固定資産管理とは?目的や種類、手順、ポイントなどを解説
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企業が事業を継続・発展させるためには、建物や設備機器などの固定資産が不可欠です。こうした固定資産の数や種類が増えるにつれて、管理が煩雑になります。そのため、固定資産を適切かつ効率的に管理する体制を整えることが大切です。
本記事では、固定資産管理の目的や固定資産の種類、固定資産管理の手順、適切な固定資産管理を実現するポイントを解説します。
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固定資産管理とは、固定資産を正確に把握し、管理する業務のこと
固定資産管理とは、固定資産の内訳や取得価額などを正確に把握し、適切に管理するための業務です。固定資産とは、建物・機械・車両・パソコンなど、事業者が保有する資産のうち、以下の3つの条件を満たすものをいいます。
固定資産の条件
- 長期(1年以上)にわたり保有する資産
- 取得価額が一定以上の資産(一般的には10万円以上とされるが、税法上の特例や会計処理の方法により異なる場合がある)
- 販売目的ではなく、事業目的で使用されるもの
また、中小企業者等が取得した10万円以上30万円未満の資産については、一定の要件を満たすことで、取得年度に全額を損金算入できる「少額減価償却資産の特例」が適用されることがあります。
固定資産管理には減価償却などの経理処理に加えて、固定資産の現物確認(固定資産の棚卸)や現物資産の管理といった、さまざまな業務が含まれています。固定資産の状況を適切に把握し、正確に管理することで、法人税の節税効果が期待できる他、固定資産の買い替えや保守のタイミングも判断しやすくなります。
固定資産については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
固定資産管理の目的
固定資産管理の主な目的は、以下の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定資産を適切に維持・運用するため
固定資産管理の目的は、固定資産を適切に維持・運用することです。
固定資産がいつ購入されたか、どの部署の誰がどのように使用しているか、といった点を正確に把握することにより、固定資産の状態を把握しやすくなります。老朽化や使用状況の変化に気づきやすくなるため、必要に応じて適切な対応(メンテナンス・再配置・買い替えなど)を行う判断材料にもなるでしょう。
また、固定資産の状況を把握することは、不正利用の防止にも役立ちます。誰が固定資産を使用・管理しているのかが明確になり、責任の所在がはっきりするためです。このように、固定資産を適切に維持・運用するためには、固定資産管理が不可欠です。
正確な固定資産税を算出するため
正確な固定資産税を算出することも、固定資産管理の目的の1つです。
事業者が所有している固定資産には、固定資産税が課税されます。自社の固定資産の実態を正確に把握していなければ、固定資産税の算出が不正確になる可能性があります。そのため、固定資産管理を通じて、償却が完了した固定資産や不要な固定資産を把握することが大切です。これにより、不要な固定資産を適切に見極め、廃棄処理を円滑に行うことが可能になります。結果として、課税対象となる固定資産を必要最小限にとどめ、余分な固定資産への課税を回避できる点が大きなメリットです。正確な固定資産税を算出することは、必要以上の固定資産の保有を防ぐという観点からも、重要なポイントといえます。
経費を削減するため
固定資産管理には、経費を削減する目的もあります。
適切な固定資産管理は、経費削減にも効果があります。固定資産管理が適切に行われていない場合、現物の固定資産と管理台帳の内容が一致しなくなったり、固定資産の価値を正確に把握できず経費が増加したりするリスクが想定されるためです。不要な固定資産を定期的に見直し、処分や再利用といった手立てを講じることは、資源の無駄遣いを防ぐと共に、経費削減にもつながります。
経費については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
セキュリティ対策のため
固定資産管理の目的として、セキュリティ対策もあげられます。
固定資産が適切に管理されていない場合には、企業が保有する資産の紛失や盗難といったリスクが高まります。資産の数に不一致があった場合、早期に把握できるかが重要なポイントです。例えば、企業が保有するパソコンの紛失に速やかに気付けなかった場合、機密情報や個人情報が漏洩し、被害が拡大する可能性があります。こうしたリスクを回避するためにも、固定資産管理を適切に実施していくことが必要です。
固定資産の種類
固定資産は、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3種類に分類されます。それぞれの定義と具体例を見ていきましょう。
有形固定資産
有形固定資産とは、長期にわたって事業のために保有する、目に見える資産のことです。
