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在庫回転率とは?計算方法や把握するメリットなどを解説

2024/02/19更新

この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

在庫を管理するうえでの指標の1つが、在庫回転率です。在庫回転率を把握すると、在庫の動きや売れ筋の商品、過剰在庫がないかなどがわかります。特に小売業や製造業などの業種にとって、在庫管理は非常に重要です。在庫回転率について理解しておくと、適切な在庫管理を目指すうえで役立つでしょう。

ここでは、在庫回転率の必要性や計算方法、在庫回転率を把握するメリット、在庫回転率を向上させるためのポイントについて解説します。

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在庫回転率とは、一定期間内に入れ替わった在庫量を示す指標のこと

在庫回転率とは、一定期間に在庫がどれくらい入れ替わったかを示す指標です。商品回転率や棚卸資産回転率とも呼ばれます。

在庫回転率の数値が高いと、商品が入れ替わるサイクルが速く、在庫が売れるまでの期間が短いことを示し、反対に在庫回転率が低いと、商品が売れるまでに時間がかかり、在庫として長く社内にとどまっていることになります。一般的に、在庫を長く保有するほどコストがかかるため、在庫回転率の向上は多くの企業にとっての課題です。

ただし、在庫回転率は、単純に高ければ高いほど良いともいい切れません。在庫回転率が高すぎると在庫切れが発生し、販売機会の損失を招く可能性があるからです。また、適正な在庫回転率は、業種や商品の種類、季節などによっても異なります。そのため、在庫回転率の数値だけに注目するのではなく、過去の同じ時期や同業他社と比較することも大切です。

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在庫回転率の計算方法

在庫回転率を計算するには、在庫数から算出する方法と、金額から算出する方法があります。それぞれの計算方法について、例と共に見ていきましょう。

在庫数に基づいた計算方法

在庫数による計算方法では、期間中の総出庫数を平均在庫数で割って在庫回転率を求めます。計算対象とする期間は1年間とするケースが一般的ですが、週単位や月単位など、必要な期間を設定することも可能です。在庫の数がわかれば現場で容易に算出できるので、一般的には実務者向きだといわれています。

在庫回転率を求める計算式は、下記のとおりです。

在庫数による在庫回転率計を求める計算式

在庫回転率=期間中の総出庫数÷期間中の平均在庫数

また、期間中の平均在庫数は、対象期間の期首在庫数と期末在庫数の平均値です。期間中の平均在庫数を求める計算式は、下記のとおりです。

期間中の平均在庫数を求める計算式

期間中の平均在庫数=(期首在庫数+期末在庫数)÷2

例えば、1年間の出庫数が2,000個、期首在庫数が160個、期末在庫数が240個ある場合の期間中の平均在庫数と在庫回転率は、それぞれ下記のとおりです。

(機首在庫数160個+期末在庫数240個)÷2=期間中の平均在庫数200個
2,000個÷200個=在庫回転率10回

金額に基づいた計算方法

金額による計算方法では、期間中の出庫金額を平均在庫金額で割って、在庫回転率を算出します。計算対象となる期間は1事業年度です。金額に基づいた方法は、決算書の数値を基に計算するため、どちらかというと経営陣向きといわれています。

金額に基づいて在庫回転率を求める計算式は、下記のとおりです。

金額に基づいて在庫回転率を求める計算式

在庫回転率=期間中の出庫金額÷期間中の平均在庫金額

期間中の出庫金額は、損益計算書の「売上原価」にあたります。売上減価を求める計算式は、下記のとおりです。

売上原価を求める計算式

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

また、期間中の平均在庫金額は、前述のとおり、期首と期末の棚卸資産の平均となるため、「期間中の平均在庫金額=(期首在庫高+期末在庫高)÷2」の計算式で求めることができます。この期首在庫高(期首商品棚卸高)とは、前期の期末時点で残っている在庫、つまり前期の期末在庫高(期末商品棚卸高)です。

例えば、当期の出庫金額2,000万円、前期の期末棚卸資産160万円、当期の期末棚卸資産240万円の場合の期間中の平均在庫数と在庫回転率は、それぞれ下記のとおりです。

