会社設立までにかかる期間は?流れや法人設立後に必要な手続きを解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社を設立するには、さまざまな手続きが必要になります。起業するにあたり、会社設立にどれくらいの期間がかかるのか気になる方もいるでしょう。
会社設立にかかる期間は、会社形態や必要書類の有無によっても変わってきます。スムースに手続きを進めるためにも、まずは会社を設立するまでの流れをしっかり押さえておいてください。
ここでは、会社設立までの流れや事前準備・登記申請を含めた会社設立にかかる期間のほか、設立後に必要な手続きについても解説します。
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会社設立にかかる期間は2~3週間が目安
会社設立にかかる期間は、一般的にいうと2~3週間程度です。実際には、設立手続きを専門家に頼むか自分でやるか、登記申請までに必要な準備をどれくらいスムースに進められるかなどによって、かかる期間は変わってきます。
また、会社設立にかかる期間は、会社形態によっても変わります。例えば、合同会社は設立にあたって定款の認証が不要なので、株式会社に比べて期間が短縮可能です。
会社設立を「法人登記すること」と考えるなら、登記申請手続きを最短2~3日で完了させることは不可能ではありません。しかし、これは登記申請までに必要な準備が全て揃っていることが前提なので、専門家に相談していたりする場合でなければなかなか難しいといえるでしょう。
- ※法人登記については以下の記事を併せてご覧ください
会社設立までの流れ
会社設立までの流れは、大きく4つのステップに分けることができます。
会社の設立日は、法務局に法人登記の申請をした日です。ただ、登記申請の前には、さまざまな準備や手続きが必要です。設立手続きをスムースに行うには、全体の流れを把握したうえで、漏れのないように作業を進めていかなければなりません。
会社設立までの流れ
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STEP1.事前準備
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STEP2.定款の作成・認証
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STEP3.資本金の払い込み
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STEP4.登記申請
中でも、事前準備や定款作成などには時間がかかりがちです。必要な作業を整理したうえで、スケジュールを立てて進めていきましょう。
STEP1. 事前準備
会社設立にかかる一連の作業をスムースに進めるコツは、事前準備をしておくことです。
会社を設立するには、決めなければいけないことや揃えなければならないものがたくさんあります。ここで決定するさまざまな事項は、この後で作成する定款の記載内容になります。
会社名(商号)を決める
会社名(商号)は、会社の顔になる大切なものです。事業内容をイメージしやすい名前、会社の雰囲気を伝える名前、理念を込めた名前など、十分に検討するようにしましょう。
会社名を決める際には、有名企業や同業他社、近隣地域に類似する社名がないか、他社が商標登録している会社名やブランド名、商品名と同じ名前でないかなどをあらかじめ確認しておいてください。
- ※会社名(商号)ついては以下の記事を併せてご覧ください
事業の内容や目的を決める
事業目的は、その会社がどのような事業を行うのかを明示するものです。定款への記載が義務付けられている、絶対的記載事項のうちの1つでもあります。
事業目的は取引先や金融機関が会社をチェックするときの判断材料にもなるため、できるだけ明確で過不足のないように決める必要があります。設立後すぐに行う事業以外に、将来行う可能性がある事業を加えても問題ありません。ただし、あまりにも一貫性のない目的が並ぶと、不自然に受け取られる可能性があるため注意が必要です。
- ※事業目的については以下の記事を併せてご覧ください
会社所在地を決める
会社設立時には、会社本店所在地を決める必要があります。法的な制限は特にないため、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスといった場所に設定することも可能です。
ただし、本店所在地は会社のブランドや信用にも影響を与えますし、許認可が必要な業種の場合は制限がある場合もあります。また、会社設立後に本店を移転すると変更登記手続きが必要になるため、長期的に業務を行う場所を所在地に定める必要があります。
会社の資本金額を決める
会社法では資本金の下限がないため、資本金1円でも会社設立は可能です。ただし、金融機関に融資を申し込む際には、売上などと共に資本金もチェックされます。
極端に資本金が少ないと会社の信用度を低下させる可能性があるため、適正な金額を設定しましょう。
- ※資本金については以下の記事を併せてご覧ください
株式について決める
