エアコンの耐用年数とは?減価償却の方法や勘定科目などを解説
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事業用のエアコンは、税法上、取得金額によっては費用配分できる耐用年数が定められており、固定資産として減価償却の対象になります。ただし、税法で定められた耐用年数は、業務用のエアコンと仕事のために購入した家庭用のエアコンでそれぞれ異なる点に注意しましょう。
本記事では、事業用のエアコンを減価償却する方法や使用する勘定科目、エアコンを減価償却する際の注意点などを、具体的な仕訳例と共に解説します。
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事業用エアコンの耐用年数とは、税法上定められた減価償却により費用を配分できる年数
エアコンは、1年以上にわたる継続的な使用が見込まれる資産であり、固定資産に該当します。そのため、事業に使用するエアコンを購入・設置した場合は、原則として減価償却が必要になります。
減価償却とは、事業主が事業で使用する固定資産をそれぞれの資産の耐用年数に応じて取得価額を分割して経費計上する会計処理の方法です。ここでいう耐用年数とは、製品の寿命を指すのではなく、税法上、減価償却資産を費用配分できる年数(会計上の資産価値、つまり帳簿価額が備忘価格の1(償却方法によっては0)になるまでの年数)のことを指します。なお、減価償却資産の耐用年数は、品目別に細かく定められており、これを法定耐用年数と呼びます。
エアコンの法定耐用年数は、業務用と家庭用で異なり、業務用エアコン(ダクトなどを通じて広範囲な空調ができるもの)の場合は基本的に「建物附属設備」に該当し、耐用年数は出力が22kW以下なら13年、22kW超なら15年です。その一方で、家庭用エアコンは「工具器具備品」と見なされ、耐用年数は6年となります。
エアコンを減価償却しない場合
エアコンの取得価額が10万円未満の場合は、減価償却を行わずに消耗品費として全額を一括費用計上します。また、取得価額が10万円以上20万円未満だった場合は、一括償却資産として計上することも可能です。一括償却資産の制度を利用すると、耐用年数にかかわらず、取得価額の3分の1ずつを3年間にわたって均等に経費計上できます。なお、一括償却資産にするか、一般的な減価償却を選ぶかは、事業主の任意となります。
エアコンをリース契約で利用する場合
業務用エアコンの導入にあたっては、リースを利用するケースもあるでしょう。リース契約でエアコンを導入した場合は、基本的に減価償却は行わず、支払いのたびに「リース料」として費用計上します。ただし、契約期間中の解約ができず、リース会社のエアコン購入費用をほぼ全額、期間中にリース料として支払う「ファイナンス・リース取引」の場合は、実質的にエアコンの購入と見なされるため、減価償却が必要です。
エアコンの勘定科目
エアコンに関して用いる勘定科目には建物付属設備や工具器具備品など、いくつかの種類があります。それぞれどういった場合に使用するのかを確認しておきましょう。
建物附属設備
業務用エアコンに用いる勘定科目は、建物附属設備です。業務用エアコンとは、主にオフィスビルや店舗などで見かけるような、ダクトを通じて広範囲を空調できる天井埋め込みタイプのエアコンであり、建物と一体化しているため、建物附属設備に該当します。
工具器具備品
家庭用エアコンの場合は、工具器具備品の勘定科目を使用します。一般家庭で使われるような、本体を部屋に取り付けるタイプのエアコンは、工具器具備品で仕訳することが一般的です。また、家庭用エアコンは業務用エアコンと比べて出力や機能性が低いため、耐用年数も短く設定されています。
その他の勘定科目
エアコンの仕訳には、建物附属設備や工具器具備品以外の勘定科目を使用することもあります。
例えば、エアコンの取得価額が10万円未満の場合は、「消耗品費」の勘定科目で一括費用計上します。また、取得価額が10万円以上20万円未満で、一括償却資産として計上する場合は、勘定科目は「一括償却資産」です。取得価額にはエアコンの購入費用の他、設置費も含まれます。(いずれも税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定)
その他、エアコンの修理費用やクリーニング代は「修繕費」、エアコンを処分する際の撤去費用は「雑費」の勘定科目で仕訳が可能です。なお、故障などにより減価償却途中のエアコンを廃棄する場合は、未償却残高を「固定資産廃棄損」や「固定資産除却損」として処理します。
エアコンを減価償却する方法
エアコンを減価償却する方法は、大きく分けて「定額法」と「定率法」の2種類です。
建物附属設備(業務用エアコン)の減価償却費の計算方法は、定額法と定められています。また、工具器具備品(家庭用エアコン)は、個人事業主は定額法、法人は定率法で減価償却費を計算するのが原則となります。ただし、工具器具備品については、所定の期日までに税務署へ届出をすれば、個人事業主は定額法から定率法へ償却方法の変更も可能です。定額法と定率法のそれぞれの償却方法について、詳しく見ていきましょう。
定額法
定額法は、毎年一定額の減価償却費を計上していく方法で、計算式は以下のとおりです。
定額法の計算式
減価償却費=取得価額×定額法の償却率
