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インボイス制度による取引先への影響は?免税事業者・未登録の場合の対応も解説

監修者:税理士法人アンサーズ会計事務所

2024/07/17更新

2023年10月1日にスタートしたインボイス制度。課税事業者、免税事業者ともに影響が大きい制度ですが、自社だけではなく、取引先によってもその影響と、とるべき対応が異なります。

ここでは、インボイス制度と取引先への影響への対応策について、請求書を受領する買手と、請求書を交付する売手の立場から詳しく解説します。

インボイス制度は取引先のすべてに影響がある

2023年10月1日開始のインボイス制度とは、正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、消費税の仕入税額控除に関する新たな制度です。インボイス制度では、発注企業が受注企業に適格請求書(インボイス)を発行し、受注企業が適格請求書を保存することで消費税の仕入税額控除が適用されます。

基本的には、適格請求書がなければ仕入税額控除を適用することができません。また、適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者の登録をした事業者のみです。さらに、適格請求書発行事業者として登録申請できるのは課税事業者のみです。つまり、免税事業者は適格請求書発行事業者として登録申請できないため、適格請求書の発行をすることができません。

適格請求書発行事業者の取引先が免税事業者である場合、その取引は仕入税額控除の対象外になります。個人事業主などの事業形態や事業規模は関係なく、取引先が免税事業者か課税事業者かどうかで、適格請求書発行事業者が対応すべきことも取引先への影響も異なります。自社が免税事業者か課税事業者かによっても対応が異なってくるのです。

インボイス制度についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

自社が課税事業者(本則課税)である場合の取引先への対応

自社が課税事業者(本則課税)である場合、インボイス制度に際してどのような対応が必要になるでしょうか。

ここでは、自社が買手(適格請求書を受領する側)だった場合、売手(適格請求書を交付する側)だった場合、あるいは取引先が免税事業者だった場合の取引先への対応について見ていきましょう。

請求書を受領する場合

請求書を受領する場合、まずは、取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認します。適格請求書発行事業者であれば、適格請求書の交付を依頼しましょう。自社・取引先ともに適格請求書発行事業者として登録申請していれば、インボイス制度の取引にも大きな影響はないと考えられます。

受領した適格請求書は、記載要件が満たされているかどうかを確認し保存します。そのうえで、消費税の申告・納税を行います。

請求書を交付する場合

自社が適格請求書発行事業者としてすでに登録申請している場合、取引先の求めに応じて、適格請求書を交付しなければなりません。適格請求書発行事業者ではない場合は交付の義務はありませんが、今後の取引のことを考え、できるだけ早く登録申請をしましょう。

交付した適格請求書は控えを保存し、そのうえで消費税の申告・納税を行います。

取引先が免税事業者の場合

取引先が免税事業者の場合は、適格請求書を発行できないため、仕入税額控除を適用できません。ただし、インボイス制度の導入から6年間、現行の「区分記載請求書等」でも一定割合の仕入税額控除が経過措置として認められています。経過措置の期間と仕入税額控除の割合は以下のとおりです。

免税事業者からの課税仕入れについての控除経過措置の期間と割合
期間 割合
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額相当額の50%

自社が簡易課税制度を適用している場合の取引先への対応

簡易課税制度とは、小規模事業者の消費税計算の負担を減らす制度です。インボイス制度において、簡易課税事業者が買手の場合と売手の場合で、それぞれどのような対応が必要か見ていきましょう。

請求書を受領する場合

簡易課税事業者が買手の場合、請求書の種類に関係なく、みなし仕入率をもとに納める消費税額を計算します。そのため、受領する請求書が適格請求書である必要はありません。

請求書を交付する場合

簡易課税事業者が売手の場合、取引先によっては適格請求書の交付が求められます。前述のとおり、適格請求書を交付するためには、適格請求書発行事業者として登録申請が必要です。

簡易課税制度の概要

簡易課税制度とは、消費税の課税方式のひとつです。通常は、原則課税(一般課税)制度ですが、前述のとおり、簡易課税は小規模事業者の納税事務負担を軽減するため、みなし仕入率を使って納税する消費税の金額を計算します。

簡易課税制度の概要について、詳しく見ていきましょう。

簡易課税制度を適用できる事業者の適用条件

簡易課税制度は、原則課税制度と比較すると、手間をかけずに消費税の計算ができます。しかし、課税事業者の誰もが簡易課税を選択できるわけではありません。簡易課税制度を適用するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下
簡易課税制度を適用できる事業者は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。基準期間とは、個人事業主であれば課税期間の前々年、法人であれば、課税期間の前々事業年度です。
事前に消費税簡易課税制度選択届出書を提出
簡易課税制度の適用を希望する事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用を受ける会計期間の初日の前日までに所轄の税務署に提出する必要があります。事業の初年度に限定して、初年度の会計期間中に届出を行えば要件を満たすことが可能です。

