源泉所得税の納付書の書き方・入手方法を解説
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源泉所得税の納付書は、事業主が従業員の給与から差し引いた源泉所得税を納付するために必要な書類です。正確に作成することで、税務手続きをスムーズに進めることが可能です。
本記事では、源泉所得税の納付書の基本的な概要から種類までを分かりやすく解説します。また、具体的な記入方法や源泉所得税の納付期限、納付方法にも触れ、納付書を紛失した場合の対処法も紹介します。
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源泉所得税とは?納付書を利用する理由を解説
源泉所得税の納付書の概要とその種類について詳しく解説します。
源泉所得税の納付書の概要
源泉所得税の納付書とは、事業主が従業員の給与から天引きした源泉所得税の納付の際に必要となる書類であり、正式名称は「所得税徴収高計算書」です。
源泉所得税の納付と納付書の提出は、事業主にとって重要な義務となります。原則として、給与を支払った月の翌月10日までに税務署へ提出する必要があります。この期限内に源泉所得税を納付しない場合、不納付加算税や延滞税が発生する可能性があるため注意しましょう。
源泉所得税の納付書の種類
源泉所得税の納付書には 9種類があり、それぞれ特定の所得の種類に対応しています。
主に利用される納付書が「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」です。これは、事業主が従業員に支払った給与や、特定資格者(税理士や弁護士など)に支払った報酬の源泉所得税を納付するために利用されます。また、一般用と納期特例用の2種類に分類されています。
「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」も頻繁に利用される納付書です。これは、フリーランスや契約社員など、従業員以外の個人に対して支払った報酬から差し引いた源泉所得税を納付するための書類です。
また、その他の代表的な納付書として、利子や配当金に対する所得税の納付する際に利用される「利子等の所得税徴収高計算書」 や、外国居住者や外国法人への報酬を支払った際に利用される「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」などがあります。
【記入例つき】源泉所得税の納付書の具体的な記入方法
以下では、源泉所得税の納付書の具体的な記入方法を、 次の3つに分けて解説します。
- 給与所得者の場合
- 報酬・料金支払者の場合
- 納期特例分支払いの場合
なお、以下は「納期特例分」の記載例ですが、一般分と異なるのは「支払年月日」の書き方です。一般分では実際の支払年月日を記載し、年月は「納期等の区分」欄と一致するようにします。
参照:国税庁「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)の記載例」
記入例①:給与所得者の場合の例
給与所得者の給与や、特定資格者(税理士や弁護士など)の報酬を源泉徴収した際には、「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を利用します。主な記入項目は以下のとおりです。
項目 | 記入内容 | |
---|---|---|
年度 | 4月1日~翌年3月31日を1年度として記入します。 | |
税務署名 | 所轄の税務署名を記入します(税務署から送付された納付書には印刷されています)。 | |
整理番号 | 整理番号を記入します(税務署から送付された納付書には印刷されています)。 | |
俸給・給料等 | 支払年月日 | 支払年月日:給料などを支払った年月日を記入します。 |
人員 | 役員、社員、アルバイト、パートなど、給料などを支払ったすべての人数を記入します。 | |
支給額 | 支払った給料などの総額(所得税、社会保険料等控除前)を記入します。 | |
税額 | 預かった源泉所得税の総額を記入します。 | |
税理士等の報酬 | 支払年月日 | 特定資格者(税理士や弁護士など)へ報酬を支払った年月日を記入します。 |
人員 | 特定資格者(税理士や弁護士など)へ報酬を支払った人数を記入します(1名に対して1か月内に複数回支払った場合は「1」と記入します)。 | |
支給額 | 特定資格者(税理士や弁護士など)へ支払った報酬(税抜)を記入します。消費税込みで支払い、当該金額で源泉をした場合は当該額を記入します(司法書士に支払った場合、基礎控除がありますが、支払った報酬総額を記入します)。 | |
税額 | 特定資格者(税理士や弁護士など)から預かった源泉所得税の総額を記入します。 | |
本税 | 源泉所得税の合計額を記入します。 | |
合計額 | 延滞税が発生している場合、税務署が決定した金額が納付書に印字されます。事業者側で金額を計算する必要はありません。 | |
納付等の区分 | 年月を記入します(上記の支払年月日の年月と同じです)。 | |
徴収義務者 | 会社の所在地(住所)、名称(氏名)、電話番号を記入します(税務署から送付された納付書には印刷されています)。 |
記入例②:報酬・料金支払者の場合の例
特定資格者(税理士や弁護士など)以外の個人に支払われる報酬や料金に対して源泉徴収を行う際は、「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を利用します。記入方法は、上述した「給与所得者の場合の例」と大きく異なりませんが、以下の記入項目には注意してください。
項目 | 記入内容 |
---|---|
納期等の区分 | 報酬・料金などを支払った年月を記載します。 |
区分 | 払った報酬・料金などの内容に応じて、コード表から該当するコードを選択して記入します(コード表に該当するものがない場合、第3片(領収証書)裏面の「報酬・料金等のコード表(その他分)」を参照します)。 |
人員 | 区分ごとに、当該月において報酬・料金などを支払った人数を記入します。 |
支払額 | 当該月において支払った報酬・料金、契約金、賞金の総額または公的年金などの総額もしくは生命・損害保険契約などに基づく年金の総額を記入します。 |
記入例③:納期特例分の支払い例
「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」は「一般分」と「納期特例分」の2種類あります。納期特例とは、源泉徴収をした所得税・復興特別所得税を年2回にまとめて納付できる制度です。給与などの支給人員が常時10名未満で、承認を受けた場合に「納期特例分」の納付書を利用できます。「納期特例分」の記入方法は「一般分」とほぼ同じですが、以下の記入項目には注意してください。
項目 | 記入内容 | |
---|---|---|
俸給・給料等 | 支払年月日 | 7月10日に納付する分は、1~6月の支払い分、1月20日に納付する分は7~12月の支払い分を記入します。 |
人員 | 延べ人員の人数で計算します。例えば、1~6月まで3人に給与を支払った場合、人員は18人(3人×6か月)です。 |
参照:国税庁 「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)の記載例」
源泉所得税の納付期限
源泉所得税は原則として、給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納付することが求められています。例えば、10月に給与を支給した場合には、11月10日までに納付しなければなりません。
納付が1日でも遅延すると、不納付加算税が発生します。税率は、納付すべき所得税の10%です(ただし、税務署による指摘前に自主納付した場合は5%)。なお、加算税額が5,000円未満の場合、または過去1年間に期限後納付がなく、納付期限から1か月以内に納付された場合には、発生しません。
また、延滞税も発生します。延滞税は納付期限を超過した日数に応じて算出されます。ただし、納付すべき所得税額が10,000円未満の場合等には、発生しません。
納付期限に間に合わない場合は?
