車にかかる費用は経費にできる?経費にする条件や仕訳例などを解説
監修者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
2024/07/11更新
車にかかる費用は、車両本体の購入代金だけでなく、購入時にかかった税金や保険料、各種手続き費用、維持管理に必要な一部の費用も経費にすることが可能です。ただし、事業で使用した車や車関連の費用を経費計上する際は、いくつか注意点があります。
ここでは、法人や個人事業主が事業目的で車を使用する場合、経費計上できる費用とできない費用を解説したうえで、経費にする条件や仕訳例、経費計上する際に覚えておきたいポイントをご紹介します。
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事業で使用した車や車関連の費用は、経費として計上できる
法人や個人事業主が事業目的で車を使用する場合、車両本体代やその車にかかる費用を経費として計上することが可能です。事業で車を使うシーンとしては、仕事の打ち合わせ場所や取引先の事務所までの移動、事業所間の移動などがあげられます。
また、個人事業主が業務とプライベートの両方で使用している車については、家事按分を行います。家事按分とは、業務とプライベートを兼ねた支出に対して、業務利用分だけを計算して経費として計上することです。事業を営むために必要な支出といえないプライベートの支出に関しては、経費として計上できません。
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車関連の費用で経費にできるのは?
車関連の費用において、経費にできる費用はどのような費用なのでしょうか。
ここでは、事業用の車関連の費用で経費計上できる費用と、そうでない費用について、詳しく説明します。
経費計上できる車関連の費用
経費計上できる車関連の費用は、下記のとおりです。それぞれの経費が該当する勘定科目と併せて確認しておきましょう。
勘定科目 | 主な費用 |
---|---|
租税公課 | 自動車重量税、自動車税環境性能割、自動車取得税、自動車税、軽自動車税 |
車両運搬具 | 車両本体価格、オプション費用、引取運賃、購入時手数料、納車費、運送時の保険料 |
保険料 | 自賠責保険料、任意保険料 |
支払手数料 | 検査登録法定費用、車庫証明法定費用、検査登録代行費用、車庫証明手続き代行費用 |
車両費 | ガゾリン代、洗車費用、車検費、点検費用 |
支払リース料 | リース代金 |
旅費交通費 | 高速道路代、コインパーキングの駐車料金 |
支払利息 | ローン購入の金利 |
地代家賃 | 月極の駐車場費 |
減価償却費 | 車購入代金を減価償却した費用 |
経費計上できない車関連の費用
事業用の車にかかる費用のうち、購入時にかかるリサイクル料は経費計上できないため注意が必要です。リサイクル料はその車が廃車となった際の処理費用で、購入時に支払うものの経費として計上できません。購入時はリサイクル料を預託金(資産)として計上し、廃車時に費用として処理することとなります。
個人事業主が車を経費にする際の条件
個人事業主が事業で使用する車関連の費用も経費として計上できますが、いくつか注意点があります。個人事業主の場合、仕事とプライベートの両方で車を使うことも珍しくないため、誤った経費計上をすることのないよう確認しておきましょう。
車の名義は本人、または同一生計の人になっている
個人事業主が車の購入代金を経費計上する場合は、原則として本人名義か、同一生計の方の名義の車である必要があります。経費計上をする前に、必ず車の名義を確認しましょう。
仕事と私用兼用の車は家事按分が必要
個人事業主が車を事業とプライベートの両方で使用する場合は、家事按分を行い、使用した割合に応じた金額を経費計上する必要があります。家事按分の計算方法は明確に定められているわけではありませんが、合理的な基準で仕事とプライベートを区分し、その根拠を提示できるようにする必要があります。
一般的には、車は事業に使用した日数や、走行距離で家事按分を行います。例えば、車関連の費用が150万円、事業で使用した走行距離が600km、プライベートで使用した走行距離が400kmの場合は、150万円×0.6=90万円を経費として計上することが可能です。このような家事按分を行う場合は、按分の基準の根拠を説明できるように記録を残しておきましょう。
法人が車を購入した場合の仕訳例
法人が車を購入した場合、どのように仕訳を行えばよいのでしょうか。
ここでは、法人が事業用の車を購入した場合の仕訳例をケース別にご紹介します。今回は、下記の車両購入時の条件を例に、仕訳の方法を見ていきましょう。
車両購入時の条件
- 車両本体代:300万円
- 自動車税:2万5,000円
- 自動車重量税:3万6,900円
- 自賠責保険料:2万7,180円
- 検査登録代行料:3万円
- リサイクル料:1万円
現金一括で購入した場合
車を現金一括購入した場合の仕訳は、下記のとおりです。リサイクル料は購入時に経費計上することはできないため、預託金の科目で計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
車両運搬費 | 3,000,000円 | 現金 | 3,129,080円 |
