重加算税とは?適用されるケースや計算方法、行うべき対応などを解説
監修者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
2024/05/29更新
法人や個人事業主は、事業経営をするにあたり、さまざまな税金を納めます。税金を納めるうえでは申告時期と申告内容を守る必要があるため、期限内に納付していなかったり、過少申告をしていたりすると、ペナルティが課される場合があります。特に、意図的に納税額を少なく申告して隠蔽や仮装を図った場合は重加算税が課されてしまうため、税金は日頃から正しく管理し、納めなければなりません。
ここでは、ペナルティの中でも最も加算の割合が高い税金である重加算税について、適用されるケースや計算方法、行うべき対応などを解説します。
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重加算税とは、課税内容を隠蔽・仮装した場合に課される附帯税のこと
重加算税とは、過少申告加算税や無申告加算税などが課税されるにあたり、課税内容を隠蔽・仮装した場合に、その過少申告加算税などに代えて課税される附帯税のことです。
また、課税期限内に確定申告をしていても、帳簿の改ざんなど虚偽の申告をしていた場合は、重加算税が加算される可能性があります。重加算税は、法人はもちろんのこと、個人事業主も配慮すべき税金の1つです。
重加算税が適用されるケース
国税通則法第68条1項によると、納税者が事実の全部また一部を隠蔽または仮装した場合に、重加算税が課税されます。
具体的には、下記のいずれかの対象であるうえ、隠蔽または仮装の行為が確認できた場合に、その税金に代えて課されるものが重加算税です。
過少申告加算税
過少申告加算税は、申告期限内に提出した納税額が過少である場合に課される加算税です。新たに収める税金に10%を乗じた金額が、過少申告加算税として課されます。ただし、期限内申告税額と50万円のいずれかの多い額を超える部分については、その金額の15%を乗じた金額が課されます。
無申告加算税
無申告加算税とは、期限内に確定申告をしなかった場合に課される加算税です。新たに収める税金に15%を乗じた金額が、無申告加算税として課されます。ただし、それが50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%を乗じて計算した金額となります。
不納付加算税
不納付加算税は、源泉所得税の納付期限を過ぎてしまった場合に課される加算税です。納付すべき額に10%を乗じた金額が、不納付加算税として課されます。
また、隠蔽・仮装の判断基準は、それらに認められる行為があったかどうかです。具体的には、下記のようなケースが重加算税の対象となります。
重加算税の対象となる主なケース
- 売上を意図的に計上していない
- 経費を水増し計上した
- 架空の給与支払いや、実在しない事業者との取引を計上した
- 棚卸を実際よりも少なく計上した
上記のようなケースやこれに準じるような隠蔽・仮装があった場合は重加算税の対象と判断され、意図的に虚偽の申告を行ったとして重いペナルティが課されます。
ただし、申告内容が間違っていた場合でも、重加算税の対象とならないケースもあります。例えば、経理担当者のミスにより計算が間違っていたことが認められれば、重加算税を課されることはほとんどありません。
また、本年度の売上を翌年度に回してしまったときや、経費として計上できないものを計上した場合など、故意ではないミスだとわかれば、内容を説明したうえで重加算税の課税を回避できるケースもあります。
重加算税の税率と計算方法
重加算税の税率は、申告書を提出しているか、無申告かによって異なります。
具体的には、下記のとおりです。
重加算税の税率
- 申告書を提出していて過少申告をした場合:重加算税(過少申告)として原則35%徴収
- 申告書を提出していない場合:重加算税(無申告)として原則40%徴収
- ※国税庁「加算税の概要」
例えば、申告書を提出しており、実際の税額が100万円だったにもかかわらず過少申告していたことが判明し、これが故意の隠蔽または仮装によるものと判断された場合は、100万円の35%に当たる35万円を追加徴収されます。
また、重加算税には、延滞税が加算されるケースが多いことにも注意が必要です。通常、延滞税が発生する期間は、申告期限から最長でも1年間ですが、重加算税の場合は1年が過ぎても延滞税が課されます。
延滞税の税率は年度によって変動があり、2024年度の税率は下記のとおりです。
2024年度の延滞税の税率
- 納付期限の翌日から2か月以内の場合:2.4%
- 納付期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後の場合: 8.7%
- ※国税庁「延滞税の割合」
つまり、本来支払うべきだった税金が100万円だった場合は、100万円と重加算税35万円に加えて、延滞税として延滞期間に応じた数十万円が課されることとなります。
さらに、平成28年度税制改正による加算税制度の改正によって、短期間のうちに隠蔽や仮装を繰り返した場合に、加算税額が10%増える制度が導入されています。これは、期限後申告があった日の前日から起算して過去5年以内に無申告加算税、または重加算税を課されていた場合に、新たに納めなければいけない税額に応じて増差額の10%が上乗せされるというものです。
したがって、この要件に該当する場合は、過少申告や不納付で45%、無申告で50%の重加算税が課税されることとなります。
重加算税はどのように処理すればよい?
