M&Aを利用した起業とは?メリットや起業・独立の流れについて解説
監修者: 渡辺亨(中小企業診断士)
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起業する方法には、自分で事業を立ち上げるパターン以外に、会社や事業を買うM&A(Mergers and Acquisitions)もあります。M&Aは大企業が行うイメージを持っている方もいるかもしれませんが、最近では個人によるM&Aも増えています。M&Aは、今や起業を考える際の1つの選択肢です。
では、M&Aを利用して起業すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、M&Aを用いて起業するメリットや注意点、M&Aで起業する流れの他、M&Aによる起業を成功させるためのポイントについても解説します。
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M&Aを利用した起業とは、会社や事業を買い取って起業すること
M&Aを利用した起業とは、会社や事業を買い取り、経営権を取得する方法で起業することです。
M&Aとは、会社の合併・買収を意味し、会社や事業のすべて、または一部を移転させる取引を指します。M&Aの手法には、合併、分割、買収があります。例えば、大企業が他社の株式をすべて買い取って、自社に統合する合併もM&Aの一種です。
起業でM&Aを利用する場合に行うのは、買収です。買収には、売手対象会社の事業や資産の一部または全部を買い取る事業譲渡と、株式の取得によって売手対象会社の経営権獲得や子会社化を行う株式取得といった方法があります。
また、M&Aでの起業は個人でも可能です。M&Aでは、例えば数百万円規模の案件も少なくありません。資金さえ準備できれば、個人でもM&Aを行うことはできます。
M&Aで起業することを検討するために、メリットや注意点などを情報収集するところから始めてみてはいかがでしょうか。
まずはM&Aマッチングサイトでどのような案件が出ているのかを確認する
M&Aによる起業については、M&Aマッチングサイトなどのサービスを利用すると便利です。M&Aの件数が増加傾向にあるため、M&AマッチングサイトやM&A仲介業者などのサービスが充実し、M&Aを行いやすい環境が整ってきているといえます。
M&A市場の活性化の背景として、後継者不足に悩む中小企業の存在や、買手側のニーズの多様化があります。買手側のニーズとしては、例えば、ゼロから準備をせず、すぐに事業をスタートしたいと考えるケースも少なくありません。
市場の活性化を背景に、手軽に利用しやすいM&AマッチングサイトやM&A仲介業者などのサービスが登場しました。例えば、M&Aマッチングサイトでは、100万円程度で買収できる小規模の案件も簡単に調べることができるようになっています。
起業を考えている人は、M&Aマッチングサイトでどのような案件が出ているのかを確認するところから始めてみましょう。
M&Aを利用した起業にはさまざまなメリットがある
M&Aを利用した起業には、さまざまなメリットがあります。主なメリットを以下でご紹介します。
M&Aを利用した起業の主なメリット
- 事業立ち上げの手間を軽減できる
- リスクを想定した上で起業できる
- 事業に必要な許認可や人材を引き継げる可能性がある
- ノウハウを引き継ぎやすい
- 事業内容によっては資金調達を行いやすい
事業立ち上げの手間を軽減できる
M&Aでの起業のメリットは、一から事業を立ち上げるよりも少ない手間で起業できる点です。M&Aでは稼働中の事業を引き継げるため、事業を始める準備の手間がかかりません。
何もない状態から自分で会社を設立する場合、例えば、提供する商品やサービス、ターゲット、販売チャネル、集客方法、資金繰りなどを考え、事業計画を策定しなければなりません。事業計画を立てるにはマーケティング調査なども必要になり、手間と時間がかかります。
しかし、M&Aを利用すれば、既に安定して事業を行っている事業モデルを引き継げるため、準備の手間を軽減できます。商品開発や顧客開拓にかかる労力を抑えることも可能です。
事業をすぐにスタートしたい場合は、M&Aでの起業を検討しましょう。
リスクを想定した上で起業できる
M&Aを利用すると、リスクを想定した上で起業できる点もメリットです。M&Aでは、稼働している事業を分析できるため、リスクが把握しやすいといえます。
自分でゼロから起業する場合、どれほどしっかり事業計画を立てていても、実際にうまくいくかどうかはビジネスを始めてみないとわかりません。思わぬトラブルに見舞われたり、想定外の損失が生じてしまったりすることもあります。
