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洗替法とは?差額補充法・切放法との違いや仕訳方法などを解説

資産や負債の帳簿価額を評価計上する方法は、大きく分けて「洗替(あらいがえ)法」「差額補充法」「切放(きりはなし)法」の3種類です。帳簿価額とは、会計帳簿に記録された資産や負債の評価額のことで、簿価とも呼ばれます。
3種類の方法のうち、差額補充法は貸倒引当金、切放法は売買目的有価証券などの会計処理で用いられます。その一方で、いずれのケースでも適用可能なのが洗替法です。中小企業においては、特に、貸倒引当金の仕訳で洗替法を用いるケースが多いでしょう。
本記事では、洗替法と差額補充法や切放法との違い、洗替法の仕訳方法などについて解説します。

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洗替法は貸倒引当金などを評価計上する際に用いられる会計処理方法

洗替法とは、貸倒引当金などを評価計上する際に用いられる会計処理方法の1つです。貸倒引当金の設定のほか、売買目的有価証券やその他有価証券、棚卸資産の会計処理に洗替法が用いられることもあります。
そもそも、会計処理における洗替えとは、決算時に貸借対照表の各科目の残高をいったん当初の金額に戻してから、改めて会計上適正な金額に更新する処理のことです。例えば、事業を行う中で、将来の貸倒れに備えて貸倒引当金を計上することがあります。この貸倒引当金の金額は期末ごとに見直しが必要ですが、洗替法を用いる場合は、期末時点で残っている貸倒引当金をいったんすべて収益に振り戻してから、当期の貸倒引当金を新たに計上します。

洗替法は売買目的有価証券の評価差額に関する会計処理にも用いられる

洗替法は、売買目的有価証券の評価差額に関する会計処理に用いられることもあります。売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のことです。売買目的有価証券は、貸借対照表に時価で計上され、評価差額は当期の損益として会計処理されます。売買目的有価証券を洗替法で処理する場合、決算時に時価評価損益を計上して評価替えを行った後、翌期首に帳簿価額を取得原価に戻す仕訳を行います。

ただし、売買目的有価証券については都度時価評価しており、取得金額と時価がかけ離れていて時価が本来の価値を表しているため、通常は切放法を用いるのが一般的です。

洗替法と差額補充法の違い

差額補充法とは、洗替法と同様に、前期に計上した貸倒引当金を期末に見直す際に用いる会計処理方法です。ただし、差額補充法は、期末時点の貸倒引当金を収益に振り戻すのではなく、当期に設定する貸倒引当金との差額のみを計上する点が洗替法とは異なります。
前述したように、洗替法では、期末時点で残っている貸倒引当金をいったんすべて収益に振り戻してから、当期の貸倒引当金を新たに計上します。つまり、貸倒引当金の残高を一度ゼロにしてから、当期の貸倒引当金を計上するということです。
それに対して、差額補充法は、期末時点の貸倒引当金の残高に、その期に設定する貸倒引当金との差額を補充します。例えば、前期に計上した10万円の貸倒引当金が残っていて、当期に12万円の貸倒引当金を設定する場合、差額の2万円を繰り入れて、貸倒引当金の総額が12万円になるようにします。逆に、貸倒引当金の残高に比べて当期に設定する貸倒引当金が少ない場合は、差額を戻し入れることが必要です。

洗替法と差額補充法の違いについて、前期に貸倒引当金10万円が設定され、当期に貸倒引当金12万円を計上した場合の仕訳を例にして見てみましょう。

洗替法の仕訳例

借方 貸方
貸倒引当金 100,000円 貸倒引当金戻入額 100,000円
貸倒引当金繰入額 120,000円 貸倒引当金 120,000円

洗替法では、前期分の貸倒引当金10万円を、全額「貸倒引当金戻入額」として収益計上した後、改めて当期の貸倒引当金12万円を計上します。貸倒引当金戻入額は、計上していた貸倒引当金を減額する際に用いる勘定科目です。

