介護保険料の計算方法は?加入対象者や保険料率の確認方法を解説

2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

給与やボーナス(賞与)から天引きされる社会保険料の1つが、介護保険料です。40歳以上の健康保険加入者は、介護保険料の納付を行わなければなりません。では、介護保険料はどのように計算すればいいのでしょうか。また、算出した介護保険料は、会社と従業員のどちらが負担するのでしょうか。

ここでは、介護保険の概要や加入対象者、介護保険料の計算方法、納付方法について解説していきます。

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介護保険は、介護を社会全体で支えるための社会保険制度

介護保険は、高齢などによって介護が必要になった人を社会全体で支えるために、2000年4月1日から施行された社会保険制度です。法律上、40歳以上の人は全員介護保険に加入し、介護保険料を納付することが義務付けられています。

40~64歳の人が特定疾病(※)に罹患した場合や65歳以上で要介護認定された場合には、原則として1~3割の自己負担で介護サービスを受けることができます。

  • 特定疾病とは、罹患率や有病率が加齢と関係する16の病気のこと。

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介護保険の被保険者は2種類に分けられる

40歳になると、介護保険料の納付が義務付けられるため、自動的に介護保険の被保険者になります。介護保険の被保険者は、2種類に分けられます。65歳以上の方が「第1号被保険者」、40~64歳以下の公的医療保険加入者が「第2号被保険者」です。

第1号被保険者

第1号被保険者とは、65歳以上の人です。第1号被保険者になると、原因を問わずに要介護認定や要支援認定を受けた際、介護保険を使って介護サービスを受けられます。

65歳以上の年金受給者になると、介護保険料は健康保険とは切り離され、原則として年金から天引きになります。

第2号被保険者

40~64歳までの公的医療保険加入者が、第2号被保険者です。第2号被保険者は、特定疾病が原因で要介護や要支援認定を受けた場合に限り、介護サービスを受けることができます。

介護保険料は、職場の健康保険に加入している場合、給与や賞与から控除となります。なお、65歳になると自動的に第1号被保険者に切り替わるので、特別な手続きは必要ありません。

介護保険料の計算方法

給与からの控除する介護保険の対象者は、40~64歳までの第2号被保険者です。第2号被保険者の介護保険料は、次の計算式で求められます。月々の給与とボーナス(賞与)で、それぞれ計算が必要なので注意しましょう。

介護保険料の計算式

標準報酬月額×介護保険料率=給与の介護保険料

標準賞与額×介護保険料率=賞与の介護保険料

計算式に登場する標準報酬月額・標準賞与額・介護保険料率がどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

標準報酬月額

標準報酬月額は、健康保険料や厚生年金保険料を算定する際の基準となる金額です。社会保険対象賃金となる支給額を、「保険料額表」にあてはめて算出します。ここでいう社会保険対象賃金となる支給額には、基本給をはじめ、残業手当や家族手当、通勤手当、住宅手当、役職手当などの各種手当も含まれます。

介護保険を計算するときに準ずるのは、健康保険の標準報酬月額です。健康保険の標準報酬は平均支給額によって50段階に等級が分かれています。

標準報酬月額についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

社会保険の標準報酬月額とは?注意点や保険料の計算方法について解説

標準賞与額

標準賞与額とは、ボーナス(賞与)の額面(税引き前の賞与総額)から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。標準賞与額は、ボーナスが支給される月ごとに決定されます。標準賞与額を算出するもとになる賞与とは、年3回以下の支給のものを指します。年4回以上支給される場合は、標準報酬月額の対象となり、取り扱いが変わるので注意しましょう。

介護保険料率

介護保険料率は変更があるため、保険料を計算する際は、必ず最新の保険料率を確認しましょう。

例えば、保険者が全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は、1.64%です。東京都の会社に勤務・全国健康保険協会(協会けんぽ)加入で、標準報酬月額が20万円の場合、介護保険料を求める計算式は、下記のようになります。

介護保険料の計算例

20万円(標準報酬月額)×1.64%(介護保険料率)=3,280円(介護保険料)

1か月あたりの介護保険料は3,280円になります。

介護保険料の負担割合と納付方法

算出した介護保険料は、誰がどのように納めるのでしょうか。介護保険料の負担割合と納付方法について、本記事で紹介している通常の「介護保険に加入している従業員の場合」のほか、「国民健康保険に加入している場合」、「国民健康保険組合に加入している場合」、「第1号被保険者(65歳以上)の場合」の4つのパターンに沿ってご説明します。