しかし、M&Aで起業する場合は、既に事業が始まっている状態で引き継ぐため、課題やリスクを想定しやすくなります。例えば、これまでの失敗や成功、その要因などを分析すれば、対策を立てることも可能です。
リスクを把握した状態で起業をしたい場合には、M&Aによる起業も選択肢の1つとして検討してみてください。
事業に必要な許認可や人材を引き継げる可能性がある
株式取得によるM&Aであれば、事業に必要な許認可や人材を引き継げる点もメリットです。株式を取得すれば、会社が締結した契約や許認可などはそのままで会社自体を取得できるため、新たな契約や手続きの手間がかかりません。
ゼロから起業する場合、許認可を取得するためには、例えば厳しい取得条件をクリアしたり、手間のかかる申請手続きに対応したりする必要があります。また、起業後に従業員を募集しても、優秀な人材を集めるのは簡単ではありません。許認可の取得や人材の確保ができなければ、せっかく起業しようとしても営業をスタートできない可能性があります。株式取得によるM&Aで許認可や人材を引き継げば、これらのリスクを抑えることが可能です。
なお、事業譲渡によるM&Aの場合は、許認可や人材をそのまま引き継ぐことはできません。この場合は、許認可については再度申請を行い、従業員の雇用の継続については、本人の同意を得た上で新たに雇用契約を結ぶ必要があります。
許認可が絡む事業で起業したい場合や優秀な人材目当てにM&Aによる起業を検討する場合は、株式取得によるM&Aができないか確認しましょう。
- ※許認可の取得については以下の記事を併せてご覧ください
ノウハウを引き継ぎやすい
事業のノウハウを引き継ぎやすいことも、M&Aでの起業のメリットです。M&Aでは、売手側には事業を稼働してきた知見が蓄積されているため、人材を引き継げればその知識も活用することができます。
例えば、未経験の業種でゼロから起業すると、業界内のルールや慣習、トラブルへの対処法がわからず、事業運営の足を引っ張ってしまうかもしれません。
M&Aを利用した起業なら、売手側にはそれまで培ったノウハウがあり、業界内でのルールや慣習にも精通しています。ノウハウを引き継ぐことで、スムースに事業を進めていける可能性が高まります。株式取得によるM&Aなら、従業員が持つスキルや技術力を引き継ぐことも可能です。
特に、複雑でわかりにくい慣習が存在している業界で起業したい場合には、M&Aによる起業も検討してみてください。
事業内容によっては資金調達を行いやすい
M&Aによる起業では、事業内容によっては資金調達を行いやすいといったメリットもあります。事業が稼働しているM&Aでは、その事業の見通しも立てやすいため、金融機関も審査がしやすくなります。
ゼロから起業する場合、実績がなく信用を得にくいため、金融機関から融資を断られることも少なくありません。
しかし、M&Aを利用すれば、既に確立した事業を引き継ぐため、将来の見通しを立てることも可能です。例えば事業計画の説明の場面でも、実績に基づいた根拠のある説明ができるため、金融機関からの信用度も高くなり、ゼロから起業する場合に比べて資金調達を行いやすくなります。
また、M&Aを利用して起業する際に、事業承継に関する補助金を活用できる場合もあります。M&Aによる起業を検討する際は、資金調達の場面でメリットがあることも、念頭に置いておきましょう。
- ※事業承継関連の補助金については以下の記事を併せてご覧ください
M&Aを利用した起業には注意点もある
M&Aを利用した起業には、さまざまなメリットがある一方で、押さえておかなければならない注意点もあります。M&Aでの起業を検討する際には、以下の点も意識して検討を進めてください。
M&Aを利用した起業の主な注意点
- 取引先や従業員からの信用を引き継げない場合がある
- 簿外債務など想定外のリスクを引き継いでしまうおそれがある
- 期待どおりの利益が得られない場合がある
- ゼロから起業するより多額の初期費用がかかる可能性がある
取引先や従業員からの信用を引き継げない場合がある
従業員の雇用や取引先との関係を継続できても、信用まで引き継げるとは限らない点には、注意が必要です。場合によっては、取引先や従業員は新しい経営者に不信感を抱く可能性があるため、M&Aで事業を引き継いだ後は関係の維持に注力する必要があります。
例えば、中小企業の場合、社長個人と取引先、金融機関などとの長年の信頼関係によって、取引が続いているケースも少なくありません。取引先や金融機関からの信用を低下させないように、事業を引き継いだ後はていねいに関係を構築していく必要があります。
