経費管理とは?必要な理由や経費管理を効率良く行う方法を解説
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経理部門の重要な業務の1つが経費管理です。経費管理とは、企業が事業を行うために必要な費用を把握し、適切に管理することです。経費が多すぎると利益を圧迫し、反対に削減しすぎると事業運営に支障をきたすことがあります。企業の財務状況を良好に保ち、さらなる成長を目指すためには、適正な経費管理が必要不可欠です。では、経費管理とは具体的にどのような業務を指すのでしょうか。
本記事では、経費管理を必要とする理由や経費管理を効率良く行う方法の他、経費管理を行ううえでの注意点についても解説します。
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経費管理とは事業活動における費用を把握し、適切な状態に調整すること
経費管理とは、企業の事業活動において発生する費用を把握し、適切に利用されるように管理することです。経費とは、企業が事業を運営するために支出したお金のことを指します。企業の利益は、商品やサービスを販売・提供して得た売上高から仕入れなどの原価や 経費を控除して計算されます。そのため、経費管理が不十分で経費が過剰に増加すると、企業の利益を圧迫して財務状況を悪化させる可能性があります。
また、法人税などの税金は、企業の利益に応じて課税されるものです。そのため、経費が発生しているにもかかわらず認識できずに、記帳の漏れている経費があった場合、その分税負担が大きくなります。他に、過度な経費削減が、品質の低下や従業員の不満を招くケースもあるため注意しましょう。
このように、経費管理は企業の利益に直結する重要な業務です。経費管理を行う際には、事業運営に必要な支出を見極め、その金額や用途などが適切か、無駄なく利用されているかなどを確認し、正確に記録する必要があります。
経費管理は従業員の適正な経費使用や不正防止にも役立つ
企業の事業運営では、営業先への交通費や出張時の宿泊費、事務用品の購入費、取引先との交際費など、さまざまな経費が日々発生します。これらの経費は、従業員が一時的に立替えるケースも少なくありません。立替払いした経費は、領収書などの必要書類と共に申請し、業務上の経費に当たると見なされれば精算されます。
経費精算も、経費管理の重要な業務の1つです。経費管理を行うことで、従業員の適正な経費利用や不正利用の防止にも役立ちます。
経費管理が必要な理由
経費管理は、業種や規模を問わず、すべての企業にとって必要性の高い業務です。その理由は、経費管理に以下のような重要な役割があるためです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
正確に経営分析を行うため
経費管理は、正確に自社の経営分析を行うために必要です。
「一定期間にどれだけ利益が計上されたか」「売上と支出のバランスは適切か」といった経営分析を行うには、経費管理が欠かせません。経費が正確に計上されていなければ、企業の利益を計算できず、現在の経営状態を把握することが難しくなります。
経費管理では、基本的に月ごとに経費を精算し、集計します。経費管理によって1か月ごとの利益が明確になれば、期首に定めた事業計画に対して順調に進んでいるかどうかを判断でき、タイムリーな事業戦略の検討が可能です。また、計画と現状に差異が生じていれば、その原因を探り、いち早く有効な改善策を講じることもできるでしょう。
しかし、経費管理が翌月にずれ込むと、当月の利益は過大に、翌月の利益は過小に評価されてしまいます。これでは、経営課題の発見や経営戦略の見直しにつなげることはできません。企業の利益は毎月の積み重ねで決まるため、経費管理は決算にも大きく影響します。経営分析を正確に行うには、経費が発生した当月中に適切に処理することが大切です。
資金需要を予測するため
経費管理は、資金需要の予測を立てるうえでも役立ちます。
企業の経費は、「固定費」と「変動費」の2つのカテゴリに分類されます。固定費とは、売上高や販売数量にかかわらず、常に一定の期間で発生する経費のことです。その一方で、変動費は、売上や生産量、販売数に比例して増減する経費を指します。
固定費は、一定の額の支出が継続的に発生するため、毎月の経費管理によって翌期以降に生ずる費用を予測して必要な資金を用立てることができます。また、変動費についても月ごとの推移を見ていくことで、ある程度の予測が立てられるでしょう。将来的な支出を予測できれば、堅実な資金繰りが可能になり、安定した経営につながります。