基本的には翌月10日までに納付しなければなりませんが、期限までに納付が困難な場合は、税務署に申請することで、納税の猶予や換価の猶予が認められる場合もあり、その際には延滞税の一部または全部が免除されることがあります。
また、給与支給人員が常時10人未満の場合においては、納期の特例として半年分をまとめて納付することが認められています。この特例を利用するためには、事前に所定の申請書を提出する必要があります。ただし、特例は申請した翌月から適用されるため、提出した月の分については原則通り翌月10日までに納付する必要があります。申請後、却下の通知が届かない場合には、申請した月の翌月から特例が適用されます。例えば、9月に申請を行った場合、10月から適用され、10月分から12月分の源泉所得税は翌年1月20日に納付することとなります。
また、納期の特例は、給与・賞与、退職手当、および特定資格者(税理士や弁護士など)の報酬に限られています。料金・報酬、配当金などの源泉所得税には適用されません。さらに、延滞税については、納付書の延滞税の項目に記入せず、税務署から送付される通知に同封された納付書を使用して納付してください。
参照:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
源泉所得税の納付方法
源泉所得税の納付方法には以下の方法があります。自社に合った方法を選択しましょう。
現金納付
現金納付は一般的な方法の1つで、手数料がかかりません。コンビニエンスストアなどでバーコード付きの納付書を使用して納付できます。簡単かつ迅速な方法なので、特に小規模な事業者に適しています。
クレジット納付
クレジットカードを使用して源泉所得税を納付することも可能です。「国税クレジットカードお支払いサイト」を利用し、必要な情報を入力して納付できます。ただし、納付税額に応じて決済手数料が発生するため、注意が必要です。
ダイレクト納付
ダイレクト納付は、e-Taxを利用して銀行口座から振替で納付を行う方法です。この方法では、一度手続きが完了すると、毎回の納付が自動化されます。そのため、納付期限を守ることが容易になります。法人は、ダイレクト納付を開始する約1か月前に「ダイレクト納付利用届出書」を作成し、所轄の税務署に提出する必要があります。
インターネットバンキングからの納付
e-Taxを利用してインターネットバンキングから納付することが可能です。自宅やオフィスからの納付が容易です。ただし、インターネットバンキングによる納付では領収証書は発行されません。領収証書が必要な場合は金融機関の窓口をご利用ください。
源泉所得税の納付書の入手方法
年末調整の時期には税務署から源泉所得税の納付書を含む冊子が郵送されます。また、税務署で納付書を直接入手することも可能です。さらに金融機関や郵便局に置かれている場合がありますが、近年は常備されていない場合もあるため、事前の確認が推奨されます。
源泉所得税の納付書を紛失した場合はどうする?
納付書を紛失した場合でも、再発行が可能です。税務署に直接訪問して取得する方法が最も確実です。以下では、その他の再発行方法や、納付が間に合わない場合の対応について解説します。
税務署で再発行が可能
税務署に直接連絡して、納付書の再発行を依頼することが可能です。希望枚数を伝えると、必要な納付書を郵送で送付してもらえます。記入ミスがあることも考慮し、予備も含めて多めに依頼するのがおすすめです。 なお、法律で義務付けられているわけではありませんが、一部の税務署では、返信用封筒に所定の切手を貼付したものを同封するよう求められる場合があります。
オンラインでも再取得できる
e-taxを利用してパソコンやスマートフォンからオンラインで納付書を再取得することが可能です。申請はオンラインで完結するため、大変便利です。また、再取得した納付書を使用し、ネットバンキングを利用してオンラインで納付することもできます。
源泉所得税の納付書の書き方を正しく理解しよう
源泉所得税の納付書とは、従業員の給与から差し引いた源泉所得税を納付するための重要な書類です。納付書にはいくつか種類があり、それぞれ特定の所得に応じた書類を使用します。記入項目を確認し、ミスなく適切に記入してください。また、納付方法には現金、クレジットカード、ダイレクト納付、インターネットバンキングなどがあり、事業者が選択できます。納付期限を守り、延滞税や加算税を課せられないようにしましょう。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
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