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商品有高帳とは?記入方法や移動平均法、先入先出法などを解説

在庫管理を適切に行うには、商品の数量や単価、金額を把握する必要があります。商品の販売数や在庫の残量を記録するための帳簿が「商品有高帳(しょうひんありだかちょう)」です。
本記事では、商品有高帳を作成する目的や記入方法である移動平均法・先入先出法についてわかりやすく解説します。商品有高帳を記入する際の注意点と併せて見ていきましょう。

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商品有高帳は在庫管理のために数量・単価・金額を記録する帳簿

商品有高帳とは、商品の仕入や売上の都度、数量・単価・金額を記録し、在庫管理を行うための帳簿のことです。商品有高帳を正確に記入すると、商品の動きや在庫残高を帳簿上で明確に把握できます。
商品有高帳の記入方法には、棚卸の方法によって何種類かありますが、主に使用される方法として「移動平均法」と「先入先出法」の2種類があります。また、商品を払い出す際に記載する金額には原価を用いる他、返品に関しても忘れずに記入しなければなりません。材料や原料は「材料元帳」に記入し、商品有高帳とは分けて管理します。なお、移動平均法と先入先出法では、それぞれ単価の計算方法や記入の仕方が異なるため、自社の状況を考慮して適切な方法を用いることが大切です。

商品有高帳を作成する目的

商品有高帳を作成する目的には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主に3つの目的について説明します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

在庫状況を正確に把握するため

商品有高帳を作成する目的は、在庫状況を正確に把握するためです。
通常、商品は仕入の直後に販売されるとは限らず、一定期間は自社で保管されます。この保管状態の商品を在庫といいますが、在庫状況を正確に把握できていないと、欠品や過剰在庫が発生しかねません。こうした欠品や過剰在庫の発生を防ぐには、商品有高帳を作成し、商品の仕入や販売ごとに記録することが必要です。これにより、在庫状況を把握しやすくなり、適切な在庫管理が可能になるでしょう。

正しく損益計算を行うため

正しく損益計算を行うことも、商品有高帳を作成する目的の1つです。
経費となる仕入の個数・金額や、販売した商品の個数・金額を商品有高帳に都度記入していくことによって、売上原価や売上総利益(粗利)などを正確に求められます。売上総利益の計算式は以下のとおりです。

売上総利益の計算式

売上総利益(粗利)=売上高-売上原価

このうち売上原価に影響するのが仕入値です。売上原価を正確に把握できていなければ、売上総利益を正しく算出できないことになります。損益計算を正確に行うためにも、商品有高帳を活用して在庫数量と金額を適切に管理していくことが大切です。

実地棚卸高との差異を確認するため

実地棚卸高との差異を確認することも、商品有高帳を作成する目的としてあげられます。
実際に数えた在庫の数である実地棚卸高と商品有高帳の帳簿残高に差異がないか、定期的に確認することが重要です。実務においては、商品の紛失や盗難、記帳間違いといったさまざまな原因により、実地棚卸高と商品有高帳の帳簿残高がずれる場合があり、これらは簿記上の「取引」として認識することができません。商品有高帳が正確に記入されていれば、帳簿残高と照合して実地棚卸高を調査することで商品数の増減を把握できるでしょう。
決算時にまとめて棚卸を実施した場合、実地棚卸高と帳簿上の差異が大きく開いてしまうことがあります。商品有高帳に都度記録することで、在庫増減の要因を把握しやすくなり、適切な在庫管理につながります。

商品有高帳の記入方法の種類

前述のとおり、商品有高帳の記入方法には主に「移動平均法」と「先入先出法」の2種類があります。それぞれの考え方と具体的な記入方法は以下のとおりです。

移動平均法:仕入を行うたびに平均単価を算出する手法

移動平均法とは、商品や原材料の仕入を行うたびに、その平均単価を算出する手法のことです。仕入ごとに棚卸資産の評価を行うことにより、決算時だけでなく、常に現状を把握できます。棚卸資産の平均単価を算出する際の計算式は以下のとおりです。

移動平均法の計算式

平均単価=
(前回の在庫金額+新規仕入額)÷(前回の在庫数量+新規仕入数量)
※1円未満の端数が出た場合は一般的に四捨五入

移動平均法では仕入ごとに平均単価を計算するため、価格変動の影響を抑え、棚卸資産の評価を安定させやすくなります。

こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。

先入先出法:先に仕入れた商品から販売していくと仮定して単価を算出する手法

先入先出法とは、先に仕入れた商品から販売していくと仮定して単価を算出する手法のことです。最も以前に入れたときの仕入額を在庫の仕入額として用いるため、特に食料品などを扱う業種において一般的に使用されています。先入先出法では、商品を仕入れた時点での単価ごとに分けて計算するのがポイントです。

商品有高帳の記入方法

商品有高帳の作成は義務ではないものの、商品や原材料の動きや在庫がどの程度残っているのかを帳簿上で確認する際に役立ちます。商品有高帳への記入は、原材料の仕入や商品の売上が発生するごとに行うのが基本です。仕入・売上の発生のいずれに関しても、数量・単価・金額を記録します。

主な記載項目は「商品を仕入れた日付・金額・在庫数」「商品を販売(払出)した日付・金額・在庫数」「前月より繰り越した商品の金額・在庫数」「次月に繰り越す商品の金額・在庫数」「返品した商品の数量・金額」「返品を受けた商品の数量・金額」などがあげられます。商品有高帳の移動平均法・先入先出法における記入例をそれぞれ見ていきましょう。

