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棚卸しとは?意味や目的、やり方、仕訳方法を簡単に解説

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棚卸しとは、企業や店舗が抱える商品や製品、部品などの在庫数を調べることです。棚卸しを決算時期に行わなければいけない理由や棚卸しの進め方のほか、決算の際の評価方法や仕訳についてまとめて解説します。

実務として棚卸作業に携わる人だけでなく、棚卸しの会計処理を行う担当者も、棚卸しについての総合的な知識を身につけておきましょう。

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棚卸しを行う意味や目的

多くの商品や製品を扱っている企業にとって、棚卸しは非常に手間のかかる作業です。手間がかかっても帳簿上の管理だけでなく、棚卸しを行わなければならない目的には、主に下記の3つがあります。

純利益がいくらなのかを正確に把握するため

実際の在庫がわからないと、純利益がいくらなのかを計算することができません。

たとえば、ある会計期間中に商品を1個50円で100個仕入れ、1個100円で50個販売した場合、仕入れと売上は同じ金額です。しかし、実際には手元に50個の在庫があり、残り50個は、翌期以降に販売して売上になります。

このような場合に純利益を正確に把握するためには、販売された50個分についてのみ経費計上する(仕入の総額から、1個当たりの仕入れ値×在庫数を差し引く)必要があります。そこで、在庫の正確な個数を把握しなければいけないのです。

また、実際の製品の個数を数える上では、売り物にできない「不良在庫」が見つかることもあります。不良在庫は、帳簿を見ているだけでは見つけることができません。販売可能で正確な在庫数を知るためには、実際に棚卸しが必要不可欠なのです。

帳簿上の在庫と実際の在庫に差がないか確認するため

帳簿上の在庫は、売上個数と仕入れ個数を比較することで把握できます。

しかし、帳簿の記載ミスや先に説明した不良在庫などによって実態と差がある可能性があるため、定期的に在庫の状態や実数を数えて帳簿の数字と差がないかチェックします。

適切な数の在庫をキープするため

在庫が少なすぎると、販売機会を逸する可能性があります。反対に、在庫が多すぎると保管にかかる費用や手間がかさんでしまいますし、品質の低下が起こる可能性もあるでしょう。適切な数をキープするためにも、実数を正しく把握する必要があります。

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棚卸しの方式

棚卸しの方式は、主にリスト方式とタグ方式の2つがあります。それぞれの方式についてご説明します。

リスト方式

リスト方式は、あらかじめ帳簿上の在庫数をチェックしておき、現物の数と付け合わせていく方式です。正確なリストを作成する必要があります。

タグ方式

タグ方式は、実際の商品にタグをつけていくことで、数をカウントする方式です。最初に現物の数をすべて数えてから帳簿と付け合わせをします。確実性は高いものの、時間がかかるという難点があります。

棚卸しの時期

棚卸在庫の数は、決算の際に必要になる情報ですから、期末には必ず行わなければいけません。また、小売店など日常的に在庫を抱える業務では、在庫管理のために月1度程度の定期的な棚卸しが必要です。

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棚卸しの進め方

棚卸しは、基本的に下記のような手順で進める場合が多いでしょう。

1.実地棚卸を行う

実地棚卸とは、実際の商品の在庫数を数えることです。前述のリスト方式やタグ方式で、在庫がいくつあるのかを数えます。

2.帳簿棚卸を行う

帳簿棚卸は、帳簿上の在庫がいくつあるのかを計算することです。日々の商品の動きなどを記録した帳簿を確認して、在庫数をチェックします。なお、実地棚卸と帳簿棚卸は、同時に進めたり、帳簿棚卸を先に行ったりしても問題ありません。

3.実際の在庫数と帳簿上の在庫数を付け合わせて在庫数量を確定させる

実地棚卸と帳簿棚卸が完了したら、両者を付け合わせて在庫数量を確定させます。数字がずれている場合は、どちらかにミスがあるはずですから再確認が必要です。それでも合わない場合は、帳簿上の処理を行います。

4.当期の売上数量を算出する(決算棚卸の場合)