定額法の償却率は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。例えば、耐用年数6年の業務用エアコンの場合、定額法の償却率は0.167です。
ここで、取得価額30万円、耐用年数6年(償却率0.167)のエアコンの減価償却費を定額法で計算する場合について見ていきましょう。
30万円で購入したエアコンの減価償却費
- エアコンの価格:30万円
- エアコンの耐用年数:6年
- エアコンの定額法の償却率:0.167
30万円で購入したエアコンの場合、減価償却費は「30万円×0.167=5万100円」です。なお、減価償却をする場合、最後に固定資産がまだ残っていることを示すために、残存簿価の1円を残すことが必要です。そのため、最終年度の6年目のみ、他の年よりも減価償却額が1円少なくなります。
上記の例でいえば、1年目から5年目までは5万100円を計上し、最終年度となる6年目には、残額の4万9,500円から1円を引いた4万9,499円を計上して、残存簿価が1円になるようにします。
定率法
定率法は、毎年一定割合ずつ減価償却費を計上する方法で、計算式は以下のとおりです。
定率法の計算式
減価償却費=未償却残高×定率法の償却率
定率法の償却率も、定額法と同様に「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。未償却残高とは、減価償却資産の取得価額から、前年までに減価償却した累計額を差し引いた残高のことです。未償却残高は年々少なくなるため、計上できる減価償却費も初年度が最も大きく、その後、減価償却が進むごとに減少していきます。
減価償却が進み、償却額が償却保証額を下回った場合は、以下の計算式によって減価償却費を計算し、以降は毎年同額が計上されます。なお、償却保証額は、減価償却資産の取得価額に省令で定められた保証率を掛けて求めることが可能です。
償却額が償却保証額を下回った場合の計算式
減価償却費=償却保証額を下回った年の期首の未償却残高×改定償却率
定率法の計算例
定額法の例と同じく、取得価額30万円、耐用年数6年のエアコンの減価償却費を、定率法で計算してみましょう。
取得価額30万円、耐用年数6年のエアコンを定率法で償却する計算式
- 償却率:0.417
- 保証率:0.05776
- 償却保証額:30万円×0.05776=1万7,328円
- 改定償却率:0.5
償却保証額:30万円×0.05776=1万7,328円
初年度の減価償却費:30万円×0.417=12万5,100円
2年目の減価償却費:(30万円-12万5,100円)×0.417=7万2,933円
3年目の減価償却費:(30万円-12万5,100円-7万2,933円)×0.417=4万2,520円
4年目の減価償却費:(30万円-12万5,100円-7万2,933円-4万2,520円)×0.417=2万4,789円
5年目の減価償却費:(30万円-12万5,100円-7万2,933円-4万2,520円-2万4,789円)×0.500=1万7,329円
6年目の減価償却費:(30万円-12万5,100円-7万2,933円-4万2,520円-2万4,789円)×0.500-1=1万7,328円
このように計算していくと、5年目の減価償却費は「(30万円-12万5,100円-7万2,933円-4万2,520円-2万4,789円)×0.417=1万4,452円」となり、償却保証額を下回るため、「改定取得価額×改定償却率」の計算式を用いる必要があります。
6年目も、5年目と同様に1万7,329円が減価償却費となりますが、最終年度の6年目は定額法と同様に残存簿価1円を残すため、1万7,328円が減価償却費です。
エアコンを減価償却した場合の仕訳例
減価償却資産を購入した際の仕訳方法には、「直接法」と「間接法」があります。それぞれどのような方法なのかを、具体的な仕訳例と共に見ていきましょう。
直接法の仕訳例
直接法は、減価償却費について直接固定資産の額から差し引いていく方法です。今現在の固定資産の価値がどのくらいなのかわかりやすいという特徴があります。
前述の定額法、定率法で求めた減価償却費について、直接法で仕訳をすると、以下のようになります。
仕訳例:定額法(1年目の減価償却費:5万100円)
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 50,100円 | 工具器具備品 | 50,100円 | エアコン 減価償却1年目/6年 |
仕訳例:定率法(1年目の減価償却費:12万5,100円)
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 125,100円 | 工具器具備品 | 125,100円 | エアコン 減価償却1年目/6年 |
間接法の仕訳例
間接法は、減価償却の額を固定資産から減らすのではなく、減価償却累計額として計上します。減価償却の累計額がわかりやすいのが特徴です。
前述の直接法と同様に、定額法、定率法で計算した減価償却費を、間接法で仕訳した場合は、以下のようになります。
仕訳例:定額法(1年目の減価償却費:5万100円)
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 50,100円 | 減価償却累計額 | 50,100円 | エアコン 減価償却1年目/6年 |
仕訳例:定率法(1年目の減価償却費:12万5,100円)