主に土地や建物、機械装置、車両などを指します。建物や機械装置、車両のように経年と共に価値が減少する資産は「減価償却資産」とされます。それに対して、経年によって価値が減少しない土地などは「非償却資産」と呼ばれ、減価償却の対象とはなりません。
無形固定資産
無形固定資産とは、長期にわたり事業のために使用される資産のうち、形のない財産的価値を持つものをいいます。
例えば、特許権、のれん(営業権)、ソフトウェアなど、経済的収益力を持つ資産や、法的に価値が認められている資産が該当します。
投資その他の資産
投資その他の資産とは、企業が経営支配の維持や取引関係の強化などを目的として保有する資産のことです。
例えば、長期保有を目的とした投資有価証券や関係会社株式の他、長期貸付金、出資金、敷金・保証金などが該当します。これらの資産は有形固定資産・無形固定資産のいずれにも該当しないことから、投資その他の資産に分類されます。
固定資産管理の手順
固定資産管理は、基本的な手順に従って進めることが大切です。固定資産を取得した時点から、順を追って見ていきましょう。
1. 取得した固定資産の会計処理を行う
固定資産を取得した際は、発行された請求書に基づいて支払処理を済ませた後に、会計処理を行います。取得した資産の種類によって、耐用年数や償却率が異なる点に注意しましょう。税法上の耐用年数および償却率を確認し、それに基づいて減価償却費を計上します。
2. 固定資産台帳に必要事項を記入し、固定資産を登録する
取得した固定資産に関する会計処理が完了したら、次に固定資産台帳へ必要事項を記入していきます。固定資産台帳とは、固定資産の取得から除却までの履歴を記録する帳簿です。事業者が所有する固定資産は、固定資産台帳を参照することで特定できる状態にする必要があります。
また、固定資産台帳は、税務申告時に提出が義務付けられているわけではありません。ただし、また、法人税の申告書のうち、減価償却費に関する部分について固定資産台帳を減価償却費の明細として添付することもできます。この場合の提出は義務となります。いずれにしても固定資産台帳は帳簿としての保管義務があるため、税務調査時などに備えて保管しておかなければなりません。したがって、固定資産の実態と台帳とのかい離が生じないよう、正確に記載することが大切です。記載すべき事項にルールは設けられていないものの、以下にあげる項目については設けておく必要があるでしょう。
固定資産台帳の項目例
- 資産名
- 固定資産管理番号(自社で付番方法を決定)
- 固定資産の取得年月日・事業供用開始年月日
- 取得価額
- 数量
- 設置場所
- 管理部門
- 用途
- 償却方法
- 耐用年数
- 固定資産の除去年月日
なお、固定資産とは別にリース資産を保有している場合は、別途リース物件管理台帳を作成し、固定資産台帳とは分けて管理する必要があります。
固定資産台帳については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
3. 固定資産管理番号が記入された管理ラベルを貼付する
固定資産台帳に記載された固定資産管理番号を管理ラベルに転記し、該当する機械や設備に貼付します。このラベルは固定資産を識別する際の目印であり、棚卸の際に固定資産台帳と照合しやすくするためのものです。
近年では、管理ラベルにバーコードや2次元コードが用いられるケースも少なくありません。バーコードリーダーで読み取れるようにすることで、管理業務の負担軽減につながります。ただし、固定資産の用途や設置場所、耐用年数などの条件によっては、管理ラベルの汚損・劣化が懸念される場合もあります。管理ラベルは長期間使用することを想定し、耐久性のある素材を選ぶとよいでしょう。
4. 棚卸(現物実査)を実施する
固定資産の管理の現場においての棚卸とは、固定資産台帳を照合し、移動・売却・廃棄などの状況が適切に反映されているかを確認する現物実査のことです。固定資産の棚卸は年1~2回程度実施し、それぞれの固定資産が台帳どおりの状況かどうかを確認します。
固定資産の棚卸を実施する際には、現物の有無や数量はもちろんのこと、稼働状況、破損の有無なども併せて確認するのがポイントです。破損が確認された場合には、固定資産台帳に状況を記載して情報を共有する必要があります。台帳との照合作業を通じて不要と判明した固定資産を処分すると共に、必要に応じて買い替え・修理などを検討することが大切です。未使用の固定資産が放置されたり、メンテナンス不足のまま使用され続けたりすることのないよう注意しましょう。
棚卸については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
固定資産管理の方法
固定資産管理にはさまざまな方法がありますが、代表的なものとして、「エクセルで管理する方法」と「固定資産管理システムの導入」があげられます。それぞれの管理方法について、メリットと注意点を確認しておきましょう。
エクセル(Excel)で管理する
固定資産管理の方法の1つに、エクセル(Excel)による管理があります。
