クリーニング代の勘定科目は?種類や仕訳方法、注意点などを解説
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業種や業務内容によっては、制服や作業着などのクリーニングが必要になることがあります。このような業務に必要なクリーニング代は、経費として計上できます。ただし、経費に計上する際には、「どの勘定科目を選べばよいか」と迷うこともあるでしょう。クリーニング代に用いる勘定科目にはいくつかの種類があり、クリーニングの内容や頻度に応じて、適切な勘定科目が異なります。
本記事では、クリーニング代の仕訳に使用する勘定科目の種類や、具体的な仕訳方法、仕訳時の注意点に加え、個人事業主がクリーニング代を経費として計上する際のポイントについても解説します。
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クリーニング代は業務に関する費用として経費に計上できる
業種や業務内容によっては、制服や作業着、衣装などのクリーニング代が発生することがあります。また、宿泊施設や美容サロン・美容室などでは、リネン類のクリーニングを行うこともあります。法人でも個人事業主でも、このような業務上必要なクリーニング代は、経費として計上することが可能です。ただし、経費として認められるクリーニング代は、事業に必要なものに限られます。そのため、クリーニング代を経費計上する際には、業務との関連性を明示することが求められます。例えば、勤務時のみ着用する制服のクリーニング代は経費に該当しますが、私服で勤務している場合は、そのクリーニング代は経費として計上できません。
クリーニング代の仕訳に用いる勘定科目には、後述のとおりさまざまな種類があります。どの勘定科目を選ぶかは企業によって異なり、クリーニングの目的や頻度によっても変わってきます。クリーニング代の仕訳をする際には、「何のためのクリーニングか」を明確に把握し、適切な勘定科目を選ぶことが大切です。
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クリーニング代の仕訳に使用する勘定科目の種類
一般的に、クリーニング代の仕訳に使用する勘定科目は、「福利厚生費」「衛生費」「外注費」「雑費」「クリーニング費」のいずれかです。勘定科目の選定には法的に明確な規定はありませんが、原則として、一度決定した勘定科目は継続して使用することが求められます。それぞれの勘定科目について、どのようなケースで用いられるのかを確認しておきましょう。
福利厚生費
従業員の制服、作業服などのクリーニング代は、「福利厚生費」の勘定科目で処理するのが一般的です。
福利厚生費とは、企業が従業員のために支出した、給与や賞与以外に支出される費用を指します。個人事業主であっても、従業員を雇用して行う事業であれば、福利厚生費の計上は可能です。ただし、福利厚生費は、従業員の福利厚生のための費用を対象とするため、役員や個人事業主本人の制服・作業服のクリーニング代には適用できません。
また、クリーニング代が福利厚生費として認められるには、「業務上必要な衣服のクリーニング代であること」「すべての従業員が対象になっていること」「一般的な常識に照らして妥当と認められる金額であること」といった要件があります。
福利厚生費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
衛生費
職場や店舗の衛生管理、サービス品質の維持のために発生したクリーニング代は、「衛生費」の勘定科目で処理できます。
企業によっては「衛生管理費」という勘定科目で計上することもあります。衛生費は、環境保全、疾病予防、健康増進など衛生管理に関わる費用に使われる勘定科目です。具体的には、飲食業や美容業、ホテル業などで使用されるおしぼり、タオル、シーツ類のクリーニング代が該当します。
外注費
外部の業者に定期的にクリーニングを依頼している場合は、「外注費」の勘定科目で処理します。
外注費とは、外部の個人や法人に業務を委託するための費用を処理する勘定科目です。例えば、ホテルのリネン類や飲食業の制服、製造業の作業服などを特定の業者にまとめてクリーニングを委託している場合や、事務所・店舗のマットを特定の業者が定期的に回収・クリーニングしている場合などは、外注費として処理されます。
外注費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
雑費
クリーニング代の発生頻度が低く、金額も少額であるなら、「雑費」の勘定科目で処理してもかまいません。