租税公課 | 61,900円 | ||
保険料 | 27,180円 | ||
支払手数料 | 30,000円 | ||
預託金 | 10,000円 |
カーローンで購入した場合
車の購入代金を、元本10万円、利息1万円のカーローンで支払った場合の仕訳は、下記のとおりです。頭金を支払っていない場合、貸方の勘定科目は未払金(決算日から1年を超えて返済する場合は長期未払金)となります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
車両運搬費 | 3,000,000円 | 未払金 | 3,129,080円 |
租税公課 | 61,900円 | ||
保険料 | 27,180円 | ||
支払手数料 | 30,000円 | ||
預託金 | 10,000円 |
また、ローンの返済時に利息を支払った場合の仕訳は、下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 100,000円 | 普通預金 | 110,000円 |
支払利息 | 10,000円 |
カーローンの返済時は、元本と利息の勘定科目を分けて仕訳しましょう。
リースを利用した場合
事業用の車をリースした場合は、リース料を支払ったタイミングで仕訳が発生します。例えば、5万円のリース料を現金で支払った場合の仕訳は、下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
リース料 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
ただし、中小企業以外の上場会社などはリース会計基準が適用されるため、中途解約不可などのリース契約(ファイナンス・リース契約)では固定資産計上が必要になるケースもあります。
車の費用を経費にする際に覚えておきたいポイント
車関連の費用を経費として計上する際は、減価償却の方法をはじめ、いくつか覚えておきたいポイントがあります。
ここでは、4つのポイントに分けて見ていきましょう。
車の購入費用を計上する際は減価償却する
車の購入費用を経費として計上するためには、必ず減価償却をしましょう。通常、事業に使用する備品を購入すると、その全額をその年の経費として計上します。しかし、車のように取得価額が高く、使用年数が増えるにつれて価値が下がっていく資産については、固定資産として処理したうえで、耐用年数に分けて経費計上します。これが減価償却です。
減価償却の対象となる資産の取得価額には、購入に直接かかった費用の額が該当します。そのため、車両本体代だけでなく、オプション料や納車費用なども取得価額に含まれます。
また、減価償却費の計算に用いられる耐用年数とは、資産の使用可能年数のことで、法律で定められています。国税庁「主な減価償却資産」によると、一般的な軽自動車は4年、普通自動車は6年となっています。
新車より中古車のほうが税金を抑えられる
新車と中古車を比較すると、中古車のほうがより高い節税効果を見込めるため、事業用として車を購入する場合は中古車を選ぶのがおすすめです。
中古車は新車よりも耐用年数が短く、その分、減価償却を行う期間も短くなります。中古車は、購入した時点で既に耐用年数の一部が経過していると見なされるため、新車よりも短い耐用年数で計算することとなります。
中古車の耐用年数を求める計算式は、下記のとおりです。
中古車の耐用年数を求める計算式
中古車の耐用年数=法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%
端数は切り捨てとなり、計算結果が2年に満たない場合の耐用年数は2年となります。例えば、法定耐用年数が6年で3年経過している中古車の場合は、6年-3年+3年×20%=3.6年となります。したがって、耐用年数は3年です。
また、既に法定耐用年数をすべて経過している中古車については、法定耐用年数×20%で計算し、耐用年数を決めます。耐用年数が短いほど減価償却で経費計上できる1年当たりの金額が大きくなるため、新車よりも高い節税効果が見込めます。
カーローンは利息のみ経費計上できる
カーローンは、利息のみ経費計上できることを覚えておきましょう。カーローンの返済額のうち、元本部分は金融機関へ返済するお金のため経費計上することができません。経費として計上できるのは、利息部分のみとなります。
カーリースは全額経費にできる
カーリースを利用した場合は、リース料を全額経費として計上することができます。(ファイナンス・リースに該当する場合を除く)経費計上の際は、全額、支払リース料の勘定科目で処理しましょう。
カーリースは、リース会社と契約を結び、月々定額のリース料を支払うしくみです。リース料の中には、車両本体価格をはじめ、新車登録にかかる諸費用や自賠責保険料、自動車税、自動車重量税などが含まれています。これらの費用をリース料としてまとめて処理することが可能です。
また、カーリースの契約者は車の使用権を借りることとなり、車の所有権はリース会社にあります。そのため、法人の固定資産として計上する必要もありません。したがって、リース車の場合は減価償却も不要となります。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。