また、M&Aによって経営者が変わることで、従業員の不満や不信感を招いてしまうケースもあります。その結果、従業員の離職が続くと、予定どおりに事業が行えなくなってしまうかもしれません。特に、事業のキーマンとなる従業員が離職してしまうと、会社にとって痛手となります。
従業員の不安を払拭するために説明の場を設けるなど、信頼関係を維持できるような対策を行いましょう。
簿外債務など想定外のリスクを引き継いでしまうおそれがある
M&Aによる起業の注意点の1つが、想定外の債務を引き継ぐリスクがあることです。株式取得によるM&Aでは、基本的に、借入金などの債務も引き継ぐことになりますが、簿外債務まで引き継いでしまう可能性があるため、注意が必要です。
簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務です。例えば中小企業の場合、賞与引当金や退職給付引当金などが計上されていない可能性があるため、注意しなければなりません。未払いの残業代があった場合も、会社の資産から残業代を支払わなければならなくなるリスクがあります。
簿外債務を引き継いでしまうと、予想していなかった損失が生じ、財務状況を悪化させる原因になります。M&Aにあたっては、「M&Aで起業する際には手順がある」の項目で後述するデューデリジェンス(企業監査)を行い、簿外債務などがないかを確認しましょう。
期待どおりの利益が得られない場合がある
M&Aによる起業では、買収後、期待どおりの利益を得られない可能性がある点にも注意が必要です。事業を引き継ぐ前はうまくいっていた事業モデルでも、引き継ぎ後も変わらず成功するとは限らないため、利益が想定を下回ることもあります。
また、経営者の交代によって、事業の進め方や取引先との関係性などに変化が生じ、売上が低下してしまう可能性もあります。買収前の決算書で利益が出ていたとしても、それだけを鵜呑みにするのは禁物です。
M&Aで起業をする際には、どのように利益を生み出していくか、事前に入念な経営計画を立ててください。
ゼロから起業するより多額の初期費用がかかる可能性がある
M&Aで起業をした場合、ゼロから起業するより多額の初期費用がかかる可能性があるため、注意する必要があります。M&Aでも、追加の設備投資が必要になる場合もあるため、必ずしもゼロから起業するよりコストを抑えられるわけではない点は、押さえておきましょう。
M&Aで起業をすれば、事業用資産などは買収する会社の資産をそのまま使えるため、初期費用を抑えられると考える方もいるかもしれません。しかし、例えば、既に別の事業を営んでいる人がM&Aで会社を買収して、同じ業種の事業を行う場合は事業用資産を流用できますが、それまでとは別の事業を始めようとすると、老朽化した設備の改修などで多額の初期費用を要する可能性もあります。
初期費用にどれくらいの金額がかかりそうか、買収金額は妥当かなどを事前に検討し、もしわからない場合には、公認会計士や税理士などのM&Aに詳しい専門家に相談しましょう。
M&Aで起業する際には手順がある
M&Aを利用した起業には、自分で会社を設立する場合とは異なる手順があります。M&Aによる起業をスムースに行うために、M&Aによる起業には以下のような流れがあることを知っておきましょう。
STEP1. 会社を買収する目的と予算を検討する
個人で会社を買収するためには、最初にM&Aを行う目的を明確にして、予算や交渉の際の条件などを検討します。M&Aの目的が定まっていないと、相手探しや交渉の際の判断基準があいまいになってしまいます。
同時に、「いくらで会社を買収するか」という予算を決めておきます。また、買収金額だけではなく、起業後の運転資金も確保しておく必要があります。予算が決まったら、資金調達の準備を始めてください。
STEP2. 買収先を探す
会社を買収する目的や予算を決めたら、条件に見合う交渉相手を探します。例えば、「安定性や収益性があるか」「積極的に経営にかかわれるか」など、目的によって着目するポイントは変わります。
ただ、自力でM&Aの相手を探すことは難しいため、専門家に相談して支援を受けるか、支援サービスを利用するのが一般的です。個人による買収の場合は、M&Aマッチングサービスが利用されています。
M&Aマッチングサービスとは、M&Aの買手や売手を探せるサービスのことです。中にはマッチングした後のM&Aの手続きまで支援してくれるサービスもあります。