在庫数量は、販売だけでなく仕入によっても変動します。そのため、仕入数量を反映させて売上数量を算出しましょう。当期の売上数量の計算式は下記のとおりです。

当期の売上数量=期首の在庫数量+当期の仕入数量-期末の在庫数量

ただし、実際の売上の計上額は現実に収入した金額だけではなく、収入すべき金額も含めて算定します。販売代金が未収となっている場合であっても、その未収代金も売上に計上することとなります。

5.売上原価を算出する(決算棚卸の場合)

決算を行うためには、売上原価を算出しなければいけません。下記の計算式で、売上原価を算出しましょう。

売上原価=期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高

なお、期首商品棚卸高とは、会計年度開始日の在庫の総額(=仕入単価(評価額)×在庫数)、期末商品棚卸高は期末の在庫の総額(=仕入単価(評価額)×在庫数)です。

棚卸しの仕訳方法

棚卸しは業種によって、決算時に行う場合と毎月行う場合があります。決算時と月次それぞれの棚卸しの仕訳の記載例は下記のとおりです。

棚卸商品は、法人税や所得税の計算上は翌期に繰り越して、翌期以降の売上に対応するものです。しかし、消費税では、棚卸商品はあくまで、商品を仕入れた時点で当期の売上に係る消費税から控除(仕入税額控除)することになります。

そのため、すでに仕入れた時点で消費税の認識がなされていますが、「期末商品棚卸高」及び「期首商品棚卸高」の勘定科目は消費税の対象外(不課税)です。

決算時の棚卸しの仕訳例:
期首(1月1日)の商品棚卸高が10万円
期末(12月31日)の商品棚卸高が20万円の場合

12月31日(決算日)の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
期首商品棚卸高 100,000 商品 100,000
商品 200,000 期末商品棚卸高 200,000

月次の棚卸しの仕訳例:
前期から繰越した在庫(棚卸資産)が20万円
1月末(1ヵ月目)の在庫(棚卸資産)が30万円の場合

1月31日の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
期首商品棚卸高 200,000 商品 200,000
商品 300,000 期末商品棚卸高 300,000

2月1日(2ヵ月目)の在庫(棚卸資産)が30万円
2月末の在庫(棚卸資産)が40万円の場合

2月28日(29日)の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
期末商品棚卸高 300,000 商品 300,000
商品 400,000 期末商品棚卸高 400,000

月次の場合、2ヵ月目以降は、「期首商品棚卸高」の科目は使用せず、「期末商品棚卸高」の科目を使用して、各月末の日付で入力します。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産を評価する方法は、「原価法」と「低価法」の2種類あります。それぞれの評価方法がどのようなものなのか、見ていきましょう。

原価法

原価法は、商品を取得した金額で評価を行う方法です。ただし、同じ商品を仕入れた場合でも、実際の仕入れ額が異なる場合があります。そこで、原価法はさらに6つの評価方法に分けられます。

個別法

個別法は、仕入れた商品の原価を個別に管理・評価する方法です。個別に管理することで、売上と原価が合致するため、正確な在庫評価額を算出できます。そのため、個別法は、仕入価格ごとに個別管理することができる棚卸資産であることが条件になります。

個別法は商品の単価が高く、流通の数が少ない商品、たとえば貴金属や宝石のような仕入と在庫の対応関係が分かりやすい商品に向いている方法です。

先入先出法

先入先出法は、英語で「First in, First Out」。頭文字をとってFIFOとも呼ばれます。先に仕入れたものから先に販売していくと仮定して棚卸資産の評価をする方法です。特に食料品など食品を扱う業種では、一般的に行われています。直近の仕入額を在庫の仕入額として評価する方法です。先入先出法は、移動平均法とともに簿記の必須項目です。

総平均法

総平均法は、月または年あたりの平均仕入額を算出して利用する方法です。

移動平均法

移動平均法は、棚卸資産の対象になる商品を仕入れるたびに、平均仕入額を算出して利用する方法です。

売価還元法

売価還元法は、商品の販売額に原価率を掛けて取得原価とする方法です。

最終仕入原価法

最終仕入原価法とは、期中の最後の仕入額で評価をする方法です。

これらの評価方法は、どれでも管理しやすい方法を選択できますが、税務署に「棚卸資産の評価方法の届出」を提出していない場合は、必ず「最終仕入原価法」で評価します。これを法定評価方法といいます。

なお、評価方法を途中で変えることは原則としてできませんが、確定申告の提出期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄の税務署に提出すれば変更は可能です。