(160万円+240万円)÷2=期間中の平均在庫金額200万円
2,000万円÷200万円=在庫回転率10回

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在庫回転期間の計算方法

在庫回転率と似た指標に、「在庫回転期間」があります。在庫回転期間は、在庫がどのくらいの期間で売れているかを示す指標で、下記の計算式で求めることができます。

在庫回転期間を求める計算式

在庫回転期間(月数)=棚卸資産÷(売上原価÷12)

例えば、棚卸資産が120万円、売上原価が720万円とすると、「120万円÷(720万円÷12)」で、在庫回転期間は2か月になります。これは、在庫が入れ替わるのに2か月を要しているということを指します。

在庫回転期間が短いほど、効率良く在庫をさばけていることになりますが、棚卸資産の在庫の変動が大きい業態は季節変動が生じるため、できれば商品の種類ごとに毎月、あるいは四半期ごとに見ていくとよいでしょう。

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在庫回転率と適正在庫の関係

在庫回転率は、適正在庫を把握するうえでも重要な指標になります。適正在庫とは、過不足のない理想的な在庫の量のことです。在庫が多すぎると、売上に対して仕入れの費用がかさみ、長期間保管することによるコストも大きくなります。

反対に、在庫が少なすぎると、在庫切れで販売機会を逃してしまい、顧客満足度の低下にもつながってしまいます。適正在庫を維持することは、在庫管理において欠かせないポイントだといえるでしょう。

適正在庫を計算するときに役立つのが、在庫回転率です。適正在庫金額は、在庫回転率の数値を使って、下記の計算式で求めることができます。

適正在庫金額を求める計算式

適正在庫金額=期間中の売上原価÷目標在庫回転率

上記の計算式で適正在庫金額を求める際には、「目標在庫回転率」の設定が必要になります。目標在庫回転率を求める計算式は、下記のとおりです。

目標在庫回転率を求める計算式

目標在庫回転率=期間中の目標売上金額÷目標平均在庫金額

また、期間中の目標売上金額や目標平均在庫金額などの目標とする数値は、同業他社や経済産業省のデータなどを参考にするのが一般的です。

在庫回転率を把握するメリット

在庫回転率を把握すると、主に下記のようなメリットがあります。企業にとってのメリットを把握し、在庫回転率を有効に活用しましょう。

在庫の動きが可視化できる

在庫回転率の大きなメリットは、在庫の動きを可視化できることです。在庫回転率を計算して、商品の動向を数値化することで、在庫がどのように動いているのかがわかりやすくなります。

日ごろから在庫の動きに気を配っていても、それだけで全体的な見通しを立てることは困難でしょう。結果として、「在庫がなくなってから発注する」というように対応が後手に回ったり、過剰な在庫を抱えてしまったりするかもしれません。

日ごろから在庫数と在庫回転率を併せて確認しておけば、商品が売れるペースをより具体的に把握でき、効果的な販売戦略につなげられるはずです。商品ごとの在庫回転率を算出すると、売れ筋の商品とそうではない商品も、感覚ではなく数値でつかめるようになります。

無駄なコストを削減できる

在庫回転率は、コスト削減にも役立ちます。例えば、在庫回転率の低い商品をチェックすることで、過剰在庫の発生を防ぎ、無駄な仕入れ費用をカットできるでしょう。また、過去の同時期のデータと比較してみると、以前より在庫回転率が落ちている商品があるかもしれません。そのような商品に気付かず、以前と同じペースで仕入れをしていると、在庫過多に陥ってしまいます。

在庫が長期間販売されないまま残っていると、保管コストがかかるだけではなく、劣化や破損のリスクも高まります。在庫回転率を定期的に確認し、適正在庫を意識することで、このようなコストの削減につながります。

顧客のニーズを把握できる

在庫回転率によって、顧客ニーズを把握しやすくなるというメリットもあります。商品ごとの在庫回転率を見ると、どの商品の売れ行きが良く、どの商品があまり売れていないかがわかります。

例えば、継続して在庫回転率が高い商品は人気商品といえますし、徐々に在庫回転率が上がっている商品は顧客からのニーズが高まっていると考えられます。このような商品の仕入れを増やし、積極的に売り出していけば、効率良く売上アップを目指すことが可能です。