その他のM&Aの相談先としては、各都道府県に設置されている公的相談窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」や地方銀行や信託銀行などの金融機関、税理士、公認会計士などがあげられます。相談しやすいサービスを活用しましょう。
STEP3. 買収先候補と面談する
買収したい会社が見つかったら、相手先と面談を行います。面談までの流れとしては、まず、売手と秘密保持契約を締結した後、基礎情報を交換します。そして、企業概要書の開示とそれに基づく質疑応答を行い、両者に進展の意向がある場合、トップ面談を行うのが一般的です。その後、買手から売手へ、M&Aを行う意思と大まかな条件を記載した意向表明書を提出します。
納得できるまで、疑問点や条件について話し合いましょう。
STEP4. 買収先候補と基本合意契約を締結する
面談が終わり、意向表明書の条件でM&Aを進めることに双方が合意できたら、基本合意契約を締結します。基本合意契約には、例えば売却金額や今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務といった条件面についての具体的な内容が記載されます。
基本合意契約の買収条件部分は仮契約という位置付けで、秘密保持条項や損害賠償条項については法的拘束力を持たせることが一般的です。契約としての拘束力が発生するため、内容は慎重に検討してください。
STEP5. 買収先候補のデューデリジェンスを行う
基本合意契約を締結したら、最終条件交渉を行う前に、売手の内部状況を知るためにデューデリジェンスを行います。デューデリジェンスとは、財務・税務・法務・労務など、あらゆる側面から売手対象会社の実態を調査する企業監査のことです。
デューデリジェンスは、M&Aにあたっての問題点やリスクなどを把握するための重要なステップです。買手側は、デューデリジェンスの結果に基づいて、例えば売手対象会社の財産・負債・リスクなどを確認し、売却金額の妥当性や最終契約に盛り込むべき条件を検討します。
デューデリジェンスは、税理士や公認会計士、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。個人がM&Aを行う場合は、M&Aマッチングサービスで用意されている簡易デューデリジェンスの利用も検討しましょう。
STEP6. 買収する企業と最終契約を結ぶ
デューデリジェンスが終わったら、これまでの合意事項やデューデリジェンスでの結果を踏まえて最終条件の交渉を行い、最終契約を結びます。最終契約書には、売却金額や退職金の処理、役員・従業員の処遇、表明保証の履行といった必要事項が記載されます。
最終契約書の締結後、株式譲渡や事業譲渡の手続き、譲渡代金の受け取りなどを行うクロージングへと進み、M&Aは完了です。すべての手続きを終えるまでには多くの時間と労力を要しますが、交渉相手の状況が変わることもあるため、慎重かつ迅速に対応しましょう。
M&Aによる起業を成功させるにはポイントがある
M&Aによる起業を成功させるには、さまざまなポイントがあります。買収後のスムースな事業運営を目指すためにも、M&Aを考える際には、以下のポイントを押さえて検討してください。
M&Aによる起業を成功させる主なポイント
- 自分の知識や経験を活かせる事業や規模の会社を買収先に選ぶ
- 買収先の従業員との信頼を築くように努める
- 取引先も併せて引き継ぐようにする
- 適正な買収金額を把握しておく
- デューデリジェンスで隠れた負債がないか細部までチェックする
自分の知識や経験を活かせる事業や規模の会社を買収先に選ぶ
M&Aで起業する際のポイントの1つが、自分の知識や経験を活かせる事業や規模の会社を買収先に選ぶことです。いくら魅力的な会社でも、未経験で知識もない分野の事業で、会社経営を成功させるのは簡単ではないため、買収先選びは慎重に行う必要があります。
また、買収先企業の規模が大きすぎると、細かいところまで目が行き届かず、経営上の課題やリスクを見逃してしまう可能性もあります。買収先を探すときには、例えば「自分の強みや興味などに合致するか」「経営のコントロールができる規模か」といった点に着目しましょう。
買収先の従業員との信頼を築くように努める
買収先の従業員との信頼を築くように努めることも、M&Aを成功させるポイントの1つです。従業員は会社の大切な資産であり、買収先の従業員を引き継いでもうまく信頼関係を築けなければ、生産性の低下や人材の流出を招いてしまう可能性があるため、注意が必要です。