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 125,100円 | 減価償却累計額 | 125,100円 | エアコン 減価償却1年目/6年 |
エアコンを減価償却した際の貸借対照表への記載方法
エアコンの減価償却は、貸借対照表へも反映が必要です。事業で用いるエアコンについては、貸借対照表の「資産の部」の「有形固定資産」として記載し、業務用エアコンなら建物附属設備、家庭用エアコンなら工具器具備品となります。なお、貸借対照表への記載方法は、直接法と間接法のどちらを採用するかによって異なるため注意しましょう。
直接法の記載方法
減価償却費を固定資産から直接差し引いていく直接法の場合は、減価償却費を引いた後の額を貸借対照表に記載します。この金額が、会計上の固定資産の価値(帳簿価額)となります。
前述した取得価額30万円、耐用年数6年のエアコンを、定額法で減価償却した場合を考えてみましょう。1年目の減価償却費は5万100円で、取得価額から減価償却費を引くと24万9,900円です。この場合、貸借対照表の「資産の部」には、以下のように記載します。
貸借対照表の記載例
工具器具備品 | 249,900円 |
間接法の記載方法
減価償却の額を固定資産から減らさず、減価償却費の累計額を計上する間接法の場合は、固定資産の取得価額の下に、減価償却累計額をマイナスで併記します。これによって、間接的に固定資産の帳簿価額を示すことができます。
取得価額30万円、耐用年数6年のエアコンを、定額法で減価償却した場合(1年目の減価償却累計額:5万100円)の記載例は、以下のとおりです。
貸借対照表の記載例
工具器具備品 | 300,000円 |
減価償却累計額 | △50,100円 |
工具器具備品(純額) | 249,900円 |
減価償却の対象となる固定資産が複数あるときは、資産の種類ごとに分けて記載することもあります。ただし、固定資産の数が多いほど、貸借対照表の科目数も増え、見づらくなる可能性があるため注意しましょう。
エアコンを減価償却する際の注意点
エアコンを減価償却するときには、いくつか注意点があります。特例や現金支出、取得価額などに関する注意点について見ていきましょう。
一定の中小企業の場合は特例を利用する
青色申告をしている中小企業や個人事業主が固定資産を購入した場合、一定の要件を満たすと「少額減価償却資産の特例」の適用を受けることができます。少額減価償却資産の特例は、取得価額が10万円以上30万円未満(税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定)の減価償却資産を取得した際に、費用を一括で経費にできる制度です。30万円未満のエアコンであれば、購入した年にまとめて経費計上でき、その年の利益を圧縮して節税につなげられます。ただし、上限は1事業年度につき合計300万円までです。
少額減価償却資産の特例を利用するには、「常時雇用する従業員が500人以下」「資本金または出資金が1億円以下」である(青色申告)法人が対象となるなどの要件が定められていますが、青色申告をしている個人事業主や、従業員が数十人規模の一定の中小企業などであれば、ほぼ対象になると考えていいでしょう。なお、少額減価償却資産の特例は、期間限定の制度です。これまでさまざまな見直しをされながら2年ごとに延長されており、現在の適用期限は2026年3月31日までとなっています。
減価償却分の現金支出は発生しない
減価償却は、固定資産の取得にかかった費用を、数年間に分割して経費計上していく会計処理方法です。減価償却費を計上したときに、実際に現金を支出するわけではないほか、仕訳においても、費用は計上されるものの現金の減少はありません。これを「減価償却の自己金融効果」と呼び、実質的に外部からの資金調達と同じ結果になります。損益計算書には減価償却費が計上されますが、キャッシュ・フロー計算書では現金の動きがないため、現金の出入りにずれがあることに注意しましょう。
エアコン取得価額には設置工事費などを含める
エアコンの購入にあたっては、設置工事費などがかかる場合があります。エアコンの本体価格の他に、設置工事費などがかかったときには、それらの費用もエアコンの取得価額に含まれるので注意しましょう。
例えば、エアコンの取得価額が10万円未満なら消耗品費として一括費用計上が可能ですが、エアコンの本体価格が9万円、設置工事費が2万円だった場合、取得価額は11万円となるため、消耗品費にはなりません。同様に、20万円未満の一括償却資産や、30万円未満の少額減価償却資産の特例を利用する際にも、設置工事費などを取得価額に含めて考える必要があります。
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10万円以上のエアコンを購入した場合は、原則として減価償却が必要になります。減価償却を行うには、エアコンの取得価額や耐用年数を正しく理解した上で、定められた計算方法に沿って処理をしなければなりません。また、業務用エアコンと家庭用エアコンでは、耐用年数が異なる点にも注意することが大切です。さらに、減価償却が必要な資産はエアコンだけではありません。固定資産の種類や数が増えるほど、減価償却の手間がかります。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。