簡易課税の計算方法とみなし仕入率

前述のとおり、簡易課税制度は小規模事業者に配慮した消費税の計算方法に関する特例です。納めるべき消費税額の計算が下記のように簡単になることから、経理事務の負担を軽減できるというメリットがあります。

なお、みなし仕入率は、事業内容によって異なります。

簡易課税の計算方法

納めるべき消費税額=受け取った消費税額-(受け取った消費税額×業種ごとのみなし仕入率)

事業区分ごとに該当する事業例とみなし仕入率
事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第一種事業 90% 卸売業(ほかの者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
第二種事業 80% 小売業(ほかの者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に関わる事業)
第三種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に関わる事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業
※第一種事業、第二種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く。
第四種事業 60% 飲食店業など
※第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業以外の事業。第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となる。
第五種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く)
※第一種事業、第二種事業、第三種事業以外の事業。
第六種事業 40% 不動産業

簡易課税制度についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

インボイス制度の導入に向けて課税事業者に求められる対応

適格請求書発行事業者になるには、登録申請書を税務署に提出し、登録番号の通知を受ける必要があります。この登録番号は適格請求書の記載要件のひとつです。また、適格請求書発行事業者となったら、正しく適格請求書を交付する必要があります。

インボイス制度の導入に向けて、課税事業者が準備しておきたいことを確認しておきましょう。

適格請求書発行事業者としての登録申請

適格請求書発行事業者の登録申請を行う際には、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。提出方法は、書面またはe-Taxの2通りです。インボイス制度はすでに開始されていますので、速やかに対応するためにもなるべく早く登録申請をするようにしてください。

インボイス制度の登録申請から登録番号発行までの期間
  • e-Taxの場合:約1か月
  • 書面申請の場合:約1.5か月
  • 2023年12月現在

登録申請書の記載漏れや記載ミスなどがあった場合は、登録番号が発行されるまでに、上記よりもさらに時間がかかってしまうため、記載ミスなどには十分な注意が必要です。

適格請求書発行事業者の登録申請についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

システムの変更および経理業務の見直し

適格請求書は、以前の区分記載請求書とは記載要件が異なります。適格請求書の記載要件が満たされていない場合、適格請求書として認められず、仕入税額控除を適用できません。そのため、請求書の交付にシステムを導入している場合は、適格請求書の記載要件を満たす請求書発行システムが必要です。

適格請求書の記載要件は下記のとおりです。

適格請求書の例

適格請求書の記載要件

  • 1.適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 2.取引年月日
  • 3.取引の内容
  • 4.税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  • 5.税率ごとに区分した消費税額
  • 6.受領者の氏名または名称

また、インボイス制度開始後は、適格請求書と従来の請求書の仕分けをしたり、受領した適格請求書が記載要件を満たしているかどうかの確認が必要になったりするなど、経理業務が煩雑化する可能性があります。経理業務においても見直しを検討しましょう。

自社が免税事業者である場合の取引先への対応

自社が免税事業者である場合、そもそも適格請求書発行事業者として登録申請することができません。
免税事業者が買手(請求書を受領する側)だった場合、売手(請求書を交付する側)だった場合、あるいは取引先が自社と同じく免税事業者だった場合の取引先への対応について見ていきましょう。

請求書を受領する場合

自社が免税事業者の場合、そもそも消費税の納税が免除されているため、受領する請求書は適格請求書である必要はありません。

請求書を交付する場合

自社が請求書の交付者(売手)の場合は、適格請求書を交付できないため取引先が仕入税額控除を適用できません。そのため、今後の取引に影響が出る可能性が高くなります。また、仕入税額控除を適用できない分を、値下げ交渉される可能性も否めません。
状況によって、適格請求書発行事業者への登録(課税事業者への転換)を検討する必要があるでしょう。

取引先が免税事業者の場合

取引先が免税事業者の場合は、お互いに適格請求書を発行できないため、これまでの取引に変化が出る可能性は低いと考えられます。

自社や取引先の状況を考慮してインボイス制度に対応しよう

インボイス制度は、事業の形態や規模には関係なく、課税事業者か免税事業者かによって、事業への影響が大きく異なる制度です。さらに、売手のときと買手のときで、すべき対応も異なります。

インボイス制度が自社の事業にどのような影響があるのか、また、今後の取引にどのような影響が考えられるのかを把握し、必要な対応策を講じていきましょう。

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この記事の監修者税理士法人アンサーズ会計事務所

吉祥寺にオフィスを構えて10年以上の実績と、40名以上のスタッフのマンパワーで、個人事業主から従業員100名を超える会社まで、幅広く対応中。司法書士、社会保険労務士など他士業との連携で法人のお悩み事にワンストップで対応可能。

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