また、中小企業の場合、特定のキーマンとなる従業員が事業運営に強い影響力を持っているケースも少なくありません。買収後、そのような人材が退職してしまうと、想定していたような事業が行えなくなることも考えられます。
M&Aによって従業員に不安を抱かせたり、社内に動揺を広げたりしないように、従業員向け説明会を実施するなどして、信頼関係の構築に努めてください。
取引先も併せて引き継ぐようにする
それまでの取引先と良好な関係を継続できるかどうかは、M&Aの成否を左右するポイントです。取引先が継続できなければ想定していた利益を獲得できない可能性が高まるため、M&Aによる起業の場合は、取引先も引き継げるように事前に確認しておきましょう。
M&Aによって、取引先にも「経営状態は大丈夫なのか」「これまでどおりの商品やサービスが提供されるのか」といった不安を与えてしまう可能性があります。その結果、例えば取引条件が変更されたり、取引自体が中止されたりすることもあるかもしれません。
従業員と同様、取引先とも信頼関係を築けるように、買収後はすみやかな連絡を心掛けてください。
適正な買収金額を把握しておく
M&Aによる起業を成功させるには、適正な買収金額を把握することもポイントとなります。買収金額が本来の価値に比べて高すぎると、資金繰りを圧迫するため、買収後の資金回収が難しくなる可能性もあります。
特に、買収金額の算定で注意しなければならないのが、営業権の評価です。一般的に、収益力が高いほど営業権も高くなりますが、その評価について売手側と買手側で認識が異なる場合もあります。
適正な買収金額や営業権の評価額を判断するのが難しい場合は、税理士やM&A仲介会社などの専門家のサポートを受けましょう。
デューデリジェンスで隠れた負債がないか細部までチェックする
デューデリジェンスで隠れた負債がないかをチェックすることも、M&Aによる起業を成功させるポイントの1つです。隠れた負債が見つかると資金繰りに影響を与える可能性もあるため、デューデリジェンスによる入念な確認が必要です。
デューデリジェンスでは、例えば定款や取引基本契約書、各種議事録、賃貸契約書といった資料を基に、財務・税務・法務・労務・環境・IT・ビジネスモデルの有効性などの視点から、売手がどのような状態なのかを正確に調査します。
M&Aで起業する際には、未払いの残業代や債務保証などの簿外債務に注意しなければなりません。簿外債務に気付かずに買収すると、それらもすべて引き継ぐことになってしまいます。デューデリジェンスでは、簿外債務の有無に加え、後に訴訟リスクとなる要素がないかについてもチェックします。
安心して買収できるよう、デューデリジェンスは、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などの各分野の専門家に依頼しましょう。
M&Aに必要な手続きを手軽に行う方法
M&Aでは、交渉力に加えて、財務・税務・会計・法務・労務などの専門的な知識が必要となり、すべての手続きを自力で進めるのは困難です。M&Aを成功させるには、専門家の力を借りるのは有効な選択肢といえます。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ」がおすすめです。
「税理士紹介ナビ」は、M&Aや事業承継などに関する困りごとをお持ちの方に、弥生が厳選した経験豊富で実績のある専門家をご紹介するサービスです。紹介料は、一切かかりません。
専門家に相談してスムーズな起業を目指そう
起業するための方法の1つとして、既にある会社や事業を買収するM&Aも、有効な選択肢です。M&Aでの起業は、ゼロから起業するより手間を軽減できる、リスクを想定しやすいといったメリットがあります。数百万円で買収できる会社や事業もあるため、起業の選択肢として、M&Aも検討してみましょう。
ただし、M&Aによる起業には、メリットだけではなく注意点もあります。また、M&Aの実施には目的や条件の検討、相手探し、条件交渉、契約などさまざまな工程があるため、自分だけで手続きを進めるのに不安を感じる場合は、M&Aや事業承継に詳しい専門家に相談しながら、スムーズな起業を目指しましょう。
この記事の監修者渡辺亨(中小企業診断士)
株式会社リノヴェクス代表取締役。経営者を助けるプロコーチ/コンサルタント/中小企業診断士/M&Aプロアドバイザー/ドリームゲートアドバイザー
コーチングを主軸とした人材育成サービスを行う、株式会社リノヴェクスを運営する傍ら、プロコーチ・トレーナー・人材育成コンサルタントとしても活動している。一般財団法人日本コーチング教育振興協会(ACEAジャパン)代表理事も務め、経営層や事業主に向けたエグゼクティブコーチングを行っている。