企業の資産を適切に管理するため
経費管理には、企業の資産を適切に管理するという大切な役割もあります。
経費管理で支出の日時や用途、金額を精査することによって、無駄な出費、経費の不正利用を防ぐことが可能です。多くの企業では、交通費、出張費、消耗品費、交際費などの経費を従業員が一時的に立替え、後日精算するしくみを採用しています。経費精算で、経費に該当しない費用や過剰な支出を見逃すと、企業の資金が浪費され、財務状況が圧迫される可能性もあるでしょう。
さらに、企業の経費は法人税などの税金にも影響します。また、経費管理を怠ったために経費を過大に計上した場合、税務署から指摘を受け、ペナルティの対象になる可能性もあります。
経費管理業務の流れ
ここでは、経費管理業務の流れを解説します。経費管理の主な業務内容は、従業員が立替えた経費の精算と仕訳です。経費管理業務について、基本的な流れを見ていきましょう。
1. 従業員による経費の立替え
まず、業務で発生する経費を、従業員が自分の所持金から立替えて支払います。
経費の例としては、営業先を訪問する際の交通費や出張にかかる費用、交際費、消耗品の購入代金などがあげられます。経費の立替えにあたっては、必ず領収書やレシートを受領するように、社内で事前にルールを徹底しておきましょう。領収書やレシートがないと、いつ、どこで、何のために使った経費なのかを正確に把握できません。また、領収書の宛名は企業名とし、日付や金額、品名などが記載されている必要があります。
なお、経費の中には、自動販売機での支払や取引先への冠婚葬祭の慶弔金など、領収書が発行されないものもあります。その場合は、支払日や支払先、内容、金額といった詳細を出金伝票に記載するなど、事前にルールを定めておくことが大切です。領収書が発行されない公共交通機関の運賃については、一般的に領収書の代わりに、日付や訪問先、目的、使用した交通機関、経路、運賃などを記載した交通費精算書を作成します。
2. 立替えた経費の精算申請と承認
経費を立替えた従業員は、社内ルールに従って経費精算書を作成し、領収書などの必要書類を添付して経費精算を申請することが必要です。
経費精算の承認フローは、企業によって異なりますが、一般的には、決裁権限のある上司に提出し、「書類の内容に不備がないか」「経費として認められるか」「申請内容と金額に違いがないか」などがチェックされます。申請内容に問題がなければ、経費が承認され、決裁権限者の印が押された経費精算書が経理担当者に提出されます。
3. 経理担当者による精算
経理担当者は、提出された経費精算書や領収書などの申請書類を確認し、問題がなければ承認して精算処理を行います。経費の精算方法は、現金での支払や銀行振込、翌月の給与と合算しての支払など、企業の規定や経費の性質、金額によって異なります。
また、経費の精算時には、その内容に応じて仕訳が必要です。「交通費」「旅費」「消耗品費」「会議費」など適切な勘定科目で仕訳をして、会計システムを使用している場合は入力をします。小口現金で経費精算を行う場合は、現金出納帳に日付、金額、勘定科目などを記録しましょう。
なお、経費精算の際に従業員から提出された領収書やレシートは、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(繰越欠損金の控除を受ける場合は10年間)の保存が必要です。
4. 定期的な経費の見直し
経費管理では、日々の経費を精算するだけでなく、定期的に経費を見直すことが大切です。経費精算は、経費が発生した当月中の処理が原則となります。その月の経費精算が終了したら、経費の内容や金額などを確認し、売上、利益目標などと比較して分析を行うことが大切です。定期的に経費を確認・分析することで、無駄なコストの削減にもつながります。
なお、企業によっては、1か月ごとの財務状況や経営状態を明確にするために、経費管理に加えて、月次決算を実施することもあります。月次決算では、月末ごとに会計を締めて年次決算とほぼ同じ決算作業を行い、月次試算表の作成が必要です。月次試算表に基づく月次業績報告は、経営層が意思決定を行ううえで大切な情報になります。
経費管理を効率良く行う方法
経費管理を効率良く行うには、ツールの導入がおすすめです。経費管理に役立つツールは、さまざまなものがあります。経費管理を行う主なツールは以下のとおりです。
会計ソフト
会計ソフトを導入すると、経費管理だけでなく経理業務全般が効率化されます。