固定資産をエクセルで管理する場合、フォーマットを自社で作成することも可能ですが、管理項目があらかじめ入力されたテンプレートを活用することで、より効率的に管理できます。さまざまなWebページにて固定資産台帳のテンプレートが公開されていますので、使いやすいものを選んでダウンロード・活用するとよいでしょう。
また、テンプレートによっては、減価償却計算が自動化されているものもあります。ただし、減価償却の方法は、固定資産の種類によって異なるため、あらかじめ計算式が用意されていないものに関しては自社でカスタマイズしたうえで利用する必要があります。計算式に誤りがないか十分に確認し、固定資産ごとの減価償却計算を正確に行うことが重要です。
また、複数人で固定資産管理を担当する場合、誰が、どのような追加・変更を行ったのかが不明確になりやすいため、各担当者の業務範囲をあらかじめ決めておくなど、責任の所在が明確になるよう工夫することをおすすめします。
固定資産管理システムを導入する
固定資産管理の方法には、固定資産管理システムの導入もあります。
固定資産管理に特化したシステムを導入することで、台帳を一元的にシステム管理する仕組みを構築可能です。入力・変更された情報がリアルタイムで反映されるため、台帳の情報と実際の資産状況とのかい離を防ぐ効果が期待できます。複数人で固定資産管理を分担する場合でも、各担当者が最新情報を迅速に参照できる点が大きなメリットです。
また、複雑な減価償却費の計算を自動化できるだけでなく、リース資産にも対応しているシステムも少なくありません。システムを導入することで、所有資産に限らず、契約に基づく資産やさまざまな管理対象にも柔軟に対応できるのが大きな強みです。さらに、最新の税法や会計基準に対応しているシステムを活用すれば、担当者の知識・経験に依存せず、正確な処理が可能になります。
なお、固定資産管理システムには無料・有料のものがあり、システムによって対応範囲や機能に違いがあるため注意しましょう。固定資産管理システムを選定する際には、自社に必要な機能が備わっているかを慎重に見極めることが大切です。
適切な固定資産管理を実現するポイント
適切な固定資産管理を行うために、押さえておくべきポイントがいくつかあります。以下のポイントを意識して、正確かつ効率的に固定資産管理をしましょう。
社内ルールやガイドラインを周知徹底する
適切な固定資産管理を実現するポイントは、固定資産管理に関する社内ルールやガイドラインを策定し、関係者に周知徹底を図ることです。
固定資産を取得する際は、それが業務に必要かどうかや、取得価額の妥当性を確認する必要があります。また、取得した固定資産は数量や使用状況を正確に把握しなければなりません。取得・廃棄・処分の手続きや管理方法、担当者を明記した社内ルール・ガイドラインを作成し、関係者に周知することが大切です。
なお、社内ルールやガイドラインに曖昧な点が残されていたり、十分に周知されていなかったりすると、固定資産管理の方法が担当者・部門ごとに異なる可能性があります。属人化を防ぐためにも、承認体制を明確に定めたうえで、ルールに則って運用していくことが求められます。
日常的な現場管理を徹底する
日常的な現場管理を徹底することも、適切な固定資産管理を実現するポイントの1つです。
固定資産の取得後は、主に現場の担当者が実際に固定資産を活用することになります。そのため、建物や設備機器などはすべて企業の資産であることへの意識を醸成すると共に、経理部門と現場の間で、情報を円滑に共有できる仕組みを構築することが求められます。そのうえで、現場でも定期的に固定資産管理を行うことで、現場の実態に即した運用を継続的に行うことが大切です。
特に、固定資産を新たに取得・処分・移動した際には、所定の手続きを経てすみやかに情報が共有される体制を整える必要があります。現場の独断で固定資産を取得したり、無断で廃棄・移動したりすることのないよう、周知徹底を図りましょう。
固定資産管理システムの導入を検討する
適切な固定資産管理を実現するには、固定資産管理システムの導入が効果的です。
固定資産管理は、正確性が求められる業務であることに加え、資産の点数や種類が多いほど手間と時間がかかるため、煩雑になりやすい業務といえます。固定資産管理に対応しているシステムを活用することで、一連の業務を必要最小限の入力作業にとどめられます。
なお、固定資産管理システムを選ぶ際には、自社の実務に即したシステムを選ぶことが大切です。一例として、減価償却の計算方法には、「定率法」と「定額法」の2種類があります。自社がどちらの会計管理基準を採用しているのかを確認したうえで、対応可能なシステムを選ばなければなりません。また、管理対象となる固定資産の法定耐用年数や償却率があらかじめ登録されているシステムを選ぶことで、導入・運用を円滑に進められる可能性が高まります。固定資産管理に携わる経理担当者の意見も取り入れながら、現場で扱いやすいシステムを選定することが大切です。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
