ポイントの正しい会計処理方法は?勘定科目などについて解説
監修者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
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買い物をする際にクレジットカードを使ったりポイントカードを提示したりすると、利用金額に応じてポイントが付与されます。たまったポイントは、現金の代わりに買い物に利用できたり、さまざまな商品と交換できたりします。
では、事業用のクレジットカードなどを使用してポイントが付与されたときやそのポイントを使ったときには、どのように会計処理を行えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
事業用のクレジットカードなどでたまったポイントは、使い方によって会計処理の方法が異なるため注意が必要です。本記事では、事業用のクレジットカードなどを使用してたまったポイントの会計処理を行うタイミングや、ポイントの使い道に応じた会計処理の方法、ポイントを使用する際の注意点などについて解説します。
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ポイントの会計処理はポイントを使ったときに行う
事業用のクレジットカードなどでたまったポイントの会計処理を行うタイミングは、ポイントが付与されたときではなく、ポイントを使ったときです。
例えば、買い物の際にクレジットカードで支払いをすると、利用金額に応じてポイントが付与されます。しかし、ポイントを獲得しても、必ずしもそのポイントを使用するとは限りません。
また、多くのポイントには有効期限が設定されており、使用しないままポイントが失効してしまうこともあります。そのため、事業用のクレジットカードなどで事務用品などを購入し、ポイントが付与されても、その時点でポイントの仕訳を行う必要はありません。
ポイントの使い方と会計処理の方法
事業用のクレジットカードなどでたまったポイントを使ったときには、会計処理が必要です。会計処理の方法は、ポイントの使い方によって異なります。
ここからは、ポイントを使用する際の会計処理について、ケースに応じた仕訳例とともに解説していきます。
ポイントで事務用品を購入する
ポイントの使い方として多いのが、事務用品の購入です。ポイントを事務用品購入時の代金に充当した場合は、「値引処理」または「両建処理」のいずれかの方法で会計処理を行います。
値引処理とは、事務用品の購入にあたってポイント相当分の値引きを受けたものと見なし、ポイント使用後の支払い金額を経費計上する方法です。両建処理は、ポイント相当分を収入と見なし、ポイント使用前の金額を経費計上すると共に、ポイント相当分を「雑収入」として計上する方法となります。
1万円の事務用品を購入する際、3,000円分のポイントを使い、残りの7,000円を事業用のクレジットカードで支払った場合の値引処理と両建処理、それぞれの仕訳例について見ていきましょう。
値引処理の仕訳例:
1万円分の事務用品を3,000円分のポイントを使って事業用のクレジットカードで支払い、値引処理を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 7,000円 | 未払金 | 7,000円 |
値引処理の場合は、ポイントを充当した後の金額のみを仕訳し、ポイント相当分の金額は記載しません。なお、クレジットカードでの支払いについては、利用金額が口座から引き落とされるのは後日になるため、「未払金」の勘定科目を用います。
両建処理の仕訳例:
1万円分の事務用品を3,000円分のポイントを使って事業用のクレジットカードで支払い、両建処理を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 10,000円 | 雑収入 | 3,000円 |
未払金 | 7,000円 |
両建処理の場合は、ポイント相当分の収入を得たものとして雑収入で計上します。なお、消耗品費として計上するのは、ポイントを使用する前の事務用品の金額です。
ポイントを金券と交換する
ポイントを商品ではなく、商品券やギフトカードといった金券と交換する場合は、会計処理の方法が異なるため注意が必要です。自社で使うことを目的とした金券は、現金や預金と同様に資産として扱い、「前払金」または「貯蔵品」の勘定科目を用いて仕訳を行います。また、ポイント相当分については雑収入として計上します。
ポイントを使用して1万円分の金券と交換した場合の、前払金と貯蔵品、それぞれの仕訳例について見ていきましょう。
前払金の仕訳例:
ポイントと1万円分の金券を交換し、前払金として仕訳を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前払金 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 |
貯蔵品の仕訳例:
ポイントと1万円分の金券を交換し、貯蔵品として仕訳を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貯蔵品 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 |
ポイントのキャッシュバックを受ける
ポイントのキャッシュバックを受けるときは、その金額を雑収入として計上します。
なお、クレジットカードのポイントについてキャッシュバックを受ける方法は2種類あります。ポイント相当分を現金で受け取る場合と、利用代金の引き落としのタイミングでキャッシュバックが適用される場合です。どちらの方法でポイントのキャッシュバックを受けるかによって、会計処理の方法が異なるため注意しましょう。
事業用のクレジットカードでキャシュバックを受ける場合の仕訳例は以下のとおりです。
現金で受け取る場合の仕訳例:
事業用のクレジットカードのポイント1万円分がキャッシュバックされ、口座に振り込まれた場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 |
ポイント相当分を現金で受け取った場合は、キャッシュバックされた金額を、そのまま雑収入として計上します。
口座引き落とし時の場合の仕訳例:
事業用のクレジットカードの利用代金10万円が口座から引き落とされる際、1万円分はポイントのキャッシュバックを受けた場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 100,000円 | 普通預金 | 90,000円 |
雑収入 | 10,000円 |
事業用のクレジットカードの利用代金の引き落としのタイミングでキャッシュバックが適用される場合は、キャッシュバックを受けたポイント相当分について、値引きを受けたものとして会計処理を行います。
