支払い条件とは?記載項目や設定する際のポイントなどを解説
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事業者間で取引する際には、契約書や見積書、発注書といった書類をやりとりします。こうした書類に記載する項目として見落としてはならないのが「支払い条件」です。支払い条件は、取引の円滑化と資金繰りに影響を与える重要な要素となります。
本記事では、支払い条件の記載項目や設定する際のポイントを詳しく解説します。支払い条件を適切に設定し、トラブルのない取引を実現しましょう。
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支払い条件とは、代金の支払方法や期限などを定めた契約条件
支払い条件とは、商品やサービスに対する代金の支払方法や支払期限といった、支払に関するさまざまな条件をあらかじめ定めたものです。ビジネスにおいて、事業者同士が適切に契約を締結するには、支払い条件を明確に提示し、契約事業者間で交渉・合意のうえで決定する必要があります。一般的には、受注者側が見積書に支払い条件を記載するケースが多く見られます。発注者側は、提示された金額や支払い条件を承諾し、発注するのが基本的な流れです。
支払い条件を記載する主な書類として、見積書や発注書・注文書、契約書、納品書、検収書、請求書などがあります。商品やサービスを取引する際、これらの書類に「金額」「期限」「方法」を明記し、後のトラブルを防ぐことが大切です。また、支払い条件は企業の資金繰りに大きな影響を与える要因にもなりえます。基本的には「支払は遅く、回収は早く」設定することにより、資金繰りに余裕が生まれやすくなるでしょう。
支払い条件の記載項目
支払い条件に関する記載項目には、大きく分けて「支払方法」と「支払期限」の2つがあります。それぞれ記載すべき項目と記載方法を確認しておきましょう。
支払方法
事業者間取引における支払方法には、「現金払い」「金融機関等の口座振込」「手形または小切手」「電子記録債権」の4種類があります。支払方法ごとに、記載すべき項目が異なるため注意しましょう。
現金払い
現金払いの場合、代金を支払いに来るのか(持参債務)、代金を取りに行くのか(取立債務)に加えて、受け渡し場所を明記する必要があります。
金融機関等の口座振込
金融機関等の口座振込の場合は、振込先の金融機関名・口座の種別・口座番号・口座名義(カタカナ表記)を記載します。中でも見落とされやすい口座の種別(普通・当座)は、正しく記載されていないと、正常に振込みが行われず組戻しが必要となることがあります。そのため、必ず正確に記載することが大切です。
手形または小切手
手形や小切手を利用する場合は、手形サイト(支払期日)を明記する必要があります。手形サイトは一般的に1か月程度ですが、取引金額によっては2か月程度に設定することもあります。
なお、これまで企業同士の取引では紙の手形や小切手がよく使われてきましたが、発行や管理に手間がかかるうえに、郵送料や印紙税といったコストも発生していたこと、また、紛失・盗難、不正利用といったセキュリティ面でのリスクも課題となっていました。そのため、政府は2026年度末までに紙の手形や小切手の廃止および全面的な電子化の方針を示しました。
紙の手形や小切手の廃止についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
電子記録債権
電子記録債権とは、電子的記録によって債権を発行・管理する決済手段のことです。2008年に施行された電子記録債権法により、手形や小切手に代わる新たな決済手段としての活用が広がっています。紙の手形や小切手と比べて、紛失、偽造、二重譲渡といったリスクが低減されることから、取引の利便性・信頼性の向上につながる決済手段といえるでしょう。電子記録債権の場合、支払方法は口座間送金決算が原則となります。支払期日が到来すると、債務者の口座から債権者の口座へ自動で送金される仕組みです。
なお、前述のとおり、紙の手形や小切手は、2026年度末で廃止予定のため、電子記録債権への移行の検討をおすすめします。
支払期限
支払期限には以下の4種類があります。
支払期限の種類
- 日付指定
- 月末締め翌月◯日払(または翌々月◯日払)
- 納品後◯日以内
- 契約時前払・納品後残金支払