会計ソフトなら、経費が発生するたびに手作業で金額を打ち込んだり、日付や勘定科目を書き込んだりする必要がありません。また、入力したデータは会計ソフト上で集計され、総勘定元帳などの帳簿に自動転記されるため、計算ミスや転記漏れもなくなり、より正確な経費管理が可能です。
さらに、会計ソフトの中には、銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込んだり、紙の領収書をスキャンして自動入力できたりする製品もあります。そのような機能が備わった会計ソフトを選ぶことで、業務効率化とミス防止を同時に実現できます。日常的な経費精算や月ごとの経費管理だけでなく、決算業務にかかる手間も大幅に軽減されるでしょう。
Excelなどの表計算ソフト
経費管理には、Excelなどの表計算ソフトを活用する方法もあります。
他の業務で既にExcelを活用している企業であれば、新たな導入費用がかからず、低コストで運用可能です。ただし、Excelを用いた経費管理では、手入力のためミスや計算間違いが発生しやすくなります。他にも、経費が発生するたびに仕訳帳に記帳したうえで、総勘定元帳や現金出納帳などへ転記する手間も生じます。また、Excelの操作に慣れている必要があり、業務の属人化を招く可能性がある点にも注意しましょう。
経費精算システム
経費管理を効率良く行う方法として、経費精算システムもあげられます。
経費精算システムは、経費の申請や承認、経理部門での処理といった経費精算に必要な業務を効率化するシステムです。経費精算システムを導入すると、従業員が立替えた経費の確認や計算、領収書との照合、承認と精算といった一連の流れを一元的に管理できます。また、経費管理の大きな割合を占める経費精算を効率化できるうえ、経費精算書など紙の書類のやりとりが不要になり、ペーパーレス化にも役立ちます。
経費精算だけに限らず、経費管理全体の効率化を目指すなら、会計ソフトと連携した経費精算システムの導入を検討するのもおすすめです。経費精算の内容が自動的に会計ソフトに反映されれば、記帳や決算書作成などの手間も軽減できるでしょう。
なお、自社開発の経費精算システムを用いることも可能です。自社開発の経費精算システムなら、自社の業務フローに最適化でき、既存システムよりも使いやすくなります。ただし、自社での経費精算システムの開発には多くの手間とコストがかかり、運用にあたっては専門知識を持つエンジニアが必要です。そのため、中小企業にはハードルが高い方法といえます。
経費管理における注意点
経費管理を行う際には、いくつかの注意点があります。経費管理を適切な経営分析につなげるためにも、以下の点に注意しましょう。
経費申請が正しいか確認する
経費管理における注意点の1つが、従業員からの経費申請が正しいか確認することです。
従業員からの経費申請は、内容が正しいかを十分確認することが必要になります。必要書類に不備や不足はないか、申請書類の記載と領収書の内容に食い違いがないか、金額・用途などが適切かといったことを、しっかりとチェックしましょう。経費申請に問題があれば申請者に差し戻し、修正を依頼する必要があります。
経費として妥当かを確認する
経費として妥当かを確認することも、経費管理における注意点です。
経費管理にあたっては、申請された内容が経費として妥当かを十分確認する必要があります。企業の経費として計上できるのは、業務上必要と認められた費用のみです。例えば、業務のために必要な出張にかかる交通費や宿泊費などは経費に該当しますが、特別な理由のないタクシーの利用、プライベートな観光目的で業務時間外に発生した移動費は経費になりません。経費として認められないものまで承認し、それが常態化してしまうと、企業の財産が浪費されるだけでなく、決算や税務申告にも影響を及ぼすこともあるでしょう。
ミスなく迅速に経費精算を行う
経費管理における注意点として、ミスなく迅速に経費精算を行うこともあげられます。
経費管理では、当月中の経費精算が原則です。特に、月次決算を実施している企業の場合、月末までに経費精算が完了しないと、その後の決算作業を進めることができません。スピーディーな経費精算を行うために、あらかじめ申請の期限を定めて社内に周知することが大切です。
経費精算は細かい計算が多く、急いで処理をしようとするとミスが起こりやすくなります。また、手作業で経費精算を行っている場合は時間もかかり、ヒューマンエラーのリスクも高くなります。ミスなく迅速に経費精算を行うためには、会計ソフトや経費精算システムの導入を検討するとよいでしょう。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
