事業報告書とは?書き方や記載事項、テンプレートの入手方法を紹介
監修者: 税理士法人 MIRAI合同会計事務所
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企業の規模を問わず、すべての株式会社には「事業報告書」の作成が義務付けられています。事業報告書には、記載項目や提出時期など、作成するうえで知っておくべき大切な決まりがあるため、いざ作成するときになって慌てないよう、事業報告書の作成方法をきちんと理解しておきましょう。
本記事では、事業報告書の概要や記載すべき項目、提出先や提出時期の他、事業報告書を作成する際の注意点などについても解説します。
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事業報告書は事業の状況を報告する書類
事業報告書は、事業年度ごとの会社の事業の状況を報告する書類のことです。旧商法では「営業報告書」と呼ばれ、貸借対照表や損益計算書などと並び、会社法上の「計算書類」に含まれていました。その営業報告書が、2006年施行の新会社法では「事業報告書」と名称が変わり、同時に計算書類とは別のものとして位置付けられるようになったのです。
事業報告書の役割
事業報告書は、決算書からは読み取ることが難しい、会社の事業内容や役員・従業員に関する情報などを補足説明する役割を持っています。会社法で開示される書類には、貸借対照表や損益計算書などの一般的に決算書と呼ばれる計算書類があり、これらは会社の財務状況や経営実績を利害関係者(ステークホルダー)に報告するためのものです。事業報告書は、決算書類に含まれていない重要事項を記載し、利害関係者に報告するために作成されます。
事業報告書は会社法で作成が義務付けられている
会社法では、すべての株式会社に対して「各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない」と事業報告書の作成を義務付けています。これは、公開会社でも非公開会社でも同様です。
そもそも企業は、株主や取引先、金融機関などの利害関係者(ステークホルダー)に対して、決算情報を開示しなければなりません。この事業報告書も、計算書類共に、株主総会の招集通知に添付されます。会社に資金を提供する株主にとっては、計算書類の定量的な情報だけではなく、事業報告書に記載された定性情報(数値化が難しい情報)も、意思決定を行ううえで重要な意味を持ちます。
中小企業も事業報告書の提出は必須
前述のとおり、事業報告書はすべての株式会社に作成義務があります。したがって、中小企業であっても、株式会社である以上は事業報告書の作成は必須です。
ただし、中小企業の場合は会社の株式を経営者自身が保有しているケースも多く、不特定多数の株主を招待して株主総会を開催することはほとんどありません。そのため、会社法ではいくつかの会社区分を設定し、区分ごとに必要な記載内容を定めています。
例えば、公開会社における記載事項、会計参与設置会社における記載事項、会計監査人設置会社における記載事項などが規定されています。逆にいえば、これらの区分にあてはまらなければ、記載を省略することが可能になります。中小企業の多くは株式について譲渡制限が設けられている非公開会社のため、事業報告書の記載内容を大幅に省略できる可能性が高いといえます。
決算報告書と事業報告書との違い
決算報告書は決算書とも呼ばれ、事業年度における事業の概況や経営状況、財政状態をまとめたものです。すべての会社に作成義務があり、代表的な決算報告書には貸借対照表や損益計算書などがあります。
その一方で、事業報告書は決算報告書には含まれず、株式会社に対して作成が義務付けられたものです。また、貸借対照表や損益計算書などの数値的な情報では表せない会社の概要などが記載され、計算書類を補足するような役割を担っています。
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事業報告書の提出先と提出期限
事業報告書は、会社法によって、定時株主総会に提出または提供しなければならないと定められています。定時株主総会は、事業年度の終了後一定の時期(基準日から3か月以内)に招集されることになっています。株主総会の招集通知は、開催日の2週間前(定款に株式の譲渡制限の定めがある非公開会社では原則として1週間前)までに、株主に書面などで発送しなければなりません。
この招集通知には、事業報告書を添付する必要があります。なお、株主総会において議決権を行使することができるすべての株主の同意がある場合は、招集手続きを行わずに株主総会を開催することができます。
また、事業報告書は、定時株主総会の日の1週間前(取締役会設置会社は2週間前)の日から5年間、本店に備え置かなければなりません。
事業報告書の記載事項
事業報告書の記載事項は、会社の分類によって異なります。会社分類と事業報告書の記載事項の関係は、以下の表のとおりです。
会社の分類 | 事業報告書の記載事項 |
---|---|
公開会社 |
|
非公開会社 |
|
非公開会社で、かつ親会社や子会社がない会社 |
|
以上の会社の分類に関係なく、すべての株式会社に共通する記載事項は、以下の会社法施行規則118条の5つの事項が対象となります。
会社法施行規則118条の事項
-
1.株式会社の現況に関する事項
-
2.業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項
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3.株式会社の支配に関する基本方針に関する事項
-
4.特定完全子会社に関する事項
-
5.親会社等との間の取引に関する事項
一般社団法人日本経済団体連合会「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2021年3月)
このうち3・4・5については、該当する場合のみ記載が必要です。非公開会社で、かつ親会社や子会社がない中小企業は、基本的には、上記の1・2を記載することになります。また、2に関しては、体制がない、または決議等が行われていない場合は記載を省略することが可能です。
事業報告書の作成上の注意点【テンプレート有り】
事業報告書を作成する際には、知っておきたいいくつかの注意点があります。スムーズに作成するためにも、注意点をあらかじめ把握しておいてください。
最新のひな型かどうか確認しておく必要がある
事業報告書のひな型は、一般社団法人日本経済団体連合会「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版) 」から入手することができます。ひな型を使用するときは、最新のものかどうかを必ず確認するようにしましょう。
事業報告書のひな型は、会社法の改正や団体独自の改訂によって、変更する可能性があります。改訂はいつ行われるかわからないので、事業報告書を作成する際には、最新のひな型であることを確認してから使用してください。
主要または重要の判断をしなければならない
事業報告書を作成するうえで、「主要な事業内容」や「重要な事項」などが具体的に何を指すのか、判断に迷う場面があるかもしれません。主要または重要の判断については、明確な基準などが定められていないため、記載すべきかどうか、戸惑ってしまうケースも考えられます。
ただ、一般的には、主要または重要について判断が難しい場合は、積極的に記載しておいた方が良いでしょう。主要または重要ではないと判断して記載しなかった場合、記載漏れで不備とみなされてしまう可能性があるからです。とはいえ、事業上の機密事項について記載する必要はありません。事業報告書は関係者に開示されるものだということを念頭に置いて作成してください。
記載内容に関する適切な時期はいつなのかを判断する
記載内容に関する適切な時期とは、つまり、「いつのことを事業報告書に書くのか」ということです。原則として、事業報告書には、対象事業年度の事業内容や状況を記載します。ただし、その事業年度には影響しなくても、重要な事項であれば記載するケースがあります。
例えば、対象事業年度内に締結した重要な契約が事業年度終了直後に解約された場合、解約は対象事業年度に含まれませんが、翌事業年度に影響する重要な事項のため、事業報告書への記載が必要です。
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事業報告書を作成するには事前の準備も大切
事業報告書は、会社法によって株式会社に作成が義務付けられている書類です。企業規模にかかわらず、すべての株式会社は事業年度ごとに事業報告書を作成する必要があります。事業報告書の記載項目やひな型は、会社法の改正などによって変更の可能性もあるため、作成の際には最新の情報を確認することが大切です。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。