移動平均法での記入例

商品有高帳に記入するタイミングは、主に「前月繰越をするとき」「商品を仕入れたとき」「商品を販売したとき」「返品があったとき」「次月繰越をするとき」です。それぞれ具体的な記入例を紹介します。

前月繰越をするとき

前月繰越には、前月の次月繰越を転記します。

単価800円の商品を50個前月繰越するときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円

商品を仕入れたとき

商品を仕入れた際に数量・単価・金額を記入します。移動平均法を用いる場合、前月繰越も含めて平均単価を算出するのが基本です。

単価900円の商品を100個仕入れたときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 150 867 130,050円

平均単価の計算方法は、「(40,000円+90,000円)÷(50個+100個)≒867円(1円未満は四捨五入)」です。

商品を販売したとき

商品を販売した際には、直近の仕入時に算出した単価を用います。

商品を80個販売したときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 150 867 130,050円
15日 売上 80 867 69,360円 70 867 60,690円

返品があったとき

返品があったときには、売上計上時に使用した移動平均単価を適用します。

商品を100個仕入れたうち、20個を返品したときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 150 867 130,050円
12日 仕入戻し -20 900 -18,000円 130 867 112,710円

商品を80個販売したうち、10個が返品されたときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 150 867 130,050円
15日 売上 80 867 69,360円 70 867 60,690円
17日 売上戻し -10 867 -8,670円 80 867 69,360円

次月繰越をするとき

次月繰越を行う際にも、平均単価を用いて計算します。

70個の商品を次月繰越するときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 150 867 130,050円
15日 売上 80 867 69,360円 70 867 60,690円
31日 次月繰越 70 867 60,690円
合計 150 130,000円 150 130,050円

先入先出法での記入例

先入先出法を用いる場合も、商品有高帳を記入するタイミング自体は移動平均法と同様です。ただし、単価については仕入れた時点の金額が適用される点が異なります。

前月繰越をするとき

前月繰越には、前月の次月繰越を転記します。

単価800円の商品を50個前月繰越するときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円

商品を仕入れたとき

商品を仕入れた際には、仕入れた時点での単価を使用します。単価が異なる商品が混在する場合は、単価ごとに分けて記入しましょう。

単価900円の商品を100個仕入れたときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 50 800 40,000円
100 900 90,000円

商品を販売したとき

商品を販売した際には、仕入れた順に販売していると仮定して単価を決定します。

商品を80個販売したときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 50 800 40,000円
100 900 90,000円
15日 売上 50 800 40,000円
15日 売上 30 900 27,000円 70 900 63,000円

返品があったとき

返品があった際には、仕入・売上それぞれに適用した単価を用いて記入します。

仕入れた商品100個のうち10個を返品したときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 50 800 40,000円
100 900 90,000円
12日 仕入戻し -10 900 -9,000円 90 900 81,000円

販売した商品80個のうち10個が返品されたときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 50 800 40,000円
100 900 90,000円
15日 売上 50 800 40,000円
15日 売上 30 900 27,000円 70 900 63,000円
17日 売上戻り -10 800 -8,000円 10 800 8,000円
27,000円 70 900 63,000円

次月繰越をするとき

次月繰越をする際には、単価ごとに計算した金額の合計を記入します。

70個の商品を次月繰越するときの記入例

日付 摘要 受入 払出 残高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3月 1日 前月繰越 50 800 40,000円 50 800 40,000円
10日 仕入 100 900 90,000円 50 800 40,000円
100 900 90,000円
15日 売上 50 800 40,000円
15日 売上 30 900 27,000円 70 900 63,000円
31日 次月繰越 70 900 63,000円
合計 150 130,000円 150 130,000円

商品有高帳における注意点

商品有高帳の記入においては、いくつかの注意点があります。間違えやすいポイントでもあるため、以下の3つの注意点を必ず確認したうえで記入しましょう。

商品を販売したときは原価を記入する

商品を販売したときに記入する金額には、売価ではなくそれぞれの計算方法で計算した原価を用います。
例えば、900円で仕入れた商品を1,200円で販売した場合には、商品有高帳に記入する販売時の単価は900円です。前述の記入方法で紹介したとおり、移動平均法と先入先出法では残高の金額にずれが生じる可能性があります。移動平均法では前月繰越を含めて平均単価を算出しているためです。

材料や原料は商品有高帳ではなく材料元帳に記入する

商品有高帳はあくまでも商品残高を記載するための帳簿であることから、材料や原料に関する金額は記入しません。材料や原料の増減を管理したい場合には、材料元帳を別途作成して記入し、商品有高帳とは分けて管理していく必要があります。

返品も記入する

返品が発生すると在庫数量が変化するため、商品有高帳への返品の記入が漏れていると正確な在庫状況を把握できません。返品が発生した際は、正確に記入することが重要です。なお、自社から返品する際には受入欄、返品を受けた場合には払出欄に記入します。記入後の数量と在庫の実数が合っていることを毎回確認し、在庫数のずれを防ぎましょう。

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商品有高帳には作成義務はありませんが、在庫管理を適切に行ううえで重要な帳簿といえます。商品の仕入や売上が発生するごとに数量・単価・金額を記録し、実地棚卸高との合致を確認することで、決算時に帳簿上の在庫数と実際の在庫数が大きくずれるのを回避できます。
商品有高帳には移動平均法と先入先出法という2種類の記入方法が存在します。どちらの記入方法が適しているかは業界や業態によって異なるため、自社の取引実態に合ったほうを選ぶことが大切です。商品有高帳に記入すべき項目と記入方法への理解を深めて、適切な在庫管理を実現しましょう。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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