株式会社を設立する場合には、発行する株式の1株あたりの金額や発行可能株式総数についても決める必要があります。合同会社の設立を考えている方は、この項目の検討は不要です。
なお、1株あたりの金額をいくらにするかは、特に決まりはありません。発行可能株式総数は、会社が将来において発行できる最大株数のことです。
将来的に増資を検討している場合には、1株あたりの金額をあまり高く設定してしまうと、小口の出資者を募集しにくくなってしまうため注意が必要です。
個人の印鑑登録を行う
法人の設立登記申請を行う際には、設立者(株式会社は発起人、合同会社は代表社員)の実印と印鑑登録証明書が必要です。株式会社は定款の認証を受ける際にも、発起人の印鑑登録証明書の提出を求められます。このときまでに個人の印鑑登録をしていない場合には、早めに手続きを済ませましょう。
実印を発注する
会社設立にあたって法人登記をする際には、会社の印鑑(代表者印)を提出して実印登録を行います。
なお、法改正によって、2021年2月15日から、設立登記をオンラインで行う場合は会社の印鑑の提出が任意となりました。ただ、書面で登記申請をする場合は印鑑が必要ですし、会社設立後も実印を使う場面は意外と多いものです。後で二度手間にならないように、社名が決まったら実印を作っておいた方がいいといえます。
- ※印鑑については以下の記事を併せてご覧ください
STEP2. 定款の作成・認証
定款は、会社を運営するうえでのルールをまとめた書類で、「会社の憲法」ともいわれます。すべての会社は、設立時に必ず定款を作成しなければなりません。さらに、株式会社の場合は公証役場で定款の認証を受ける必要がありますが、合同会社の場合には認証手続きは不要です。
定款の作成は、定款の作成は会社設立の流れの中でも時間がかかる作業になるため、余裕を持って準備を進めましょう。
定款を作成する
定款には、主に会社概要の内容を記載します。中でも、商号や事業目的といった絶対的記載事項は、法律で記載が義務付けられているため注意が必要です。
定款の作成方法には、紙と電子定款の2種類があり、どちらを選んでも問題ありません。ただ、株式会社の場合は定款の認証手続きの際に、電子定款であれば紙の定款で必要になる収入印紙代(4万円)がかからないため、最近は電子定款を選ぶことが増えています。ただし、電子定款の場合はマイナンバーカードやICカードリーダーなどが必要になり、費用や手間がかかってしまう点には注意が必要です。
定款は、会社のルールや在り方にかかわる重要な書類です。自分で作成することもできますが、不備を防ぐためにも、定款の作成・認証の代行ができる司法書士などの専門家に依頼するといいでしょう。
- ※定款の作成については以下の記事を併せてご覧ください
定款認証を行う
株式会社は、定款を作成後に公証役場で手続きを行い、公証人の認証を受けなければなりません。紙の定款は印刷・製本したものを公証役場に提出しますが、電子定款ならオンライン上で認証申請が可能です。ただし、オンライン申請の場合も、認証済みの定款を受け取るために公証役場に出向く必要があります。
また、司法書士などの専門家に依頼せず、自分で定款を作成した場合には、一度で認証が下りないことも多くあります。理由としては、記載項目に漏れやミスがあったり、文章表現が稚拙で内容を理解しにくかったりすることです。そのため、事前に公証役場で内容確認を受けておくといいでしょう。
- ※定款の認証については以下の記事を併せてご覧ください
STEP3. 資本金の払い込み
株式会社の設立の場合には、定款が認証された後に、資本金の払い込みを行います。合同会社の場合にはこの手続きは不要です。
なお、この時点では設立登記が完了しておらず、法人口座がないため、資本金の振込先は発起人の個人口座です。
登記申請の際には資本金の払い込みを証明する書類が必要になるため、通帳の表紙と1ページ目、振込内容が記載されているページをコピーしておきましょう。
STEP4. 登記申請
資本金の振込が終わったら、設立登記申請書などの必要書類を揃え、法務局で登記申請手続きを行います。登記申請をした日(法務局で受付がされた日)が、会社設立日になります。
登記申請は原則として代表者が行いますが、司法書士などの代理人に委任することも可能です。また、法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」からオンラインで登記申請を行うこともできます。
登記申請後、不備がなければ登記され、会社の設立が完了です。登記の申請から完了までにかかる日数は、管轄の法務局や時期によっても異なりますが、1週間~10日程度が目安になります。
会社設立後に必要な手続き
会社設立にかかわる手続きは、法人登記が完了すれば終わりというわけではありません。無事に会社を設立した後にも、以下のような手続きが必要になります。
提出期限があるものもあるため、漏れのないように確認しておきましょう。
会社設立後に必要な手続き
- 印鑑証明書の取得
- 法人口座の作成
- 営業許可の申請
- 税金の手続き
- 社会保険の手続き
印鑑証明書の取得
会社設立後に必要な手続きは、印鑑証明書の取得です。
法人登記のタイミングで会社の実印を登録しておくと、法人の印鑑証明書(印鑑登録証明書)を取得できるようになります。