介護保険に加入している従業員の場合

算出した介護保険料は労使折半となり、従業員本人と会社が半分ずつ負担します。

上記の算出例でいえば、1か月あたりの介護保険料3,280円の半額である1,640円を、従業員と会社がそれぞれ負担するということです。従業員が負担する介護保険料は、健康保険料と合わせて給与や賞与から控除されます。

介護保険料の従業員負担分は、健康保険料と合わせて給与や賞与から控除します。そのため、従業員本人が保険料の納付手続きをする必要はありません。

なお会社は、従業員から控除した介護保険料と会社負担分の介護保険料を合わせて、日本年金機構から送付される「納入告知書」にもとづき、原則として、当月分を翌月末日までに納付しなければなりません。

国民健康保険に加入している場合

同じ第2号被保険者でも、自営業者などで国民健康保険に加入している場合は、介護保険料の計算方法や納付方法が異なります。納める介護保険料は前年の所得などによって変わりますが、計算に用いる料率は自治体によって違うため、居住地の市区町村に確認しましょう。

国民健康保険の加入者の場合、介護保険料は全額が自己負担となり、納付書や口座振替で市区町村に納付します。

国民健康保険組合に加入している場合

建設・医師・美容・料飲・衣料など業種別に構成される組合のことで、このような特定の業種で個人事業主として経営している場合(事業所で勤務する従業員も含む)は、国民健康保険組合に加入する選択肢もあります。介護保険料の計算方法や納付方法は組合によって異なるため、事前に各組合に確認しましょう。

第1号被保険者(65歳以上)の場合

第1号被保険者の介護保険料は、市区町村で計算される「基準額」か、本人や世帯の所得状況にもとづいて算出され、全額自己負担です。介護保険料は、年金の年額が年間18万円未満の場合は市区町村から届く納付書で納付し(普通徴収)、18万円以上の場合は原則年金から控除(特別徴収)されます。

介護保険料に関する注意点

介護保険料に関しては、知っておきたいいくつかの注意点があります。計算などでミスを起こさないためにも、あらかじめしっかり確認しておきましょう。

介護保険に加入手続きは必要ない

原則的に40歳以上になると、すべての人は自動的に介護保険の被保険者となります。これは法律で定められているため、40歳になったからといって特に介護保険の加入手続きを行う必要はありません。介護保険料は、それまで支払っていた健康保険料と合算する形で納付することになります。

なお、社会保険に加入している場合は、介護保険料の半分を会社が負担するため、被保険者の負担割合は半分となります。

介護保険料率は変更がある

社会保険の介護保険料は、標準報酬月額や標準賞与額に介護保険料率を掛けて算出します。この介護保険料率は、変更があるため注意が必要です。介護保険料の計算を行う際は、必ず最新の保険料率を確認するようにしましょう。

控除した介護保険料を滞納したらどうなる?

従業員の給与や賞与から控除した介護保険料と、事業者負担分の介護保険料は、従業員に代わって会社が毎月末に納付しなければいけません。介護保険などの社会保険料を納付期限までに納めないと、会社に督促状が送られてきます。保険料の納付が督促状で指定された期日を越えてしまった際には、延滞金が発生します。

さらに、督促状を受けても保険料を滞納していると、年金事務所や労働局の職員による財務調査が行われ、最悪の場合は財産差し押さえに至ることもあります。

介護保険料を滞納するということは、合算して納める健康保険料も滞納していることになります。保険料の納付は、必ず期限内に行いましょう。

従業員が40歳以上の場合は健康保険料に加えて介護保険料の控除が必要

介護保険は、40歳以上になると必ず加入する公的保険です。介護保険料の納付は健康保険料と合わせて行うため、従業員が40歳以上の場合は、健康保険料とともに介護保険料も給与や賞与から控除する必要があります。介護保険料は給与と賞与では計算方法が異なり、算出のもとになる保険料率も変更があります。介護保険料の計算をする際には、仕組みをしっかり理解したうえで、ミスのないように心掛けなければいけません。控除額の計算に手間がかかって大変なときは、給与計算ソフトがおすすめです。

給与計算ソフトは、専門的な設定は不要で、支給、控除、差し引き支給額を自動計算できるから、給与計算の手間やミスが軽減されます。さらに、税金や保険料率の変更にも自動で対応するため、給与計算のたびに最新の料率や法令をチェックする必要がありません。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
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