取引や納品の日程が確定している場合は、「支払期限:◯月◯日」と記載します。なお、継続的に取引をしている場合は取引の都度支払ではなく、締め日を設けて後払するケースが少なくありません。このようなケースでは、締め日と支払期限を明確に定め、当事者間で共通認識を持つことが大切です。
継続的な取引ではない場合は、「納品後◯日以内」と定めて取引の都度支払うこともあります。また、金額が大きな取引においては、「契約時に代金の一部前払、納品後(完成後)に残金支払」とすることもあります。
支払い条件を記載する主な書類と記載項目
支払い条件はしかるべき書類に明記することが大切です。支払い条件を記載する主な書類と記載項目について見ていきましょう。
見積書:支払い条件等を発注先へ提示する書類
見積書とは、商取引が行われる際に商品名や数量、単価、合計金額、支払い条件等を明らかにし、発注先へ提示するための書類のことです。
取引開始後に受注者側・発注者側の双方で認識の相違が生じれば、重大なトラブルへと発展しかねません。こうした事態を回避するためにも、事前に取引内容について合意することが大切です。見積書に記載する支払い条件として、以下の項目があげられます。
見積書に記載する主な支払い条件
- 支払方法(現金、振込、手形、電子記録債権など)
- 振込先の口座情報(振込の場合)
- 振込手数料の負担者(発注者・受注者のどちらが負担するか)
- 支払期限
振込手数料に関しては、「発注者(代金を支払う側)が手数料を別途負担するのか」、「受注者(代金を受け取る側)が手数料を負担する形で、差し引かれた金額が振り込まれるのか」といった負担の方法を、あらかじめ明確にしておく必要があります。支払う段階で「発注者側が負担するものと思っていた」「見積書に記載の金額に振込手数料が含まれていると捉えていた」といった行き違いが発生しないように、あいまいな点を残さないことが大切です。なお、詳細は後述しますが、法律上は代金を支払う側が振込手数料を負担することが原則となります。
発注書・注文書:商品やサービスの提供を依頼する際に発行される書類
発注書・注文書とは、商品やサービスの提供を依頼する際に発行される書類のことです。
発注書・注文書が発行された時点で、見積書に記載された支払い条件に合意したと見なされます。そのため、支払い条件の記載に関しての重要度は見積書よりも低く位置付けられます。発注書・注文書には「支払期限(双方で合意した期限)」のみ記載するのが一般的です。
発注書・注文書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
契約書:法的効力のある書類
契約書は、これから行われる一連の取引内容や条件等のすべてが織り込まれた、法的効力のある書類です。
契約そのものは口頭でも有効に成立することから、書面の発行は本来必須ではありません。しかし、契約内容について後々認識の相違が表面化したり、行き違いが発生したりするのを防ぐためにも、契約書を交わしておくのが望ましいといえます。
支払い条件に関しても、契約書にはすべての情報を記載するのがおすすめです。具体的には、「支払方法(現金、振込、手形、電子記録債権など)」「振込先の口座番号(振込の場合)」「振込手数料の負担者」「支払期限」をそれぞれ明記しましょう。
納品書:商品やサービスを納品したことを証明する書類
納品書は、商品やサービスを納品したことを証明するための書類です。
商品の引き渡しやサービスの提供が完了した際に納品書を渡すケースが多く見られますが、納品書の発行は法律で義務付けられているわけではありません。支払い条件に関しても、記載の有無や記載する項目は各社が任意で決められます。
一般的には、見積書や契約書において支払い条件の詳細を伝えていることから、納品書には確認の意味で支払期限(双方で定めた期限)のみ記載します。納品時に代金が支払われる場合や、全額前払にしている場合を除き、代金は後日振り込まれることになるためです。
納品書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
検収書:納品が適切だったと認めたことを示す書類
検収書は、納品された商品やサービスが適切だったと発注者側が認めたことを示す書類です。
検収書を発行して受領されれば納品が完了したことになるため、発注者側はその後修正を依頼したり、サービスのやり直しを求めたりはできません。
納品書と同様、見積書や契約書で事前に支払い条件を伝えているため、検収書には支払い条件について詳細に記載する必要はありません。検収後に代金が支払われる場合は、確認の意味で支払期限(双方で定めた期限)を記載するとよいでしょう。