反対に、在庫回転率が低迷している商品は、売れ行きが悪いということになるため、仕入れを減らす、販売方法を改善する、販売を中止するなどの対策が必要になるでしょう。このように在庫回転率から顧客ニーズをつかむことで、利益効率を高めることができるでしょう。

在庫回転率を上げるためのポイント

「在庫回転率を上げたいけれど、具体的にどのような対策をとれば良いのかわからない」と悩む方も少なくないでしょう。ここでは、在庫回転率を向上させて適正在庫を維持するために意識すべき4つのポイントをご紹介します。

目標の在庫回転率を設定する

在庫回転率の向上を目指すのであれば、まず目標の在庫回転率を設定しましょう。具体的な目標がなく、ただ漠然と「在庫回転率を上げる」と掲げるだけでは、従業員のモチベーションもなかなか上がりません。在庫回転率の目標値を定めることで、現状と目指すべきゴールとの差が明確になり、改善策につなげやすくなります。

目標在庫回転率は、前述したように、「期間中の目標売上金額÷目標平均在庫金額」の計算式で算出可能です。ただし、適正とされる在庫回転率は、業種や商品の種類などによって異なります。

例えば、飲食店や生鮮食品を販売する店舗などは、商品を新鮮な状態で売り切らなければならないため、在庫回転率は高くなります。一方で、電化製品や機械など、価格が高く劣化しにくい商品を販売する場合は、在庫回転率が低くなりがちです。そのため、目標値を設定するときには、自社と同じような商品を扱っている同業他社を参考にするのがおすすめです。

リードタイムを短くする

リードタイムを短くすることも、在庫回転率の向上を目指すうえで大切です。リードタイムとは、お客さまが商品を注文してから実際に手元に届くまでにかかる時間のことを指します。リードタイムが短いほど顧客満足度が高まり、「また利用したい」「別の商品も購入してみよう」という購買意欲の向上につながります。リピーターが増え、商品の売上が増加すれば、在庫回転率も向上するはずです。

特に、オンラインショップを始めとした通販事業においては、リードタイムが顧客からの評価を大きく左右します。受注から発送、納品までの流れをチェックし、リードタイムを短縮できる方法がないかを探ってみましょう。

在庫状況の見直し

「在庫回転率が低い」「もっと在庫回転率を上げたい」と感じたら、在庫状況や管理体制を見直すことも大切です。

「在庫回転率が低い商品=売れ行きが悪い商品」とは限りません。中には、在庫管理が不十分なために見落とされた商品が、倉庫などに長く放置されたままになっているケースもあります。取り扱う商品の数や種類が多い場合は、特に注意が必要です。在庫状況を見直した結果、もし長く放置されていた在庫が見つかった場合は、思い切って処分を検討するのも1つの方法です。

販売価格を見直しする

在庫回転率の向上を目指すうえでは、定期的に販売価格の見直しを行うことも大切です。価格を下げると商品ごとの売上は減少するものの、在庫回転率は改善されます。在庫を長く抱えることで発生するコストを考えれば、販売価格を下げても売り切った方がよいかもしれません。

ただし、値下げすることでブランドイメージの低下を招くケースもあるため、メリットとデメリットをよく検討したうえで決めましょう。

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在庫回転率を活用して適正な在庫管理を実現しよう

在庫回転率は、一定期間に在庫がどれくらい入れ替わったかを示す指標です。在庫回転率を計算すると、在庫の動向や商品ごとの売れ行きの良し悪しを可視化することができます。在庫回転率を活用して適正在庫を維持できれば、商品を仕入れすぎて余らせてしまったり、在庫切れで販売機会を逃したりすることも防げるはずです。さらに、在庫回転率を定期的に把握すると、コストを削減でき、顧客ニーズをつかめるというメリットもあります。

小売業や製造業、EC事業などを営む企業にとって、在庫回転率の把握は必要不可欠といえます。在庫回転率の役割や計算方法などをしっかりと理解し、効果的な販売戦略に活かしていきましょう。

在庫回転率を正しく管理するためには、日々の帳簿付けが大切です。帳簿業務を効率的に進めたい方は、ぜひ弥生のクラウド会計ソフト「弥生会計 オンライン」をご利用ください。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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