雑費とは、少額かつ一時的な出費で、他の勘定科目にあてはまらないものを仕訳するときに使用する勘定科目です。ただし、雑費での計上金額が大きくなりすぎると、事業の実態を正確に把握できなくなり、税務調査で指摘を受ける可能性があります。そのため、雑費を用いるのは、突発的に少額のクリーニング代が発生したときのみにとどめましょう。何度もクリーニングが必要になるのであれば、他のいずれかの勘定科目を使用するのが適切です。
雑費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
クリーニング費
日常業務のなかで頻繁にクリーニングを行う場合や、年間を通してある程度まとまった金額のクリーニング代が発生する場合は、「クリーニング費」という勘定科目を独自に設定することも可能です。
勘定科目は、各企業が自社の実情に応じて自由に設定できます。クリーニング費を個別の勘定科目として管理することで、過去の費用との比較も行いやすくなり、予算管理にも役立つでしょう。
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クリーニング代の主な仕訳方法
ここからは、クリーニング代の具体的な仕訳方法を紹介します。一般的なクリーニング代の仕訳例と後払いの仕訳例を見ていきましょう。
一般的なクリーニング代の仕訳例
クリーニング代を計上する際には、その内容や目的に応じて、借方の勘定科目を「福利厚生費」「衛生費」「外注費」「雑費」「クリーニング費」のいずれかとします。現金払いであれば、貸方の勘定科目は「現金」です。
例えば、従業員の制服や作業着などをクリーニングに出したときの費用は、福利厚生費の勘定科目で仕訳します。この場合の仕訳は、以下のとおりです。
仕訳例:従業員の制服をクリーニングに出し、5,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
また、一般的に、飲食店や店舗などで使用するおしぼり・タオル類をクリーニングに出した場合には、衛生費として計上します。普通預金からクリーニング代を支払った場合、貸方の勘定科目は「普通預金」とします。
仕訳例:店舗で使用するおしぼりやタオルをクリーニングに出し、1万円を普通預金から支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
衛生費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
クリーニング代を後払いにした場合の仕訳例
外部の業者に定期的にクリーニングを依頼している場合は、後日請求書を受領し、代金を支払うケースもあります。その場合の仕訳例は、以下のとおりです。
仕訳例:指定業者にクリーニングを依頼し、代金3万円は月末払いとした
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 30,000円 | 未払金 | 30,000円 |
仕訳例:月末に、前記のクリーニング代3万円を普通預金から支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
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クリーニング代の勘定科目における注意点
クリーニング代を仕訳する際には、押さえておきたい注意点があります。クリーニング代の勘定科目に関する注意点は、以下のとおりです。
社内で勘定科目を統一する
クリーニング代の勘定科目における注意点は、社内で勘定科目を統一することです。
前述したように、一口にクリーニング代といっても、業種や目的、発生頻度などによって、適した勘定科目は異なります。例えば、美容サロンで従業員の制服のクリーニング代は「福利厚生費」、施術に使うタオルやシーツ類は「衛生費」、外部業者による備品の清掃やリネンサービスは「外注費」というように、いくつかの勘定科目が混在するケースもあります。このようなとき、経理担当者によって使用する勘定科目が変わると、費用の内訳を正確に把握することができません。また、クリーニング代が発生するたびに「どの勘定科目を選べばいいのだろう」と悩んでいては、仕訳に時間がかかります。各費用に対して適切な勘定科目を明確に定め、社内で統一ルールとして定着させましょう。
一度決めた勘定科目は継続して使用する
一度決めた勘定科目は継続して使用することも注意点の1つです。
クリーニング代に用いる勘定科目に税法上の定めはありません。しかし、一度設定した勘定科目は、経理担当者が変更されても引き続き使用しなければなりません。例えば、一度「クリーニング費」という勘定科目を設定したにもかかわらず、翌期には「雑費」で計上することは避けるべきです。経理担当者や事業年度によって使用する勘定科目が変わると、年度ごとの財務諸表の正しい比較ができなくなります。年度ごとの経費の使用額を比較できるように勘定科目の使い方は統一すべきです。
