被扶養者異動届の書き方と記入例|期限やダウンロード方法も解説
被扶養者異動届は、従業員の家族を健康保険の被扶養者として追加、変更、削除する際に必要な書類です。適切な手続きを行うことで、従業員やその家族が健康保険の適用を受けることができます。
本記事では、被扶養者異動届の書き方や提出方法について詳しく解説しています。被扶養者異動届の提出期限は、異動が生じた日から5日以内です。提出が遅れると、保険証が手元にないことで従業員に不都合などが生じる可能性があるため、迅速に対応できるように業務の流れを理解しておきましょう。
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被扶養者異動届とは
被扶養者異動届とは、従業員の被扶養者である家族に関する健康保険の内容を追加、変更、削除する際に必要な届出書類です。この届によって従業員の扶養家族の異動内容を把握し、保険証の発行に反映させます。
企業は、従業員の被扶養者に関する情報を適切に管理し、被扶養者異動届を提出する法的義務があります。この手続きを怠ると、従業員やその家族が保険適用できない可能性があるため、迅速かつ正確な対応が求められます。
被扶養者異動届が必要なケース
被扶養者異動届の提出が必要なものとして、主に次のようなケースがあります。
- 従業員が家族を被扶養者にするとき
- 従業員の被扶養者となっている家族が被扶養者に該当しなくなるとき
- 被扶養者の届出事項に変更が生じたとき
以下で詳しく解説します。
従業員が家族を被扶養者にするとき
この手続きは、被扶養者がいる従業員が入社した場合や、新たに被扶養者を追加するときに行われます。
被扶養者として認定されるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 生計維持要件:主に被保険者が被扶養者の生計を維持していること
- 収入要件: 年間収入が130万円未満であること(60歳以上または障害者は180万円未満)
- 同一世帯要件:配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は同一世帯であること
健康保険組合の場合、要件が協会けんぽ(全国健康保険協会)と異なる場合があります。特に、収入要件や同一世帯要件が厳格に設定されていることが多いため、詳細は各健康保険組合への確認をおすすめします。
従業員の被扶養者となっている家族が被扶養者に該当しなくなるとき
被扶養者が勤務先の健康保険に加入したり、75歳になったりした際に、この手続きが求められます。具体的なケースとしては以下のとおりです。
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(1)後期高齢者医療制度の被保険者になったとき
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(2)被扶養者の年間収入が130万円以上(60歳以上または障害者の場合は180万円以上)見込まれるとき
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(3)同居の場合、被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上になったとき、または別居の場合、被扶養者の収入が被保険者の仕送り額を超えたとき
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(4)健康保険、船員保険の被保険者または共済組合、国保組合等の組合員になったとき
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(5)婚姻等により他の被保険者に扶養されるようになったとき、または離婚したとき
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(6)離縁、死亡または同居が要件の者が別居したとき
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(7)日本国内に住所を有しなくなったとき(海外特例要件に非該当となったとき)
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引用:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
これらの条件に該当する場合、速やかな被扶養者異動届の提出が必要です。これにより、適切な保険適用が維持されます。
被扶養者の届出事項に変更が生じたとき
被扶養者の届出事項に変更が生じた場合も、被扶養者異動届を提出します。具体的には以下のような場合です。
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(1)氏名の変更または訂正があったとき:結婚や離婚、その他の理由で被扶養者の氏名が変更された場合、または誤記が訂正された場合
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(2)生年月日に訂正があったとき:被扶養者の生年月日に誤りがあり、それが訂正された場合
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(3)性別に変更または訂正があったとき:性別の変更が法的に認められた場合や、誤記が訂正された場合
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引用:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
これらの変更が生じた場合、速やかに被扶養者異動届を提出し、正確な情報を届け出てください。
被扶養者異動届のダウンロード方法
被扶養者異動届(健康保険被扶養者(異動)届)は、日本年金機構のサイトからダウンロードできます。以下の「参照元」URLにアクセスし、「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」をクリックして、ダウンロードしてください。
PDF形式とエクセル形式が用意されています。PDFファイル(.pdf)を開くには、Adobe Acrobat ReaderなどのPDFリーダーが、またエクセル形式ファイル(.xlsx)を開くには、Microsoft Excelなどの対応アプリケーションが必要です。
参照:日本年金機構「被保険者資格の取得・喪失、被扶養者関係届書」
被扶養者異動届の書き方【記入例】
ここでは、被扶養者異動届の書き方を、各情報欄への記入例を示しながら解説します。
日本年金機構のサイトでPDFファイルをダウンロードした場合には、印刷して手書きで記入するなどしてください。エクセルファイルの場合は、対応アプリケーションを利用して入力します。マイナンバー(個人番号)を記載する欄があるため、取り扱いには注意してください。
①事業主の情報を記入
被扶養者(異動)届の左上にある「事業主記入欄」には、次の情報を記載します。
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- 届出年月日:届出を行う日付を記入する
- 事業所整理番号:事業所に割り当てられた整理番号(事業所ごとに異なる)を記入する