重加算税を課税された場合は、納税の後、適切に会計処理をしなければなりません。まず、重加算税について賦課決定通知書を受け取った場合は、その通知書が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日までに納付する必要があります。
会計処理においては、重加算税をはじめとする加算税は損金として算入することができず、重加算税は、「租税公課(そぜいこうか)」として処理することとなります。そのため仕訳の際は、借方の欄には租税公課、貸方の欄には現金と記載するのが一般的です。借方と貸方それぞれに記載する重加算税の金額は、一致している必要があります。
なお、重加算税は、会計上は費用に計上しても法人税の計算上は損金扱いにならないため、納税した年度に課税される所得には影響を与えないという点も押さえておきましょう。
重加算税の仕訳例
重加算税の仕訳の仕方を確認しておきましょう。例えば、重加算税6万円を現金で支払った場合の仕訳例は、下記のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 60,000 | 現金 | 60,000 |
重加算税を含む附帯税は、損金算入することができません。そのため、仕訳としては、租税公課の勘定科目を使いますが、法人税申告のときには損金扱いにはなりません。多額の加算税を支払ったとしても、納税した年度の課税される所得に影響しないこととなっています。
重加算税の対象となった場合の対応
税金を納める法人や個人は、国税庁または地方支分部局である国税局、税務署などの税務調査の対象となることがあります。重加算税は、この税務調査で申告内容に問題があると判明した場合に課されるケースがほとんどです。では、万が一、重加算税の対象になってしまった場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは、重加算税の対象になった場合の対応方法について、説明します。
修正申告を行う
税務調査によって問題が認められると、一般的には修正申告を求められます。修正申告とは、先に申告した内容の誤りを、納税期限後に修正して新たに申告する手続きです。
修正申告にあたって正当な事由があれば、過少申告加算税などは免除される可能性もあります。ただし、隠蔽や仮装が認められた場合の重加算税は、免除されないケースが少なくありません。また、修正申告後でも、その分の延滞税は発生することとなります。
更正処分を行う
更正処分とは、申告内容の税額などを修正する処分です。この場合は、法人や個人が自ら申告内容を修正するのではなく、税務当局が申告内容を見直して新たに申告書を作成します。
不服の申し立てを行う
税務調査の内容に納得いかない場合は、不服の申し立てをすることもできます。税務当局から受けた指摘について、納得のいく内容に関しては修正申告を行い、納得がいかない部分のみについて不服申し立てをすることも可能です。ただし、不服申し立てには期限があり、通知を受けた日の翌日から1か月以内に行わなければなりません。
不服の申し立てを行う方法としては、再調査の請求や審査請求などがあります。再調査の請求は処分を受けた税務署の税務署長または国税局長に対して行い、審査請求は国税不服審判所長に対して依頼します。
なお、修正申告が完了した後は、原則として不服申し立てはできなくなる点にも留意しましょう。税務調査の内容に納得がいかない場合は、修正申告をする前に不服申し立てを行う必要があります。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。