ただし、引き落としのタイミングでのキャッシュバックは、支払い時での値引きではありません。後日、利用代金からキャッシュバック分が差し引かれて引き落とされる形になります。そのため、値引処理ではなく、両建処理で仕訳を行います。
ポイントを航空券と交換する
事業用のクレジットカードの中には、ポイントではなくマイルがたまるものやポイントをマイルに交換できるものもあります。会計処理上は、マイルもポイントと同様に扱うため、ポイントをマイルに交換するときには、仕訳を行う必要はありません。
その一方で、マイルを使って航空券を取得した場合には、会計処理が必要です。この場合は、ポイントで商品を購入したときと同様に、値引処理または両建処理のいずれかの方法で処理を行います。
出張に利用する航空券3万円のうち、2万円分のマイルを使用し、残りの1万円分を事業用のクレジットカードで支払った場合の値引処理と両建処理、それぞれの仕訳例を見ていきましょう。
値引処理の仕訳例:
3万円の航空券を2万円分のマイルを使って事業用のクレジットカードで支払い、値引処理を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
旅費交通費 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
両建処理の仕訳例:
3万円の航空券を2万円分のマイルを使って事業用のクレジットカードで支払い、両建処理を行う場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
旅費交通費 | 30,000円 | 雑収入 | 20,000円 |
未払金 | 10,000円 |
事業用のクレジットカードのポイント使用における注意点
これまで解説してきたように、事業用のクレジットカードなどのポイントを使用する場合は、ポイントの使い方によって会計処理の方法が異なります。また、たまったポイントを使うときには、他にもいくつかの注意点があります。
ポイントの使用にあたって社内で不要なトラブルを招かないためにも、以下の点をしっかり確認しておきましょう。
法人のクレジットカードのポイントを個人で使用しない
法人のクレジットカードでたまったポイントを、個人で使用することはできません。法人のクレジットカードは、年会費などの維持費を法人が支払っています。そのため、法人のクレジットカードの利用によって付与されたポイントは法人の資産と見なされ、たまったポイントの所有者は企業となり、私的な利用は認められません。
例えば、法人のクレジットカードでたまったポイントを使って商品を購入する場合は、事業に関連するものに限られます。個人がポイントを使って私的な買い物をしたり、プライベートの旅行に利用する航空券に交換したりしないようにしましょう。
もし、法人が所有する事業用のクレジットカードのポイントを私的に使用した場合、懲戒処分や業務上横領罪の対象となる可能性があるため注意が必要です。
税務的には法人のクレジットカードでたまったポイントで個人的な買い物をすることは禁止されているわけではありませんが、法人の所有物であるポイントを個人が使用したという場合は法人から個人への贈与として一時所得に該当する可能性があります。この場合も一時所得は年間50万円まで非課税なので一時所得に該当したとしても、個人に課税されるケースは非常に限られます。
ポイントの使用に関するルールを設ける
事業用のクレジットカードなどのポイントを使用する場合は、たまったポイントの使用と仕訳についてルール化をしておくことが大切です。1回当たりの事業用のクレジットカードの利用で付与されるポイントは小さくても、積み重なれば大きな資産になります。
特に、事業用のクレジットカードは、支払い金額が大きかったり利用頻度が多かったりすることもあるため、多額のポイントがたまるケースも考えられます。ポイントの具体的な使用範囲や使用するときの申請方法などについて、あらかじめ社内ルールとして定めておきましょう。
なお、事業用のクレジットカードの中には、従業員用に追加カードを発行できるものもあり、そのような場合、個々の従業員が出張や接待、社用車の給油などで事業用のクレジットカードのポイントを使用することも考えられます。そのため、事業用のクレジットカードのポイントに関するルールを明確にし、社内に周知しておくことで、トラブルや私的利用を防ぐことにつながります。
ポイント額が大きく不安があれば税理士に相談する
事業用のクレジットカードなどのポイントは、使い方によって会計処理の方法が異なります。ポイントをどのように使うかで勘定科目が変わってくるため、会計処理に不安を感じることもあるかもしれません。
なお、ポイントを使用するときの仕訳については、税法上の明確な規定がありません。そのため、ポイントに関する会計処理で不安や疑問がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。特に、ポイントの使用額が大きい場合や、ポイントの仕訳に慣れていない場合などは、税理士からアドバイスを受けるといいでしょう。
事業用クレジットカードのポイントと電子マネーとの会計処理の違い
事業用のクレジットカードなどのポイントと混同されやすいのが、交通系ICカードなどの電子マネーです。企業によっては、事業用の電子マネーカードを用意し、経費の支払いなどに使用している場合もあるでしょう。
電子マネーへのチャージは現金・預金やクレジットカード決済で行われ、現金と同じようなものとして「資金決済法」での規制・保護を受けています。そのため、電子マネーを使用したときには、現金と同様の会計処理を行うことが必要です。
また、電子マネーの中には、使用時にポイントが付与され、そのポイントを電子マネーに交換できるものがあります。この場合は、前述したポイントのキャッシュバックを受けた場合と同じ扱いになり、ポイントを電子マネーに交換した時点で雑収入として計上する必要があります。
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ポイントは適切な方法で会計処理をしよう
経費の支払いなどに、事業用のクレジットカードを使用するケースはよくあります。事業用のクレジットカードの使用にあたって付与されたポイントには、商品の購入や交換、キャッシュバックなど、さまざまな使い道があります。
なお、ポイントは付与された時点では仕訳は不要ですが、ポイントを使用したときには適切な会計処理が必要です。ポイントの会計処理の方法は、ポイントの使い方によって異なり、間違いのないように十分注意することが大切です。そのため、ポイントに関する会計処理で不安や疑問がある場合やポイントの使用額が大きい場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。