差額補充法の仕訳例

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 20,000円 貸倒引当金 20,000円

差額補充法では、当期の貸倒引当金12万円と、前期分の貸倒引当金10万円の差額の2万円を、「貸倒引当金繰入額」として繰り入れます。

洗替法と切放法の違い

切放法は、主に売買目的有価証券の評価差額に関する会計処理に用いられる方法です。洗替法とは異なり、決算時に評価替えをした後、翌期首の再振替仕訳は行いません。
売買目的有価証券の評価差額について洗替法を用いる場合、決算時に時価評価損益を計上して評価替えを行い、翌期首に帳簿価額を前期末の取得原価に戻します。その一方で、切放法では、期末の時価評価額をそのまま翌期首に取得原価とします。
洗替法と切放法の違いについて、売買目的でA社の株式(取得原価1万円)を保有し、期末時点の時価評価額は8,000円だった場合の仕訳を例にして見てみましょう。

洗替法での決算時の仕訳例

借方 貸方
売買目的有価証券評価損 2,000円 売買目的有価証券 2,000円

決算時には、時価評価により取得原価(帳簿価額)を評価替えします。この場合は、差額の2,000円のマイナス分を「売買目的有価証券評価損」として計上します。

洗替法での翌期首の仕訳例

借方 貸方
売買目的有価証券 2,000円 売買目的有価証券評価損 2,000円

そして、翌期首に、帳簿価額を取得原価に戻す処理を行います。この再振替仕訳が、洗替法の特徴です。

<切放法>

切放法での決算時の仕訳例

借方 貸方
売買目的有価証券評価損 2,000円 売買目的有価証券 2,000円

切放法も、決算時に評価替えをするのは洗替法と同じです。しかし、切放法では翌期首に帳簿価額を取得原価に振り戻す処理は行いません。そのため、翌期首の仕訳は不要です。なお、切放法は、売買目的有価証券の他、固定資産の減損会計でも用いられることがあります。

貸倒引当金とは貸倒れに備えて設定される勘定科目

中小企業が洗替法を使うケースとして多いのは、計上した貸倒引当金を決算時に見直すときです。
貸倒引当金は、将来、発生が予想される貸倒れに備えて設定される勘定科目になります。貸したお金が返ってこなかったり、商品などの売上代金が支払われなかったりすることを、貸倒れといいます。貸倒引当金の対象となる債権は、売掛金、貸付金、未収金、受取手形などの資産です。これらの債権に貸倒れのリスクがある場合、貸倒引当金の勘定科目でマイナスの資産として計上します。
なお、貸倒れが生じて債権を回収できなくなった場合は、「貸倒損失」として帳簿に記載することになります。しかし、取引を行ううえで、貸倒れが発生するリスクをゼロにすることはできません。また、売上とそれに伴う貸倒れが事業年度をまたいで起こると、貸倒損失を適切な収益に対応させることができず、正確な損益計算ができなくなります。そこで、会計処理上、あらかじめ貸倒引当金として当期の回収可能な債権の金額を評価し、損失として計上することが認められています。
ただし、貸倒引当金を損金算入できる法人は、原則として、資本金が1億円以下などの中業企業者等の要件を満たす法人のみです。

貸倒引当金の計算方法

貸倒引当金を計上するためには、将来の損失見込みがどれくらいなのかを正確に予測しなければなりません。貸倒引当金の計算方法は、「個別評価」と「一括評価」の2種類があります。また、個別評価と一括評価には、税法上、貸倒引当金に計上できる上限金額(繰入限度額)が定められています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

個別評価:それぞれの債権に応じた貸倒引当金を設定して計算する

個別評価では、各売掛金や貸付金に対して回収の可能性を個別に検討して、それぞれの債権に応じた貸倒引当金を設定し、計算を行います。
個別評価による貸倒引当金は、事業上の金銭債権のうち、会社更生法の規定による更生手続き開始の申し立てや更生計画認可の決定など、一定の事由が発生した債権に対して計上できます。具体的には、倒産寸前や経営状況が著しく悪化していることが明らかな取引先などに対する債権を指します。事業所得・不動産所得・山林所得についての事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金、その他これらに準ずる債権などが対象となり、青色申告・白色申告のどちらでも適用が可能です。
なお、貸倒引当金の繰入限度額は、以下のとおり債権の種類によって異なります。

区分ごとの個別評価による貸倒引当金と繰入限度額

個別評価金銭債権 繰入限度額
会社更生法等の規定による更生計画が認可決定され、弁済の猶予または割賦による弁済とされる場合 その事由が生じた事業年度の翌期首から5年以内に弁済される金額を除いた金額
債務者について債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがないこと等の事由がある場合 取り立ての見込みがないと認められる金額
会社更生法等の規定による更生手続き開始等の申し立てがなされた者に対する債権 50%
長期にわたる債務履行遅滞により経済的価値の著しい減少または弁済を受けることが著しく困難と認められる外国の政府、中央銀行等への債権 50%