法人の印鑑証明書は、法人口座を開設する際にも必要になることがほとんどです。会社を設立したら、早めに印鑑証明書を取得しておくとよいでしょう。
- ※印鑑証明書の取得については以下の記事を併せてご覧ください
法人口座の作成
会社設立後に必要な手続きには、法人口座の作成もあります。
個人口座でも取引自体は不可能ではありませんが、会社としての信用度に影響します。法人口座は、個人口座に比べて開設時の審査に時間がかかるため、法人設立登記が終わったら、できるだけ早く法人口座の開設の手続きを始めましょう。金融機関によっても異なりますが、法人口座の開設までには手続き開始から2週間~1か月程度かかります。
- ※法人口座の作成については以下の記事を併せてご覧ください
営業許可の申請
会社設立後に必要な手続きの1つに、営業許可の申請もあります。
飲食業や建設業、運送業など、事業の業種によっては許認可申請が必要です。許認可の申請先は、都道府県や国土交通省、保健所、税務署、警察署など、種類や業種によって異なります。
許認可が必要な業種であるにもかかわらず、申請をせずに事業を行うと、法令違反となり、罰則が課せられます。
- ※営業許可については以下の記事を併せてご覧ください
税金の手続き
会社設立後に必要な手続きには、税金の手続きもあります。
法人登記が完了したら、会社設立日から2か月以内に、法人設立届出書などの必要書類を管轄の税務署に提出しなければなりません。また、都道府県税事務所、市町村役場への届出も必要です。
その他、源泉所得税関係の届出書や消費税関係の届出書、必要に応じて青色申告の承認申請書などの提出も行います。
社会保険の手続き
会社設立後に必要な手続きとして、社会保険の手続きも挙げられます。
たとえ社長1人だけの会社であっても、社会保険に加入しなければなりません。健康保険や厚生年金保険といった社会保険の加入手続きのため、年金事務所に届出を行います。また、従業員を雇う場合は、労災保険と必要に応じて雇用保険の加入手続きが必要です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークで手続きを行います。
- ※株式会社や合同会社の設立の手続きについては以下の記事を併せてご覧ください
登記申請から取引開始までにかかる期間
会社設立日は登記の申請が法務局で受け付けられた日ですから、登記申請後すぐに営業活動などを行うのは問題ありません。ただし、会社の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得できるのは、登記完了日、つまり登記申請日から1週間~10日ほど後になります。
そして、取引に用いる法人口座を開設するには、登記簿謄本の提出が必須です。前述したとおり、法人口座の開設には2週間~1か月程度かかるので、登記申請から法人口座開設までには、最低でも約1か月必要と考えておくといいでしょう。
とはいえ、これは登記申請書類に不備がなく、スムースに登記が完了した場合のスケジュールです。
法人登記の申請書類に不備があると、補正(訂正)して再提出しなければならないため、手間と時間が余計にかかってしまいます。
また、資本金や決算月、役員報酬など、会社設立にあたって決定した事項が、税金に大きく影響することもあります。会社設立にかかる手続きをスムースに進めるため、事前準備の段階から税理士などの専門家のアドバイスを受けるのも1つの手段です。
合同会社の方が早く設立できる
合同会社は定款の認証が不要なため、株式会社に比べて会社設立にかかる期間を短縮できます。定款の認証が不要なので、認証費用(3万~5万円)もかかりません。
また、法人設立登記にあたって必要な登録免許税も、株式会社が最低15万円なのに対して、合同会社は最低6万円です。会社設立の期間に加えて、設立費用を抑えられる点も、合同会社が手軽に設立できる点といえるでしょう。
一方、合同会社には、株式会社に比べて知名度が低く社会的な信用を得にくかったり、株式上場ができないため大規模な事業を展開しにくかったりするといった注意点もあります。
会社設立の期間や費用、かかる手間だけではなく、事業内容や事業的規模なども考慮したうえで適した会社形態を選ぶようにしましょう。
- ※定款の認証については以下の記事を併せてご覧ください
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会社設立手続きをスムースに進めるにはしっかり事前準備しよう
会社を設立するにはさまざまな手続きが必要ですが、事前に準備をしておけば問題なく進めることができます。会社設立の手続きをスムースに完了できるかどうかは、いかに事前準備をしておくかにかかっているといえます。
会社設立には、決定事項の検討や定款の作成など時間のかかる作業が数多く発生しますし、登記申請にあたっては複数の必要書類を作成しなければなりません。専門家に相談したり、「弥生のかんたん会社設立」を利用したりして会社設立にかかる手間を軽減することで、事業自体の準備に専念できる時間を費やすことができるでしょう。
この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。