領収書やそれに代わる書類が必要になる
領収書やそれに代わる書類が必要になることも注意点としてあげられます。
クリーニング代を経費として計上する際には、領収書の保管が必要です。しかし、無人のコインランドリーを利用した場合などは、領収書やレシートが発行されないことがあります。「クリーニング代を支払ったが領収書が発行されない」という場合は、出金伝票に日付や支払先、金額などの必要事項を記録し、領収書の代替として保管しましょう。こうした書類は、法人税法上、原則として7年間の保存義務があります。ただし、コインランドリーではあまりないかもしれませんが、支払いが税込み3万円を超える場合で消費税の仕入税額控除を受ける場合には適格請求書事業者番号が記載された領収書等が必要となります。
なお、最近では無人のコインランドリーでも、領収書の発行が可能なケースが増えています。オンラインでの領収書発行が必要な場合もあるため、利用する前に確認しておくと安心です。
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個人事業主がクリーニング代を経費として計上する際のポイント
個人事業主がクリーニング代を経費計上する場合は、事業と私的利用の区分が不明確にならないように注意しましょう。特に気をつけたいポイントを、以下に整理してご紹介します。
経費にできるのは事業に関係するクリーニング代のみ
個人事業主が経費として計上できるのは、事業との明確な関連性があるものに限られます。
例えば、制服や作業着など、明らかに仕事でしか着用しないと判断される衣類のクリーニング代は、経費計上が可能です。その一方で、私服の場合は、たとえ仕事中に着用していたとしても、クリーニング代は経費に計上できません。また、事業活動で衣装を着用する場合、そのクリーニング代は経費になります。ただし、プライベートでも使用できる衣装や業務での使用割合が不明な衣装は、経費として扱えない可能性があります。
クリーニング代の勘定科目は基本的に法人と同じ
個人事業主がクリーニング代を経費計上する際の勘定科目についても、法人と同様に、「福利厚生費」「衛生費」「外注費」「雑費」「クリーニング費」のいずれかを用います。
どの勘定科目を使うかは、前述したように、クリーニングの目的や頻度によって異なります。従業員の制服や作業服のクリーニングなら「福利厚生費」、個人経営の飲食店や美容サロン・美容室などでのおしぼり、タオル、シーツ類のクリーニング代なら「衛生費」、定期的に外部の業者へクリーニングを依頼している場合は「外注費」で仕訳するのが適切です。臨時的で少額のクリーニング代なら「雑費」で処理してもかまいません。また、クリーニング代を個別に管理したい場合は「クリーニング費」の勘定科目を設定することもできます。
業務利用の証明と按分処理が必要
前述したように、個人事業主が経費にできるクリーニング代は、事業に関係するものに限られるため、クリーニング代を経費計上する際には、事業に関連する支出であることを明示する必要があります。
例えば、衣類やタオル、リネン類などは、事業用とプライベート用を明確に分け、両者を混同しないように管理しましょう。
また、個人事業主の経費に関して迷いやすいのが、スーツのクリーニング代です。スーツは、制服などとは異なりプライベートでも着用可能なため、原則として経費と認められません。ただし、業務のみで着用するスーツであればクリーニング代を経費にできます。プライベートと兼用のスーツでも、家事按分を行うことで、クリーニング代の経費計上が認められる可能性があります。家事按分とは、個人事業主が支出した費用を、プライベートでの利用分と事業での利用分に振り分ける処理のことです。例えば、1週間のうち5日間、スーツを業務で使用する場合、クリーニング代の7分の5を経費として計上することは、合理的な処理といえます。
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クリーニング代は適切な勘定科目で仕訳しよう
従業員の制服や作業着など、事業に必要なクリーニング代は、経費として計上可能です。ただし、クリーニング代の仕訳に使用する勘定科目は、業種やクリーニングの目的、頻度などによって異なります。状況に応じて適切な勘定科目を選び、経費として処理することをおすすめします。
また、個人事業主がクリーニング代を経費計上する場合は、プライベートでの利用分と事業での利用分との区分が不明確にならないように正しく管理することが大切です。なお、一度決めた勘定科目は原則として継続して使用し、帳簿上で統一して仕訳するように心がけましょう。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
