかどうか、販売管理システムなどもインボイスの発行と保存ができるかどうかをチェックした方がいいでしょう。詳しくはこちらをご確認ください。

この記事の監修辻・本郷 税理士法人

国内最大規模の税理士法人。専門分野に特化した総合力を活かし、一般企業の税務顧問をはじめ、医療法人、公益法人、海外法人など多種多様なお客様へサービスを提供。開業支援から事業承継、相続・贈与対策、オーナー向けの資産承継など、法人・個人問わずお客様のニーズに柔軟かつ的確に応えるべく、幅広いコンサルティングを行っている。

Webサイト:https://www.ht-tax.or.jp新規タブで開く

この記事の監修辻・本郷 ITコンサルティング

国内最大級の税理士法人である辻・本郷 税理士法人のグループ会社として2014年に創業。実践した数多くのDX化ノウハウをグループ内外に展開。バックオフィスに課題を抱える組織のコンサルティングから導入までをワンストップで行う。電子帳簿保存法やインボイス制度対応等、最新のコンサルティング事例にも精通。「無数の選択肢から、より良い決断に導く」をミッションとし、情報が多すぎる現代において、お客様にとっての「より良い」を見つけるパートナーを目指す。

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