- 事業所所在地:事業所の所在地を記入する。具体的な住所を正確に記載する
- 事業所名称:事業所の正式名称を記入する
- 事業主氏名:事業主の氏名を記入する。法人の場合は代表者の氏名を記入する
- 電話番号:事業所の連絡先電話番号を記入する
- 事業主確認欄:被扶養者の収入要件などを確認するための欄。必要に応じて確認事項にチェックを入れる
- 受付年月日:被保険者から事業主が届出書を受け取った日付を記入する
②A欄:事業所に勤務する被保険者について記入
その下の「A.被保険者欄」には、次の情報を記載します。
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(1)被保険者整理番号:被保険者に割り当てられた整理番号を記入する
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(2)氏名:被保険者の氏名をフルネームで、フリガナも併せて記入する
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(3)生年月日:被保険者の生年月日を西暦で記入する
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(4)性別:被保険者の性別を「男」または「女」から選択・記入する
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(5)個人番号:被保険者のマイナンバーを記入する
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(6)取得年月日:被保険者資格を取得した年月日を記入する
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(7)収入:被保険者の今後1年間の年間収入見込額を記入する
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(8)住所:被保険者の住所を記入する。ただし、個人番号を記入した場合は住所の記入は不要
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③B欄:被保険者の配偶者を扶養する場合に記入
さらにその下の「B.配偶者である被扶養者欄(第3号被保険者)」には、次の情報を記載します。
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(1)氏名:配偶者のフルネームを記入する
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(2)生年月日:配偶者の生年月日を西暦で記入する
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(3)性別(続柄):配偶者の性別(続柄)を「夫」「妻」「夫(未届)」「妻(未届)」から選択・記入する
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(4)個人番号:配偶者のマイナンバーを記入する
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(5)外国籍:外国籍の場合は国籍を記入する
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(6)外国人通称名:外国人で通称名での登録を希望する場合は、住民票に登録された通称名を記入する
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(7)住所:配偶者の現住所を記入する
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(8)電話番号:配偶者の連絡先電話番号を記入する
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(9)被扶養者になった日:被保険者の健康保険加入と同時に提出する場合は「A.被保険者欄」の「(6)取得年月日」と同日を、それ以外の場合は婚姻年月日などの実際に被扶養者になった日を記入する
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(10)理由:被扶養者になった理由を選択・記入する
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(11)職業:配偶者の職業を記入する
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(12)収入(年収):配偶者の今後1年間の年間収入見込額を記入する。収入には、非課税対象のもの(障害・遺族年金、失業給付等)も含む
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(13)被扶養者でなくなった日:死亡による場合は死亡日の翌日を、それ以外の場合は非該当になった当日の日付記入する
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(14)理由:被扶養者でなくなった理由を選択・記入する
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(15)備考:その他特記事項があれば記入する
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(16)海外特例要件に該当した日:被保険者の健康保険加入と同時に提出する場合は「A.被保険者欄」の「(6)取得年月日」と同日、それ以外の場合は海外居住者となった日を記入する
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(17)理由:(16)の理由を選択・記入する
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(18)海外特例要件に非該当となった日:国内に転入した場合は、当日の日付を記入する
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(19)理由:(18)の理由を選択・記入する
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(20)被扶養者でない配偶者を有するときに記入してください:配偶者以外を被扶養者とする場合で、配偶者が被扶養者でないときは配偶者の年間収入を記入する
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④C欄:配偶者以外の親族を扶養する場合に記入
その下の「C.その他の被扶養者欄」には、次の情報を記載します。
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(1)氏名:被扶養者の氏名をフルネームで記入する
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(2)生年月日:被扶養者の生年月日を西暦で記入する