一括評価:売掛金や貸付金に対し一定の比率を適用して貸倒引当金を算出する

一括評価は、売掛金や貸付金の全体に対して一定の比率を適用し、これに基づいて貸倒引当金を算出します。
一括評価による貸倒引当金は、事業上で生じた売掛金などの金銭債権のうち、個別評価を適用しない債権に対して計上します。また、一括評価による貸倒引当金の繰入限度額は、法人と個人事業主で異なるため注意しましょう。

法人の場合は、期末の債権額に、所定の繰入率を掛けて貸倒引当金の金額を算出します。

貸倒引当金の計算式

貸倒引当金=期末の債権額×繰入率

なお、繰入率は、業種ごとに以下のとおりに定められています。

法人の期末の債権額への繰入率

卸売業、小売業(飲食店などを含む):1.0%

製造業(電気・ガス・水道・熱供給・修理業含む):0.8%

割賦販売小売業・割賦購入斡旋業:0.7%

金融業、保険業:0.3%

上記以外の業種:0.6%

なお、個人事業主の場合は、個別評価による貸倒引当金は青色申告者のみが計上でき、その年の12月31日現在の一括評価債権の帳簿価額の合計額に、5.5%(金融業は3.3%)を掛けた金額が繰入限度額となります。

洗替法の仕訳方法

ここからは、洗替法の仕訳方法を具体例と共に見ていきましょう。貸倒引当金の会計処理と、売買目的有価証券の会計処理で、それぞれ洗替法を用いた仕訳例を紹介します。

貸倒引当金の会計処理と仕訳例

貸倒引当金を計上するのは、基本的に決算のときです。ただし、貸倒引当金を計上しても、必ずしもそのとおり貸倒れが生じるとは限りません。そのため、貸倒引当金を計上した場合は、期末ごとにその金額を見直すことが必要です。なお、洗替法は、貸倒引当金の見直しをする際に用いられます。
決算時に、売掛金に対して貸倒引当金の繰入限度額の計算を行い、貸倒引当金5万円を計上した場合の仕訳例を見ていきましょう。

貸倒引当金が発生した場合の仕訳例

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 50,000円 貸倒引当金 50,000円

売掛金などの金銭債権を回収できない可能性があるときは、期末に金銭債権の評価を行い、貸倒れの見積金額を計算し、貸倒引当金繰入額として計上します。貸倒引当金繰入額とは、貸倒引当金を計上するときに用いる勘定科目です。

計上した貸倒引当金は、期末ごとに金額の見直しを行います。前期末に計上した貸倒引当金5万円が残っており、当期末の貸倒引当金の見積もりは8万円となった場合に、洗替法を用いた仕訳例は以下のとおりです。

洗替法を用いた場合の仕訳例

借方 貸方
貸倒引当金 50,000円 貸倒引当金戻入額 50,000円
貸倒引当金繰入額 80,000円 貸倒引当金 80,000円

前期から残っていた貸倒引当金を貸倒引当金戻入額として計上してから、新たに当期の貸倒引当金として8万円を計上します。

売買目的有価証券の会計処理と仕訳例

洗替法は、売買目的有価証券の会計処理でも用いられます。前述のとおり、売買目的有価証券とは売買目的で所有している有価証券のことです。株式や社債、国債などを売買目的で購入した場合は、売買目的有価証券として処理します。

売買目的有価証券を5万円で取得し、普通預金から支払った場合の仕訳例を見ていきましょう。

売買目的有価証券を取得した場合の仕訳例

借方 貸方
売買目的有価証券 50,000円 普通預金 50,000円

売買目的有価証券は、「売買目的有価証券」の勘定科目を用いて仕訳を行います。

取得原価5万円の売買目的有価証券について、期末時点の時価評価額は6万円だった場合の仕訳例は以下のとおりです。

決算時に評価替えをした場合の仕訳例

借方 貸方
売買目的有価証券 10,000円 有価証券評価益 10,000円

決算時には、時価評価損益を計上して評価替えを行います。この場合は、1万円の評価益が出ているため、有価証券評価益として計上します。

洗替法の翌期首における仕訳例

借方 貸方
有価証券評価益 10,000円 売買目的有価証券 10,000円

洗替法では、翌期首に帳簿価額を前期末の取得原価に戻します。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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