低価法

商品在庫は、時期と共にその価値が下がってしまうこともあります。そのような場合のための評価方法が、低価法です。低価法では、原価法の評価額か、期末時点の商品の時価の低いほうで商品在庫を評価します。

棚卸しでよくあるトラブル

棚卸しをする際に、よくあるトラブルを3点紹介します。このような問題が起こってしまったときは、それぞれに応じた対処をするとともに、トラブルが再度起こらないための対策をとることが重要です。

不良在庫が発見された

たとえ在庫があったとしても、それが通常どおり販売ができない不良品だった場合は、そのまま棚卸資産として計上することができません。このようなときは、以下のいずれかの方法で処理します。

  • 1.
    棚卸資産評価損として計上する
  • 2.
    期末商品棚卸高がその分少なくなるので実質売上原価に反映される

下記は棚卸資産評価損として計上する方法を例示していますが、たとえば「コロナ禍において休業期間が長引いたので大量の商品の品質不良が見つかった」という場合には、その事情等を残しておくといいでしょう。

不良在庫の計上例:
棚卸しの結果、不良在庫が20個見つかった(原価500円)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
棚卸資産評価損 10,000 棚卸資産 10,000

なお、不良在庫になってしまった原因が管理方法や保管状況にあるのであれば、管理方法の見直しも併せて行います。

実際の在庫数と帳簿上の在庫数が合わない

帳簿上の在庫と実際の在庫の数が合わないときは、帳簿の数字に計上漏れがないか、また、カウントミスがないか再度確認することになり、非常に手間がかかります。 それでも、どうしても合わない場合は、実際の数をベースにして期末商品棚卸高を計算することになります。

帳簿より実際の在庫数が少ない場合:
帳簿上の在庫が100個、実際の在庫が95個(原価200円)
200円×(100-95)=1,000円(実際と帳簿上のずれ)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
棚卸減耗費 1,000 繰越商品 1,000

帳簿より実際の在庫数が多い場合:
帳簿上の在庫が100個、実際の在庫が105個(原価200円)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
繰越商品 1,000 仕入 1,000

実際の在庫数が帳簿の在庫数と合わない場合も、以下のいずれかの方法で処理をします。

  • 1.
    棚卸資産減耗損として計上する
  • 2.
    期末商品棚卸高がその分少なくなるので実質売上原価に反映される

しかし、棚卸減耗が起こるということは経営上も問題となります。上記の帳簿上の調整と合わせて、今後カウント漏れが起こらないようにルールを策定したり、システムを導入したりといった対策をとることで、帳簿上の在庫数と実際の在庫数のずれを防ぐことが可能です。

棚卸しが終わらない

棚卸しが終わらないと、決算を完了することができません。そのため、棚卸しは計画的に行う必要があります。

棚卸しは「期末や月末など、棚卸時点での在庫数」を知るために行うものです。在庫数を知っておかなければならない時点での在庫数さえわかれば、作業を始める日はいつでも構いません。できるところから早めに始めるといった対処をとることで、計画的に棚卸しを行いましょう。

棚卸表の保存期間と記載方法

棚卸表は、確定申告の提出期限の翌日から7年間の保存が義務付けられています。その他の決算書類と同様に保管してください。

また、棚卸表には、下記の項目について記載します。

  • 棚卸しの実施日
  • 商品コード
  • 品名
  • 数量
  • 単価
  • 在庫金額(数量×単価)
  • 在庫状態(良品か不良品かなど)

商品が返品された場合は、その分在庫数が増え、売上数が減ります。その場合は、下記のような仕訳をしましょう。

商品が返品された際の仕訳例:
1,000円の商品を掛け取引で販売したが、返品された場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上 1,000 売掛金 1,000

棚卸しの対象になるもの

棚卸しの対象になるものは、商品だけではありません。下記のようなものは、すべて棚卸しの対象となります。

  • 商品
  • 製品
  • 原材料
  • 副産物
  • 未使用の消耗品(事務用品など)
  • 貯蔵品(印紙・切手) など

決算の際は、漏れがないように気を付けてください。ただし、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他については経常的に消費し、毎年おおむね一定量を取得するものであれば、購入時に費用処理しても問題ないという規定もあります。営業実態に応じて行うといいでしょう。

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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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