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(3)性別:被扶養者の性別を「男」または「女」で選択・記入する
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(4)続柄:被保険者との関係を選択・記入する
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(5)個人番号:被扶養者のマイナンバーを記入する
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(6)住所:被扶養者の現住所を記入する
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(7)海外特例要件:該当するか非該当かを選択・記入する
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(8)理由:(7)で該当を選択した場合の理由を選択・記入する
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(9)理由:(7)で非該当を選択した場合の理由を選択・記入する
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(10)被扶養者になった日:被保険者の健康保険加入と同時に提出する場合は「(6)取得年月日」と同日、それ以外の場合は出生年月日などの、実際に被扶養者になった日を記入する
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(11)職業:被扶養者の職業を記入する
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(12)年収:今後1年間の年間収入見込額を記入する。収入には、非課税対象の障害・遺族年金、失業給付なども含みます。
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(13)理由:被扶養者となった理由を〇で囲む。ただし、「被保険者資格取得届」と同時に提出する場合は記入不要
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(14)被扶養者でなくなった日:死亡による場合は死亡日の翌日を、それ以外の場合は非該当になった当日の日付を記入する
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(15)理由:(14)の理由を選択・記入する
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(16)備考:その他特記事項があれば記入する
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参照:日本年金機構「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」
被扶養者異動届の提出について
従業員から被扶養者異動届を受け取った際、会社は速やかに求められる場所へ規定の方法で提出しなければなりません。ここでは、被扶養者異動届の、提出先・提出期限・提出方法について解説します。
提出先
被扶養者異動届は、所轄の年金事務所や自社が加入する健康保険組合に提出します。
提出期限
被扶養者異動届の提出期限は、事実発生日から5日以内です。事実発生日とは、被扶養者の資格喪失や追加などの変更が発生した日を指します。例えば、被扶養者が就職して収入が増えた場合が該当します。また、新たに被扶養者を追加する場合も同様です。
提出方法
提出方法は以下の3つが認められています。
- 窓口に持参する
- 所轄の年金事務所や自社が加入している健康保険組合の事務所に直接、持参して提出できます。窓口での提出は、担当者に直接確認してもらえるので安心です。
- 郵送
- 提出先の事務センターや年金事務所への郵送も可能です。郵送の場合、紙の他にCD・DVDなどの電子媒体による提出も認められています。郵送の際は、追跡可能な方法で送ると安心です。
- 電子申請
- オンラインでの提出も可能です。電子申請は、インターネットを通じて手続きを行う方法で、時間や場所を問わずに提出できます。
被扶養者異動届の届出時に必要な書類
被扶養者異動届の届出時に必要な書類としては、以下があります。
- 続柄確認書類
- 収入要件確認書類
- その他書類
中には有効期日が設けられた書類もあるため、従業員とのスムーズなやりとりを心がけましょう。
続柄確認書類
被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本などを提出します。提出日から過去90日以内に発行されたものが必要です。被保険者が世帯主の場合は、住民票の写しでも差し支えありません。
ただし、事業者側でこれらの書類を確認し、被保険者・被扶養者のマイナンバーを被扶養者異動届に記入のうえ、続柄確認欄にチェックを入れれば、特例として日本年金機構への書類提出を省略できます。
収入要件確認書類
課税(非課税)証明書を提出します。従業員の住所地を管轄する市区町村役場で発行できます。被扶養者の年間収入(130万円未満。ただし60歳以上か、障害者の場合は180万円未満)を確認するために必要です。
以上に該当しない場合には、以下の書類が必要です。
- 退職者:退職証明書または雇用保険被保険者離職票のコピー
- 失業保険受給中または受給終了者:雇用保険受給資格者証のコピー
- 年金受給者:年金額の改訂通知書などのコピー
- 農業等含む自営や不動産収入がある場合:直近の確定申告書のコピー
ただし、被扶養者が16歳未満である場合は書類を用意する必要はありません。
その他書類
その他にも必要に応じて、以下に挙げるような書類が必要になる場合があります。
- 仕送りの事実と仕送り額確認のための書類
- 被扶養者が被保険者と別居している場合、仕送りをしている事実とその金額を示す証拠書類が必要です。例えば、銀行の振込明細書や送金証明書などが該当します。
- 内縁関係の確認のための書類
- 内縁関係にある被扶養者の場合、内縁関係を示すための書類が必要です。具体的には、内縁関係を証明できる戸籍謄(抄)本や被保険者の世帯全員の住民票などが求められます。
上の書類以外にも、特定の状況に応じて追加の書類が必要になる場合があります。例えば、被扶養者が学生である場合は学生証の写し、障害者である場合は障害者手帳の写しなどが必要です。詳細は最寄りの年金事務所や自社が加入する健康保険組合に確認してください。
被扶養者異動届は正しく作成しよう
被扶養者異動届は、従業員の被扶養者の追加や変更、削除が必要な際に提出する重要な書類です。適切な保険適用のため、家族の収入や住所の変動時にもミスなく届出を行う必要があります。企業は従業員の被扶養者情報を正確に管理し、提出期限を守らないと従業員やその家族が不利益を被る可能性があるため、迅速な対応が求められます。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
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