なお、検収の時期は発注者側が決定しますが、発注者と受注者の資本金によって下請法が適用される場合には、受領日(納品日)から支払までの期間は下請法(下請代金支払遅延等防止法)で60日以内と定められています。検収書を発行していなかったとしても、納品から60日以内に代金を支払わなくてはなりません。支払期限を決める際には、納品日から支払期限までの期間が60日以内に収まっていることを確認する必要があります。
検収書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
請求書:代金を請求するための書類
請求書は、提供した商品やサービスの代金を請求するための書類です。
納品の都度発行する場合と、締め日ごとに発行する場合があります。ただし、検収完了時に代金を支払う契約になっている場合は、請求書を発行する必要はありません。
請求書には、「請求内容」「請求金額」「支払方法(現金、振込、手形、電子記録債権など)」「振込先の口座番号(振込の場合)」「振込手数料の負担者」「支払期限」を記載します。これらの記載事項は法律で定められていませんが、多くの請求書のテンプレートなどでは記載項目として設けられています。したがって、自社独自の請求書を作成する場合もこれらの項目を記載することがおすすめです。
支払い条件を設定する際のポイント
支払い条件を設定する際には、注意すべきポイントがあります。各書類に支払い条件を記載する際には、以下の事項に漏れがないか必ず確認することが大切です。
振込手数料の扱いについて記載する
支払い条件を設定する際には、振込手数料の扱いについて記載することがポイントです。
支払方法が口座振込の場合、振込手数料が発生するケースが多いと考えられます。そのため、発注者側と受注者側のどちらが振込手数料を負担するのか、支払い条件を設定する際に明確にしておきましょう。
民法第484条、民法第485条
により、持参債務の原則や弁済の費用負担が定められています。これは、弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とするというものです。つまり、発注者側が振込手数料を負担するのが一般的です。ただし、双方が合意している場合や業種によっては、振込手数料を支払代金から差し引き、残金を振り込む場合もあります。
このように、振込手数料の扱いは各企業で認識が異なるケースも少なくありません。既存の取引先や同業種での取引では発注者側負担で問題なかったとしても、新規の取引先に関しては必ず取引開始時に合意を形成することが大切です。契約書や見積書などに支払い条件を記載する際には、振込手数料の扱いに関する記述が漏れていないか必ず確認してください。
振込手数料についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
長期契約の場合の条件を詳しく記載する
長期契約の場合の条件を詳しく記載することも、支払い条件を設定する際のポイントの1つです。
契約が長期間にわたる場合には、毎月の支払が必要になることも想定されます。締め日や支払日を具体的に記載し、発注者と受注者の間で認識の相違が生じないようにすることが大切です。初回から最終回までの支払一覧表を作成し、各回の支払額と総支払額を明記することをおすすめします。
また、提供するサービスなどの内容によっては、追加費用が発生することも想定されます。そのため、長期契約の範囲に含まれているのがどの業務であるのか、明確に記載することが大切です。そのうえで、発注者側と受注者側で認識のずれが生じることのないよう、請求ごとにどの業務内容にかかる代金なのかを明記するとよいでしょう。
分割払いの場合は具体的な支払タイミングを明記する
支払い条件を設定する際、分割払いの場合は、具体的な支払タイミングを明記することもポイントになります。
請求金額が高額になる場合、総額を分割して支払うことも考えられるため、支払時期や金額をそれぞれ明確に記載することが大切です。分割の割合に関してもわかりやすく記載し、指定した時期に支払が確実に行われるようにしましょう。
また、前金が発生する場合には、先渡し分と残金の支払日・支払方法を見積書にそれぞれ分けて記載します。分割での支払となる範囲があいまいにならないよう、内訳を明示することが大切です。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
